これから人気が出る予感!?
「3列シートのSUV」という選択肢
2017.12.15
デイリーコラム
立て続けに新車が登場
最近、MPV(マルチパーパスヴィークル)としての、SUVの存在が気になってきた。2017年12月7日にはレクサスから3列シート7人乗りの「レクサスRX450hL」が発売された。それより前、11月28日に開幕したロサンゼルスオートショーでは、北米市場向けながら、やはり3列シートのSUVである「スバル・アセント」が登場。マツダの3列シートSUVである「CX-8」の国内販売も12月14日に始まった。立て続けに、多人数で乗れる3列シートのSUVが話題を提供しているのだ。
しかし、3列シートのSUVは何が良いのかピンとこないというのが、正直な筆者の印象だった。人をたくさん乗せるなら、スペース効率に優れる箱型がベスト。だからこそ、日本ではミニバンが大人気なのだ。ちなみに渋滞が多く、クルマの移動平均速度の遅いASEANの国々でもミニバンの人気は高い。インドネシアでは、日本から輸入された「トヨタ・ヴェルファイア」が関税の関係で1000万円前後になるが、それでも飛ぶように売れたという。お抱え運転手のいるショーファー利用であれば、前後に広いセダンよりも、空間的に広いミニバンの方が良いと考えるお金持ちが多かったのだろう。
ちなみに日本ではこれまでも、例えば「トヨタ・ランドクルーザー」には3列シートが用意されている。ホンダにも「クロスロード」という3列シートのSUVが存在した。しかし、クロスロードは販売終了になり、ランクルがヒットしているという話も聞かない。3列シートSUVの日本での人気はそれほどないというのが現状であり、私と同じように、ラージサイズのSUVをわざわざ3列シートにする理由がいまひとつ理解できない人は多いのではないかと思う。
しかし先日、「マツダCX-8」の試乗会に参加して、実際にハンドルを握り、開発者の狙いを聞くことで、こうした疑問を解消することができた。なるほど、そういうことだったのか! と。
欲張りなドライバーに応えてくれる
CX-8の試乗会で筆者はまず、「なぜ、ミニバンではなくSUVなのか?」を開発者にたずねた。返ってきたのは、「マツダの持つリソースで多人数乗車のモデルを作るならSUVがベストである」「そもそも箱型のミニバンで、マツダの新世代商品群として求められるレベルの走りを実現するのは難しい」というものだった。だからマツダは「プレマシー」も「MPV」も「ビアンテ」も終了する、というのだ。
実際に、マツダのCX-8を走らせてみれば、その主張に納得するばかりだった。「CX-9」という、車幅が2m近いアメリカンサイズの3列シートSUVを、日本向けに小型化したというのがCX-8だ。CX-9よりも新しい「CX-5」の技術を使って、CX-8の走りは磨きこまれたという。CX-5と比べてCX-8は200~300kgも重いのだが、実際に走らせたとき、ドライバーはそれほどの差を感じない。また、マツダの主張するように、ドライバーズカーとしての実力はミニバンよりも1ランクも2ランクも上だ。「家族が多いからMPVを買わなければならない。だけど、走りもあきらめたくない」という人への答えが、この3列シートのSUVだったのだ。
CX-8には4WDだけでなくFF仕様も用意されている。この点も、SUVをMPVとして選べるという理解につながるはず。4WD車のイメージが前面に出てしまうと、ランドクルーザーのように本格オフローダーという印象が強くなって、どうしてもMPVとしての候補にはなりにくいだろう。
マツダの話では、CX-8の受注は上々だという。顧客は、「ボルボXC90」や「ランドローバー・ディスカバリー」との比較も行っており、CX-8の価格を聞いて驚くともいう。確かに欧州プレミアム・ブランドの大型SUVと比べればCX-8の価格はざっと半額といったところ。そうした顧客からすれば、CX-8は非常にコストパフォーマンスの高いクルマに見えるはずだ。
多人数乗車といえば箱型のミニバンで、走りはあきらめなければならない。しかし、3列シートのSUVならば大丈夫。そんな新しい選択肢もあるとCX-8は教えてくれたのだ。
(文=鈴木ケンイチ/写真=向後一宏、トヨタ自動車/編集=関 顕也)

鈴木 ケンイチ
1966年9月15日生まれ。茨城県出身。国学院大学卒。大学卒業後に一般誌/女性誌/PR誌/書籍を制作する編集プロダクションに勤務。28歳で独立。徐々に自動車関連のフィールドへ。2003年にJAF公式戦ワンメイクレース(マツダ・ロードスター・パーティレース)に参戦。新車紹介から人物取材、メカニカルなレポートまで幅広く対応。見えにくい、エンジニアリングやコンセプト、魅力などを“分かりやすく”“深く”説明することをモットーにする。
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