第433回:テリー伊藤&バイク王から朗報! 実はバイクは死んでいなかった!?
2011.09.07 小沢コージの勢いまかせ!第433回:テリー伊藤&バイク王から朗報!実はバイクは死んでいなかった!?
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バイク王ひとり勝ちの謎
あー、よかった。何がって? 前にも書いたけど、日本のバイク市場はすっかりお尻に火が付いてると思ってたのよね。タマの二輪報道にしても、聞けば寂しくなるものばかりで……国内販売台数は1982年(約30年前!!)の329万台をピークに、2009年は38万台と、そのわずか11%しかない! とか。せっかくはやってたビッグスクーターブームもリーマンショック&道交法改正で風前のともしび。実際、知り合いのスクーター雑誌も、しばらく前に2誌連続で休刊してるとかさ。
でも、考えてみれば当たり前だ。この不況だけじゃなく、1980年代の三ない運動に始まり、二輪は長らくイジめられっぱなしの伝統(?)があり、そこに2006年の道交法改正がトドメを刺した構図。都市部での駐車が事実上不可能になると、バイクの実利的存在意義なんてほぼ壊滅するわけで、やっぱ渋滞や狭い場所にも関係なく、いつでもどこでも素早く行けるのが二輪最大のメリット。それじゃあまりに厳しすぎるっておハナシですよ。
しかも都会じゃ、代わりに自転車ばやりでさ。結局、締め付けるだけじゃイタチごっこで都心移動の根本的解決になってないんだよなぁ。チャリンコ事故も増えてるし……。
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なーんてボヤキはさておき、だからずーっと不思議だったのよ。そ、例のバイク王。「♪バイクを売るならGO〜」なーんてCMバンバン打ってて、実に景気よさげ。バイク不況にもかかわらずいったいどうなってんの? という。
旧知のテリー伊藤さんも出てるし、先日バイク王が始めた「バイクライフ研究所」発足イベントとやらに行ってみたわけです。そしたらなるほど……。
「250cc以上に関していうと、台数は伸びてるんですよ。落ちているのは原付だけなんです」とは所長の澤篤史さん。実際、2010年の販売台数は2009年に比べて伸びてるし、保有台数でみると原付より上のクラスはずっと微増傾向。
「最大の理由は“団塊の世代”。ここ数年みなさんリタイヤされたじゃないですか。具体的には750cc以上、ハーレー、BMWあたりが伸びています」。うーん、すごいじゃないですか。ここ何年かの大型ブームは知っていたけどそれが着実に浸透していたとは。
「それに、二輪は老化防止になるとか、年配の事故は意外と少ないとか、そういう報道も追い風だよね」とは知り合いのバイク誌編集者。
伸びてる理由は流通にあり
と同時に“『バイク王』ひとり勝ちの謎”も分かってきた。要するに、これってバイクの流通革命だったのだ。
「結局、今までバイクの売買というのはショップとユーザー間で行われてたんです。結局、それが一番ラクだし、安心ですから」。
いわば自動車でいう90年代以前の状態だ。ガリバーをはじめ、アップルやラビットなど、買い取り専門チェーンが活発化するなかで、俺はてっきりバイクも同様かと思ったらほぼ手が付けられてなかった。そこにはバイクの売り方の問題もあって、実はホンダやヤマハなどの大手ですら、直営の販売店はほとんどなく、昔ながらの“街のバイク屋さん”で行われていた。
彼らはこの不況もあって、修理や下取りでの利益がかなりの割合をしめる。つまりこれに代わる中古車流通市場を作るってことは、彼らの首を絞めることにもなるわけで、お世話になってるメーカーとしてはなかなかできなかったわけだ。
そこにしがらみのないバイク好き社長、バイク王の加藤義博さんが目を付けたわけで、御年なんと40歳! 俺より年下でちょっと悲しくなるけど、とにかく斬新な手を打てたってわけだ。そのほかバイク王の社員平均年齢は29.6歳と若く、イケメン所長の澤さんにせよなんと34歳!! うーむ、やっぱり時代を変えるのは若い人だったのね。
年間70万台と目される国内中古バイクのうち、オークションを流れるのは40万台程度だそうで、まだまだ伸びる可能性がある。オークション落札者も円高の前は3割が外国人だったそうで、要はカタチを変えた中古バイク輸出かとも思ったんだけど、考えてみれば7割が国内ってことだけでもすごい。
「というか今までは放置され“ゴミ”となって朽ちていたバイクも多かったんですよ」(澤)と言うから、まだまだ日本のバイクパワーは侮れないし、改革の余地があったのねぇ。
それに警察さんも捨てたモンじゃなくって、ここ数年厳格になったバイクの駐車禁止取り締まりも、今は若干緩和傾向にあるそうだ。そりゃそうだよね。バイクは自動車同様、日本の根幹産業。簡単にツブしちゃバチが当たる。
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テリー伊藤も太鼓判
それから「毎週土曜はバイクに乗る」というテリー伊藤さんのユニーク分析だ。今回のイベントなどでも積極的な提案をしたそうで、とにかくエライ前向き発言。
テリー:これからさ、バイクは絶対伸びるよ。
コージ:なんでですか。この不況なのに。
テリー:バイクに乗るのって体鍛えるのに近いじゃない。しかも今は若い女性が「筋肉が好き」って公言する時代でしょ。ちょっと前だったら「優しい人が好き」だったのに……考えられない。
コージ:言えてますね。
テリー:それって「韓流スターが好き」っていうのに近くて、女の子の意識が変わってるんだよ。もっと中身が大切っていうか、中身のカッコ良さが問われる時代になってる。昔だったら高級なクルマに乗ってるだけでカッコよかったけど、今じゃフェラーリ、ベンツに乗ってもカッコ良くないでしょう。
コージ:確かに。
テリー:比べるとハーレーにしろBMWにしろ、うまく乗りこなすにはスリムな肉体とテクニックがいるわけで、焼き肉通いのハラ出た体でフェラーリには乗れてもハーレーには乗れない。
コージ:実にリアルな表現で。(苦笑)
テリー:それに今、僕がこれからはやると思ってるモノが3つあるんです。それはボクシング、ギター、バイク!
コージ:ええー?
テリー:たぶんそうなると思う。もはやなんでも自分の体を使って表現しないとダメなんですよ。バイクにしろ己の肉体だけじゃなく、ファッションもキープしないとダメでしょう。そういうのに女の子は敏感なんです!
コージ:バイクの未来は明るいと?
テリー:小沢さーん! なに言ってんですか〜あたりまえじゃないですか!! なにより、俺が乗ってるものは古くならないし、俺の五感が揺さぶられるものは絶対古くならないから。
コージ:ま、まいりました……。
うーむ、いきなりテリー節全開! ひさびさにコメント能力を見せつけられた感じだが、確かに今のバイクはデメリットばかりを考えてもしょうがないのかもしれない。実際、この震災でバイクのありがたみや便利さを知った人もいるし、不況でカネのかからないバイクを選択する人も増えたという。
不況こそバイク、困った時こそ自分の肉体…それはある種の真理なのかもしれない。うーむ、俺もひさびさに、バイクにでも乗ってみっかなぁ。
(文と写真=小沢コージ)
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小沢 コージ
神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 YouTubeチャンネル『小沢コージのKozziTV』
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