ここ日本でも実はひそかに絶好調!
“C3景気”にわくシトロエンの次なる一手を探る
2018.09.03
デイリーコラム
いまや新しいシトロエンの顔
熱烈なファンを持つ一方で、あくまでニッチな存在だったフランス車が、このところ日本で販売好調だ。もっとも、ジャーマンブランドが幅を利かせるこの国の輸入車市場では、昨年(2017年)において“最も販売台数の多いフレンチ”だったプジョーでさえ、その数は1万台に満たない8242台。シェアは2.35%にすぎない。しかしながら、小さくとも台数を着実に増やしているのは確かなのだ。中でも特に大きな成長を見せたのがシトロエンで、前年比156.9%となる3152台を販売し、今年の1月~7月の成績も前年比127.9%の2051台と順調な推移を見せている。
シトロエンといえば、多くの人が「2CV」「DS」「BX」などといった、過去の個性派モデルたちを思い浮かべることだろう。現在はラインナップが絞られたこともあり、選択肢はコンパクトハッチバックの「C3」と「C4」、そして小型MPVの「C4ピカソ」「グランドC4ピカソ」のたった4車種しかない。それでありながら、近年急激に販売が上向いているのだ。そのけん引役が、昨年7月に販売を開始した新型C3だ。昨年の導入から今年7月までに2553台、今年1月~7月末までに1429台を販売している。今年だけの数字を見ると販売台数の71%をこのモデルが占めることになり、いまや日本での新たなシトロエンの顔となっているのだ。
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いうなればフランス発のファストファッション
そんな新型C3の最大の魅力は、内外装のデザインだろう。新型C3はシトロエンが積極的に取り組んでいるデザイン改革から生まれたもので、その第1弾は、ユニークなコンパクトクロスオーバー「C4カクタス」だった。その流れを受け継ぐC3も超個性的。丸目ヘッドランプと薄型LEDデイライトを組み合わせたフロントマスク、C4カクタスゆずりのアイコニックなドアモール「エアバンプ」、ユニークな2トーンルーフなどたくさんの特徴がある。
インテリアに目を向けると、ダッシュボード中央にインフォメーションディスプレイを備える今ドキなデザインながら、おしゃれなカフェを連想させるモダンで快適な空間に仕立てられている。まさに“インスタ映え”する見た目で、この辺はフランス車らしさをうまく生かしたところといえる。
乗ってみても不満はない。1.2リッター直3ターボエンジンはパワーも十分で、6段ATとの組み合わせで街乗りから郊外のドライブまでそつなくこなしてくれる。装備だって、バックソナー、衝突被害軽減ブレーキ、車線逸脱警告、スマートキーなどを全車に採用。より装備が充実する上級モデルでも243万円という価格も魅力的で、まさに海外のファストファッションのような感覚だ。日本での好調は、シトロエンだからというより、フランス車らしいおしゃれなデザインや輸入車でも手を出しやすい価格など、プロダクトそのものの商品力の高さによるもののようだ。
余談だが、そんなC3は世界的にも好調で、2016年11月の発売以来、全世界で40万台以上を販売している。
まずは課題であるディーラー不足の解消を
ただ、消費者目線で考えるとシトロエンは買いやすいブランドとは言い難い。長い歴史を持つにも関わらず、日本での知名度は低く、そもそも“大衆車ブランド”でありながらディーラーが極端に少ない。最も多い東京でさえ5店舗にとどまり、全国では55店舗しかない。地方によっては、販売店どころかメンテナンス拠点さえないのが現状である。
逆にいえば、今C3を手にしているユーザーは、そんな困難もなんのそのという熱烈なファンなわけだ。“一目ぼれ”の新しいユーザーも多いと聞くし、シトロエンにとってあらためて日本でのビジネスチャンスが訪れたことに間違いはない。今後の日本での戦略は、ファンであれば気になるところではないか。なにせ極端な話をすれば、ちょっと前までは……というか、今でさえ「わずかなシェアしかないシトロエンが、日本でいつまで販売を続けるのだろう?」と考えてしまうときがある。何しろ、かつてはあれほどの栄華を誇った米国ブランドが日本から撤退してしまう時代だ。そんな折に、幸運にも来日していたシトロエンのマーケティング部長、アルノー・ベローニ氏にインタビューする機会を得た。
日本での戦略をたずねると、ベローニ氏はポイントを3つ挙げた。まずは「販売店」。やはり新車販売拠点の拡大は重要なポイントと捉えていた。それと同時に、新たなショールームコンセプトである「La Maison Citroën」(仏語で「シトロエンの家」の意)を日本にも浸透させようとしているとのことだった。このコンセプトを簡単に説明すれば、おしゃれで快適な、リビングのように居心地のよいショールームを仕立てようとするもの。これにはデザイン改革を進めるシトロエンを新たな方向性でアピールする狙いもある。
日本での積極的な取り組みを明言
次いで語られたのが「ラインナップの拡大」だ。今後の予定として明かしたのが、来年以降、日本に「C3エアクロス」と「C5エアクロス」の2台の都市型SUVを導入する計画だ。プジョーも「EMP2」プラットフォームで開発した新世代SUV「3008」が好評だけに、SUVの投入には大きな成果が期待できる。
そして、最後は「顧客との信頼関係」である。シトロエンは新たな施策として、公式サイトで「シトロエンアドバイザー」なるシステムを導入した。これはシトロエンの各モデルと店舗の口コミを、公式ウェブサイト上で公開してしまおうというもの。いわゆる口コミサイトの要素を盛り込んだのだ。商品に自信があるともいえるが、裏返せば、多くの人に関心を持ってほしいという切実な願いにも感じられた。
ここまで話を聞いておいてなんだったが、一応、先述の懸念についても質問をした。「シトロエンが日本から撤退する可能性は?」。ベローニ氏は、まず「安心してほしい」と回答した。
いわく、「シトロエンは、世界で年間120万台以上を販売するブランドで、その基盤は非常に強固だ。今年上半期の世界販売台数は前年比+9%の成長を見せ、中国に至っては前年比+50%にもなる」とのこと。ここで縮小路線に舵を切ることはありえないとのことだった。さらに、かつてのイメージを払しょくするために新型車を投入し続けていくことや、東京モーターショーへの出展を継続することも明言した。シトロエンの販売責任者がそこまで言い切るのだから、日本でのシトロエンの未来は、ひとまずはいい方向に向かうと考えても大丈夫だろう。
(文=大音安弘/写真=大音安弘、プジョー・シトロエン・ジャポン、グループPSA、webCG/編集=堀田剛資)

大音 安弘
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