EVの見方が変わるSUV 「日産アリア」のここに注目!
2020.07.24 デイリーコラム“ずんぐりEV”が主流になる日
鳴り物入りで量産型電気自動車(EV)の「リーフ」が登場してから、はや10年。日産は新たなEV専用モデル「ARIYA(アリア)」を発表した。同社がこれまで培ってきたEV開発のノウハウと最新のコネクテッド技術を融合させたという、完全新設計のクルマである。
ほぼ完成形ではあるものの、実際に発売するのはさらに1年後の2021年中ごろ。あまり焦らすと飽きられるのでは? ……なんて心配は余計なお世話なのだろうが、ルノー・日産・三菱アライアンスの今後のEV戦略を担うというだけに、極めて重要なモデルであるのは間違いない。
それがどうしてこのSUVタイプなのか? アリアの開発を担当した中嶋 光 車両開発主幹にたずねたところ「Cセグメントはパイが大きく」て、「いま主流となっているのがSUVだから」と、単純明快な答え。そういえば、天下のメルセデス・ベンツも初の量産型EV「EQC」はSUVだった。日産が“近い製品”として名を挙げる「テスラ・モデルY」もしかり。数年たったら案外、右を見ても左を見ても“ずんぐりしたEV”ばかり! なんて状況になるのかもしれない。
それにしても、“EVの新型”はどれも似通っていないだろうか? フロアにリチウムイオンバッテリーを敷き詰めて、その前後に独立したモーターを積み、シュッとしたボディーをまとう。日産はかつて、4つのホイールそれぞれに駆動用モーターを搭載するインホイールモーター車をたびたびモーターショーで提案したけれど、そういう“別の手”はないのだろうか。
前出の中嶋さんは「いまの技術ではレイアウト効率の観点から難しい」と苦笑する。
「タイヤのところ(=ばね下)に重量物があると、いろいろ問題が出てきちゃうんです。でも、今後、小さくて高性能なモーターが開発できたら、どうなるかわからないですよ」
そんな中嶋さんにアリア最大の長所は何かとたずねてみると、「室内の広さ」と即答した。新しいプラットフォームだけでなく、スペース効率に優れる新しいバッテリーと、モータールームをコンパクトにできる新しいモーターを同時に開発したからこそ、“ひとクラス上の室内空間”が実現できたのだと胸を張る。
「エクステリア、かっこいいでしょう? 見た目のいいクルマって、乗ってみると狭いことが多いんです。でもアリアなら、ファミリーにもしっかり使っていただけますよ」
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2021年は節目の年に
「効率」に「容量」とくれば、話はバッテリーである。アリアは60kWhのほか、90kWhもの大容量リチウムイオンバッテリーを採用。最長610km走れるというスタミナもトピックのひとつになっている。
日産はこれまでもリーフの開発を続けるなかで、そのバッテリーサイズを24kWh、40kWh、62kWhと拡大してきた。もちろんそれは、膨大な実証データに基づいてのことだろう。ということは、90kWhまで増やさないと世のニーズは満たされないのだろうか? その点、中嶋さんは「60kWhもあれば十分。僕だって、60kWhのモデルしか買おうと思わないですよ」と語る。
「とはいえ、EVで山に行く人はいらっしゃいますよね。あるいはキャンプとか。そのためには90kWhくらいあったほうが安心ですから、製品として扱っています。このカタログ値の610kmって、フツーに使っても500km走れるんですよ。一回の充電で。(そういうシチュエーションは)実際、なかなかないですから」
むしろこれからは、容量よりも“チャージ性能”が重要になるという。15分、20分でどこまでリカバリーできるのか。それはインフラと車両、双方の課題である。現在、日本国内のCHAdeMO急速充電器の出力は多くが50kWレベルにとどまるが、2021年内には150kWの急速充電器を普及させる計画もアナウンスされている。それはいつ、どこに、どれくらいできるのか? 肝心のところは中嶋さんから聞き出すことはできなかったけれど、アリアにはこれを生かせる充電機能(最大130kW)が与えられていて、それが明るいEV時代が描ける根拠になっている。
航続距離は常にEV普及のネックであり、それゆえ「EVは主に近場の移動を担うだけ」で、「それ以上のレンジはハイブリッド車や燃料電池車が担う」とされてきた。が、ここにきて、そうした見方は変わりつつあるように思える。
「そう。数年前の予想よりもはるかに速いペースでEVは増えるでしょうね。2030年くらいになれば“EVの時代”がくるんじゃないですか。日産の正式な見解じゃなくて、あくまで私個人の考えですけど」
さらに中嶋さんは続ける。
「EVは今後、自動車のスタンダードになっていくんじゃないですか。かつては何もなかったのに、いまではこんなに出てきて……。中国に至っては新車の半分がEVなんですから!」
アリアが発売されて、高出力のCHAdeMOが広まる2021年。EVの見方やEVとの接し方は、いまとはずいぶん変わっているのかもしれない。
(文と編集=関 顕也/写真=日産自動車、webCG)
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関 顕也
webCG編集。1973年生まれ。2005年の東京モーターショー開催のときにwebCG編集部入り。車歴は「ホンダ・ビート」「ランチア・デルタHFインテグラーレ」「トライアンフ・ボンネビル」などで、子どもができてからは理想のファミリーカーを求めて迷走中。
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