しかも10V型の大画面で
2DINの装着スペースさえあれば多くのクルマに大画面カーナビを装着できるとの触れ込みでフローティング式ディスプレイのストラーダFシリーズが市場投入されたのが2016年。以来、パナソニックは毎年のように改良を重ね2019年にはディスプレイサイズを10V型にまで拡大してわれわれを驚かせたが、2020年、さらなる魅力を加えた新シリーズを送り込んだ。その最上位モデルがCN-F1X10BLD。型番を従来モデルと比較するとLが増えただけに見えるが、これが意味する違いは格段に大きい。新型はなんとカーナビのディスプレイに世界で初めて有機ELを導入したのだ。その違いは一目瞭然。ディスプレイはさらに薄くなり、最も薄いところで4.7mm厚となった。枠の部分も軽量かつ剛性の高いマグネシウムダイキャストとなり質感がいっそう上がった。新シリーズが「F1Xプレミアム」の愛称を名乗るのもわかる気がする。
薄さと質感ともども正面から見たときのルックスもよくなった。それは従来モデルが売り物とした狭額縁がさらに追求され、映像パネルの外枠が極めて狭くコンパクトになったからで、もはや最新の家庭用テレビを思わせるスマートさだ。それに伴いディスプレイの重量も約30%低減されて約700gとなり、耐振動性が高まるなどいいことずくめの有機ELディスプレイである。
見た目向上のメリットも大きいが、有機EL導入の本来の目的が高画質の追求にあるのは言うまでもない。自発光式の有機ELは色の再現性が高く、特に黒の描写能力においては液晶の比ではない。有機EL本来の特性とバックライトを必要としないことが可能にしたのが漆黒の黒の再現性である。黒の描写はすべての色再現の基本といってよいだろう。
車載型ディスプレイの観点から見ると、外光への対処も十分に考慮されなければならないが、有機ELはその点でも有利である。それは前述したバックライトを持たないことに加えて、もともと見る角度によって輝度変化が少ない点やハイコントラストであるという有機ELの特質がここでも生きている。加えて、低反射フィルムをディスプレイ表面に貼り、また内部をエアレス構造にすることによって外光の反射による映り込みをこれまで以上に抑え込み、快適な視認環境を幅広く整えることができたという。
有機ELならではの高画質表示能力がいかんなく発揮できるのが映像の再生だ。ストラーダの、他社モデルではまねのできない特徴のひとつにブルーレイディスクの再生があるが、CNF1X10BLDは有機ELディスプレイを搭載したことにより、さらにハイレベルなブルーレイ再生を楽しめることになったのだ。映像ファンが一度これを見たら普通のカーナビのDVD再生には戻れないだろう。HDMI端子も装備しているので、対応するディスプレイとつなげれば後席でもブルーレイ映像がHD画質で見られることも付け加えておこう。
また映像の高画質化とともにサウンド面が強化されたことも忘れてはならない。具体的な手法については難解な説明になるので避けるが、とにかくこれまで以上にひずみ感のないクリアな音質を実現し、映像の高品位に負けないサウンドに仕立てられたとメーカーでは自負している。
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専用ドライブレコーダーも高画質が自慢
もうひとつ、有機ELを搭載したCN-F1X10 BLDには、専用のドライブレコーダーが用意されたことも見逃してはならないニュース。このCA-DR03HDTはパナソニック初の前後2カメラからなるドライブレコーダーなのだが、ナビ本体とは高品位なHDTVI接続されることで従来比約2.6倍の表示解像度で有機ELディスプレイに映像を高精細に表示することができる。やはり専用のリアビューカメラ(CY-RC500HD)も同じ接続方式となるため、後退時にはこれまで以上の高精細な画像で後方の安全を確認できるはずだ。
これらハード面での充実に比べると、ナビ機能などに目立った新機能が見られないのは寂しいところだが、これまでもストラーダは最新の渋滞情報に基づく案内機能や細かいルート設定機能、誰にでもわかりやすく伝える安全・安心運転サポート機能(道路標識などの音声および表示や高速道路などでの逆走検知など)をずいぶん前のモデルから備え、すでに完成の域に達しているのだからいまさら変える必要がないのかもしれない。2020年モデルではこれらを目に見えないところで細かいリファインを重ねているはずだ。だが、そうした重箱の隅をつつくようなことを言う前に、もっとストラーダに注目したいのは採用している地図についてである。カタログなどではなかなか前面に打ち出していないので気づきにくいかもしれないが、カーナビの最も基本といえる地図データにゼンリンの地図データを採用している点だ。ゼンリンのデータは建物の形や道幅を緻密に描写した全国市街地図(全国の市街地を100%カバー)を搭載しているので、地図から目的地を探しやすいうえ、住所や施設名などから目的地を探す場合も、小さな施設や個人宅(すべてとは言い切れないが)にも詳細な入り口情報が入っているので最後の最後まで案内してくれる。これは道案内機器としてのナビにとっては何物にも代えがたい機能といえるだろう。これらはゼンリンが全国くまなく調査しているからこそできるものだ。今回の製品に搭載される地図の鮮度は2019年11月に調査終了したものなので、新しさの点でも文句ない。ストラーダを購入後に刻々と変わる地図の情報更新に対しても、最大3年の無料地図更新(全地図更新1回、部分更新は2カ月に1回、いずれも2023年12月15日まで)が付いてくるので、その間は安心して鮮度の高い地図で走ることができる。
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webCG 編集部
1962年創刊の自動車専門誌『CAR GRAPHIC』のインターネットサイトとして、1998年6月にオープンした『webCG』。ニューモデル情報はもちろん、プロフェッショナルによる試乗記やクルマにまつわる読み物など、クルマ好きに向けて日々情報を発信中です。
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