「ID.3」「ID.4」の日本導入はいつ? フォルクスワーゲンが掲げる電動化戦略の今と未来
2020.10.12 デイリーコラム2025年までに年間150万台のEVを販売する
2020年9月23日、フォルクスワーゲンが新型の電気自動車(EV)「ID.4」をオンラインでワールドプレミアした。日本時間の24日午前0時に発表ということで、自宅のPCの前で待機し、その様子をリアルタイムでチェックした私。家から出ずに、報道陣向けに開催された事前説明会にも参加できるなど、ホント便利な時代である。
ID.4は、2020年3月にプロトタイプがオンラインで公開。最近はデザインの一部が小出しにされたことなどで、デビューへの期待が高まっていた。そして、ついにベールを脱いだID.4は、コンパクトSUVスタイルのバッテリーEVで、フォルクスワーゲンらしいすっきりとしたエクステリアや、シンプルでクールなコックピットなどが好印象。個人的には新型「ゴルフ8」以上に興味津々である。
自動車メーカー各社は、消費エネルギーの削減や二酸化炭素排出量の抑制に向けて、クルマの電動化に積極的だ。フォルクスワーゲンも「Transform 2025+」戦略の一環として電動化を進めており、フォルクスワーゲンブランドだけでも、2022年までに主要セグメントにEVを投入し、2025年までには年間150万台のEVを販売するとしている。そのために立ち上げたのが「ID.」と呼ばれるEVシリーズで、かつてブランドの主役が空冷「ビートル」から「ゴルフ」に取って代わったように、このID.ファミリーを次世代のフォルクスワーゲンを担うモデルに育てたい考えである。
それを支えるために新たに開発されたのが、「MEB(モジュラー・エレクトリック・ツールキット)」と呼ばれるEV専用のプラットフォーム。電気モーターを含む駆動ユニットをリアアクスルに一体化する一方、駆動用バッテリーをアンダーボディーに搭載することでフラットなフロアを実現。これにより、広い室内スペースに加えて、価格競争力、長い航続距離、短い充電時間などを実現するとともに、ハッチバック、SUV、ミニバンなど、さまざまなバリエーションを生み出そうというのだ。
日本導入は2022年以降の予定
もちろん、ID.4もこのMEBをもとにつくられている。発表時の資料によると、全長4.58mのボディーには、最高出力204PS(150kW)の電気モーターと容量77kWhのバッテリーが搭載され、WLTPモードの航続距離は520kmを達成しているという。
フォルクスワーゲンでは、このID.4に先駆けて、ハッチバックの「ID.3」を発表している。本国では2019年5月に事前予約を開始し、2020年9月11日にはドイツのフォルクスワーゲン本社に隣接する「アウトシュタット」(フォルクスワーゲングループのテーマパーク)で、第1号が納車になっている。事前予約専用の「ID.3 1st」は3万台の限定生産だが、すでに2万7000台以上の正式注文が入っているという。2020年の第4四半期にレギュラーモデルの納車が始まると、ID.シリーズへの注目はますます高まることになるだろう。
日本では、同じフォルクスワーゲングループのアウディがSUVクーペスタイルの「e-tronスポーツバック」を発売し、ポルシェがフル電動スポーツカー「タイカン」の受注を行っている。どちらも比較的大型のハイパフォーマンスモデルであるぶん、価格は高価。これに対し、ID.3やID.4は比較的コンパクトなサイズなので、効率的な走りに加えて、多くの人の手が届く価格を実現してくれるものと期待している。私自身、「ついにEVのオーナーになる日が来るのか」と、ひそかに日本導入を楽しみにしている。
ただ、フォルクスワーゲン グループ ジャパンによれば「日本へのID.ファミリーの導入は、マーケット状況を含めて検討しており、2022年以降を予定しています」とのこと。一日も早くその日が来ることを祈りつつ、それまでは地道に愛車「ゴルフ7」のローンを返済するつもりの私である。
(文=生方 聡/写真=アウディ、フォルクスワーゲン、ポルシェ/編集=堀田剛資)
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生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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