ボルボXC60 D4 AWDインスクリプション(4WD/8AT)
幸せな気持ちにさせる 2018.06.05 試乗記 ガソリンエンジン車の発売から半年、ようやく上陸した「ボルボXC60」のクリーンディーゼル搭載車に試乗。その見どころは、燃費と力強さだけにあらず。ガソリン車よりもさらに心地いいクルマに仕上がっていた。これは待ったかいがある
近ごろ、ボルボの新しいモデルに乗って走りはじめると、笑ってしまう。
と言うと変な誤解をさせてしまうだろうか? でも、本当なのだから仕方ない。通常なら“思わず口元が緩む”のだろうけど、笑ってしまうのだ。――なぜか? クルマの出来栄え、である。うれしくなって、ついつい。このクルマを手に入れた人はこういうところにこんなふうな喜びを感じるのだろうな……なんてことが意識せずとも次から次に頭に浮かんできて、気づくと“口元が緩む”を超えている。それは、昨今のボルボが単に完成度が高いということにとどまらず、いろいろなところから乗り手に“幸せ”を感じさせてくれるようなクルマに仕上がってるからなんじゃないか? と思う。
そして、発表こそされていたものの導入が遅れていたXC60のディーゼルエンジン搭載車も、やっぱりそうだった。たっぷりと幸せな気持ちにさせてもらえるクルマだったのだ。ディーゼル導入を待っていた人には、待ったかいがありますよ、とお伝えしたいくらいだ。
──と話を急いでしまう前に、さらっとクルマの成り立ちについて触れておこう。XC60 D4 AWDはいうまでもなくXC60のラインナップにおさまるモデルだから、パワートレインを除く基本的な部分はガソリンエンジンを積むXC60と大きく変わるところはない。グレードに装備や仕様の違いで「モメンタム」「R-DESIGN」「インスクリプション」の3つが用意されるところも、ガソリンモデルのラインナップと同じだ。
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ディーゼルなのを忘れてしまう
搭載されるディーゼルユニットは、日本市場ではこのXC60から世代がひとつ新しくなっている。厳しくなる一方のディーゼルエンジンの排出ガス規制をにらみ、尿素SCRシステムと呼ばれている浄化装置が導入されているのだ。ディーゼルエンジンに詳しい人はよくご存じかと思うが、これは尿素の化学反応を利用して燃焼時に排出されるNOx=窒素酸化物を無害な窒素と水に分解、NOxの排出量を最大90%低減することができる、というものだ。そのためディーゼル用のエキゾーストフルードを定期的に補充する必要があるのだけど、環境に対して優しいエンジンであることは間違いない。ボルボを選ぶユーザーは環境への意識が高い人が多いから、このシステムの導入に難色を示されることはないだろう。
水冷直列4気筒DOHC 16バルブのディーゼルターボユニットは、ボア×ストロークが82.0×93.2mmの排気量1968ccで、ガソリンユニットと一緒。最高出力は190ps/4250rpm、最大トルクは400Nm/1750-2500rpm。その数値は、パワーが標準的な自然吸気2.5リッター並み、トルクは同じく標準的な自然吸気4リッター並み、といったところか。同じボルボ内で比べるなら、ターボ付きのガソリンエンジンよりパワーでは64ps低いけれどトルクでは50Nm上回り、そのトルクはターボ+スーパーチャージャーのガソリンエンジンと同一。そして燃費はJC08モードで、ターボ付きガソリンの12.6km/リッターに対して16.1km/リッターである。
このディーゼルエンジンが、とてもよかった。XC60というクルマのキャラクターとのマッチングがいいこともあるのだろうけど、かなり好印象だった。サウンドは、外で聞いていたりエンジンを始動した直後などには「ああ、ディーゼルだな」と思ったりもするけれど、走りだしてしまうと全く気にならない。というか、室内にいる限りは全域にわたって静かな印象だし、わずかでも回転が上がると音質そのものがディーゼルっぽくなくなるし、動き出すと特有の振動もなくなるから、いつの間にかディーゼルであることをすっかり忘れてる。
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たくましいけど癒やし系
あっ、そうだった……と思い出すのは、エンジンの力の豊かさを感じるとき。アクセルを踏み込むと遅れなしにターボの過給が始まり、柔軟なたくましさとでもいうべきフィーリングとともに総重量では2155kgという車体を楽々と走らせる。交差点からスタートするときにわずかな踏み込み量で滑らかにスピードに乗っていけるのは、1000rpmで200Nmを超え、1500rpmも回せば380Nm、1750-2500rpmでは最大トルクの400Nmを発生するという、ディーゼルならではのトルク特性の恩恵だ。
アクセル操作に対する反応は当然ながらガソリンエンジンほど敏感ではないけれど、それが“鈍さ”ではなく“穏やかさ”あるいは“包容力の強さ”のように感じられるのが心地よい。何だかゆったりとリラックスした気分で、その安穏とした感覚の中をたゆたうようにしてどこまでもどこまでも走っていきたくなるような、そんな気持ちに自然とさせられる。
そういうと遅いクルマのように思われてしまうかもしれないが、ご心配なく。XC60 D4 AWDは、ちゃんと速い。絶対的な動力性能に不満を感じる人は、まずいないだろう。本気の加速は結構勇ましい。巡航スピードだって、かなり高いところをキープできる。アップダウンのある峠道だってグイグイ走る。ガソリンのXC60と同じで高速走行時の安定性は高いしハンドリングには望外にスポーティーな一面も隠れてるから、ぶっ飛んでいこうと思ったら、しっかりぶっ飛んでいけるのだ。あらゆる道を、それも結構な勢いで。それなのに不思議とあまりその気にならないのは、優しく穏やかな力強さを感じながら日常的な速度で走るときのフィーリングが最も心地よく感じられるよう作られているから、なのかもしれない。XC60 D4 AWDは、たくましい癒やし系なのだ。
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クルマのキャラに合っている
滑らかでしっとりした品のいい乗り心地、余計な威圧感のないシンプルで美しいスタイリング、落ち着きと華やぎが矛盾なく同居しているインテリア、あらゆるところから感じ取れるていねいな作り込みと乗り手に向けた優しさ、そしておっとりした走り方もシャープな走り方もきれいにこなしてくれる懐の深さ。そうしたXC60のキャラクターには、ガソリンとディーゼルのどっちがよりマッチしているのだろう? と考える。
ガソリンのシュッとしたスマートな性格の爽やかな感じもかなり捨てがたい。けれどディーゼルの物柔らかな表情の奥に体幹がピシッと整ったたくましさが控えてる、理想的な大人の男のような感じも捨てがたい。しかも価格はどちらも599万円スタートと、ライバルたちよりお買い得なところで同一だ。そうなると悩む人は悩むだろうな、と思う。
でも、もし僕が選ぶのであれば、やはりディーゼルだ。なぜなら個人的にはXC60の中にある人への優しさに引かれていて、それによりマッチしてるのがディーゼルだと思うから。そして日常生活の中ではのんびり走ることが多いし、ゆったりした気分で走りたいし、そうしたときにより心地よい方を選びたいから。まぁどっちに乗っても自然に「んふふ……」と笑っちゃうのは間違いないのだけど。
(文=嶋田智之/写真=田村 弥/編集=関 顕也)
テスト車のデータ
ボルボXC60 D4 AWDインスクリプション
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4690×1900×1660mm
ホイールベース:2865mm
車重:1910kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼル ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:190ps(140kW)/4250rpm
最大トルク:400Nm(40.8kgm)/1750-2500rpm
タイヤ:(前)235/55R19 105V/(後)235/55R19 105V(ミシュラン・ラティチュードスポーツ3)
燃費:16.1km/リッター(JC08モード)
価格:679万円/テスト車=794万9000円
オプション装備:電子制御式4輪エアサスペンション+ドライビングモード選択式FOUR-Cアクティブパフォーマンスシャシー(30万円)/Bowers & Wilkinsプレミアムサウンドオーディオシステム<1100W、15スピーカー、サブウーハー付き>(42万円)/チルトアップ機構付き電動パノラマガラスサンルーフ(20万6000円)/メタリックペイント<マッセルブルーメタリック>(8万3000円)/テイラードダッシュボード(15万円)
テスト車の年式:2018年型
テスト開始時の走行距離:2771km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(軽油)
参考燃費:--km/リッター

嶋田 智之
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