グローバルで躍進を続ける
ボルボデザインの次なる挑戦【前編】
2019.02.01
デイリーコラム
刷新の予告編は大胆に始まった
2018年6月にワールドプレミアされた新型「S60」。2019年後半に日本導入を予定しているこのモデルをもって、新世代ボルボのラインナップがほぼ完成する。ほぼ完成と紹介したのは、これまで発表されたコンセプトカーの中で、もう1台、市販化が公表されていないコンパクトセダンの「ボルボ・コンセプト40.2」があるからだが、その話題は、もしもまた別の機会があれば、あらためてご紹介したい。
現在日本を含む全世界で販売されているボルボ各車のデザインを振り返ってみれば、2013年9月のフランクフルトモーターショーで発表されたコンセプトカー「ボルボ・コンセプトクーペ」がすべての始まりだったことに気づく。
それに先立つ2012年春、フォルクスワーゲングループのデザインセンター所長だったトーマス・インゲンラート氏がボルボにヘッドハンティングされ、同社のデザイン担当副社長(当時)に就任。新世代デザインの構築に着手した。
そこからの動きはスピーディーだった。翌2013年9月に、新しいデザイン言語を採用したボルボ・コンセプトクーペが登場し、ボルボのデザインの刷新を予告した。前後してエンジンはディーゼル/ガソリンとも4気筒以下のものしか作らないこと、そのエンジンをベースに電化を進めること、新しいプラットフォームである「スケーラブルプロダクトアーキテクチャー(SPA)」の導入も発表された。
往年の「P1800」を現代流に解釈し直したといわれるボルボ・コンセプトクーペのデザインは、P1800が2ドアクーペであったことから、ビッグクーペの登場を連想しそうだが、これは新しい世代を象徴するモデルとしてトップバッターとなった「XC90」のプレビューであったのだ。SUVのデザインプレビューだからといって、そのままSUVスタイルのデザインスタディーを発表しないところにひねりが効いている。
コンセプトカー3部作の成功
続く2014年1月に、デトロイトモーターショーにおいて、コンセプトカー第2弾となる「ボルボ・コンセプトXCクーペ」が登場。XCのネーミングからも分かるように、これはボルボの次期SUVを示唆するデザインスタディーだった。
さらにコンセプトカーの発表は続く。2014年3月のジュネーブモーターショーで発表されたのが「ボルボ・コンセプトエステート」である。このコンセプトカー3部作が新世代ボルボのプレビューだった。各コンセプトカーのフロントやリア、サイドなどのセクションをいったんバラバラにしてあらためて組み合わせてみれば、XC(SUV)に始まり、セダン、エステートと、そのすべての姿が想像できたのである。
そして現在のラインナップは、2014年8月にスウェーデンでワールドプレミアされたXC90から始まった。そこからは順次ニューモデルを市場投入し、現在の新世代ラインナップを完成させた。参考までに現行モデルを登場順に紹介すると、2016年1月「S90」、2016年3月「V90」、2017年3月「XC60」、2017年9月「XC40」、2018年3月「V60」、そして冒頭のS60へと続く。
こうした新世代ボルボは、世界中の市場で歓迎された。販売台数は5年連続で過去最高を記録中で、2018年は64万台をオーバー。快進撃をもたらした要因のひとつが、新しいデザインにあったことは間違いない。
では、そんなモダンボルボのデザインのカギとなったのは何か。来日したボルボ・カーズのデザイン部門上級副社長、ロビン・ペイジ氏に話を聞いた。ボルボ快進撃の立役者でもあるトーマス・インゲンラート氏は、現在ボルボグループ全体のデザイン部門を率いる立場にあり、つまり彼は、インゲンラート氏に次ぐナンバー2というポジションである。
1971年にイギリスで生まれたペイジ氏は、ジャガー、ロールス・ロイス、ベントレーという英国ブランドでのキャリアを経て、2013年よりボルボに従事。2017年に現職となった。
そもそもスカンジナビアデザインとは?
新世代ボルボのデザインは、どんな要素で成り立ち、そして新しいボルボに見えるのか。ペイジ氏に質問をぶつけた。
「われわれが考えるボルボのデザインには、大きく分けて3つの要素があります。ひとつは“プレミアムファクター”で、プロポーションとディテール、室内のパーツ一つひとつにまで注意を払った意匠と質感の構築です。2つ目は“安全性”。ボルボといえば安全性とイコールと言っても過言ではありません。そして3つ目が“北欧のライフスタイル”。自然とのつながりをもってアクティビティーを楽しむ文化を取り入れたデザインがそれに相当します」
こうした要素の積み重ねが、新しいデザイン言語を生み出したのだろう。そして、ボルボといえば、スカンジナビアデザインだ。われわれが漠然と持っているスカンジナビアデザインをどのようにして製品に映し出すのか。
「例えば、V60のインテリアに、ドリフトウッド(海岸などに打ち上げられた流木)のイメージを使用したのもその一例です。また、夏と冬とでは太陽の位置が異なるため、北欧では特に影の長さが違いますよね。そうした陰影もクルマのデザインには必要な要素だと考えています。しかし、それだけではありません。クリエイティビティーもスカンジナビアデザインを構築するうえで大切なカギのひとつ。ポップでカラフルなのも特徴ですし、先進性や機能性も持ち合わせています」
具体的な例として挙がったのは、前者がXC40の、ペットボトルをリサイクルして作られた鮮やかなカラーを採用したカーペットであり、後者はドアにスピーカーのウーファーを設置せず、かわりにフロントウィンドウ下(ボンネット内)に「エアウーファーテクノロジー」とボルボが呼ぶスピーカーシステムを搭載したものだった。
スカンジナビアデザインはイメージだけでなく、論理的に説明できることをあらためて学んだのだ。
(文=櫻井健一/写真=ボルボ・カー・ジャパン/編集=櫻井健一)

櫻井 健一
webCG編集。漫画『サーキットの狼』が巻き起こしたスーパーカーブームをリアルタイムで体験。『湾岸ミッドナイト』で愛車のカスタマイズにのめり込み、『頭文字D』で走りに目覚める。当時愛読していたチューニングカー雑誌の編集者を志すが、なぜか輸入車専門誌の編集者を経て、2018年よりwebCG編集部に在籍。
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