BMW X3 xDrive20d Mスポーツ(4WD/8AT)
新世代Xの要 2017.11.27 試乗記 BMW「Xシリーズ」の中核をなす「X3」がフルモデルチェンジ。先進の安全技術を備え、全方位的な進化を遂げた新型の出来栄えとは? 走りの粋を極めたディーゼルエンジン車「xDrive20d Mスポーツ」に試乗した。BMWの売れ筋モデル
今や総合デパートのBMW。彼らがセダン/ワゴン/クーペ/コンバーチブル、時々スポーツカーという欧州のコンサバティブなプレミアムブランドの商品ラインナップから一歩踏み出したのはSUVの「X5」からだった。そしてその小型版のX3で味をしめた。こう書くと響きがよくないが、だからこそ今も安泰でいられるわけだ。かつてSUVをバカにしていたプレミアムブランドの多くは、今ではそのほとんどが手のひらを返すか、手のひらを返すのが遅れてどこかに飲み込まれた。
現状、BMWの販売台数の3分の1がXシリーズで、Xシリーズの2分の1がX3だそうだ。つまりX3は販売台数の6分の1(利益でいうと多分それ以上)を担う大事なモデルなのである。そのX3がフルモデルチェンジを果たし、このほど日本へ導入された。
新型のエクステリアは、以前からガラリと変わったということではなく、冒険を避け、手堅くまとめた印象だ。彼らが得意な、新しさを感じさせるというよりも旧型を古く見せるスタイリングだ。キドニーグリルは他のモデル同様、順調に成長した。ヘッドランプユニット、リアコンビランプのデザインが現行「5シリーズ」あたりに近い。カッコいいけれど、「X1」やこれから出る「X2」よりも立派でなければならない一方で、よりスタイリッシュであるべき「X4」の邪魔をしてもいけない……というデザイナーの苦労が見て取れるような気もする。
理想的なドライビングポジション
インテリアはエクステリアよりも変化が少ない。運転席まわりはほぼこれまで通り。手元に操作時だけ動いて元に戻るATセレクターとダイヤルスイッチがあり、モニターは横長(10.25インチ)。ただし機能的にはいろいろと進化している。シャッター付きセンターコンソールを開けてQi(チー)準拠のスマホを置けばワイヤレス充電ができるし、モニターの近くでジェスチャーを行えば、電話に出たり、音量を調整したりといった特定の操作ができる(実際には天井にある小型カメラでジェスチャーを検知している)。
BMWに乗ると、毎度レイアウトの良さに感心させられる。視界が良く(死角が少なく)、ステアリングホイールとペダルの調整代が十分あるので理想的なドライビングポジションを得られる。昔からそうだし、どのモデルでもそう(大昔はATのシフトノブが右ハンドル車にも左ハンドル車用が付いていたりしたが)。レザーやウッドが豪華でエンジンがパワフルというだけでプレミアムと評されるわけではないと、乗ればわかる。
胴長短足の私でもぴったりポジションを得られ、気分よく試乗開始。新型はいずれも2リッター直4ターボのガソリン「20i」とディーゼル「20d」がラインナップされ、20dが12月から、20iが2018年2月からデリバリーされる。今回試乗したのは20d。グレードは最も高価な「Mスポーツ」だ。BMWのディーゼルモデルはエンジン自体は同じでも、新しいモデルであればあるほど、振動も騒音もよく抑えられている気がする。4気筒ディーゼルとして最も洗練された部類に入る。
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“歓びながら”駆けぬける
力強さはもとより十分以上で、タコメーターの針を1500~3500rpmの範囲で激しくいったりきたりさせていると、あっという間にとんでもない速度に達する。2リッター前後のディーゼルターボは最大トルク400Nmというのが相場だが、これはほとんどの乗用車を痛痒(つうよう)なく走らせることができる数値だ。不満があろうはずがない。
数kmも運転すると、これまでのモデルよりも明らかに動きが軽やかなことに気付く。もっとコンパクトなモデルを動かしているかのような感覚だ。新型は、例えばボンネットフードとフロントドアの外板はアルミ、バンパーの一部は樹脂、そのほかはスチールと、さまざまな素材が使われる。全部アルミにすればもっと軽量化できるが高価になる。X3にかけられるコストの範囲で最善を尽くしたということだろう。
パワーステアリングのアシスト量もひと昔前のBMWよりもずっと多く、操舵(そうだ)に力はいらない。車体が軽く操舵も軽いので走らせやすい。そういえば、かつてドイツ車のアクセルペダルは重かったが、ああいうのも今は昔となった。メルセデス・ベンツやBMWがよそと違うことをやっていると、買うほうが盲目的に何らかの意味を見つけてありがたがる時代があったが、気付けば両社は今では(価格以外)最もユーザーフレンドリーなインターフェイスを提供するメーカーだ。
軽やかという話に戻ろう。運転していてSUVということを意識させられることはまずない。山道もひらりひらりと“歓びながら”駆けぬけることができた。BMWといえば50:50の前後重量配分がおなじみだが、新型X3でもその伝統は守られた。50:50であれば必ず良いというわけではないし、そうでなくても良いクルマもある。けれど加減速および旋回のことを考えると、50:50が原理原則としては最も優れた前後重量配分であることは間違いない。
取材後、カメラマンに「コーナーで姿勢が安定していて撮影しやすかった」と言われ喜んだが、今考えるとあれはクルマを褒めたのだろうか。まぁせっかくなのでその功績の配分はX3と僕で50:50ということにしておこう。
誰もが認める優等生
今回は山道のみの試乗だったため、予防安全装備の安心感、使いやすさ、またストップ&ゴー機能付きのACCがこなれているかどうかはチェックできなかったが、最新のBMWだけに、よそにあるような各種センサーを使った先進的な安全デバイスはひと通りそろっているし、その動作もこなれているのではないか。衝突被害軽減ブレーキに関して、ブレーキだけで衝突を回避できないと判断するとステアリングも介入(して避けようと)する機能はどこもやっているわけではない。
まとめると、新型X3は全方位的に新しく、便利で、走らせて気持ちよい。ライバルを集めて項目別にチェックすれば、ほとんどの項目でクラスベストの成績をあげるはず。魂を揺さぶるような感動を味わわせてくれるわけではないが、これを不満に感じる人を想像できない優等生っぷりだ。
価格は最廉価の「xDrive20i」が639万円、今回試乗した最も高価なxDrive20d Mスポーツは710万円(テスト車には92万2000円のオプション装備が付いて802万2000円)。オフィシャルサイトに載っている価格を見比べると、「メルセデス・ベンツGLC」や「アウディQ5」と似通っているが、クルマというのは実際にディーラーでセールス氏が提示する価格は全然異なる場合が多い。輸入車の場合は特に、新鮮味が薄れかけているモデルだと平気で数十万円引いた価格を提示してくるので、本気で検討している人は面倒でも候補となるすべてのブランドのディーラー
(文=塩見 智/写真=尾形和美/編集=大久保史子)
テスト車のデータ
BMW X3 xDrive20d Mスポーツ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4720×1890×1670mm
ホイールベース:2865mm
車重:1860kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼル ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:190ps(140kW)/4000rpm
最大トルク:400Nm(40.8kgm)/1750-2500rpm
タイヤ:(前)245/50R19 105W/(後)245/50R19 105W(ヨコハマ・アドバン スポーツZ・P・S)
燃費:17.0km/リッター(JC08モード)
価格:710万円/テスト車=802万2000円
オプション装備:ボディーカラー<メタリックペイント ファイトニック・ブルー>(9万3000円)/電動パノラマ・ガラス・サンルーフ(20万2000円)/ハイライン・パッケージ(29万2000円)/イノベーション・パッケージ(17万1000円)/アンビエント・ライト(5万円)/harman/kardonサラウンド・サウンド・システム(9万4000円)/リア・シート・バックレスト・アジャストメント(2万円)
テスト車の年式:2017年型
テスト開始時の走行距離:2800km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(軽油)
参考燃費:--km/リッター

塩見 智
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