トヨタ・プリウスα(アルファ) 7人乗り/5人乗り【試乗記】
大盛りラーメンの正しいレシピ 2011.05.26 試乗記 トヨタ・プリウスα G ツーリングセレクション スカイライトパッケージ(FF/CVT)/S ツーリングセレクション(FF/CVT)……400万7450円/338万6950円
人気モデル「プリウス」よりひとまわり大きな、トヨタの最新型ハイブリッド「プリウスα」がデビュー。その実力を、7人乗りと5人乗り、ふたつのグレードで試した。
まさに大きなプリウス
5月22日の時点で約3万9000台(!)を受注、いま契約書にハンコを押しても納車は来年の4月(!)という「トヨタ・プリウスα」の試乗会が行われた。震災の影響で4月下旬にデビューする予定が延期となり、5月13日に販売開始となったのだ。
事前情報だけでこれだけの注文が入ったことから、 “大きなプリウス”が待ち望まれていたことと、「プリウス」というブランドへの高い信頼感がわかる。
結論から書けば、デザインの雰囲気から走らせた時のフィーリングまで、「プリウスα」はまさに大きなプリウスだった。
「プリウスを拡大したんだから、大きなプリウスになって当然だ」という意見もあるでしょう。けれども「プリウス」より155mm長く、85mm背を高くしながら同じようなテイストにするための作業は、それほど簡単ではなかったようだ。その証拠に、「プリウス」と共通する部品はステアリングホイールぐらいだという。
つまり、普通盛りラーメンと同じ味の大盛りラーメンを作るには、スープと麺を増量するだけではダメだったのだ。スープ、麺、そして具材まで変える必要があった。結果、出来上がった大盛りと普通盛りの共通点はナルト(=ステアリングホイール)だけになってしまった。ヘンなたとえになってしまいましたが、要は「プリウスα」は「プリウス」のお手軽な拡大版ではないということが言いたい。
「プリウスα」がいかにこだわって設計されたかが明確に表れているのが、5人乗り仕様と7人乗り仕様の違いだ。5人乗り仕様では、ニッケル水素バッテリーが「プリウス」と同じく後席シート後方に置かれる。一方、7人乗り仕様では3列目シートを設置するスペースを確保するために、バッテリーを運転席と助手席の間に移動したのだ。場所を移動しただけでなく、この位置に収まるサイズにするためにリチウムイオンバッテリーに変更したというから凝っている。
まずは販売の主力になるであろう、7人乗り仕様から乗り込む。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
モーターが乗り心地を向上させる?
「プリウスα G ツーリングセレクション スカイライトパッケージ」(7人乗り仕様)の運転席に腰掛けて、「プリウス」よりはるかに開放的な雰囲気になっていることに気付く。理由は3つ。
ひとつは、ダッシュボードのデザインが左右対称となっていること。「プリウス」は運転席側と助手席側でデザインが異なり、ドライバーとパセンジャーの間には明確な境界線が引かれていた。けれども「プリウスα」はカーナビ画面を中心に、左右に同じ形がのびのびと広がっている。
また、「プリウス」は運転席と助手席の間がセンターコンソールで隔てられていたけれど、「プリウスα」ではその“仕切り”がなくなっている。運転席と助手席が空間的につながったことで、広々とした雰囲気になった。
そしてもうひとつ、座る位置が高くなっていることが明るく開放的な雰囲気を醸す最大の理由だろう。地面からシートに腰掛けるお尻までの高さは、「プリウス」より30mm高くなって605mm。「プリウス」より天井が高いぶん、この数値以上に視界が開けているように感じる。
ただし走り始めると、座る位置が高いという印象は薄れる。路面の凸凹を乗り越えた時のゆれが収まらなかったり、ブレーキング時に大げさにつんのめったりという、だらしない動きがないからだ。この落ち着いた振る舞いには、「ばね上制振制御」という新機軸が寄与しているようだ。
これは、路面の起伏に応じてモーターのトルクを制御する仕組み。なんて書いてもわかりにくいですね。たとえば起伏を越えた後には、ボディが前のめりになって“お辞儀”をする。この動きを察知すると前輪を駆動するモーターのトルクが自動的に強まり、“お辞儀”をはね返すのだ。前に進むためにモーターを使うのでなく、クルマの姿勢を保つためにモーターを使うという斬新な仕組みだ。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
乗るなら2列目、3列目は非常用
乗り心地は「プリウス」よりしっとりとした印象。前述した「ばね上制振制御」に加えて、ホイールベースが80mm長くなったことと、車重が110kg〜130kg重くなっていることが、乗り心地に限っていえばプラスに働いているのだろう。荒れた路面を突破したときの身のこなしなどは、むしろ「プリウス」より洗練されている感さえある。ステアリングホイールの手応えがフニャッと頼りない点はマイナスであるけれど、「プリウス」より大きくて背が高い“大盛り”になっても大味になっていない点は立派だ。
1.8リッターエンジンとバッテリー、そして発電用/駆動用のふたつのモーターで構成するハイブリッドシステムは、「プリウス」と共通。したがって、モーターとエンジンがスムーズに連携して加速する感触も同じなら、EV走行になった時の無音、無振動の走行感覚も同じ。しばらく走ると凝ったメカニズムであることを忘れてしまうナチュラルさも同じだ。
前述したように「プリウスα」の方が100kg以上重いから、高速道路の登り勾配などでは「もう一声!」と言いたくなる。けれども、物足りないと思えるのはそういった場面だけ。平らな道を普通に走るぶんには静かで滑らかな優等生だ。
運転を編集部のS氏に任せて2列目シート、3列目シートを試す。2列目シートはむしろ前席より乗り心地がいいぐらいで、足元も広々しているからこのクルマのVIP席だ。3列目シートは、座った人のつま先が2列目シート下に入る工夫を差し引いても子ども向けだろう。頭上空間はそこそこ確保されているけれど、2列目シートを常識的な位置にセットすると足の置き場がない。3列目は後輪の真上に座ることになるので振動も大きく、タイヤのパターンノイズや風切り音が容赦なく侵入してくるのもマイナスポイントだ。
ただし、2列目、3列目へと後退するにしたがって前席より45mmずつ高くなる設計のおかげで見晴らしはいい。閉じ込められているような暗い気持ちになることはない。
「プリウス」+「生活感」=「プリウスα」
7人乗りの状態では荷室スペースは最小限。薄っぺらい形状の荷物しか入らないから、7人で旅行へ行くのは厳しい。7人乗りに注目しがちであるけれど、後で試乗した「5人乗り仕様」の足が組める2列目シートの広さと広大な荷室スペースを見ると、こちらをステーションワゴン的に使うのもアリかと思えてきた。
短時間で車両を交換する試乗方法だったので正確な燃費は測れなかった。ただしインパネに表示される平均燃費を見る限り、かなり期待できそうだ。山道をそこそこのペースで走っても15〜17km/リッター、平坦な道に入ると18、19km/リッターと数値がぐんぐん上がっていく。「プリウス」での経験ではここに表示される平均燃費はなかなか正確だったので、実燃費とかけ離れた値ではないだろう。
もちろん燃費ではより小型軽量の「プリウス」にはかなわない。けれども、多少の燃費悪化のほかは、機能面で失ったものはない。大きくなって広くなって便利になった。「プリウス」にプラス・アルファを加えたモデルが「プリウスα」なのだ。なんのひねりもありませんが。
もし失ったものがあるとすれば、それは「プリウス」が持っていた未来っぽさや先進的なイメージだろう。人や荷物をたくさん積めるようになることで、生活の匂いが加わった。別に悪いことではないけれど、新しい技術はこうして生活品になっていくんだなぁ、と、「プリウスα」に乗りながらちょっとしみじみした。
(文=サトータケシ/写真=峰昌宏)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |

サトータケシ
ライター/エディター。2022年12月時点での愛車は2010年型の「シトロエンC6」。最近、ちょいちょいお金がかかるようになったのが悩みのタネ。いまほしいクルマは「スズキ・ジムニー」と「ルノー・トゥインゴS」。でも2台持ちする甲斐性はなし。残念……。
-
トヨタRAV4 GRスポーツ(4WD/CVT)【試乗記】 2026.5.30 新型「トヨタRAV4」のプラグインハイブリッド車ではEV走行換算距離が約150kmにまで到達。もちろん電池容量の拡大によるところも大きいが、何よりも最新のハイブリッドシステムによる効率向上が効いている。「GRスポーツ」をドライブした印象をリポートする。
-
キャデラック・リリックV(4WD)【試乗記】 2026.5.29 キャデラック初の電気自動車(BEV)「リリック」に、最高出力646PSのハイパフォーマンスモデル「リリックV」が登場。“ブランド史上最速”をうたう豪速SUVだが、実際に乗ってみると、高い動力性能がもたらすゆとりや心地よさにも魅力を感じる一台となっていた。
-
DS N°8エトワールAWD(4WD)【試乗記】 2026.5.28 前衛を身上とするフランスのラグジュアリーブランド、DSオートモビルから、新たなハイエンドモデル「DS N°8(ナンバーエイト)」が登場。当代屈指の性能を誇る電気自動車であり、かの地では大統領専用車にも選ばれる一台の、独創の魅力に触れた。
-
メルセデスAMG GLC53 4MATIC+(4WD/9AT)【海外試乗記】 2026.5.27 「メルセデス・ベンツGLC」にスポーティーな「メルセデスAMG GLC53 4MATIC+」が仲間入り。「43」と「63」の中間、AMGとしては松竹梅の竹にあたるモデルだが、今後はそのポジションの重要性がさらに増すことになるという。本国ドイツでドライブした印象をリポートする。
-
マツダ スピリット レーシング・ロードスター12R(FR/6MT)【試乗記】 2026.5.26 販売台数わずか200台の限定車「マツダ スピリット レーシング・ロードスター12R」に試乗。スーパー耐久レース参戦をはじめとするマツダのモータースポーツ活動を担うサブブランドが生み出した初の市販コンプリートカーは、いかなる走りをみせるのか。
-
NEW
レストモッドがイメージ 特別なオニツカタイガーの魅力に迫る
2026.6.1オニツカタイガーの新作ドライビングシューズを知る<AD>オニツカタイガーが、“レストモッド”と呼ばれるクルマのレストア&カスタム手法に着想を得たドライビングシューズを発表。4タイプ製作された、「MEXICO 66 DRIVING」のスペシャルバージョンの魅力に迫る。 -
NEW
新生アルピナは成功するか? その将来とBMWとの関係について考える
2026.6.1デイリーコラム具体的なデザインスタディーも公開され、いよいよ市場展開が見えてきた新生アルピナ。将来的な成功の“確度”やいかに? BMWによる新たなアルピナ像について、両ブランドに詳しい西川 淳が詳しく解説する。 -
NEW
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション(4WD)【試乗記】
2026.6.1試乗記「ホンダCR-V」がフルモデルチェンジ。新型は適切なボディーサイズと高品質な内外装を持ち、乗れば最新のホンダ車らしい気持ちよさが味わえる。ただし、その月販目標は400台。ちょっと弱気ではあるものの、周辺事情にも考えを巡らせると極めて妥当な数字にも思えてくる。 -
日産リーフB7 G(前編)
2026.5.31思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が新型「日産リーフ」に試乗。初代のデビューから15年余りを経て生まれた3代目はスタイリングも中身も刷新。苦境にある日産を立て直す重責を担っている。箱根のワインディングロードでの印象を聞いた。 -
トヨタRAV4 GRスポーツ(4WD/CVT)【試乗記】
2026.5.30試乗記新型「トヨタRAV4」のプラグインハイブリッド車ではEV走行換算距離が約150kmにまで到達。もちろん電池容量の拡大によるところも大きいが、何よりも最新のハイブリッドシステムによる効率向上が効いている。「GRスポーツ」をドライブした印象をリポートする。 -
つまずきを糧に成功をつかみ取れ! 新型「CX-5」に宿るマツダの変革と覚悟
2026.5.29デイリーコラム既存のマツダ車とは一線を画す乗り味で、メディアをおどろかせた新型「マツダCX-5」。マツダの最量販車種は、なぜ3代目で大転換を迫られたのか? 賛否両論を巻き起こした“あのクルマ”との関係は? 新しくなったCX-5に宿る、マツダの覚悟と変革に迫る。






























