プジョー3008 GT BlueHDi(FF/8AT)/リフターGT(FF/8AT)
調律の妙 2021.04.27 試乗記 国内外で販売好調が伝えられているプジョーだが、その秘密は一体どこにあるのだろうか。ミドルサイズSUV「3008」とマルチパーパスビークル「リフター」の最新モデルに試乗し、快進撃の理由を考えてみた。販売の柱となった3008
先日の「3008 GTハイブリッド4」の試乗リポートは、文中でも触れているように、インポーターが「オールSUV~」と銘打って開催したフルライン試乗会で取材したものだ。そういわれてみると、プジョーの国内ラインナップは、いつしかクロスオーバーSUVが非常に充実した構図になっていた。車名が「2」「3」「5」ではじまる各クラスすべてに4ケタ車名(=プジョーにおけるSUV系の車名)の商品がすでにあり、商用車由来の箱型ワゴンであるリフターまでもが、兄弟車との差別化を図るためにSUV風の仕立てになっている。
最近、地元欧州での好調が伝えられるプジョーを後押ししたのは、欧州カー・オブ・ザ・イヤーを獲得して、市場でも大ヒットしている現行3008といわれる。また、日本でのプジョーの販売台数も2015年から2020年まで6年連続で右肩上がりとなっているが、その日本市場でも3008が重要な柱であることは間違いないようだ。2017年3月に国内発売された現行3008は、2021年初頭のマイナーチェンジ直前までに日本で累計8309台を売り上げたという。この間の日本におけるプジョー全体の販売台数は合計3.9万台強だから、ここ数年に日本で売れたプジョー全体の2割強が3008ということになるわけだ。
日本の輸入車市場では、ドイツ車以外のポピュラーブランド(事実上はほぼフランス車とイタリア車)はBセグメント以下のコンパクトモデルしか売れない(=台数のわりに利益率が低い)のが積年の課題である。その意味でいうと、3008はCセグメントであるだけでなく、より高付加価値のSUVにして、価格も400万円台が中心となっている。そんな3008を新たな売れ筋商品に昇格させられたプジョーの日本戦略は、ビジネスとしては典型的な成功例といっていい。
捨てがたいディーゼルの魅力
……と、そんなことを思いながら、今回の試乗会で3008に乗ってみた。先日紹介したGTハイブリッド4以外の通常エンジン車では最上級となる「GT BlueHDi」である。その名のとおり2リッターのディーゼルエンジンを積む3008だが、最近プジョーが日本で売れているもうひとつの理由が、ディーゼルラインナップの充実にあるのは容易に想像がつく。将来的には逆風が強くなりそうなディーゼルも、今この瞬間で見れば、その性能と維持費とのバランスはやはり魅力的である。
3008全体における今回のマイチェンのキモは、エクステリアのアップデートである。その内容は最近のプジョーに共通するデザイン言語に沿ったもので、フロントエンドにはライオンの“牙”を思わせる縦長のデイタイムランニングライトをあしらい、フレームレスとなったセンターグリルは広範囲にわたって不連続に流れるグラデーションを描く。テールランプは片側3連モチーフを維持したまま、その内部がライオンの“爪”跡をイメージしたというカギ状のLEDライトになった。
メカニズムはエンジン性能の数値がわずかに変わっている(新排ガス基準への対応か)以外に特別なアナウンスはない。実際、今回のような軽井沢のワインディングロードを中心とした短時間試乗では、新旧の区別がつくほどの変化は感じられなかった。
昔ながらのプジョーやフランス車がお好みの向きに申し上げておくと、現行3008の乗り味はかつてのプジョーの代名詞だった“ネコアシ”とはちょっとちがう。アシの動きは非常に滑らかなのだが、上屋の動きは前後左右ともに抑制がきいていて、かつてのような舗装を素手で触っているかのようなステアリングフィールではない。そのかわり……というか、そうしたフラット姿勢を維持するシャシー特性のおかげもあって、例の超小径の異形ステアリングを無遠慮にスパスパと操作しても、3008じたいは姿勢を崩すことなく、あくまで安定した身のこなしに終始する。このあたりの調律はなかなか見事である。
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意外に使えるグリップコントロール
続いて乗ったのはリフターである。リフターは日本でおなじみの「ルノー・カングー」と同様の商用車由来のレジャービークルであり、「シトロエン・ベルランゴ」とは上屋も含めた基本設計を共有する兄弟車である。
リフターは内外装デザインのほか、前記のようにSUV仕立てとなるところもベルランゴとの差別化ポイントだが、それは単純にそれ風の加飾にとどまらない。地上高もベルランゴ比できちんとリフトアップされており、「アドバンストグリップコントロール」やヒルディセントコントロールが装備されるのもリフターだけで、それなりの技術的な裏づけも施される。
プジョーのグリップコントロール機能はセレクターで舗装路、雪、泥、砂などの中から路面を選ぶだけで、トラクションコントロールや駆動輪の左右ブレーキを独立制御して最大限の駆動力を引き出す。本気でスタックするようなリスキーな路面で4WDにかなうものではないが、事前にセットしておけば、悪路でもあまり気負わずに運転できるメリットはある。ちなみに、このリフターだけでなく、3008、そして「2008」や「5008」のすべてに同機能(とヒルディセントコントロール)が標準装備されるのも、プジョーSUVの大きな自慢だ(3008 GTハイブリッド4のみ例外的にアドバンストグリップコントロールは非装備)。
知っている人も多いように、リフターはまず台数限定の「デビューエディション」が上陸して、デビューエディション完売後の2020年11月に、2種類のカタログモデルが正式発売となった。現在のラインナップはつい最近の2021年3月に見直されたものだが、実質的には以前の「GTライン ファーストリミテッド」が「GT」に改名されたくらいで、エントリーモデルの「アリュール」ともども、クルマそのものの内容に大きな変化はない。
17インチタイヤが効果絶大
というわけで、今回試乗したリフターは先日に新設定されたばかりのGTである。リフターの最新カタログモデルの装備内容を最初のデビューエディションと比較すると、アリュールはそこからガラスルーフや天井まわり収納を含む「マルチパノラミックルーフ」を省いたものと考えていい。上級のGTはデビューエディションと同様にマルチパノラミックルーフを標準装備しつつ、グリルやルーフレール、ステアリングホイールやシート表皮がGT仕様となり、タイヤもより低偏平のサマータイヤになる。つまり、最初のデビューエディションは、現在のアリュールとGTの中間的な内容だったわけだ。
今回は個人的にデビューエディション以来のリフター試乗となった。そのときの記憶をたどると、新しいリフターGTの17インチタイヤの効能は大きく、足腰のしっかり感は確実に増している。
それでも、その直前に乗ったのがより背が低い3008だったこともあって、頭からグラッと傾くロールをまったく感じないわけではない。いっぽうで、そのぶん荷重移動のメリハリがつきやすいので、ステアリングやシートから伝わる接地感は3008より濃厚だったりもする。しかも、今回の17インチの「グッドイヤー・エフィシェントグリップ パフォーマンスSUV」が上屋の動きをほどよく抑制している絶妙感もあり、「旧来のフランス車好きには3008よりリフター、さらに最推奨株はリフターGTか?」と思ってしまったのは事実だ。
それにしても、ワインディングのタイトなS字コーナーで例の超小径ステアリングを素早く切り返すような操作をしても、この食パンみたいな縦横比の背高グルマが路面に吸いつくように正確かつ俊敏にクリアしていくのは見事というほかない。
(文=佐野弘宗/写真=向後一宏/編集=藤沢 勝)
テスト車のデータ
プジョー3008 GT BlueHDi
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4450×1840×1630mm
ホイールベース:2675mm
車重:1640kg
駆動方式:FF
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼル ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:177PS(130kW)/3750rpm
最大トルク:400N・m(40.8kgf・m)/2000rpm
タイヤ:(前)225/55R18 98V M+S/(後)225/55R18 98V M+S(コンチネンタル・コンチクロスコンタクトLX2)
燃費:16.6km/リッター(WLTCモード)
価格:473万6000円/テスト車=549万9830円
オプション装備:ボディーカラー<プラチナグレー>(6万0500円)/パノラミックサンルーフ(15万3000円)/ナビゲーションシステム(24万8380円)/ETC(1万0450円)/ビーウィズプレミアムスピーカーセット<フロント>(13万2000円)/ビーウィズプレミアムスピーカーセット<リア>(8万8000円)/ビーウィズDSPプロセシングアンプ(7万1500円)
テスト車の年式:2021年型
テスト開始時の走行距離:2717km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(軽油)
参考燃費:--km/リッター
プジョー・リフターGT
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4405×1850×1880mm
ホイールベース:2785mm
車重:1650kg
駆動方式:FF
エンジン:1.5リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼル ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:130PS(96kW)/3750rpm
最大トルク:300N・m(30.6kgf・m)/1750rpm
タイヤ:(前)215/60R17 100H/(後)215/60R17 100H(グッドイヤー・エフィシェントグリップ パフォーマンスSUV)
燃費:18.2km/リッター(WLTCモード)
価格:361万円/テスト車=394万7810円
オプション装備:ボディーカラー<ディープブルー>(6万0500円)/ナビゲーションシステム(25万4100円)/ETC(1万0450円)/フロアマット(1万2760円)
テスト車の年式:2021年型
テスト開始時の走行距離:1751km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(軽油)
参考燃費:--km/リッター

佐野 弘宗
自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。
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