第449回:日本のブレーキシステムも搭載!
新型「ポルシェ・カイエン」はここに注目
2017.10.12
エディターから一言
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2017年夏のフルモデルチェンジで、全方位的な進化を遂げたとアピールされる、ポルシェのSUV「カイエン」。その技術的な見どころは? ポルシェに詳しいモータージャーナリスト・河村康彦が、ドイツで得られた情報をお届けする。
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カイエンらしさに自信を感じる
最近のポルシェが「新技術満載のニューモデル」をローンチする際、テストドライブに先駆けて開催することがが多い「テクノロジー・ワークショップ」。その新型車の特徴を示す座学が行われる複数の“教室”を、各国から訪れたゲストが順に巡るカタチで行われるのが通例である。そんなイベントが、このほど本国で開催された。
今回俎上(そじょう)に載せられたのは、直前に開催されたフランクフルトモーターショーでポルシェブースの主役となった新しいカイエンだ。
2002年秋にポルシェ初のSUVとして発売されたカイエンは、たちまち世界でヒットを飛ばし、トータルの販売台数はすでに77万台超。純粋なピュアスポーツカーメーカーだったこのブランドに「新しい顧客」と「目覚ましい利益」をもたらし、後にライバルメーカーにも多くの追従者を生むことになった。
ここに採り上げるのは先日2度目のフルモデルチェンジを行い、晴れて新型となった3代目のモデル。特にフロントビューは従来型と見紛(まご)うばかりのルックスは、あらためて「911」を規範としていることを示すと同時に、すでに定着をした「カイエンらしさ」に対する自信のほどを表しているかのようでもある。
そんな新型カイエンの見どころを、今回のワークショップで得た情報をもとに紹介していこう。
軽量化は大きなポイント
オンロードでの走行性能に特化して磨きを掛けてきた“かつてのポルシェ車”に対して、「オンロードとオフロードパフォーマンスのユニークなコンビネーション」をうたい文句に登場したのがカイエン。その後、エンジンの直噴化やハイブリッドモデルの追加。さらには大幅な軽量化や「ニュルブルクリンクで8分切り!」など、エポックメイキングなさまざまな話題とともに15年という月日を成長してきた。
その3代目は、さらに向上したドライビングダイナミクスと快適性の両立や、最新のコネクティビティー/アシスタンスシステムの採用などに加え、ベーシックモデルで2t切りを実現した軽量化などが大きな見どころとされる。一方で、パワーユニットを筆頭に、多くの分野でひと足先にフルモデルチェンジを遂げた「パナメーラ」と共通のメカニカルコンポーネンツを採用するのは、いわば想定内というところだ。
従来型比でホイールベースは不変なものの、全長は63mm、全幅は23mm上乗せ。一方で全高は9mmダウンとなるボディーは、ルーフにサイドパネル、さらにはフロアの一部など多くの部分にアルミニウムを用いながら、特に強度を必要とする部分にはホットプレスを介した高張力鋼を用いるなど、いわゆる“マルチマテリアル構造”が特徴だ。ドアやフードなどの“フタもの”を外したホワイトボディー状態では従来比-22kgとなる392kg。また、フタもの自体も13.5kgの軽量化を実現しているという。
ルーフエンドのアダプティブスポイラーや、ラジエーター前面の可動式フラップなど、見える部分/見えない部分を交えて空力性能向上に努めているのも特徴。「カイエン ターボ」に標準採用される前出のスポイラーには、「250km/hからのフルブレーキング時に制動距離を2m短縮する」とされるエアブレーキ機能が付加されるのは、何ともポルシェ車らしいトピックだ。
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日本の技術も走りを支える
シャシーについては、3チャンバー式のエアサスペンションやリアのアクティブステアリングシステムなど、ハードウエア的には現行パナメーラに準じたアイテムが採用されている。
ただし、パナメーラには設定されず、この新型カイエンとともにワールドプレミアとなったのが、カイエン ターボに標準装備される「PSCB(Porsche Surface Coated Brake)」と命名された新しいブレーキシステムだ。
このPSCBでは、ディスクローターをタングステンカーバイドでコーティングしたことにより、通常のブレーキよりも30%の耐久性向上とダストの低減を実現すると同時に、連続使用での耐フェード性も向上。コストはセラミックコンポジットブレーキ「PCCB」よりも低く抑えられたという。
で、そんな新ブレーキのサプライヤーを担当エンジニアに尋ねたところ、「実はアケボノ製です」との回答。従来型の「カイエン ターボS」で初めてポルシェへのシステム供給を実現させた日本のサプライヤーが、再度そのポテンシャルを認められて新アイテムでの参入に成功したのは、何ともうれしい限りである。
また、やはり「ポルシェらしさ」が感じられる新型でのシャシー関連のトピックが、ポルシェでは「ミックスタイヤ」と表現をする、歴代カイエンとしては初となる前後異サイズシューズの採用。そこには、実際のドライビング・ダイナミクスを向上させる狙いがあるとともに、911や「ボクスター/ケイマン」というピュアスポーツモデルとの関連性も連想させる、このブランドならではの巧みなマーケティング戦略も含まれているに違いない。
期待が高まる走り
現時点で発表されている新型のグレードは、「カイエン」「カイエンS」、そしてカイエン ターボという3タイプ。エントリーモデルに搭載される「ベースはアウディ製」という3リッターV6ターボエンジンの最高出力340psは、パナメーラのものより10ps増しであるものの、カイエンSに搭載されるツインターボ付き2.9リッターV6と、カイエン ターボのツインターボ付き4リッターV8ユニットの純ポルシェ製ユニットは、いずれもパナメーラに積まれるものと同スペックになっている。
ちなみに現時点では、ディーゼルモデルは未設定。かねてからポルシェは自らディーゼルエンジンを開発せず、「フォルクスワーゲングループ内から調達」としているがゆえに、今回のようなイベントでも重要度が低いのはやむを得ないことだろう。
組み合わされるトランスミッションは、パナメーラが8段DCTであるのに対して、こちらは「ティプトロニックS」と名付けられた新開発の8段ステップAT。こうして、わざわざ全く異なるアイテムが用意された大きな理由は、急勾配の中、重量物のけん引を長距離行う可能性があるなど、大型SUVならではの使われ方に配慮した結果と考えられる。
ちなみに、「サプライヤーからのオファーがあって決まった」という最大1100Nmのトルク容量を誇るこのステップATはZF社製。最高速は6速ギアでマークするという。フロントディファレンシャルまでが一体化されたユニットは、「ハイブリッド化までを考慮した設計」。ハイブリッド化に積極的なポルシェだけに、プラグイン対応のシステムが設定されるのは時間の問題だろう。
現時点でのトップグレードであるカイエン ターボは、スポーツクロノパッケージ仕様で0-100km/h加速はわずか3.9秒! 最高速も286km/hに達するなど、新型カイエンは、ポルシェの一員としてふさわしい走りのポテンシャルをアピールする。実際、テストドライバー氏が振り回すカイエン ターボへの同乗走行では、その動力性能のすさまじさや、ハンドリングの自在度の高さの一端を垣間見ることができた。
一方で、歩行者対応の自動ブレーキや、交通標識識別を含んだレーンキーピングアシストも用意される。さらには、オフロードでの走行やパフォーマンスを記録、評価することなどが可能な「オフロードプレシジョンアプリ」が設定されるなど、最新のプレミアムモデルにふさわしい多彩な先進アイテムがある点も、新型ならではの大きな特徴。そんな新しいカイエンを自らの手で操れるようになるまで、あと少しの辛抱だ。
(文=河村康彦/写真=ポルシェ/編集=関 顕也)
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河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
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