BMW R nineT(6MT)
飾っておくのはもったいない 2021.07.29 試乗記 レトロでありながらもアグレッシブなスタイリングと、見た目にたがわぬスポーティーな走りで人気を博す「BMW R nineT」。パンチの利いた空油冷ボクサーエンジンを搭載するBMWのロードスターモデルは、大幅改良によってどのような進化を遂げたのか?眺めているだけでも満たされる
「所有欲が満たされる!? 何それ。バイクは走ってナンボでしょ」。そう考えていた時期がワタシにもありました。が、BMW R nineTを前にすると、うーむ、バイクでも所有欲を満たしたい! すばらしい塗装。金属パーツの高い質感。梨地仕上げのバーハンドル。ブッ太いフロントフォークにステアリングダンパー。全身から醸し出される“いいモノ感”がスゴい。屋内ガレージに置いて飾ったら、いかにも映えそうだ。
R nineTは、長い歴史と伝統を誇るボクサーツインを搭載した、ヘリテージラインの中核モデルである。2013年に登場して以来、レトロテイストのデザインが人気を博し、スクランブラー、カフェレーサー、そしてデュアルパーパス風の「アーバンG/S」など、次々とバリエーションを増やしてきた。愛車を自分好みにカスタムするアフターパーツが豊富なことも、同シリーズのセールスを底支えした。
2021年には、エンジンを中心に大幅に手が入れられ、最新の排ガス規制「EURO5」に対応。より精緻に燃焼をコントロールするため、スロットル・バイ・ワイヤが導入されたことも新しい。ノーマルの「ロード」に加え、スポーティーな「ダイナ」、穏やかな「レイン」と、3種類のライディングモードが新設されたのも、その恩恵だ。R nineTの車両本体価格は、224万円。
トルクフルでパンチの利いた空油冷ボクサー
ネオクラシックらしくリアを短くカットしたシートにまたがると、身長165cmの昭和体形でも、両足親指の付け根付近まで接地する。シート高は805mm。
キーをひねれば、ズロン! ボディーが左右にゆすられる。オーナーの方は、水平対向エンジンに火を入れるたび、「BMWに乗ってるんだなァ」と実感するわけだ。
グリップに手を伸ばすと、軽く前傾姿勢になるが、自然でムリのないライディングポジション。タンクまわりはずいぶんとボリュームがあるが、後部はグッと絞り込まれているので、膝で挟むと意外なほどスリムに感じられる。
1169cc水平対向2気筒は、109PS/7250rpmの最高出力と、116N・m/6000rpmの最大トルクを発生。改良前の最高出力は110PS/7750rpm、最大トルクは同じだから、エンジン特性としては、若干“中低回転域に振られた”感じだ。実際、バイエルンの空油冷ボクサーは、クランクの回り始めから224kgのボディーを力強く押し出していく。ツインカムのヘッドメカニズムを持つもののそれほど高回転を好まず、街なかでは3000~5000rpm付近を常用とする。いわゆる“トルクで走らせる”タイプだ。
クラッチを合わせると、アスファルトを踏みしめるような、見かけにたがわぬ重厚感ある走りがいい。1.2リッターの排気量を生かしてロードモードでも十分速いが、試しにダイナに変えてみると、如実に加速力がアップする。絶対的な速さもさることながら、スロットル操作に対する噛(か)みつくかのレスポンスが印象的で、メリハリの利いた、パンチのあるライディングを楽しめる。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
やっぱりバイクは走らせないと!
新たに採用されたクルーズコントロールは設定が簡単。そのうえ巡航中でもスロットル操作による加速を受け付け、スロットルを戻せばもとの設定速度に復帰するのが便利なところだ。トップギア6速での100km/h走行は、エンジン回転数3500rpm前後だから、余裕綽々(よゆうしゃくしゃく)。ボクサーエンジンの低いビートを聞きながらクルーズするのは、R nineTに乗る醍醐味(だいごみ)のひとつだ。幸運にも同車のオーナーになったなら、長旅に出ない手はない。
縦置きしたボクサーツインからシャフトを介して後輪を駆動するR nineT。見るからにガッシリしたつくりで、一見、“曲がり”は得意ではないようだか、さにあらず。ちょっとスポーツしている気分に浸る程度なら、安定して狙ったラインを素直にたどるハンドリングが乗り手を喜ばせる。適度な重量感。スッキリしたステアフィールも心地いい。
たしかにR nineTは高級感あふれるし、カッコよくて目で愛(め)でるのもありだけれど、やはりシートにまたがってボクサーツインを歌わせてこそのモトラッド。右に、左に、と夢中になってカーブをこなしていると、「所有欲が満たされる!? 何それ」といった感じだ。
(文=青木禎之/写真=郡大二郎/編集=堀田剛資)
【スペック】
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=2105×870×1100mm
ホイールベース:1490mm
シート高:805mm
重量:224kg
エンジン:1169cc 空油冷4ストローク水平対向2気筒DOHC 4バルブ(1気筒あたり)
最高出力:109PS(80kW)/7250rpm
最大トルク:116N・m(11.8kgf・m)/6000rpm
トランスミッション:6段MT
燃費:5.1リッター/100km(約19.6km/リッター、WMTCモード)
価格:224万円

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
-
フィアット500トリノ ハイブリッド(FF/6MT)【試乗記】 2026.10.13 電気自動車からエンジン搭載車へと華麗に変身! 日本では珍しい、4代目「フィアット500」のマイルドハイブリッドモデルに試乗。1リッターの自然吸気エンジンを6段MTで駆るイタリアンコンパクトは、今のクルマが忘れてしまった楽しさに満ちていた。
-
ボルボES90ウルトラ ツインモーター パフォーマンス(4WD)【試乗記】 2026.10.12 ボルボの電気自動車(BEV)「ES90」のトップモデル「ウルトラ ツインモーター パフォーマンス」を駆り、東京から初秋の新潟へ。往復700kmを超えるロングドライブで分かった新型5ドアハッチバックモデルの実力と、BEVで気になる充電環境のリアルな今を報告する。
-
フェラーリ・プロサングエ ハンドリング スペチアーレ仕様(4WD/8AT)【海外試乗記】 2026.10.8 フェラーリの4ドア4シーターモデル「プロサングエ」に、「ハンドリング スペチアーレ」を名乗るスペシャルバージョンが登場。その走りは従来モデルからどのように変わったのか? 跳ね馬の原産国、イタリアで確かめた。
-
トヨタ・ランドクルーザー“FJ”VX(4WD/6AT)【試乗記】 2026.10.7 新たにシリーズに加わった「ランドクルーザー“FJ”」は、ポップな見た目から簡易版のように思われるかもしれないが、その中身は紛れもなく本物であり、道なき道をグイグイと突き進む。これもまた「どこへでも行き、生きて帰ってこられる」を体現する一台である。
-
スバル・レヴォーグ レイバック プレミアムS:HEV EX(4WD/CVT)【試乗記】 2026.10.6 「スバル・レヴォーグ レイバック」にストロングハイブリッド搭載モデルが登場。高効率なパワーユニットが積まれたのはもちろんのこと、既存の純エンジン車とはデザインやボディーサイズも違っているというから興味深い。上位グレードの「プレミアムS:HEV EX」を試す。
-
NEW
スズキの未来を徹底検証! 技術戦略説明会から“10年先のスズキの姿”を夢想する
2026.10.16デイリーコラム年間生産500万台で、Dセグメントまでカバーする巨大メーカーに!? スズキが発表した「10年先を見据えた技術戦略2026」を徹底検証。技術開発に製品開発、インドを核としたグローバル戦略などの中身を通して、「10年先のスズキの姿」を予想した。 -
NEW
賢い選択 ――キャデラック「LYRIQ」フラットプランのすゝめ――
2026.10.15投資家も太鼓判! 「キャデラック・リリック」×フラットプランという最適解<AD>クルマが変わり、時代も変われば“持ち方”だって変化する? お金のプロである投資家が、「キャデラック・リリック」の残価保証型リースを勧める理由とは? 夢の「2台持ち」をかなえる、最新電気自動車の賢い選び方を考えた。 -
間もなく正式発表 ミツオカの新型2シータースポーツカー「LA1」を予測する
2026.10.15デイリーコラム光岡自動車が2026年11月26日に正式発表を予定しているアメリカンスタイルの新型2シータースポーツカー「LA1」。現在公開されているLA1の画像とティーザーサイトに掲載された情報から、その特徴を分析する。 -
「BYDラッコ」「スズキeスカイ」登場で卍どもえに 軽乗用BEVの覇権はどこが握る?
2026.10.14デイリーコラムこれまで「日産サクラ/三菱eKクロスEV」と「ホンダN-ONE e:」のみだったところに「BYDラッコ」と「スズキeスカイ」が加わり、軽BEV市場がにわかに盛り上がりを見せている。どれもほぼ同じ床面積を持つBEVだが、比べてみるとその中身は結構違う。今後の覇権を握るのはどの陣営か。 -
第132回:軽EVのデザインを考える(前編) ―「スズキeスカイ」にみる“大衆車メーカー”スズキのスゴみ―
2026.10.14カーデザイン曼荼羅希代の凡作か? 実はすべてが計算のうちか? スズキ初の軽乗用電気自動車「eスカイ」の造形を、カーデザインの識者と考察。つかみどころのないイメージの背景にある、“大衆車メーカー”スズキの慧眼(けいがん)に思いをはせた。 -
先進のSUV「エクストレイル」という選択
2026.10.13SUVのフロントランナー 日産エクストレイルの魅力に迫る<AD>4代・四半世紀にわたって進化を重ね、SUVブームのなかでも開拓者であり続けてきた「日産エクストレイル」。その先進技術がもたらす“乗ればわかる喜び”とは? 最新世代の到達点について、詳しくリポートする。




















































