KTM 790アドベンチャー(MR/6MT)/790アドベンチャーR(MR/6MT)
成功作になる予感 2019.04.27 試乗記 人気の“アンダー1000”クラスに加わった、KTMの新型モーターサイクル「790アドベンチャー」。その造りと走りは、ダカールラリー18連覇を成し遂げた強豪ブランドの実力を感じさせるものだった。大きなニーズが見込める一台
オーストリアのバイクブランドであるKTMは、新型アドベンチャーモデル「790アドベンチャー」と「790アドベンチャーR」の国内販売を2019年5月に開始すると発表した。それに先立ち、メディア向け試乗会を開催した。
今回の790アドベンチャーファミリーは、2017年にコンセプトモデルが、そして2018年にその製品版が、イタリアのモーターサイクルショーEICMAでデビュー。そのタイムスケジュールに1年先行する形で発表された、並列2気筒エンジン搭載のネイキッドロードスポーツモデル「790デューク」とエンジンおよびフレームを共通としながらも、前後足まわりやエンジン出力の特性は変更し、オフロード走行における高い走破性と、長距離走行における快適性に重点を置いて開発された。
実はKTMにとって並列2気筒エンジンは、790が初の試みだ。これまでもKTMは、2ストローク単気筒エンジンや4ストローク単気筒エンジンでオフロード界を席巻し、そのオフロードマシンにロードタイヤを装着した“スーパーモタード”カテゴリーを構築、スポーツできる単気筒エンジン搭載マシンの姿を世界に広めてきた。そして、125ccから690ccまで排気量のバリエーションを持った単気筒スポーツモデル「デューク」シリーズを成功させた。
またその単気筒オフロードマシンから発展した、アフリカ大陸で行われていたダカールラリーでの勝利を見据えて開発されたV型2気筒エンジンを搭載するアドベンチャーファミリーは、ダカールが排気量上限を450ccとしたところで、大排気量を生かした長距離ツーリングと、地形を選ばないアドベンチャーライディングに焦点を当てた、まさしくアドベンチャー=冒険の旅のためのバイクとなった。
こうした成功を手にし、地位を確立してきたKTMが、あえて排気量をアンダー1000の790cc(正確には799cc)に抑え、さらには初挑戦の並列2気筒エンジンを開発してきた理由は明確だ。ここには大排気量アドベンチャーモデルからのダウンサイジング組、中型車からのステップアップ組、さらにはスポーツモデルからのスライド組など、日本を含む欧州や北米など二輪先進国市場を中心に、さまざまなキャリアとキャラクターのライダーが集まる巨大市場となっているからだ。したがってライバルメーカーたちも、この市場にこぞってニューモデルを投入している。
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個性も力強さもあるエンジン
そこに満を持して投入したのが790デュークであり、ここで紹介する790アドベンチャーファミリーだ。エンジンは冒頭で説明したとおり、新開発の並列2気筒。クランク前側と、DOHCシリンダーヘッドの2本のカムの間にバランサーを内蔵している。オープンデッキ構造を採用することで冷却効率を高めながらコンパクトサイズも実現した。
ユニークなのは、75度位相クランクを使用し、435度の不等間隔爆発を採用していること。これはKTMのV型2気筒エンジンと同じ爆発タイミングであり、新開発の並列2気筒ながら、KTMがラリーとアドベンチャーカテゴリーで知見を広めてきたV型2気筒エンジンと同じフィーリングを得ることができる、というものだ。それはBMWの「R」シリーズが採用する等間隔爆発の360度クランクとも、ヤマハの「MT-07」シリーズやトライアンフの「スクランブラー」シリーズ、さらにはBMWの新型「F」シリーズが採用する不等間隔爆発の270度クランクとも、カワサキの新型「Z650」系の180度クランクとも違う。
その爆発間隔はKTMが考えるベストなトラクション特性を生み出し、なおかつピックアップの速い高回転型の出力特性を生み出してきた。その代償として、低回転域でのトルクがやや犠牲となっていたのも事実だ。しかし今回試乗した790アドベンチャーは、その低回転域が使いやすい。同エンジンを使用する790デュークと比べても低中回転域のトルクが全域で太くなっている。しかしその感覚は、重いクランクが回転するときのトルク感ではなく、シリンダー内の燃料がしっかりと燃焼したときに生まれるトルク感というか燃焼感というか……ピストンやクランクの軽さを感じながら、同時にトルクも感じる不思議なフィーリングだ。だからこそ、そこから加速状態に瞬時に移ることができ、その吹け上がりも軽快で力強い。
その軽さをさらに強調するのが、車体だ。KTMはこれまで、スチール鋼管をハシゴ状に組み合わせたトレリス構造のフレームを定番としてきた。しかし790アドベンチャーではスチール鋼管フレームをベースとするバックボーンタイプを採用。エンジンをフレームの一部として使用することで、フレームをシンプルかつ軽量に仕上げている。
さらには燃料タンクを、フレームをまたぎながらエンジン両サイドを隠すほど下に長く伸びた“逆凹型”とすることで、燃料のほとんどをエンジン両サイド付近にとどめ、ニーグリップ部のスリムさを確保しながら低重心化を実現している。
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道もライダーも選ばない
豊かなトルクと軽やかに吹けるエンジン、軽量コンパクトなフレーム、スリムなニーグリップ付近のライディングポジション、そして低重心化。790アドベンチャーはそれらが組み合わさり、実に軽快な乗り味を実現している。830mmの標準シートは決して低いとはいえないが、その数字以上に足つき性がよく感じるのは、シート前方のスリム化や低重心化によるものだ。
その790アドベンチャーをベースに、オフロードでのパフォーマンスをアップするための数々のディテールを採用したのが790アドベンチャーRだ。高い位置に装着されたフロントフェンダーや一体型シートやショートスクリーン、そして前後ともに40mmもストロークがアップしたサスペンションがその主な変更点。またストリート/オフロード/レインの3つの走行モードに加え、オフロード走行に特化しアクセルレスポンスやリアタイヤのスリップアシストレベルを細かく調整できるラリーモードがセットされている。
大きくゆったりと動くサスペンションは、オフロードに入ると本領を発揮。かつて林道ツーリングを楽しんだ程度のオフロードスキルを持つ筆者はオフロードモードでも十分にパワフルに感じた。ラリーモードも試したが、アクセル操作に対するエンジンの反応がダイレクトになり、それだけで一層パワフルになったような印象となる。アクセル操作でリアタイヤを振り出して車体の向きを変えられるレベルのライダーなら、ラリーモードでスリップアシストレベルの中から自分好みのセットを見つけて、かなりハイレベルなオフロード走行も楽しめるだろう。
長い航続距離とそこでの快適性、さらにはオフロードの走破性を高めた790アドベンチャーと、それをベースにしながらさらなるオフロードでのパフォーマンス向上を図った790アドベンチャーR。世界一過酷なラリー、ダカールラリーで勝利し続け、アドベンチャーを知り尽くしたメーカーの新型アドベンチャーモデルは、2モデルをラインナップすることで、より幅広いライダーにアプローチできるだろう。
(文=河野正士/写真=荒川正幸/編集=関 顕也)
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【スペック】
KTM 790アドベンチャー
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=--×--×--mm
ホイールベース:1509mm
シート高:830/850mm
重量:196kg(燃料除く)
エンジン:799cc 水冷4ストローク並列2気筒DOHC 4バルブ
最高出力:95ps(70kW)/8000rpm
最大トルク:88Nm(9.0kgm)/6600rpm
トランスミッション:6段MT
燃費:--km/リッター
価格:149万円
KTM 790アドベンチャーR
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=--×--×--mm
ホイールベース:1528mm
シート高:880mm
重量:196kg(燃料除く)
エンジン:799cc 水冷4ストローク並列2気筒DOHC 4バルブ
最高出力:95ps(70kW)/8000rpm
最大トルク:88Nm(9.0kgm)/6600rpm
トランスミッション:6段MT
燃費:--km/リッター
価格:155万円

河野 正士
フリーランスライター。二輪専門誌の編集部において編集スタッフとして従事した後、フリーランスに。ファッション誌や情報誌などで編集者およびライターとして記事製作を行いながら、さまざまな二輪専門誌にも記事製作および契約編集スタッフとして携わる。海外モーターサイクルショーやカスタムバイク取材にも出掛け、世界の二輪市場もウオッチしている。
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