マツダCX-30 X Lパッケージ(4WD/6MT)
無味なる快作 2020.04.03 試乗記 スタイリッシュなマツダの新型SUV「CX-30」に、新世代ガソリンエンジン搭載モデルが登場。大きな期待を胸にステアリングを握った筆者だったが、その走りには、気になる点がないわけではなかった。ディーゼルみたいなガソリンエンジン?
「ディーゼルガソリンエンジン」……では、燃料補給時に油種を間違えそうなので却下。例えば「圧縮着火式ガソリンエンジン」というのはどうだろう? などと益体もない別名を考えているのは、マツダの革新的エンジン「スカイアクティブX」が、そのままの名前ではさっぱり特徴がわからないから。
ごく簡単にスカイアクティブXを紹介すると、ガソリンと空気の混合気を、ディーゼルエンジンのように高い圧力で自然発火(自己着火)させる新世代ユニットである。燃焼室内の混合気を、これまで以上にピストンでギュウギュウに圧縮し、同時多発的に「ドカン!」と爆発させる。そんなイメージ。従来より効率よく大きなアウトプットを得ることができ、ガソリンとディーゼル、両エンジンの“いいとこ取り”ができるとうたわれる。
ただしガソリンは軽油ほど高圧時に燃えやすくない。むしろ異常燃焼を起こしやすいから、自己着火させられる条件は非常に厳しい。一方、クルマは緩急自在に走れるのが醍醐味(だいごみ)だ。エンジンにかかる負荷、求められるアウトプットは大きく変化する。だからスカイアクティブXは、ガソリンが持つ潜在能力をさらに引き出すべく、どれだけ自己着火の範囲を広げられるかを追求したエンジンといえる。自己着火しない条件下では、通常通りスパークプラグで火花を飛ばして混合気に火をつけてやる必要がある。
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緻密な制御のなせる業
できるだけ自己着火する範囲を広げたいし、普通にプラグで火をつける状態からの切り替えもスムーズにしたい。そこでマツダはどうしたのか? 全域にわたってスパークプラグで火花を飛ばすことにしたのである。「エッ!? それのドコが新しいの?」と思うことでしょう。ワタシも思いました。
実は火花で混合気に火をつけるのではなく、高圧縮状態の燃焼室内で“火玉”が膨張することでより圧力を高め、自己着火しやすくしているのだ。マツダは、この方式をSPCCI(火花点火制御圧縮着火)と呼んでいる。圧縮着火(Compression Ignition)を火花で制御する(SPark Controlled)ですね。ちなみに、従来型の着火方式は、SI(Spark Ignition)。ここ、テストで出ますから。
もちろん、せっかくの新世代エンジンなので、できるだけ混合気を薄くして燃料を節約したい。燃え残りの排ガスも再利用したい。さりとて有害なNOx(窒素酸化物)は抑えないといけない。要件は厳しくなるばかり。
そのため、形状を工夫した専用ピストンや高い圧力に対応したインジェクター(燃料噴射装置)を開発。燃焼は自己着火に任せるディーゼルエンジンと異なり、スカイアクティブXでは、ガソリンエンジンらしく着火タイミングを細かく制御するのが特徴だ。加えて、燃えにくい炭をうちわで扇ぐがごとく、ブロワー(スーパーチャージャー)を装備して、強制的に空気と再利用する排ガスを押し込む仕組みを備える。スカイアクティブX、ずいぶんと複雑なシステムですね。コストかかりそう……。
なにはともあれ、ココまでしてガソリンエンジンの自己着火を実用化した執念はすごい。さすがはロータリーエンジンを量産車に載せた自動車メーカーである。
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主張しない主役
今回の試乗車は、マツダCX-30。「CX-3」と「CX-5」の間を埋めるミディアムコンパクトだ。ドアを開けて運転席に座ると、オッ!? クロスオーバーSUVモデルにして、なんと3ペダル式の6MT車! スカイアクティブXをダイレクトに堪能してくださいという編集部の親切心でありましょうか。
取る物も取りあえずといった感じでクラッチをつないで走り始めると、うーん、拙速な判断で恐縮ですが、あまりパッとしませんな。街なかでおとなしく走っているかぎり、エンジン回転数は時折2000rpmを超える程度。低回転域からトルキーで発進が楽。加速が力強い。が、全体にフィールがモッサリしているので、“手こぎ”でドライブするかいがあまりない。このエンジンはAT車で乗ったほうがよかったんじゃないでしょうか、というのが薄情者の第一印象だ。
順序がすっかり逆になってしまったが、スカイアクティブXは、2リッター直列4気筒の直噴エンジン。従来型ガソリンエンジン「スカイアクティブG」の圧縮比13.0はもとより、ディーゼルである「スカイアクティブD」の14.8をも上回る15.0という圧縮比から、180PS/6000rpmの最高出力と、224N・m/3000rpmの最大トルクを発生する。同じ83.5×91.2mmのボア×ストロークを持つスカイアクティブGのそれらが156PSと199N・mだから、スカイアクティブXのハイスペックぶりがうかがえる。
さらにスカイアクティブX搭載車は、マイルドハイブリッドシステムを組み合わせる。発電機を兼ねるスターターと小型のリチウムバッテリーを使って減速時にエネルギーを回収、必要に応じて、一時的にモーターがアシスト。さらなる燃費向上を図る。スカイアクティブXモデルのカタログ燃費(WLTCモード)は、15.8~17.0km/リッター。ハイブリッドシステムを持たないスカイアクティブGモデルは、14.8~16.2km/リッターだ。
ディーゼルエンジンに準じた着火方式を採るスカイアクティブXだが、厳重な防音対策が施されたこともあって、静粛性は高い。マツダブランドのイチオシテクノロジーにして、むしろ存在感を消すところに価値がある。「エコ技術とクルマ趣味の相性の悪さよ」。100km/h巡航時、トップギアでの回転数は2250rpm。革新的エンジンを積んだCX-30は淡々と走る。ドライブ中にヒマだと、ろくなことを考えない。
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コストパフォーマンスを考えると……
スカイアクティブXを積んだCX-30を山岳路に持ち込む。マニュアルギアボックスを生かして、3000rpm以上にエンジンを回してコンパクトSUVを走らせると、一皮むけてスポーティーな一面が顔をのぞかせる。なるほど、ディーゼルエンジンのレスポンスのよさと、ガソリンエンジンの伸びやかさが同居する。
1530㎏の車重に180PSだからバカっ速いわけではないし、パワーが劇的に盛り上がることもないけれど、SIで回る比率が上がるためか、素直にトップエンドまで回る爽快さがいい。若干、アンダーパワーを感じさせながら、だからこそパワーバンドを維持して走らせるところにスポーティーさが香る。
ペアを組む6MTもいい。シフトダウン時にではなく、アップ時に回転数を合わせてくれるありがたさはよくわからなかったが、見えないゲートが切られているかのような、いかにも精度が高いシフトフィールがうれしい。6枚のギアのうち何枚かは、スカイアクティブGのそれらと異なる歯数になっているのもぜいたくだ。
スカイアクティブX本来の訴求ポイントとは少々異なるところで喜んでいるドライバーだが、試乗車「X Lパッケージ 4WD」の価格が371万3600円からと知ると、称賛する気持ちも湿りがち。普通にCX-5が買える値段ですね。300kmほど走っての実燃費はリッター11km前後。酷な走りがたたって少々伸び悩んだか。スカイアクティブXの将来性はともかく、それを積んだCX-30に価格に見合った現世利益を求められるかというと、なかなか難しいんじゃないでしょうか。
つくってはみたものの。販売畑のマツダ関係者は頭を悩ませていることでしょう。クルマメディアの人間としては、自己着火型のガソリンエンジンを実用化したエンジニアの方たちに敬意を表しつつ、無責任に応援することしかできません。頑張れー!
(文=青木禎之/写真=三浦孝明/編集=関 顕也)
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テスト車のデータ
マツダCX-30 X Lパッケージ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4395×1795×1540mm
ホイールベース:2655mm
車重:1530kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ スーパーチャージャー付き
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:6段MT
エンジン最高出力:180PS(132kW)/6000rpm
エンジン最大トルク:224N・m(22.8kgf・m)/3000rpm
モーター最高出力:6.5PS(4.8kW)/1000rpm
モーター最大トルク:61N・m(6.2kgf・m)/100rpm
タイヤ:(前)215/55R18 95H/(後)215/55R18 95H(トーヨータイヤ・プロクセスR56)
燃費:16.4km/リッター(WLTCモード)
価格:371万3600円/テスト車=391万5980円
オプション装備:ボディーカラー<ソウルレッドクリスタルメタリック>(6万6000円)/スーパーUVカットガラス+IRカットガラス+CD/DVDプレーヤー+地上デジタルTVチューナー<フルセグ>(4万9500円)/360°セーフティーパッケージ<360°ビューモニター+ドライバーモニタリング+フロントパーキングセンサー>(8万6880円)
テスト車の年式:2020年型
テスト開始時の走行距離:3049km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:309.3km
使用燃料:29.1リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:10.6km/リッター(満タン法)/11.3km/リッター(車載燃費計計測値)

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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