スバル・レヴォーグ2.0GT-S EyeSight(4WD/CVT)
幸せなアナタにささぐ300ps 2017.12.07 試乗記 スバル独自の4WD機構がかなえる、高い運動性能が自慢のスポーツワゴン「レヴォーグ」。300psの高出力と400Nmの大トルクを発生する高性能グレード「2.0GT-S EyeSight」に試乗し、マイナーチェンジを経た“最新版”の、進化のほどを確かめた。あの“名車”を思い出す
ボクがまだ自動車の免許を取ったばかりの頃、ニッポンの名車である「日産スカイラインGT-R」(R32)を初めて運転して、頭の中で膨らみまくったさまざまなイメージとは裏腹に、あまりにスムーズな加速と快適な乗り味、そして高速安定性の高さに驚いたことがある。
もちろんこれはノーマルカーの味付けであり、エアクリーナーをダイレクトフロータイプに変えてちょこっとブーストを上げてやるだけでGT-Rは悪魔の乗りものに変身するのだが(笑)。期待を大きく裏切られた割に当時のヤマダ青年は、この紳士的な乗り味に好感を持った。当時フルローンを組んで無理やり手に入れた「アンフィニRX-7」の低速トルクがあまりに貧弱で、その割にアクセルを踏み込めば凶暴極まりない走りをしたそのギャップが大きかったのもあるのだが、GT-Rが持つ速さだけでは語れないその質感というものに、高級車が持つ大人びた世界観や威厳のようなものを感じたのだ。ただ、それ以降のGT-Rは、R32が持っていたロードゴーイング性能よりも、足まわりをがちがちに固めた子供っぽい世界観を選んでしまったのだが。
なぜそんな回想から話し始めたのかといえば、このレヴォーグ2.0GT-S EyeSightに乗って、筆者は当時の感覚を自然と思い出したのである。
もちろん記憶はたいてい美化されるものだし、直6と水平対向4気筒がそのまま比較できるとも思わない。それでも、その雑味のないステアフィールや、リニアなターボのアクセル追従性、4WDがもたらす出足の素早さは、懐かしい記憶を呼び覚ますのに十分なポテンシャルだった。
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小さな改良でも効果は絶大
その高性能ぶりを象徴するのがエンジンのスペックで、2リッターの排気量をもつ「FA20」型水平対向4気筒直噴ターボは、最高出力300ps、最大トルク400Nmを発生する。
ただ、その排気音やバイブレーションからは、このクルマが300psの高性能モデルであることを察することはできない。スバルいち端正なルックスも、レヴォーグの“すごい版”といえるコスメチューンを受けているわけではないので、ますます気づかない。300psといえばすごいパワーだ。それこそあのR32GT-Rをも上回る数値である。
しかし2.0GT-Sは、一切騒ぎ立てることなく黙っている。古い世代のオッサンからしてみれば、その煮え切らなさが実にもどかしいのだが、ある意味このステルス感こそが、現代の日本ではツボなのかもしれない。
実際、2.0GT-Sを走らせてみると、「こいつはとんだ“スリーパー”だぞ!」と感じる。
まずコックピットを支配するのは、高級な乗車感だ。特に試乗車にはオプションのシートが付いていたこともあり、そのクッション性が程よくソフトタッチで、なおかつウエスト部分が適度に張り出しているおかげで、体を包み込むように支えてくれる。
さらに特筆すべきなのがシャシー剛性のバランスのよさだ。ご存じのようにスバルは、現行型「インプレッサ」からこれからの10年を担う「スバルグローバルプラットフォーム」を投入して絶賛を浴びたわけだが、どうしてどうして、足まわりに小改良を受けただけで、この旧型プラットフォームが、マイナー前とは比較にならないほどいきいきとした上質な乗り味になっているのである。
これを実現したのは、サスペンションストロークの適正化である。フロント側ではリバウンド側で5mm、バンプ側で8mm、リアではリバウンド側を8mm伸ばしたことによって、スプリングレートをこれまでより柔らかくすることができた。またリアスタビライザー径もその内径を縮小できたのだという。
つまり、車体剛性を“底上げ”することなく、足まわりの適正化によってその剛性バランスをみごとに整えてしまったわけである。なんだかキツネにつままれた感じだ。
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やっぱり運転は楽しくないと
さらに気持ちいいのが、改良された電動パワーステアリング(EPS)の自然な操作感。これに限っては、新しいインプレッサよりも制御がきめ細やかで、力の伝わり方も一定で、路面からのフィードバックが鮮明である。だから総合評価でいくと、新世代シャシーにひけを取らないと感じてしまう。どうやらこれはサプライヤーの違いによるものらしいのだが、だとすれば、インプレッサより上に位置するレヴォーグの車格がコスト面でモノを言ったということなのだろう。そしてこれが、「アイサイト・ツーリングアシスト」の操舵支援機能とも極めて相性がいい。
このように、よりソフトに、より自然に進化したにもかかわらず、その気になって走らせれば乗り手の期待にきちんと応えてくれるあたり、本っ当にこのクルマはソツがない。
燃費を意識する「インテリジェント」モードでのんびり走るのもよいのだが、筆者のお気に入りはそのひとつ上に位置する「S」モード。インジケーターに表示される性能曲線が示す通り、出力カーブは初期段階から盛り上がり、アクセルの踏み込み量に対して明確なパワー感と追従性のよさを示す。普段は無段変速のCVTも、アクセル開度を高めると6段のステップ変速へと切り替わり、さらにパドル制御を組み合わせると、日常域では申し分のないメリハリ感が味わえる。
GT-S専用のビルシュタイン製ダンパーは、18インチタイヤの入力をみごとに減衰し、乗り心地の良さを維持したまま、実に懐深い穏やかなロール制御でタイヤのポテンシャルを引き出してくれる。
この、適度に元気でスポーティーな動力性能としっとりとした足まわりの組み合わせは本当に秀逸で、「燃費もいいけど、やっぱり運転は楽しくないとネ!」と言いたくなるリニアリティーがドンピシャで味わえる。
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「S♯」モードと乗り味のギャップに物申す
いっぽう、「S♯」モードではスポーツカー顔負けのシャープな過給制御が顕著になり、CVT制御も常時“段付き”の8段制御となるのだが、この状態では、その乗り心地をやや過激なパワートレインのフィーリングが上回ってしまうというか、シャシーのキャラクター側に“らしくなさ”を感じてしまうというか、両者の間にちょっとギャップを感じた。
もし2.0GT-Sが“S♯モードでの300ps”をひとつのキャラとしてうたうなら、その乗り味はアシを硬くするという意味ではなくて、もっと重厚にした方がいい。そして、前後トルク配分を連続可変させる4WD機構「VTD-AWD」の制御も、例えばフロントへの駆動配分を限りなくゼロに近づけてしまうくらいアグレッシブな方向に振ってしまってもいいと思う。今のままでは、「S♯」の存在が限りなくお飾りに感じられてもったいない。オプションのシートを抜いても361万8000円というその価格は、今のニッポンでは正直高い。ここに説得力を持たせたいなら、こうしたツメの部分は欧州勢に見習ってほしいと思う。
……と、なんだかんだ小言を述べたけれど、レヴォーグ2.0GT-Sはとってもいいクルマである。
ボルボと並んで今のスバルには、「幸せな人しか買っちゃいけないオーラ」があり、90年代のスバルに憧れた筆者には、それがちょっとマブしい(笑)。すっかり洗練されたというか、ちょっと怖いくらいのクリーンなイメージがある。人間界では「いい人」はモテないとされているが、クルマの場合はその方がモテると思う。
(文=山田弘樹/写真=荒川正幸/編集=堀田剛資)
テスト車のデータ
スバル・レヴォーグ2.0GT-S EyeSight
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4690×1780×1490mm
ホイールベース:2650mm
車重:1570kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター水平対向4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:CVT
最高出力:300ps(221kW)/5600rpm
最大トルク:400Nm(40.8kgm)/2000-4800rpm
タイヤ:(前)225/45R18 91W/(後)225/45R18 91W(ダンロップSP SPORT MAXX 050)
燃費:13.2km/リッター(JC08モード)
価格:361万8000円/テスト車=392万0400円
オプション装備:アイサイトセイフティプラス<運転支援>(8万6400円)/アイサイトセイフティプラス<拡張視界>+ウエルカムライティング&サテンメッキドアミラー+サンルーフ<電動チルト&スライド式>+本革シート<メモリー機能&フロントシートヒーター付き>(21万6000円)
テスト車の年式:2017年型
テスト開始時の走行距離:4878km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(6)/山岳路(2)
テスト距離:288.3km
使用燃料:28.1リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:10.3km/リッター(満タン法)/10.5km/リッター(車載燃費計計測値)
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山田 弘樹
ワンメイクレースやスーパー耐久に参戦経験をもつ、実践派のモータージャーナリスト。動力性能や運動性能、およびそれに関連するメカニズムの批評を得意とする。愛車は1995年式「ポルシェ911カレラ」と1986年式の「トヨタ・スプリンター トレノ」(AE86)。
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