熱血“スバリスト”も大興奮! ここがすごいぞ新型「レヴォーグ」
2020.10.09 デイリーコラムこのサイズ感はあっぱれ!
新型「レヴォーグ」の予約受注が予想以上に好調だという。まだ正式には発売されていないがオーダーは可能で、ディーラーによれば、2020年9月末日の時点で早くも7000台以上の予約が入っているもようだ。モータージャーナリストによるプロトタイプの試乗動画も大人気で、乗り味の良さや新世代アイサイトの制御への評価はすこぶる高い。期待通り、総合的な商品力の高さはズバ抜けた存在といえる。
一般的な試乗記や試乗動画はすでに大量に出回っているので、ここでは“熱血スバルファン目線”で新型レヴォーグの魅力を探ってみよう。
まずは外観。2019年秋の東京モーターショーでデザインスタディーがお披露目されてからほぼ1年だが、新鮮味が薄れることはなかった。屋外の太陽光の下で見ると、これまでの印象以上にワイド感がありながら、凝縮感を伴ったコンパクトさが好印象。筆者をはじめとする“守旧派のスバルファン”が忌み嫌う「肥大化」をほとんど感じさせない。
数値的には若干拡幅しているし(+15mm)、デザイン的にもロー&ワイド感は強まっているが、“デカく重くなった感”がないのだ。開発をまとめた五島 賢氏も「日本のユーザーのために、何としても全幅1.8mを超えたくなかった」と語るなど、初代レヴォーグと同様に4代目「レガシィ」あたりのサイズ感を守りたかったとの強い思いがあらためて伝わる。
操縦性の良さに驚く
運転席に座ると「デジタルコクピット」と呼ばれる大きなモニター類が「従来のスバル車らしからぬ、今時っぽさ」を感じさせる一方、視界や着座環境の良さにより、わが家に帰ったような安らぎも得られた。新しいのに懐かしい。前方はもちろん、荷室の窓が小さくなったことで悪化が懸念された後方視界についても、全く問題なし。デザインの点でははやりを取り入れながら、スバルが昔から大事にしている設計思想のひとつ「0次安全」がしっかり守られた着座環境が整えられている。
走りについては、良い意味で想定内。「操縦性や動的質感が想像以上に秀逸」であることは想像できていた。しかし実は、それよりも一部のスバルファンが気にしているのはパワーフィール。新型のCB18型エンジンの最高出力は177PSということで、かつてのレガシィターボや旧型レヴォーグの2リッター車のような圧倒的ハイパワーは望めないのは明らかだ。それでもなお、官能性や応答性、太いトルク感、あるいは経済性などによって300PS級の高出力はなくともわれわれは満足できるのか? その答えはYesでもありNoでもある。
エンジンの中低速トルクは期待以上に太く、ミニサーキットで走る範囲においては痛痒(つうよう)感やモアパワー感を覚えることはない。
さらに、「STI Sport」グレードのドライブモードで「スポーツ+」を選んだなら、過給の立ち上がり方が非常に鋭敏なので、他のグレードと同じパワートレインとは思えない別物感がある。スバルのAWD車らしからぬフロントヘビー感の少なさや、操舵入力の応答性の鋭さ、ヘアピンでも鼻先がグイグイ入ってくれる感覚など、操縦性の美点は可変ダンパーではない「GT」系でも遜色なく備わっているのだが、このパワートレインの別物感は大きい。“走りの気持ち良さ”重視の人にはSTI Sport一択となるだろう。
乗れば乗るほど好きになる!
一般道での試乗はまだできていないので、結論づけるのは早計ながら、現時点では「300PS級のハイパワーを求める層も納得の質の高い走り」を備えていると断言したい。
アイサイトXも含めた総合的な商品力の高さはズバ抜けているので、300PSへの未練を断ち切ることはそう難しくはないはずだ。また、クルマ好きから否定的な目で見られがちなリニアトロニック(CVT)も大幅な刷新を受け、レシオ幅が広がりダイレクト感を増しているので、CVT嫌いの人にこそ乗ってほしいと推したい。
そう言いながらも「やっぱり昔ながらの大パワー感が恋しい」と思える瞬間が全くないと言えばウソになる。しかし、筆者は新型レヴォーグの壮絶な美点のひとつである「ステアリングフィールの甘美さ」にすっかり参ってしまった。2ピニオンギヤの採用などで不感帯のなさや、操舵入力に対する車体の反応のリニアさは500万円以下で買えるクルマ(店頭での車両本体価格はだいたい310万円~410万円くらい)としては圧倒的最高レベルだといえる。STI SportではAWDの制御も変わり、コーナー進入時に後輪への駆動配分が大きくなることで前輪の駆動力が減り、ステアリングの繊細さはさらに増す。この甘美な味がハイパワー化によって多少なりとも薄まることを想像すると、個人的にはパワーよりもステアリングフィールの良さを選びたいのだ。
実燃費やリアルワールドでの乗り味など、新型レヴォーグの真価はまだわからないともいえるが、乗れば乗るほど好きになれるクルマであることは間違いないと確信した。
(文=マリオ高野/写真=スバル/編集=関 顕也)
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マリオ高野
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