第30回:モーターショー委員長を緊急直撃!
なぜ東京モーターショー2019は猛烈バラエティー化したのか?
2019.10.22
小沢コージの勢いまかせ!! リターンズ
目指せ入場者数100万人!
いよいよ開幕する東京モーターショー2019。海外ブランドは5つしか出ないし、一部報道じゃ、モーターショーはオワコンだ! とか古くさい!! とか言われてますけどトンでもない。小沢に言わせりゃ今年の東モはハンパない。ある意味、日本が自動車産業だけじゃなくて全産業をかけて逆ギレ気味なまでの猛攻勢をかけてるんですわ。
その証拠が、ある意味一部の批判も辞さないコンテンツの猛烈バラエティー化!! 分かりやすいところでは、アンバサダーになぜかマツコ・デラックス、ドローンレースアンバサダーには日向坂46を起用。そのほか自動車版キッザニア、ガンダムの出し物、グルメキングダムと一見クルマとは無関係なメニューが続き、かつてはライバルとも目された東京オートサロンや、さらにスーパーカー協会とも初連携! まさになりふりかまわない人集めに出てるわけです。
大本はおそらく、モーターショーを主催する自工会会長で現トヨタ社長である豊田章男氏の「入場者数100万人!」の一声。前回の77万人のキープどころか、バブル期の再来すら狙ってるわけです。
ってなわけで、小沢は急きょモーターショー特別委員会の長田 准委員長(兼トヨタ自動車国内販売本部副本部長)を直撃。本音を伺ってみました。
サムライ的発想は御法度
小沢コージ(以下、小沢):ぶっちゃけ“なりふり構わない感”がすごいなと。マツコに日向坂48に、スペシャル自動車版キッザニア! バラエティー感がもうハンパない。
長田 准委員長(以下、長田):それだけの危機感だと思ってください(笑)。
小沢:一体だれが考えたんですか、このコンテンツ。
長田:基本的な企画はウチの若いスタッフです。ぶっちゃけ自工会はオジサンとオジイサンばかりで、面白くないものですから「係長とかもっと若い子連れてきて」と各方面にリクエストしました。
小沢:例えば目玉の「FUTURE EXPO」のゲートですが、これは本当に未来のジャパンへの入国をイメージ?
長田:その通りです。
小沢:とはいえ、ガンダムにアイドルにドローンレースって、ちと自動車から外れ過ぎてる気もするんですが。
長田:これは自工会の会議でも自虐的に言ったんですが、もはや自動車のサムライみたいな発想ではダメだと。様式美にこだわり過ぎた結果が、前回の来場者77万人という数値に表れたと思っていまして。目標は100万人ということで、もう一回自動車を認知していただかなければわれわれはじり貧になっていくだけですから。ガンダムがあってなにがあって、いろんなことをかけ算して「やっぱり自動車って楽しいよね」と。
カーショーからモビリティーショーへ
小沢:今回は輸入車ブランドの出展が少ないですが、海外から来たインバウンドの客にもアピールしようとされてますか?
長田:結局ですね、僕らのなりわいは、個人であろうが商売であろうが、人々に移動していただかないと成り立たないんですよ。インバウンドの方に分かりやすく伝えたいのは、これからは所有ではなく、利活用だという大変革です。シェアリングだろうがレンタカーだろうが、移動時のいろんなつなぎに最新技術が使われ、そういう面でも日本はこれからも楽しいということをアピールしたい。それがゆくゆくは僕らの商売の根っこになっていくわけですから。
小沢:一方で、今回のショーではシェアリングとかMaaS(Mobility as a Service)に対するコンテンツが少ないような?
長田:ここからはトヨタ自動車のモーターショー担当ということでいうと、トヨタブースにそういった展示は相当入れたつもりなので。僕らは僕らでそういったぶっ飛んだことをやるかもしれません。ものすごく極端に言うと、ウチは今年はクルマ(販売中の実車)を置かないかもしれない。
小沢:マジですか? 本当にモビリティーショーになる?
長田:他のメーカーさんは知らないですよ。トヨタに関しては、ですから(笑)。
キッザニアだけでも行く価値あり!
小沢:ところで章男会長からのプレッシャーは?
長田:そりゃもちろん(笑)。100万人をとにかく集めろがマストですから。会長のキャラはお分かりだと思いますが、にぎやかなことが好きですし、目標も明確。中でも一番言われていることは「お子さまにどうやって楽しんでいただくか」です。
小沢:そう考えるとやはり自動車版キッザニアに注目ですね。もともと、自動車関係では三菱さんだけが「体験カーデザイナー」をやってただけですけど、今回は他にもトヨタの「自動運転の開発者体験」とかホンダの「プロレーサー体験」とか。あれってすごく子供に人気でやるのが大変なんです。事前予約に時間がかかったり、あのキッザニアだけでも東京モーターショーに行く価値あるような。逆に、行っても人待ちでできなかったりしたらガッカリしちゃいますけど。
長田:分かりました。言っておきます。
小沢:それと、自工会としてオートサロンやスーパーカー協会と組んだってのは結構プライド捨てたなと思ったんですが。
長田:それは、さっきも言った「モーターショーにサムライ発想を持ち込むのはやめましょう」ということです。もっと柔軟に!
小沢:美学を守りすぎて自決してもしょうがないだろうと。
長田:そういうことです。ホントに今回はギリギリまで盛り上げますから(笑)。
ってなわけでまさに逆サムライ発想のなりふり構わない攻撃に出た東京モーターショー2019。みなさんもぜひ来てね。特にお子さん連れで!!
(文=小沢コージ/写真=小沢コージ、日本自動車工業会、トヨタ自動車、webCG/編集=堀田剛資)

小沢 コージ
神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 YouTubeチャンネル『小沢コージのKozziTV』
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