ランドローバー・ディスカバリーTd6(4WD/8AT)/ディスカバリーSi6(4WD/8AT)
伝統の継承 2017.03.16 試乗記 フルモデルチェンジを受けた「ランドローバー・ディスカバリー」に米国で試乗。アルミモノコックボディーを採用するなど“革新的”な進歩を遂げた新型は、オンロードの洗練と悪路走破性の強化を同時に成し遂げた、ランドローバーの伝統の良き継承者だった。“いいとこ取り”したモデル
ちょっと古い世代の私に言わせれば、もともとランドローバーのラインナップは3つのモデル――「ディフェンダー」「ディスカバリー」「レンジローバー」――で構成されていた。ディフェンダーはランドローバーの始祖ともいうべきベーシックなモデルで、その軽量さを生かして最も高いオフロード性を誇った。レンジローバーはその対極にあって、ランドローバーらしい優れたオフロード性能を残しながらも、大きく優雅でリムジンのようにも使えるぜいたくなSUVとして登場。そして2台に挟まれた格好のディスカバリーは、ディフェンダーとレンジローバーの“いいとこ取り”をしたようなモデルで、ディフェンダーに匹敵するオフロード性能とレンジローバーに次ぐオンロード性能や充実した装備が自慢だった。また、1989年にデビューした初代より7シーター仕様が用意されていて、ファミリーユースに適していることもディスカバリーの特徴といえる。
やがてレンジローバーとディスカバリーにはコンパクトボディーでオンロード性能をさらに高めた“スポーツ”と呼ばれる派生モデルが誕生。さらにレンジローバーは単なるモデル名からランドローバー内の一ブランドへとその役割を大きく変え、コンパクトでありながらスポーティーでスタイリッシュな「イヴォーク」が登場。さらにこのイヴォークと「レンジローバー スポーツ」のギャップを埋めるモデルとして「ヴェラール」が先ごろ発表されたものの、ディフェンダー(近々フルモデルチェンジが実施されるもよう)、ディスカバリー、レンジローバーという3本柱の位置関係はいまも基本的に変わっていない。
ボディーがアルミモノコックに
その誕生からおよそ30年を経てデビューした5代目は、いくつもの意味で「革新的なディスカバリー」と呼ぶことができる。
まず、ボディーがアルミモノコック製となった。ディスカバリーがフレーム構造を捨てたのは2004年に第3世代が登場したときのことだが、今度は中心となる素材をスチールからアルミに切り替えたのである。これは現行レンジローバーのボディー構造をベースとしたもので、結果として480kgもの軽量化を実現。動力性能の改善や走行時のCO2排出量削減に大きく貢献したほか、アルミシートの50%にリサイクル素材を用いることで製造時のエネルギー消費量低減や資源の有効活用にも役立たせている。
サスペンションもレンジローバー譲りのフロント:ダブルウイッシュボーン、リア:マルチリンクで、ホイールが大きくストロークしても対地キャンバーが変化しにくいジオメトリーとすることで優れたオフロード性能を狙っている。
エンジンはジャガー・ランドローバーの新世代ディーゼルエンジンであるインジニウム2リッター4気筒のほか、以前からラインナップされている3リッターV6のディーゼルターボとガソリンスーパーチャージャーの3種。ただし、今年夏前と予想される国内導入のタイミングではV6のディーゼルとガソリンのみが発売される。ギアボックスはZF製のトルコン式8段。駆動方式は4輪がメカニカルにつながったフルタイム4WDで、路面状況を判断してセンターデフのロッキングファクターやESPなどを自動で制御するテレインレスポンス2が装備される。
レンジローバーに近づいたインテリア
チャーター機で降り立った米国ユタ州のセントジョージ空港でわれわれを待ち受けていた新型ディスカバリーは、力強い直線で構成されていた先代に比べるとはるかに柔和で曲線主体のデザインに生まれ変わっていた。その方向性は現行「ディスカバリー スポーツ」に近いものだが、フラッシュサーフェス化やさまざまなデザイン要素を統合的・一体的に表現する手法はさらに徹底されており、現代的なイメージを強く漂わせるスタイリングに仕上がっている。
インテリアはイメージ的にもクオリティー的にもぐっとレンジローバーに近づいた。とりわけシートに用いられているレザー素材はしなやかな感触で、このセグメントでは飛び抜けて質感が高いように思う。
伝統の7シーターは電動化・自動化が一気に推し進められ、リアラゲッジルーム内に設けられた7つのスイッチを駆使すれば各シートの折り畳みや引き起こしは自由自在。しかも、たとえば2列目シートを折り畳む際にはいったん1列目シートが前方に自動的にスライド、折り畳み作業が終わったところで所定の位置に戻るという“知能化”も盛り込まれている。
なお、これまで上下2分割とされていたテールゲートは一体化されたが、インテリアの一部としてインナーテールゲートと呼ばれる新機軸を装備。テールゲートを開けた際、フロアに設けられたヒンジを軸に手前側へ展開して水平状態に保たれるインナーテールゲートには300kgもの耐荷重が与えられているので、重い荷物を積み込むときの小休止に使えるほか、ここに腰掛けてピクニック気分を味わうこともできる。
より静かで快適に
今回試乗したのは日本導入が決まっているガソリンとディーゼルのV6 3リッターエンジン搭載モデル。走り始めてすぐに感じるのは、徹底した静粛性の高さと快適な乗り心地だ。これはガソリン、ディーゼルに共通した傾向で、たとえば60km/h程度のスピードで走っているとエンジン音も風切り音もほとんど聞こえず、ロードノイズがかすかに響く程度。おそらく遮音性が優れているのだろうが、かといって人工的・強制的に音を遮断したクルマに見られるある種の違和感を覚えることはなく、ただひたすら上質で快適な印象だけが心に残る。
しかも、ガソリンと同等の静けさをディーゼルでも達成したことには驚くしかない。258psと61.2kgm(600Nm)を生み出すこのディーゼルエンジン、低速トルクが豊かなだけでなく高回転域までスムーズにパワーを積み重ねていくキャラクターを得ており、速度を問わず実にドライバビリティーは高い。もちろんガソリンはさらにスムーズだし、より高い回転域まですーっと回ってスポーティーな走りも楽しめるが、ディスカバリーの性格によりマッチしているのはディーゼルのほうだろう。燃費もガソリンモデルを30~40%ほど上回る。
ソフトな乗り心地も実に快適。それでいて、エアサスペンションを装備した試乗車はロールスピードもしっかりコントロールされており、多少ワインディングロードを飛ばした程度ではまったく不安を覚えなかった。
しかし、ディスカバリーの真骨頂はなんといってもその驚異的なオフロード性能にある。今回の試乗会では引き締まったダート路面だけでなく、ときにウインドスクリーンが青空や地面だけに埋め尽くされる険しい岩場やベビーパウダーのようにきめ細かな砂で覆い尽くされた砂丘、さらに深さ50cmはあろうかという泥濘(でいねい)地などを走破したが、途中で空気圧を調整することはあっても、SUV用と銘打ってあるだけでトレッドパターンは純粋な夏用と変わらないタイヤを装着したまま苦もなく走り抜けてみせた。オンロード性能をどれほど高めても決してオフロード性能を忘れない姿勢は、セダンのプラットフォームからいとも簡単にSUVやクロスオーバーを作り出してしまう世の自動車メーカーとは一線を画す、ランドローバーの伝統と誇りを反映したものだ。
ABOVE & BEYOND、より高く、より遠くへ。ランドローバーが掲げるメッセージに偽りはない。
(文=大谷達也/写真=ジャガー・ランドローバー/編集=竹下元太郎)
テスト車のデータ
ランドローバー・ディスカバリーTd6
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4970×2073×1846mm
ホイールベース:2923mm
車重:2298kg
駆動方式:4WD
エンジン:3リッターV6 DOHC 24バルブ ディーゼル ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:258ps(190kW)/3750rpm
最大トルク:61.2kgm(600Nm)/1750-2250rpm
タイヤ:(前)285/40R22/(後)285/40R22
燃費:7.2リッター/100km(約13.9km/リッター、欧州複合モード)
価格:--円/テスト車=--円
オプション装備:--
テスト車の年式:2017年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(軽油)
参考燃費:--km/リッター
ランドローバー・ディスカバリーSi6
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4970×2073×1846mm
ホイールベース:2923mm
車重:2223kg
駆動方式:4WD
エンジン:3リッターV6 DOHC 24バルブ スーパーチャージャー付き
トランスミッション:8段AT
最高出力:340ps(250kW)/6500rpm
最大トルク:45.9kgm(450Nm)/3500-5000rpm
タイヤ:(前)255/55R20/(後)255/55R20
燃費:10.9リッター/100km(約9.2km/リッター、欧州複合モード)
価格:--円/テスト車=--円
オプション装備:--
テスト車の年式:2017年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

大谷 達也
自動車ライター。大学卒業後、電機メーカーの研究所にエンジニアとして勤務。1990年に自動車雑誌『CAR GRAPHIC』の編集部員へと転身。同誌副編集長に就任した後、2010年に退職し、フリーランスの自動車ライターとなる。現在はラグジュアリーカーを中心に軽自動車まで幅広く取材。先端技術やモータースポーツ関連の原稿執筆も数多く手がける。2022-2023 日本カー・オブ・ザ・イヤー選考員、日本自動車ジャーナリスト協会会員、日本モータースポーツ記者会会員。
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