ホンダ・フィット ハイブリッドS Honda SENSING(FF/7AT)/フィット ハイブリッドL Honda SENSING(FF/7AT)/フィットRS Honda SENSING(FF/6MT)
感涙モノ!! 2017.07.22 試乗記 デビューから約4年を経て、3代目「ホンダ・フィット」がマイナーチェンジ。声高にうたわれるのはデザインの変更と先進安全装備の充実だが、試乗して感じたのは、クラスのレベルに収まりきらない、クルマとしての基本性能の向上だった。国内累計販売台数は250万台以上!
独立したトランクスペースを設けるのではなく、“人のため”の空間と“荷物のため”の空間を必要に応じて融通。そんな工夫により、限られたボディーサイズのなかで最大のユーティリティー性を実現させる――。本質を追えば、まずはそんな機能性を極めることこそが、優れたハッチバックモデルの狙いであるはず。
華々しく日の目を見ては一代限りでついえてしまう、まるで“一発屋”のようなアイデアも少なくないなかで、2001年デビューの初代フィットから採用が始まった「センタータンクレイアウト」は、その適用モデルを拡大させながら、ホンダ・コンパクトカーの基盤技術となって現在へと続いている。
すなわちそれは、ホンダがパテントを所有するこのアイデアが、決してカタログを飾るためだけのギミックなどではなく、実際にいかに有用なものであるかを示す証左と言ってもいいはず。
かくして、前述の初代モデルの発売以来、国内累計販売が250万台をマークするなど、現在では“日本のホンダ車の主力モデル”と紹介できる3代目フィットが、マイナーチェンジを迎えた。
内外装のリファインというこの種のイベントでの定番メニューに加え、静粛性、乗り心地の向上や運転支援システム「ホンダセンシング」の採用などが、大きな見どころとして紹介されるポイント。エクステリアは前後のバンパーに手が加えられ、従来同様に全長が4mに収まるベーシック版、ノーズの延長などでより伸びやかさを狙ったスポーティー版、そしてシリーズのイメージリーダーである「RS」専用と、3タイプが用意されることになった。
こんなに上等なクルマだったっけ?
横浜・みなとみらい地区で開催された試乗会で、用意された時間は1台あたりわずかに45分。今回は編集チームと別日程での取材なので、撮影に時間を取られないのは“朗報”。が、それでもスケジュールはタイトなので、早速テストドライブへとスタートする。
かくして、ハイブリッドのトップグレード「ハイブリッドS Honda SENSING」で、最寄りの首都高入り口を目指してスタート。すると、この段階で早速驚かされることに。「あれ? フィットってこんなに上等なクルマだったっけ?」
上級車種からのダウンサイザーもかなり意識した、というこのグレードの静粛性がそれなりに向上しているであろうことは、フロント遮音ガラスの新採用やフロントコーナーガラスの板厚アップ、フロントアンダーカバーの材質変更など、専用に施したと説明された数々の対策から、ある程度は予想がついていた。
しかし、さらに制振性の高い専用エンジンマウントを採用といった効果もあってか、その静粛性の高さはずばり「クラスを超えた!」と評しても差し支えないレベルと思えたのだ。
好印象は静かさのみにとどまらず、フラットな乗り味も、これもまた感心させられる仕上がりぶり。再チューニングを施したというサスペンションの効果はもちろん言わずもがな。しかし、ここではそれよりも、さまざまな部分にスティフナーを追加したり、サスペンション取り付け部の板厚を増したりと、シリーズ全車に実施されたというボディー剛性の強化策がより大きく貢献しているのではないかと、そう実感させられることとなった。
世界最小の“走りのハイブリッド”
そんなハイブリッドSから乗り換えたのは、同じハイブリッドシステムを搭載しつつ14万円ほど低い値付けの「ハイブリッドL Honda SENSING」グレード。シート地などが異なるほか、シューズ径が1サイズダウンの15インチとされたり、シフトパドルが省かれたりといった差がある一方で、このグレードのみで選択可能なのが「プレミアムブラウンインテリア」のオプション。
これはシートやステアリングホイール、ドアパッドなどにブラウンを配色。一部には本革のような風合いの「ウルトラスエード」素材を用いることで、より上質な仕立てを演じるもの。しかし、筆者に割り当てられたテスト車は、標準インテリア仕様であった。
スタートすると、エンジン音はより明瞭でロードノイズもボリューム大と、ハイブリッドSとの静粛性の差は歴然。とはいえ、本来であれば“この程度”というのがクラスの水準である。そもそもSが“異様なまでに”静かなのだ。
もっとも、DCTがもたらす小気味いい加速感は、実はこうして耳に届くエンジン音ともなかなかマッチングがいいもの。個人的には、「これでロードノイズだけを抑えてもらえれば、Sよりこちらの方が好ましいかな」とも受け取れたくらいだ。
今回は首都高クルージングが基本のテストドライブとなったが、途中から強まった風に対する、安定感の高さにも感心させられた。
エンジンパワーをベースとした走りはスポーティーで、アクセル踏み加え時にはモーターアシスト感も明確。フットワークは洗練されて、燃費も上々……とくれば、これはもう日本が世界に誇るべきコンパクトカーであるはず。
そんなフィット ハイブリッドだが、実は「日本以外ではマレーシアにしか市場を持たない」のだという。いやいやこれは何ともモッタイナイ。決してネンピだけではなく、世界で最小の“走りのハイブリッドカー”でもあると、十分世界にアピールできそうなのに……。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
MTモデルでもACCが使用できる
ハイブリッドバージョンの出来があまりに良かったからか、相対的に影が薄く感じられてしまったのが、最後に乗ったピュア・エンジンモデルの「RS Honda SENSING」だった。
テストドライブを行ったのはMT仕様。シフトフィールは悪くないし、100km/hクルージング時のエンジン回転数が2800rpmと、一応“走りに振った”ギア比が与えられていることも理解できるのだが、そうはいってもかつての高回転型VTECエンジンのようなパワーの盛り上がり感が楽しめるというわけではないし、かといって低回転域で格別にトルキーという印象でもない。
端的に言って、動力性能は「ハイブリッドの方がはるかにスポーティー」と、これが現実。RSというグレード名に期待したくなる、よりパワフルで骨太な走りのテイストを感じることはできなかったということだ。
一方、そんなこのモデルで感心したのは、ミリ波レーダーと単眼カメラで構成されるホンダセンシングの一機能である前車追従機能付きのクルーズコントロールが、MT仕様にもきちんと適応されていること。ちなみにその機能は、(3秒以内に操作を完了すれば)ギアシフト後にも継続されるという。
短時間のテストゆえ、今回はさほどのありがたみはなかったものの、長時間ドライブとなればもちろん威力を発揮するはず。設定の上限が約115km/hまでと、今後の高速道路の制限速度引き上げが考慮されていないのは残念だが、MTだからという理由で“却下”されなかったのは朗報だ。
それにしても、ここに至っての最新フィットの熟成度合いは、ちょっとばかりの感涙モノ。特に、DCTを組み合わせるという難しい課題に挑んだハイブリッドモデルは、リコールの連発という試練にもまれはしたものの、ついに会心の域へと達した感が強い。
(文=河村康彦/写真=郡大二郎/編集=藤沢 勝)
拡大 |
テスト車のデータ
ホンダ・フィット ハイブリッドS Honda SENSING
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4045×1695×1525mm
ホイールベース:2530mm
車重:1170kg
駆動方式:FF
エンジン:1.5リッター直4 DOHC 16バルブ
トランスミッション:7段AT
エンジン最高出力:110ps(81kW)/6000rpm
エンジン最大トルク:134Nm(13.7kgm)/5000rpm
モーター最高出力:29.5ps(22kW)/1313-2000rpm
モーター最大トルク:160Nm(16.3kgm)/0-1313rpm
システム最高出力:137ps(101kW)
システム最大トルク:170Nm(17.3kgm)
タイヤ:(前)185/55R16 83V(後)185/55R16 83V(ダンロップSPスポーツ2030)
燃費:31.8km/リッター(JC08モード)
価格:220万5360円/テスト車=246万6504円
オプション装備:Hondaインターナビ+リンクアップフリー(19万4400円)/ETC車載器(1万7280円) ※以下、販売店オプション ホンダアクセスドライブレコーダー(2万1384円)/フロアカーペットマット(2万8080円)
テスト車の年式:2017年型
テスト開始時の走行距離:1246km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:--km/リッター
拡大 |
フィット ハイブリッドL Honda SENSING
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=3990×1695×1525mm
ホイールベース:2530mm
車重:1170kg
駆動方式:FF
エンジン:1.5リッター直4 DOHC 16バルブ
トランスミッション:7段AT
エンジン最高出力:110ps(81kW)/6000rpm
エンジン最大トルク:134Nm(13.7kgm)/5000rpm
モーター最高出力:29.5ps(22kW)/1313-2000rpm
モーター最大トルク:160Nm(16.3kgm)/0-1313rpm
システム最高出力:137ps(101kW)
システム最大トルク:170Nm(17.3kgm)
タイヤ:(前)185/60R15 84H(後)185/60R15 84H(ブリヂストン・エコピアEP150)
燃費:34.0km/リッター(JC08モード)
価格:207万9000円/テスト車=243万7344円
オプション装備:ボディーカラー<プレミアムガットブラウンパール>(3万2400円)/15インチアルミホイール(6万4800円)/Hondaインターナビ+リンクアップフリー(19万4400円)/ETC車載器(1万7280円) ※以下、販売店オプション ホンダアクセスドライブレコーダー(2万1384円)/フロアカーペットマット(2万8080円)
テスト車の年式:2017年型
テスト開始時の走行距離:1056km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:--km/リッター
拡大 |
フィットRS Honda SENSING
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4045×1695×1525mm
ホイールベース:2530mm
車重:1070kg
駆動方式:FF
エンジン:1.5リッター直4 DOHC 16バルブ
トランスミッション:6段MT
最高出力:132ps(97kW)/6600rpm
最大トルク:155Nm(15.8kgm)/4600rpm
タイヤ:(前)185/55R16 83V(後)185/55R16 83V(ダンロップSPスポーツ2030)
燃費:19.2km/リッター(JC08モード)
価格:205万0920円/テスト車=231万2064円
オプション装備:Hondaインターナビ+リンクアップフリー(19万4400円)/ETC車載器(1万7280円) ※以下、販売店オプション ホンダアクセスドライブレコーダー(2万1384円)/フロアカーペットマット(2万8080円)
テスト車の年式:2017年型
テスト車の走行距離:862km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:--km/リッター

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
-
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション(4WD)【試乗記】 2026.6.1 「ホンダCR-V」がフルモデルチェンジ。新型は適切なボディーサイズと高品質な内外装を持ち、乗れば最新のホンダ車らしい気持ちよさが味わえる。ただし、その月販目標は400台。ちょっと弱気ではあるものの、周辺事情にも考えを巡らせると極めて妥当な数字にも思えてくる。
-
トヨタRAV4 GRスポーツ(4WD/CVT)【試乗記】 2026.5.30 新型「トヨタRAV4」のプラグインハイブリッド車ではEV走行換算距離が約150kmにまで到達。もちろん電池容量の拡大によるところも大きいが、何よりも最新のハイブリッドシステムによる効率向上が効いている。「GRスポーツ」をドライブした印象をリポートする。
-
キャデラック・リリックV(4WD)【試乗記】 2026.5.29 キャデラック初の電気自動車(BEV)「リリック」に、最高出力646PSのハイパフォーマンスモデル「リリックV」が登場。“ブランド史上最速”をうたう豪速SUVだが、実際に乗ってみると、高い動力性能がもたらすゆとりや心地よさにも魅力を感じる一台となっていた。
-
DS N°8エトワールAWD(4WD)【試乗記】 2026.5.28 前衛を身上とするフランスのラグジュアリーブランド、DSオートモビルから、新たなハイエンドモデル「DS N°8(ナンバーエイト)」が登場。当代屈指の性能を誇る電気自動車であり、かの地では大統領専用車にも選ばれる一台の、独創の魅力に触れた。
-
メルセデスAMG GLC53 4MATIC+(4WD/9AT)【海外試乗記】 2026.5.27 「メルセデス・ベンツGLC」にスポーティーな「メルセデスAMG GLC53 4MATIC+」が仲間入り。「43」と「63」の中間、AMGとしては松竹梅の竹にあたるモデルだが、今後はそのポジションの重要性がさらに増すことになるという。本国ドイツでドライブした印象をリポートする。
-
NEW
どうしてピアノブラックの内装材は多用されるのか?
2026.6.2あの多田哲哉のクルマQ&Aよく目にするピアノブラックの内装材は、「キズや脂汚れが目立つ」などネガティブな評価もしばしば。それでも多用されているのはなぜか? 車両開発者の多田哲哉さんに聞いてみた。 -
NEW
BSAゴールドスター650(5MT)【レビュー】
2026.6.2試乗記かつて一世を風靡(ふうび)した英国の名門、BSAが復活! 新生第1号モデルである「ゴールドスター650」は、クラシックで優雅なお散歩バイク……と思いきや、ツインカムの大排気量シングルで、ライディングも前のめりに楽しめるマシンに仕上がっていた。 -
レストモッドがイメージ 特別なオニツカタイガーの魅力に迫る
2026.6.1オニツカタイガーの新作ドライビングシューズを知る<AD>オニツカタイガーが、“レストモッド”と呼ばれるクルマのレストア&カスタム手法に着想を得たドライビングシューズを発表。4タイプ製作された、「MEXICO 66 DRIVING」のスペシャルバージョンの魅力に迫る。 -
新生アルピナは成功するか? その将来とBMWとの関係について考える
2026.6.1デイリーコラム具体的なデザインスタディーも公開され、いよいよ市場展開が見えてきた新生アルピナ。将来的な成功の“確度”やいかに? BMWによる新たなアルピナ像について、両ブランドに詳しい西川 淳が詳しく解説する。 -
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション(4WD)【試乗記】
2026.6.1試乗記「ホンダCR-V」がフルモデルチェンジ。新型は適切なボディーサイズと高品質な内外装を持ち、乗れば最新のホンダ車らしい気持ちよさが味わえる。ただし、その月販目標は400台。ちょっと弱気ではあるものの、周辺事情にも考えを巡らせると極めて妥当な数字にも思えてくる。 -
日産リーフB7 G(前編)
2026.5.31思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が新型「日産リーフ」に試乗。初代のデビューから15年余りを経て生まれた3代目はスタイリングも中身も刷新。苦境にある日産を立て直す重責を担っている。箱根のワインディングロードでの印象を聞いた。

















































