シトロエンC2 1.4 VTR【試乗記】
体育会系お断り 2004.12.18 試乗記 シトロエンC2 1.4 VTR ……183万7500円 「サクソ」の後継車種として登場した、今のところシトロエン最小のモデルが「C2」。そのなかでも小さな1.4リッターエンジンを積むモデルに、『NAVI』編集委員鈴木真人が乗った。デザインで復活の狼煙
ボディカラーは目の醒めるようなレモンイエロー。二つの円を重ねたC3が調和した平和な世界を形作っていたのに対し、後半部で意図的に破調を導入することでポップさを強調するスタイル。室内を見れば、鮮やかな黄緑と黒が明快な図形を描くクールな空間。
「オシャレで小粋なフランス車」という、紋切り型の表現がそのまま実現してしまったようなクルマではないか。世界中のクルマが平準化した、なんてウソだ。そう思わせてくれる力が、C2のデザインにはある。何でもかんでもアウディ的なプレミアム戦略に倣っているばかりなのは、やはり健全ではない。乗る前から、気分は浮き立つ。
シトロエンが、「フランス車デザインの代表」から離れてしまって久しい。「DS」や「2CV」の独創はすでに遠い歴史の彼方で、ルノーの前衛性にすっかりお株を奪われていた。ここにきて、C3、C2で復活の狼煙を上げ、先日のパリサロンで発表されたC4で高らかに復活を宣言したのだ。
「スポーティ」という個性
エンジンラインナップは1.4リッターと1.6リッターの2種類。これはC3と同じなのだが、C3では1.4には通常のATが組み合わされていたのに対し、C2は1.6と同じ「センソドライブ」が用意される。5段の2ペダルMTで、ステアリングコラムに備えられたパドルで操作する。コンパクトカーのトランスミッションは、CVTとこの2ペダルMTが席巻しつつあるようだ。
日本ではCVTのほうが圧倒的に優勢で、2ペダルMTはなかなか受け入れられない。でも、C2のキャラクターにはセンソドライブがとてもマッチしているように思える。ファミリーカー指向のC3と違い、C2には「スポーティ」という個性が与えられている。1.4リッター、わずか75馬力という非力なパワーだが、思いのほかストロークの大きいパドルを操作しながらシフトアップ、シフトダウンを繰り返すのは爽快な気分である。
もちろん全然速くはないのだが、パドルの操作に対する反応の速さがスポーティな気分を醸し出すのだ。リミットまでブンブンまわすのではなく、せいぜい5000回転くらいでシフトアップしていく。むやみにうるさいエンジン音が室内を蹂躙することもなく、交通の流れに乗って軽やかに走る。エンジンの存在感は薄くなり、ポップでカラフルな移動体の中に憩っている感覚がうれしい。そう、こんなスタイルのクルマで、いたずらに加減速を繰り返す気にはならないのだ。
トータルな演出力
C2に乗って、新しいスズキ「スイフト」の試乗会に出かけた。乗ったのは1.3リッターと1.5リッターのモデルで、C2とはちょうど0.1リッターずつ上下の排気量である。先代に比べればグッと洗練されたスタイルで、価格は安い。国産コンパクトがどんどんオシャレになってきている中でのC2の存在意義とはいかなるものか。
箱根の山道を走った。排気量が0.1リッター少ない1.3のモデルでも、C2よりも力強く上り坂を駆け上る。豪快な音を発し、健脚を恃んで大地を蹴っていく。C2はといえば、大地に腰を落とすというより、浮遊する感覚が強い。こころなしか、息づかいも苦しそうだ。
すまぬ。こんな場所で競わせた私が悪かった。C2よ、君はそんなことをするためのクルマではない。スポーティったって、汗臭い体育会系のスポーツではない。都市の中で、あくまでもイメージの上で楽しむスポーツなのだ。その意味で、スタイルから走りまでトータルに仕立てた演出の巧みさが、C2のいちばんの価値なのだと思う。
だから、スピードとか横Gとか、わかりやすい指標を好む人はC2のことは忘れてほしい。このスタイルが気に入るかどうか、そこが分かれ目である。見事に、スタイルから受けるイメージどおりのクルマなのだ。こんな気取ったクルマなんて俺には乗れねえ、という方は結構。こジャレた姿にピピッとくるものがあれば、運転しても好きになるはずだ。C2は、汗などかかずに、涼しげに乗るべきクルマである。
(文=NAVI鈴木真人/写真=峰昌宏/2004年12月)

鈴木 真人
名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。
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