ボルボXC60 T6 AWD R-DESIGN(4WD/6AT)【試乗記】
快適な高速ツアラー 2011.03.30 試乗記 ボルボXC60 T6 AWD R-DESIGN(4WD/6AT)……669万円
ボルボのスタイリッシュなSUVモデル「XC60」。さらに特別な内外装と足まわりが与えられた、「R-DESIGN」の実力とは……?
うれしいニュース
バケツの底が抜けたようなドシャぶりの雨。早朝の大手町。しぶきを上げながら迎えにに来てくれたのは、「ボルボXC60」。しゃれたSUVだ。
2001年に初代「S60」がデビューしてからこっち、イエテボリの自動車メーカーは、すっかりスタイリッシュ方面へと舵(かじ)をきった。「北欧デザイン」という言葉がよく似合うクルマをラインナップするようになった。2008年に登場したXC60もそうした流れに乗ったクルマで、S60をして「4ドアクーペ」と呼ぶならば、こちらは「SUVクーペ」とでも言うべきか。小股の切れ上がった流麗なスタイルがいい。フロントフェンダーのあたりから、シャッと入れられたキャラクターラインが、なかなか粋だ。
ボディサイズは、4625mmの全長に、1890mmの横幅。全高は1715mmとなる。ボルボ初のSUVとなった「XC90」の、穏やかで攻撃性の低いデザインに憧れて、でも「4.8mの全長に、あと6cmほどで2mに届く車幅はなぁ……」と、その大きさゆえに二の足を踏んでいたユーザーにとって、弟分XC60の誕生はうれしいニュースだっただろう。
とはいえ、いまや珍しくなったストレート6を横置きする(!)というレイアウトもあってか、XC60はイメージほどコンパクトなわけではない。「北米向けになって肥大化した」と評される「ホンダCR-V」がスッポリ入る、と言えば、その大きさが想像されようか。
雨に打たれるボルボXC60から水もしたたるいい男が降りてきたと思ったら、ただ濡れているだけだった。『webCG』編集部のSさんが、運転席を譲ってくれたのだ。そして、隣に乗り込むなり妙なことを言う。
スタイリッシュな「全部のせ」
「ボルボの人から、『足まわりは写してくれるな』とお願いされました」
「スタッドレスになっているから?」
「はい。雪山に行くと伝えたら、すぐにタイヤを交換してくれました」
「けっこうなことじゃないか。ありがたい、ありがたい」
「でも、ホイールが18インチになっちゃったんです……」
「Oh...」
なぜ最後だけ英語になっているのかわからないが、しかしボルボの記事で「ジマンの20インチホイールが……」と書くことになろうとは!
今回用意されたXC60は、トップグレードの「T6 AWD R-DESIGN」。ターボチャージャー付きの3リッター直列6気筒は、「T6 AWD SE」と同じ304ps/5600rpmの最高出力と44.9kgm/2100-4200rpmの最大トルクを発生。もちろん、組み合わされるトランスミッションが6段ATなのも変わらない。
しかし装備は豪華で、クルーズコントロールや歩行者検知機能付き追突回避・軽減機能(ヒューマン・セーフティ)、12スピーカーのプレミアムサウンド・オーディオシステムなど、通常グレードのオプション装備が軒並み搭載される。ドアを開ければ、ツートンカラーの本革スポーツシートが迎えてくれる。フリーフローティングと称されるセンターパネルのアルミパネルや、メーター外周のアルミベゼルもR-DESIGN専用となる。
日本の道で、いい感じ
一方、外観の差別化は、グリル内の網模様や随所に配されたシルバーのアクセントでなされるが、やはりハイライトは専用デザインの20インチホイールだ。それが、ややおとなしい18インチになっているのは、たしかに残念なことではある。しかし、それゆえ運転していて「R-DESIGNである」ことがわからなくなるかというと、そんなことはない。なぜなら、これまた専用のスポーツサスペンションが与えられているから。
ハンドルを握って走り始めれば、アシ、硬いね。首都高の継ぎ目などではコツコツくる。前席でちょっと気になるくらいだから、後部座席ではさぞや……と思ってバックミラーをちらりと見ると、スタッフ、カメラマンとも、熟睡している。後で運転を任せてリアシートに座らせてもらったところ、路面からの突き上げはたしかにあるが、クッション豊富なシートでずいぶん緩和されている。心配して損した。
ターボで過給されるエンジンは、いうまでもなく低回転域からトルキーで、硬めのサスペンションとあわせ、XC60を快適な高速ツアラーにしている。高めの視線もロングツーリングを楽にする一因で、ただし前方投影面積が広いから、スピードは抑えめにしたほうが財布にやさしい。
朝の都心もよく似合うボルボXC60だが、雪景色のなかに置いても魅力的だ。「V70」より20cm短いので、都会での取り回しが気持ちのうえで楽だし、一方、高い着座位置とAWDが、自然のなかでの安心感を与えてくれる。都市と自然を結ぶ快適な高速ツアラーにして、「トレンディ」なんて言葉を使いたくなるXC60。“シャコ高ワゴン”たる「XC70」より、40万高い669万円のプライスタグが付けられる。
(文=青木禎之/写真=郡大二郎)

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
-
スズキ・エブリイJリミテッド(MR/CVT)【試乗記】 2025.10.18 「スズキ・エブリイ」にアウトドアテイストをグッと高めた特別仕様車「Jリミテッド」が登場。ボディーカラーとデカールで“フツーの軽バン”ではないことは伝わると思うが、果たしてその内部はどうなっているのだろうか。400km余りをドライブした印象をお届けする。
-
ホンダN-ONE e:L(FWD)【試乗記】 2025.10.17 「N-VAN e:」に続き登場したホンダのフル電動軽自動車「N-ONE e:」。ガソリン車の「N-ONE」をベースにしつつも電気自動車ならではのクリーンなイメージを強調した内外装や、ライバルをしのぐ295kmの一充電走行距離が特徴だ。その走りやいかに。
-
スバル・ソルテラET-HS プロトタイプ(4WD)/ソルテラET-SS プロトタイプ(FWD)【試乗記】 2025.10.15 スバルとトヨタの協業によって生まれた電気自動車「ソルテラ」と「bZ4X」が、デビューから3年を機に大幅改良。スバル版であるソルテラに試乗し、パワーにドライバビリティー、快適性……と、全方位的に進化したという走りを確かめた。
-
トヨタ・スープラRZ(FR/6MT)【試乗記】 2025.10.14 2019年の熱狂がつい先日のことのようだが、5代目「トヨタ・スープラ」が間もなく生産終了を迎える。寂しさはあるものの、最後の最後まできっちり改良の手を入れ、“完成形”に仕上げて送り出すのが今のトヨタらしいところだ。「RZ」の6段MTモデルを試す。
-
BMW R1300GS(6MT)/F900GS(6MT)【試乗記】 2025.10.13 BMWが擁するビッグオフローダー「R1300GS」と「F900GS」に、本領であるオフロードコースで試乗。豪快なジャンプを繰り返し、テールスライドで土ぼこりを巻き上げ、大型アドベンチャーバイクのパイオニアである、BMWの本気に感じ入った。
-
NEW
2025-2026 Winter webCGタイヤセレクション
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>2025-2026 Winterシーズンに注目のタイヤをwebCGが独自にリポート。一年を通して履き替えいらずのオールシーズンタイヤか、それともスノー/アイス性能に磨きをかけ、より進化したスタッドレスタイヤか。最新ラインナップを詳しく紹介する。 -
NEW
進化したオールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2」の走りを体感
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>欧州・北米に続き、ネクセンの最新オールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2(エヌブルー4シーズン2)」が日本にも上陸。進化したその性能は、いかなるものなのか。「ルノー・カングー」に装着したオーナーのロングドライブに同行し、リアルな評価を聞いた。 -
NEW
ウインターライフが変わる・広がる ダンロップ「シンクロウェザー」の真価
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>あらゆる路面にシンクロし、四季を通して高い性能を発揮する、ダンロップのオールシーズンタイヤ「シンクロウェザー」。そのウインター性能はどれほどのものか? 横浜、河口湖、八ヶ岳の3拠点生活を送る自動車ヘビーユーザーが、冬の八ヶ岳でその真価に触れた。 -
NEW
第321回:私の名前を覚えていますか
2025.10.20カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。24年ぶりに復活したホンダの新型「プレリュード」がリバイバルヒットを飛ばすなか、その陰でひっそりと消えていく2ドアクーペがある。今回はスペシャリティークーペについて、カーマニア的に考察した。 -
NEW
トヨタ車はすべて“この顔”に!? 新定番「ハンマーヘッドデザイン」を考える
2025.10.20デイリーコラム“ハンマーヘッド”と呼ばれる特徴的なフロントデザインのトヨタ車が増えている。どうしてこのカタチが選ばれたのか? いずれはトヨタの全車種がこの顔になってしまうのか? 衝撃を受けた識者が、新たな定番デザインについて語る! -
NEW
BMW 525LiエクスクルーシブMスポーツ(FR/8AT)【試乗記】
2025.10.20試乗記「BMW 525LiエクスクルーシブMスポーツ」と聞いて「ほほう」と思われた方はかなりのカーマニアに違いない。その正体は「5シリーズ セダン」のロングホイールベースモデル。ニッチなこと極まりない商品なのだ。期待と不安の両方を胸にドライブした。