シトロエンC2 VTS(FF/5MT)【試乗記】
手抜きは見られない 2006.04.04 試乗記 シトロエンC2 VTS(FF/5MT) ……230.0万円 JWRC参戦ベース車両ともなっているシトロエンのホットハッチ「C2」に、マニュアルトランスミッションモデルが追加された。2ペダルMTのセンソドライブに無い魅力を探る。待望の5段MT追加
C2は日本で売られているシトロエンの中では一番小さいモデルだ。小さいとはいえ、必ずしも経済的な実用車というわけではなく、その軽量小型ゆえの利点を活かした、スポーティなモデルが選ばれている。いわゆるフレンチホットハッチに属し、小さいゆえに廉価というわけでもなく、C3より高いほどだ。そのC2に待望の5段MTが加わった。
これはVTSという独立したモデルで、エンジンはすでに発売されているVTRの110psから、可変バルブタイミングの採用などにより125psにチューンされ、スタビライザーやバネレートが見直され(スタビライザーを太く、バネはソフトに)、電動パワーステアリングのギアレシオもフルロック3回転から2.6回転に詰めるなど、独自のチューンが与えられている。価格は1.6VTRの215万円に対し、1.6VTSは230万円である。
意思の疎通に不満無し
走り出した瞬間に活気を感じるのは、単にVTRより15psパワーが大きいというだけではなく、ファイナルがVTRの3.937から、VTSでは4.285に下げてあるからだ。タイヤサイズは195/45R16と同じゆえ、低位の3つのギアは瞬時に吹けきる感覚で、MT車本来のギアシフトの楽しみを味わえる。ファイナルを低めた結果、計算上6500rpmでそれぞれ50-70-110km/hほどに達する。エンジンの回転上昇を待つ感覚が短くシフトが忙しいが、頻繁にシフトを繰り返してこそスポーツドライビングなのだ。C2は1.4と1.6でちゃんとギア比とファイナルを変えるなど、きめ細かに設定してあり、手抜きが見られない。
低いギア比は不経済かといえばそうでもない。状況にもよるが、低速走行でも一段高いギアを使うことが可能となり、負荷の管理をうまくやることにより、回したほうがエンジンも好調を保つし、燃料経済性もその効率のいい回転を使うことにより不利にはならない。
これまでの自動5段センソドライブでも、スリップを介在させるトルコンと違ってダイレクトな感覚はあった。しかし、意思のとおりに走らせるのは、やはり自分の足で行うクラッチミートなのだ。ドライビングのリズムは個々に違うのが当たり前で、微妙な緩急の変化に対処するには一様な機械仕掛けでは難しい部分もある。
しかしこうしてじっくり考え直して反省してみると、いかにATは安楽かがわかるけれども、それだけ雑なスロットル操作も受け付けているわけで、MTは丁寧に操作しないとスムーズには動かせない。そんな繊細な扱いを要することもまた、自動車を自分の意思でコントロールしているんだという実感を強める。機械に乗せられている感覚ではない。
感触的な剛性を重視
以前のVTRは乗り心地も荒々しかったが、VTSは硬めではあるものの、目地段差などのハーシュネスもきつ過ぎない。荒れたアスファルト路面でもダンピングの良さを感じこそすれ、強いショックを受けることや、身体が荒く上下に揺さぶられることはなくなった。195/45R16という、クルマのサイズのわりに太めのタイヤを装着するにもかかわらず、不当にバタつかないサスペンションは頑丈にできている。このあたりは、耐久強度的に持てばいいという考えの日本車にくらべ、感触的な剛性を重視しているフランス車の得意分野でもある。
シートはレカロのようなカッチリ保持型ではなく、見た目は普通だが、接触している部分が全体で優しくフィットしてくれ、包み込むようにホールドする。横Gに対して当たって止める感覚ではなく、つぶれている部分のコシを強める感覚だ。これなら長距離旅行でも疲れは少ないだろうと思わせる。
C2のハッチは一体型でなく、上下2段に分割して開くタイプだ。これも小物などコンビニの買い物程度なら、上だけ開けて放り込めるから小さいなりに便利だ。絶対的に小さいから一体でいい、と考えないところが非凡。また、2ドアは後部へのアクセスを考えて大きなドアにする例は多いが、C2はシートスライドを考えて、ドアを不当に大きくしていないところも使いやすい。
これもまた魅力的なシトロエンの1台。
(文=笹目二朗/写真=峰昌宏/2006年3月)

笹目 二朗
-
BSAゴールドスター650(5MT)【レビュー】 2026.6.2 かつて一世を風靡(ふうび)した英国の名門、BSAが復活! 新生第1号モデルである「ゴールドスター650」は、クラシックで優雅なお散歩バイク……と思いきや、ツインカムの大排気量シングルで、ライディングも前のめりに楽しめるマシンに仕上がっていた。
-
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション(4WD)【試乗記】 2026.6.1 「ホンダCR-V」がフルモデルチェンジ。新型は適切なボディーサイズと高品質な内外装を持ち、乗れば最新のホンダ車らしい気持ちよさが味わえる。ただし、その月販目標は400台。ちょっと弱気ではあるものの、周辺事情にも考えを巡らせると極めて妥当な数字にも思えてくる。
-
トヨタRAV4 GRスポーツ(4WD/CVT)【試乗記】 2026.5.30 新型「トヨタRAV4」のプラグインハイブリッド車ではEV走行換算距離が約150kmにまで到達。もちろん電池容量の拡大によるところも大きいが、何よりも最新のハイブリッドシステムによる効率向上が効いている。「GRスポーツ」をドライブした印象をリポートする。
-
キャデラック・リリックV(4WD)【試乗記】 2026.5.29 キャデラック初の電気自動車(BEV)「リリック」に、最高出力646PSのハイパフォーマンスモデル「リリックV」が登場。“ブランド史上最速”をうたう豪速SUVだが、実際に乗ってみると、高い動力性能がもたらすゆとりや心地よさにも魅力を感じる一台となっていた。
-
DS N°8エトワールAWD(4WD)【試乗記】 2026.5.28 前衛を身上とするフランスのラグジュアリーブランド、DSオートモビルから、新たなハイエンドモデル「DS N°8(ナンバーエイト)」が登場。当代屈指の性能を誇る電気自動車であり、かの地では大統領専用車にも選ばれる一台の、独創の魅力に触れた。
-
NEW
第290回:商用バンで砂漠を行く親子が向かうのは天国か地獄か 『シラート』
2026.6.4読んでますカー、観てますカー失踪した娘を探して親子はモロッコの砂漠へ。砂漠で開催されていたレイブパーティーが最高潮に達した頃、軍隊がやってきて中止させられる。親子が乗るFFの商用バンは次のパーティー会場にたどり着けるのか……。 -
NEW
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション(前編)
2026.6.4あの多田哲哉の自動車放談ひさびさに日本市場に戻ってきた、ホンダを代表するSUV「CR-V」。最新世代の仕上がりを、トヨタの車両開発者だった多田哲哉さんはどう評価する? まずは、ワインディングロードを走らせた第一印象から。 -
NEW
第964回:フィアットグッズのコレクターから学ぶ人生訓
2026.6.4マッキナ あらモーダ!イタリア在住の大矢アキオが、トリノで著名なフィアットグッズのコレクターを取材。若き日の苦労を経て大成した人物が語る、人生で大切なものとは? フィアットやイタリアの歴史を物語る、貴重なコレクションの数々とともに紹介する。 -
NEW
気づけばすでに4モデル スバルのBEV戦略と水平対向エンジンの未来を考える
2026.6.4デイリーコラム「ソルテラ」に続き、「トレイルシーカー」「アンチャーテッド」「ゲッタウェイ」と、いつの間にか4モデルが顔をそろえたスバルのBEV。伝統的な水平対向エンジンやシンメトリカルAWDはこの先どうなるのか? スバルの未来戦略を探る。 -
レクサスES350h(FF/CVT)/ES350e(FWD)/ES500e(4WD)【海外試乗記】
2026.6.3試乗記「レクサスES」がフルモデルチェンジ。シャシーがFFベースというのは歴代モデルと同じだが、新型ではボディーサイズがググッと拡大。「LS」の6輪ミニバンコンセプトが登場したこともあり、今後のレクサスセダンの総代を担うことになる。北米で乗った印象をリポートする。 -
ミドシップ化で運動性能はどう変わる? 「GRヤリスMコンセプト」の現時点での完成度を体感
2026.6.3デイリーコラム「GRヤリス」をベースとしたミドシップ4WDとして市販化を目指す「GRヤリスMコンセプト」。現在もスーパー耐久に投入されるなどして鍛えられているが、その開発車両をドライブできた。普通のGRヤリスとの運動性能の違いや、新開発エンジンの印象などをリポートする。



