トヨタ・プリウスα S ツーリングセレクション(FF/CVT)【試乗記】
燃費に勝るよさがある 2011.07.04 試乗記 トヨタ・プリウスα S ツーリングセレクション(5人乗り)(FF/CVT)……338万6950円
発売されるや引く手あまたの、新型ハイブリッド「プリウスα(アルファ)」。その人気の秘密は? クルマとしての仕上がりは?
プリウスの若返り!?
「『プリウスα』は、プリウスの若返り大作戦である」という話を開発者から聞いて驚いた。
「ホンダ・フィット」に、たまに首位をさらわれることはあったが、真の国産ベストセラーカー(登録車)はもうここずっと「プリウス」である。かつての不動キング、「カローラ」の座をプリウスが継いだのだ。車両価格や環境性能の伸びシロを考えると、これってスゴイことである。けっして安くないプリウスがいちばん売れるクルマになったということは、日本がすっかり「エコは、買ってでもする時代」に入ったことを象徴している。
ところが、プリウスの“カローラ化”は、ひとつ厄介なモンダイも引き継いでしまった。それが「高いユーザー年齢」である。なんと60歳代以上が半分以上を占めているというのだ。つまり、もう孫がいて「おじいちゃん、おばあちゃん」と呼ばれる世代がユーザーの過半数に達している。まだ孫はいないが、もう50代半ばのぼくとしては、そのいったいナニが悪いんだ!? おとなのクルマで、いいではないかと思うけど、なにしろ村上春樹いわく「日本は、こどもの国」だから、モノを売る側はユーザーの高齢化に得体のしれない不安を覚えるらしい。
そこでプリウス・シリーズに新規投入されたのが、ホイールベースを8cm延ばし、デザインも一新した「α」である。とくに呼称を分けてはいないが、2列シート5人乗りと3列7人乗りに大別される。リチウムイオン電池を搭載する7座モデルなどは別にサブネームをつけて祭りあげてもよさそうに思うが、意外にあっさりしている。
売れているのは5人乗り
今回試乗したのは、5人乗りの「S ツーリングセレクション」。サードシート新設のために、7人乗りモデルが新開発のリチウムイオン電池を前席センターコンソールボックス内に収めたのに対して、5座モデルは従来どおり、ニッケル水素電池を後席後方に置く。
ホイールベースを8cmストレッチしたαは、ノーマル・プリウスより全長で約15cm、全高で8cm大きい。その恩恵を如実に感じるのがリアシートである。足元もアタマも、余裕しゃくしゃくの広さだ。全長4615mmといえば、「トヨタ・プレミオ」や「日産ブルーバードシルフィ」と同クラスだが、空間全体の広さ感は、そうした屋根の低いセダンとは別次元である。
ノーマル・プリウスから乗り換えると、広い家にリハウスしたような印象を与える後席に比べて、前席ではそれほど大きなアドバンテージは感じられない。とはいえ、わずかに上がったヒップポイントのせいか、ひとまわり大きなクルマになった実感はある。
一方、荷室もがぜん広くなった。後席を畳むまでもない平常時の容積は1.5倍以上に増えている。荷室を広い物置にしたいアウトドア派にも応えられるようになったプリウスである。
30〜40代の子育て世代をターゲットにしたαは、フタを開けてみると、5座モデルの受注が7座の2倍に達しているという。5人乗りなら、今までのプリウスでいいじゃん! と思うけど、もっとアクティブにマルチにクルマを使いたい若年層は、こういうプラスαを待っていたというわけだ。
ちょっとメタボな乗り心地
“乗った印象”がいちばん最後になってしまったが、でも、αはそれで差し支えない新型プリウスである。運転しては、プリウス・ファミリーそのものだ。
試乗車の車重は1470kg。αじゃないプリウスより120kgほど増えた。「1.8リッターハイブリッドユニットの出力スペックに変更はないが、車重増加のハンディをなるべく感じさせないための制御チューニングはしている」とエンジニアは言っていたが、7座モデルほどではないものの、乗った感じはやはり“ちょっと太ったプリウス”である。ボディの剛性感は、ノーマルのほうがよりシャキッとしているように感じた。
10・15モード燃費は、35.5km/リッターから31.0km/リッター(α全モデル)にドロップしている。これより前、河口湖の試乗会で乗ったクルマの燃費計は、どれも15〜16km/リッター台を示していた。容赦なく踏まれるとそれくらいになるということだ。
知り合いにプリウスの超ヘビーユーザーがいる。現行モデルを買ってから、1年半で4万7000km近く走り、しかも27km/リッターという驚異的な通算燃費をマークしている。好燃費の探究をカーライフワークにするならノーマル・プリウスにキマリだが、それになかったプラスαを求めるなら、αだろう。
5人乗り「S ツーリングセレクション」は280万円。ノーマル同グレードの10万円差に収まる。高田文夫じゃないけど「買わせるねェ、しかし」だ。ただし、震災後の生産力低下の影響もあって、バックオーダーの列はすごく長いらしい。
(文=下野康史/写真=峰昌宏)
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下野 康史
自動車ライター。「クルマが自動運転になったらいいなあ」なんて思ったことは一度もないのに、なんでこうなるの!? と思っている自動車ライター。近著に『峠狩り』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリよりロードバイクが好き』(講談社文庫)。
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