スバル・フォレスター プレミアム(4WD/CVT)/フォレスターX-BREAK(4WD/CVT)/フォレスター アドバンス(4WD/CVT)
心地よさがうれしい 2018.07.05 試乗記 フルモデルチェンジした「スバル・フォレスター」に試乗。従来型と並べても「どっちが新しいの?」という感じの見た目に対して、新型パワーユニットやドライバーモニタリングシステムなど、中身には新機軸がてんこ盛り。伊豆のクローズドコースでその出来栄えをチェックした。XVとの差異が明確に
スタイリングは従来型の正常進化。ボディー外寸にも大きな変化はない。さして代わり映えがしない、と思わせて、中身はすっかり新しいのが新型フォレスターである。
新世代プラットフォーム(車台)を適用し、エンジンも刷新した。先代は2リッターのクルマだったが、新型は新しい直噴2.5リッター水平対向を基幹エンジンに据え、3グレードに使う。一方、最上級グレードの「アドバンス」には電動機構付きの2リッターエンジンを用意した。旧型「XV」にあったハイブリッドに改良を加えた「e-BOXER」である。
フォレスターはワールドワイドで最も売れているスバルだが、日本での販売は、“都市型SUV”のXVに大きく差をつけられている。1.6/2リッターのXVとバッティングしないエンジンラインナップをそろえることで、フォレスターのポジションをより明確にする。6年ぶりのフルチェンジにはそんな意図も感じられる。
1週間にわたって国内外から報道関係者を集めたグローバルメディア試乗会は、伊豆修善寺のサイクルスポーツセンターで開かれた。2.5リッターとe-BOXER、そして比較用の旧型で1周4kmの自転車レース用ショートカットコースをそれぞれ2周+α、という限られた経験値だから、“雰囲気”くらいしかわからなかったが、多くの開発スタッフから生の声を聞くことができた。
2.5リッターユニットは文句なしのデキ
まずは「プレミアム」(302万4000円)に乗る。18インチホイールを履く2.5リッターシリーズの最上級版だ。
走りはじめてまず気づいたのは、乗り心地がいいこと。このコースにも乗り心地が判定できるポイントが何カ所かあるのだが、容赦なくそこへ突っ込んでも平然とクリアした。サスペンションのストローク感がたっぷりしていて、腰から下でショックをいなす、いわゆるフラット感の高い足まわりである。
ガソリン2.5リッターのSUVというと、直近で乗ったのは「マツダCX-5」だが、フォレスターはああいうドイツ車的なカッチリした乗り心地ではない。フトコロの深さを感じさせるやさしい乗り味が特徴だ。
「レガシィ」系に搭載されているFB25型を直噴化した2.5リッター水平対向4気筒は、184psのパワーと239Nmのトルクを発生する。いずれもポート噴射の従来型よりわずかに増強され、CVTや駆動系にも細かな改良が施されている。
その新パワーユニットは、パワーもマナーも「文句なし」である。車内でメモをとっている暇はないので、ICレコーダーをオンにしたまま、ずっと首からさげていたのだが、エンジン音は次に乗った旧型2リッターや新型e-BOXERより明らかに静かだった。
モーターパワーは「運転の楽しさ」に
「モーターアシストによる軽快な加速により、日常シーンでも走りが楽しめる」。そんなうたい文句のe-BOXERは、旧型「XVハイブリッド」の2リッター電動ユニットを改良したものである。
バッテリーはニッケル水素からリチウムイオンに変更されたが、片手でつかんで持てるモーターは以前と同じもので、13.6ps(10kW)の出力をはじめとするアウトプットも変わっていない。1モーター・パラレル電動アシストのマイルドハイブリッドである。
同じ周回路で2.5リッターと乗り比べると、e-BOXERはむしろエンジンの存在感が大きい。トルクに勝る2.5リッターよりエンジン回転が上がるし、頻繁に上下する。そのため、よりスポーティーに感じるのは、狙いどおりだろう。
旧型XVのときと違って、新型フォレスターには2リッターの生エンジンモデルはない。おかげで、モーターのあるなしで燃費をガチに比べられる弱みはないが、カタログデータを見ると、今回も「燃費ハイブリッド」とうたえるほどの絶対的アドバンテージはない。正直、このシステムだと燃費ではアピールできないので、ハイブリッドという言葉を封印して、「運転の楽しさ」に振ったのでは? 若いエンジニアにそう聞くと、率直に認めた。
e-BOXERを搭載するアドバンス(309万9600円)は、スバル初のドライバーモニタリングシステムを備える。ダッシュボードのカメラでドライバーを5人まで顔認証登録し、画像解析でよそ見や居眠り運転に警告を与える。乗り込むと、シート位置やドアミラー角度をその人のポジションに自動調整する。
そちらは実演を見せてもらったが、レスポンスの速さに驚いた。ドアを開けてシートに座ったときには、もうアジャストが終わっている。とはいえ、シートやミラーの電動調整って、そんなにタイヘンなの? という気もするが、例えばカーシェアリングのような新しい使われ方を考えたとき、顔認証システムはぜひとも取り入れておきたい技術だろう。盗難防止にも使えるし。
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
ファミリー向けのSUVに最適
1台2周の試乗メニューを済ませたあと、残った時間でもう一度、新旧のテスト車をチェックした。
ボディーのスリーサイズの新旧差は、最大でも全長の+3cmだが、乗り比べると、新型は後席が歴然と広くなった。ただ放置プレー的に広いだけでなく、居心地のよい広さである。大型家族のファミリーSUVに好適だと思う。
2種類の新型パワーユニットよりも、乗り心地のよさのほうが印象的だった。試乗後、シャシーの開発スタッフにそう伝えると、わが意を得たりという表情が返ってきた。
SGP(スバル・グローバル・プラットフォーム)の採用により、新型のボディーはねじり剛性で40%、フロント部の横曲げ剛性では2倍に向上したとうたう。車体の剛性を上げるだけで、特にダンパーの効きが増して、乗り心地はよくなるという。
SGPを初採用した現行「インプレッサ」に初めて乗ったときも、乗り味の品質感がワンランク、ステップアップしたと感じた。旧型フォレスターのオーナーが新しいのに乗ると、たぶん同じような印象を受けるはずである。
欧州市場に出していた2リッター水平対向ディーゼルは打ち切られ、待っていても日本で出ることはなくなった。看板を掛け替えたマイルドハイブリッドは今後の布石として重要かもしれないが、限られた今回の試乗経験では、2.5リッターのほうがフォレスターのキャラクターには合っていると思った。
(文=下野康史<かばたやすし>/写真=向後一宏/編集=藤沢 勝)
テスト車のデータ
スバル・フォレスター プレミアム
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4625×1815×1730mm
ホイールベース:2670mm
車重:1550kg
駆動方式:4WD
エンジン:2.5リッター水平対向4 DOHC 16バルブ
トランスミッション:CVT
最高出力:184ps(136kW)/5800rpm
最大トルク:239Nm(24.4kgm)/4400rpm
タイヤ:(前)225/55R18 88V/(後)225/55R18 88V(ブリヂストン・デューラーH/Pスポーツ)
燃費:14.4km/リッター(JC08モード)、13.2km/リッター(WLTCモード)、9.6km/リッター(市街地モード:WLTC-L)、14.6km/リッター(郊外モード:WLTC-M)、16.4km/リッター(高速道路モード:WLTC-H)
価格:302万4000円/テスト車=335万8800円
オプション装備:本革シート(10万8000円)/アイサイトセイフティプラス<視界拡張>(6万4800円)/パワーリアゲート(5万4000円)/大型サンルーフ<電動スライド式>(5万4000円)/ルーフレール(5万4000円)
テスト車の年式:2018年型
テスト開始時の走行距離:862km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:--km/リッター
スバル・フォレスターX-BREAK
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4625×1815×1730mm
ホイールベース:2670mm
車重:1540kg
駆動方式:4WD
エンジン:2.5リッター水平対向4 DOHC 16バルブ
トランスミッション:CVT
最高出力:184ps(136kW)/5800rpm
最大トルク:239Nm(24.4kgm)/4400rpm
タイヤ:(前)225/60R17 99H/(後)225/60R17 99H(ブリヂストン・エコピアH/L422プラス)
燃費:14.4km/リッター(JC08モード)、13.2km/リッター(WLTCモード)、9.6km/リッター(市街地モード:WLTC-L)、14.6km/リッター(郊外モード:WLTC-M)、16.4km/リッター(高速道路モード:WLTC-H)
価格:291万6000円/テスト車=322万9200円
オプション装備:ボディーカラー<クリスタルホワイトパール>(3万2400円)/キーレスアクセス&プッシュスタート<暗証コード式キーレスエントリー付き>+運転席&助手席8ウェイパワーシート+運転席シートポジションメモリー機能+リバース連動ドアミラー+ドアミラーメモリー&オート格納機能(10万8000円)/アイサイトセイフティプラス<運転支援>(5万4000円)/アイサイトセイフティプラス<視界拡張>(6万4800円)/パワーリアゲート(5万4000円)/ルーフレール(0円)
テスト車の年式:2018年型
テスト開始時の走行距離:764km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:--km/リッター
スバル・フォレスター アドバンス
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4625×1815×1730mm
ホイールベース:2670mm
車重:1660kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター水平対向4 DOHC 16バルブ
トランスミッション:CVT
エンジン最高出力:145ps(107kW)/6000rpm
エンジン最大トルク:188Nm(19.2kgm)/4000rpm
モーター最高出力:13.6ps(10kW)
モーター最大トルク:65Nm(6.6kgm)
タイヤ:(前)225/60R17 99H/(後)225/60R17 99H(ブリヂストン・エコピアH/L422プラス)
燃費:18.6km/リッター(JC08モード)、14.0km/リッター(WLTCモード)、11.2km/リッター(市街地モード:WLTC-L)、14.2km/リッター(郊外モード:WLTC-M)、16.0km/リッター(高速道路モード:WLTC-H)
価格:309万9600円/テスト車=343万4400円
オプション装備:本革シート(10万8000円)アイサイトセイフティプラス<視界拡張>(6万4800円)/パワーリアゲート(5万4000円)/大型サンルーフ(5万4000円)/ルーフレール<シルバー加飾ロープホール付き>(5万4000円)
テスト車の年式:2018年型
テスト開始時の走行距離:840km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:--km/リッター

下野 康史
自動車ライター。「クルマが自動運転になったらいいなあ」なんて思ったことは一度もないのに、なんでこうなるの!? と思っている自動車ライター。近著に『峠狩り』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリよりロードバイクが好き』(講談社文庫)。
-
スズキ・エブリイJリミテッド(MR/CVT)【試乗記】 2025.10.18 「スズキ・エブリイ」にアウトドアテイストをグッと高めた特別仕様車「Jリミテッド」が登場。ボディーカラーとデカールで“フツーの軽バン”ではないことは伝わると思うが、果たしてその内部はどうなっているのだろうか。400km余りをドライブした印象をお届けする。
-
ホンダN-ONE e:L(FWD)【試乗記】 2025.10.17 「N-VAN e:」に続き登場したホンダのフル電動軽自動車「N-ONE e:」。ガソリン車の「N-ONE」をベースにしつつも電気自動車ならではのクリーンなイメージを強調した内外装や、ライバルをしのぐ295kmの一充電走行距離が特徴だ。その走りやいかに。
-
スバル・ソルテラET-HS プロトタイプ(4WD)/ソルテラET-SS プロトタイプ(FWD)【試乗記】 2025.10.15 スバルとトヨタの協業によって生まれた電気自動車「ソルテラ」と「bZ4X」が、デビューから3年を機に大幅改良。スバル版であるソルテラに試乗し、パワーにドライバビリティー、快適性……と、全方位的に進化したという走りを確かめた。
-
トヨタ・スープラRZ(FR/6MT)【試乗記】 2025.10.14 2019年の熱狂がつい先日のことのようだが、5代目「トヨタ・スープラ」が間もなく生産終了を迎える。寂しさはあるものの、最後の最後まできっちり改良の手を入れ、“完成形”に仕上げて送り出すのが今のトヨタらしいところだ。「RZ」の6段MTモデルを試す。
-
BMW R1300GS(6MT)/F900GS(6MT)【試乗記】 2025.10.13 BMWが擁するビッグオフローダー「R1300GS」と「F900GS」に、本領であるオフロードコースで試乗。豪快なジャンプを繰り返し、テールスライドで土ぼこりを巻き上げ、大型アドベンチャーバイクのパイオニアである、BMWの本気に感じ入った。
-
NEW
トヨタ・カローラ クロスGRスポーツ(4WD/CVT)【試乗記】
2025.10.21試乗記「トヨタ・カローラ クロス」のマイナーチェンジに合わせて追加設定された、初のスポーティーグレード「GRスポーツ」に試乗。排気量をアップしたハイブリッドパワートレインや強化されたボディー、そして専用セッティングのリアサスが織りなす走りの印象を報告する。 -
NEW
SUVやミニバンに備わるリアワイパーがセダンに少ないのはなぜ?
2025.10.21あの多田哲哉のクルマQ&ASUVやミニバンではリアウィンドウにワイパーが装着されているのが一般的なのに、セダンでの装着例は非常に少ない。その理由は? トヨタでさまざまな車両を開発してきた多田哲哉さんに聞いた。 -
NEW
2025-2026 Winter webCGタイヤセレクション
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>2025-2026 Winterシーズンに注目のタイヤをwebCGが独自にリポート。一年を通して履き替えいらずのオールシーズンタイヤか、それともスノー/アイス性能に磨きをかけ、より進化したスタッドレスタイヤか。最新ラインナップを詳しく紹介する。 -
NEW
進化したオールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2」の走りを体感
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>欧州・北米に続き、ネクセンの最新オールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2(エヌブルー4シーズン2)」が日本にも上陸。進化したその性能は、いかなるものなのか。「ルノー・カングー」に装着したオーナーのロングドライブに同行し、リアルな評価を聞いた。 -
NEW
ウインターライフが変わる・広がる ダンロップ「シンクロウェザー」の真価
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>あらゆる路面にシンクロし、四季を通して高い性能を発揮する、ダンロップのオールシーズンタイヤ「シンクロウェザー」。そのウインター性能はどれほどのものか? 横浜、河口湖、八ヶ岳の3拠点生活を送る自動車ヘビーユーザーが、冬の八ヶ岳でその真価に触れた。 -
第321回:私の名前を覚えていますか
2025.10.20カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。24年ぶりに復活したホンダの新型「プレリュード」がリバイバルヒットを飛ばすなか、その陰でひっそりと消えていく2ドアクーペがある。今回はスペシャリティークーペについて、カーマニア的に考察した。