アウディQ5 40 TDIクワトロ(4WD/7AT)
みなぎる上質感 2019.02.25 試乗記 日本に導入されたアウディ車としては実に約40年ぶりのディーゼルモデルとなる「Q5 40 TDIクワトロ」。しかしながら、2リッターディーゼルクラスはライバルブランドも力を入れる激戦区。“後出し”ならではの強さを見せることはできるのだろうか。190ps、400Nmでのせめぎあい
アウディ ジャパン待望のディーゼル日本導入第1号にQ5が選ばれたのは、必然……というか、予想どおりの展開といっていい。
なんだかんだいっても、日本ではSUVとディーゼルの親和性が高いというイメージは強く、欧州の高級車ブランドは日本でも総じてディーゼル販売が好調だ。「BMW X3」や「メルセデス・ベンツGLC」、そして「ボルボXC60」といったQ5のガチンコ競合車の動向を見ても分かるように、このクラスは各社ともディーゼル推し戦略があからさまである。X3は一説には国内販売の8割がディーゼルだというし、ボルボも企業戦略的にはディーゼル撤退ムードを醸しつつも、XC60にはしれっとディーゼルを置く。
Q5に追加されたディーゼルは彼らの新しい命名ロジックにならって「40 TDI」を名乗る……と同時に、既存の2リッターガソリンターボも「45 TFSI」へと改名した。「40」と「45」という車名から想像されるとおり、今回のディーゼルはQ5では手ごろなエントリーモデルという位置づけとなる。ガソリンの45 TFSIは2リッターながらも最高出力252ps、最大トルク370Nmをうたう高出力型であり、GLCでいうと「200」ではなく「250」に相当する。
Q5が搭載する2リッター4気筒ディーゼルターボは、すでに上陸済みのフォルクスワーゲン(VW)のそれと共通のユニットである。で、その出力、トルクの数値はVWでいうと「パサートTDI」と同じ。つまり、同エンジンではもっともハイチューン型となるわけだが、Q5がパサートより格上のクルマなのだから、実質的にこれ以外の選択肢はなかっただろう。
それにしても、2リッター4気筒で190ps、400Nm……という基本エンジンスペックがBMWの「20d」やボルボの「D4」とピタリと同じという事実からは、欧州におけるディーゼル競争の激しさがうかがえる。ちなみにメルセデスの「GLC220d」だけは排気量2.1リッター(2142cc)で170ps、400Nmと、どことなく分が悪い感があるが、新しい「C220d」で初上陸した新世代ディーゼルは2リッター(1949cc)で194ps、400Nm。今度はライバルをビミョーに上回っている。
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車内と車外で大ちがい
VWでは「ゴルフトゥーランTDI」と「ティグアンTDI」の150ps版、そしてパサートTDIの(Q5と同じ)190ps版……と、チューンちがいのディーゼルを同じ「MQB」プラットフォームで比較できるのだが、率直にいって、パサートTDIはかなり賑やかなクルマである。車体側の遮音・吸音では有利であるはずのパサートをもってしても、トゥーランやティグアンより明らかに騒々しいのだ。Q5にも搭載される190psディーゼルとはそういうエンジンということである。
ディーゼルを縦置きするQ5のTDIは、パサートTDIよりはっきりと静かである。少なくとも運転席に届くエンジン音はX3やXC60と大差ないか、あるいは少し静かなくらいだ。さすがはMQBよりひとクラス上の「MLBエボ」の車体である。このエンジンはもともとリミットの4500rpmまで引っかかりなく回るタイプだが、騒音対策の行き届いたQ5では、そんな軽快な回転フィーリングだけがうまく抽出されて伝わってくる。
ただ、走行シーンの撮影を見ていた編集担当の藤沢君は「うるさいですね」とひとこと(笑)。車内では感心する程度には静かなQ5のディーゼルも、車外に放出される排気音はそれなりのボリュームがあるようだ。
そういわれると、リアガラスを通して漏れ聞こえてくる排気音は、なかなかの迫力である。さすがの騒音対策で車内に届く音量自体はきっちり減衰されているのだが、あらためて耳を澄ましてみると、外に放出されているサウンドはけっこうな迫力だと気づく。まあ、ヌケのよさそうな快音ではあるけれど。
過給ラグはちょっと大きめ
パサートTDIでは迫力満点のパンチ力を見せてくれる190psディーゼルも、それより300kg近く重いQ5ではさすがにそうはいかない。必要十分ならぬ必要“十二分”の動力性能ではあるものの、スポーツモデルと呼びたくなるほどの過剰な迫力はない。まあ、そもそもがQ5のエントリーモデルの位置づけなので、良くいえば、それに相応しい上品さともいえる。
また、Q5のTDIは競合車に対して飛びぬけて重いわけではないが、軽いほうでもない。ドライバーが体感する動力性能の活発さでは、これより車重が数十kg軽くてレスポンスやサウンドなどのフィーリングづくりにも長けたX3に少し分がある……というのが実感だ。
そうはいっても絶対的な性能にはなんら不足のないQ5だが、少し気になるのは、スロットルを踏み込んで実際の加速Gが立ち上がるまでの瞬間的な“間”=ラグである。
この種の過給ラグはもちろんターボエンジン全般、とくに高性能ディーゼルでは大きめに出がちなのが通例だが、エンジン単体性能でも、またパワーウェイトレシオ/トルクウェイトレシオでも大差ない競合車と比較しても、Q5 TDIのラグは大きめというほかない。とくにワインディングロードで小気味よく走りたいときには、そのラグを想定してスロットル操作に“待ち”を入れる必要があるほどだ。
その理由を推察するに、変速機が「Sトロニック」、すなわちデュアルクラッチトランスミッション(DCT)であることが少なからず影響していると思われる。あらためて考えてみると、ディーゼルとDCTを組み合わせている乗用車は、欧州本国仕様ではいくつか例があるものの、日本で正規販売されるものでは、今のところアウディ(とVW)しかない。
ドライブモード選びは慎重に
知っている人も多いように、一般的なクラッチを油圧制御するDCTは、トルクコンバーター(=流体継ぎ手+動力変換器)を使う伝統的なATと比較して、いわゆる半クラッチの領域がせまく、そのときのトルク増幅効果も見込めない。DCTはそのぶんダイレクトで高効率ではあるのだが、柔軟性や融通性では逆にATにゆずる……というそれぞれの長所短所を、体感としてご存じの経験豊かなドライバーも少なくないはずである。
パサートTDIでも感じられたことだが、この190psディーゼルはそもそも過給ラグが大きめである。ただ、比較的軽量なパサートでは、クルマの乗り味にわざわざ指摘するほど強いクセをもたらすほどではない。しかし、同エンジンを積むクルマとしては現時点でQ5がもっとも大きく、前記のようにパサート比でも300kg近く重い。そして、それに加えてDCTということで、どうしてもクセが強く出てしまっているようだ。
Q5にはすべての制御を統合コントロールする「アウディドライブセレクト」が標準装備されていて、このクルマでは「オフロード」「エフィシェンシー(=低燃費)」「コンフォート」「オート」「ダイナミック」という5つの基本モードが選択できる。そのなかでデフォルトの標準設定にあたるのはオートだが、Q5 TDIの場合、もっともクセが強いのが、じつはそのオートだったりする。オートではスロットル操作から明確なラグが発生した後に、強烈なトルクが一気に立ち上がって、どうにもギクシャクしがちなのだ。
これと比較すれば、スポーツ志向のダイナミックは早開けスロットルでトルクの立ち上がりがさらに鋭くなるが、そのぶんラグも体感的に短くなる。逆に穏やかなエフィシェンシーやコンフォートはラグが大きくなるいっぽうで、トルクの立ち上がりもゆっくりで、結果的に落差が小さい。いずれにしても、どれもオートよりは違和感が少ない。Q5のドライブセレクトには6つめのモードとして「インディビジュアル(=個別設定)」があるから、これで自分好みの組み合わせを見つけるのも一興だ。
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はやりのオンデマンド型4WDとはひと味ちがう
……と、アウディ初のクリーンディーゼルということもあって、いろいろと重箱のスミをつついてしまったが、こうしたクセも「そういうもの」と認識して乗れば、決定的な弱点というわけでもない。また、こういう高トルクかつクセ強めのパワートレインと組み合わせたことで、今回はQ5というクルマそのものの美点を再認識させられたのも事実だ。
乗用4WDシステムは今や電子制御クラッチやカップリングによるオンデマンド型が主流で、Q5のそれも例外ではない。Q5が使う最新の「ウルトラクワトロ」の基本機構もそんな最近のトレンドに沿ったものだが、そこは乗用4WDの元祖を自認するアウディだ。リアにもドグクラッチを配して、低負荷時にはプロペラシャフトまで断絶・停止させてフリクションロスを減らすなど、やはり他社の4WDとは一線を画す。
さらには、基本的には前輪駆動がベースでありながら、同種のシステムのなかでもかなりの高頻度で後輪に駆動配分しているようで、とくにスポーツ志向のダイナミックモードにすると「フルタイム感」がさらに強まる。そんなときのQ5はESCのブレーキ制御もあってか、後ろから蹴り上げられるような俊敏な回頭性はX3などの後輪駆動ベース4WDにせまりつつ、同時にXC60に通じるFFベース4WDの安定感もあわせもつ。まさに「イイトコ取り」といった味わいはさすがである。
今回の試乗車にはオプションの連続可変ダンパー付きのエアサスペンションが装備されており、ドライブセレクトを硬派なダイナミックモードにセットすると、水平姿勢のまま、最小限のステアリング操作でグイグイ曲がっていく。こういう走りではDCTの電光石火的な変速も生きてくる。
感心したのはそういう場面で細かく凹凸する荒れた路面に遭遇しても、突っ張るようなエアサス特有のクセがほとんど出ないことだ。Q5の内外装の質感表現はクラストップ級に高く、全身にみなぎる硬質で正確な肌ざわりは、いかにもアウディの真骨頂である。だから、このフットワークの妙味にはエアサスそのものの優秀性とともに、車体の剛性づくりがうまいこともある。
独プレミアム勢のなかでは割安感高し
標準モデルの40 TDIクワトロで636万円、内外装コスメがスポーツ志向になる40 TDIクワトロ スポーツで657万円という価格設定は、BMWやメルセデスよりは割安感があるのは間違いない。その本体価格の額面ではXC60と同等といえるものの、先進安全デバイスがフル標準となるボルボに対して、Q5は追突されたときの衝撃軽減機能や斜め後方の死角アシストなどがオプションあつかいとなるなど、細かい装備内容まで吟味すると、XC60のほうが少し割安感がある。
また、走りに関しては動力性能面や軽快な操縦性ではX3がわずかに先行しているものの、安定感と回頭性のバランスでよりオールラウンドなのはQ5だろう。また、前記のようにDCTには一長一短があるが、しょっちゅうワインディングを走りたがるようなウデッこきには、小気味いいシフトフィールを重宝する向きがあるかもしれない。
(文=佐野弘宗/写真=荒川正幸/編集=藤沢 勝)
テスト車のデータ
アウディQ5 40 TDIクワトロ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4680×1900×1640mm
ホイールベース:2825mm
車重:1920kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼル ターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:190ps(140kW)/3800-4200rpm
最大トルク:400Nm(40.8kgm)/1750-3000rpm
タイヤ:(前)235/55R19 101W/(後)235/55R19 101W(コンチネンタル・コンチスポーツコンタクト5)
燃費:15.6km/リッター(JC08モード)
価格:657万円/テスト車=780万円
オプション装備:オプションカラー<マタドールレッドメタリック>(9万円)/シートヒーター<フロント/リア>(6万円)/Bang & Olufsen 3Dアドバンストサウンドシステム(18万円)/アルミホイール<5スポークダイナミックデザイン 8J×19 235/55R19>(17万円)/マトリクスLEDヘッドライトパッケージ&ヘッドライトウオッシャー(10万円)/アシスタンスパッケージ(26万円)/ラグジュアリーパッケージ(37万円)
テスト車の年式:2018年型
テスト開始時の走行距離:2925km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1)/高速道路(7)/山岳路(2)
テスト距離:372.3km
使用燃料:30.3リッター(軽油)
参考燃費:12.3km/リッター(満タン法)/11.9km/リッター(車載燃費計計測値)

佐野 弘宗
自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。
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