フォルクスワーゲン・ゴルフヴァリアントeTSI Rライン(FF/7AT)
オシャレは我慢 2021.08.14 試乗記 「ゴルフ」に続いて新型「フォルクスワーゲン・ゴルフヴァリアント」が日本上陸。ハッチバックと同様に装備のデジタル化とパワートレインの電動化が進められただけでなく、ボディーがより長く広くなっているのが特徴だ。果たしてその仕上がりは?イメージよりもだいぶ長い
2021年6月に本国発売から1年半以上のタイムラグで日本発売となった新型ゴルフだが、そうやって市場導入の土台ができてしまえば、それ以降の展開は早い。欧州ではハッチバックから約1年後の発売だったヴァリアントも、こうしてハッチバックとわずか2カ月差で上陸した。ちなみに、欧州では「GTI」や「R」がヴァリアントより先に発売となっているが、各メディアの報道を見るかぎり、少なくともGTIは年内の国内発売が期待できそうな雰囲気である。
というわけで新型ゴルフヴァリアントだが、いうまでもなく、ハッチバックより延長されたリアオーバーハングが最大の特徴である。ただ、実車では、事前の想像よりもさらに長く見えた。新型ヴァリアントの全長はハッチバックより345mm長い。先代ではその差が310mmだったから、新型のほうがより長く見えるのも当然ではあるのだが、その長さの印象が先代ゴルフヴァリアントとはちょっとちがうのだ。
それもそのはずで、新型ヴァリアントは歴代ゴルフのワゴンとしては初めて、ハッチバックからホイールベースも延ばされている。しかも、その延長幅が50mmもあるので、ひと目で長いのがわかる。また、新型ゴルフは空力その他の理由から、フロントオーバーハングが先代より長い。もっというと、新型ゴルフヴァリアントのデザインは、後方に向けて下降していくルーフラインや強く傾斜したバックガラスなど、いわゆるスポーツワゴン的な手法を採っている。
……そんなこんなで、新型ゴルフヴァリアントは先代とは異なり、クルマ全体がベッタリと長いプロポーションになっている。それは全体にバランスがとれているともいえるが、リアに視覚的な重心がないぶん、伝統的なステーションワゴンとは雰囲気がちょっとちがうのだ。
足が組めそうなリアシート
このようにハッチバックとワゴン(やセダン)でホイールベースをちがえる手法は「プジョー308」や「ルノー・メガーヌ」などのフランス車では定番的に用いられてきた。さらにいうと、最近では欧州仕様の「トヨタ・カローラ」もそれに追随している。日本では全機種でホイールベースが統一されているカローラだが、欧州ではハッチバックのそれが日本仕様と同じ2640mmで、ワゴンやセダンは2700mmとなっている。つまり、新型ゴルフヴァリアントのパッケージレイアウトは最近のハヤリ……ということもできる。
ロングホイールベース化の恩恵はリアシートに座れば即座に実感できる。平均的な日本人の体格であれば、ハッチバックでも空間的な不足はもちろんない。しかし、ゴルフサイズになんとなればアシが組めそうなくらいのレッグルームを確保したリアシートに座ると「複数人数で遠くに出かけるなら、ヴァリアントだな」と素直に思う。今回は試せなかったが、高速での長距離走行にもロングホイールベースは有利。こういう“バカンス感”を醸し出せるロングホイールベース化は、SUVに押され気味のステーションワゴンを延命するひとつの光明になるかもしれない。
ヴァリアントも含めた新型ゴルフの骨格モジュールは従来と同じ「MQB」の改良型であり、全長は先代比で65mm伸びているが、リアオーバーハングは先代とほぼ同じだそうだ。よって、荷室そのものの容量や形状は先代と大きくは変わらない。ただ、キック操作だけで開閉可能な電動バックドアの採用(エントリーグレード以外で選べるオプション)に加えて、リアガラスの傾斜が強まったことで開口部が斜め上方に広がり、荷物の出し入れは先代よりやりやすくなっています……とは、フォルクスワーゲン日本法人の弁である。
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デジタル化が進んだ一方で……
今回の試乗車は「eTSI Rライン」だった。新型ヴァリアントのパワートレインやグレード構成は現状ハッチバックと共通で、試乗車は1.5リッター4気筒ターボを搭載して、サスペンションやステアリング、シートがスポーツ仕様となる最上級グレードである。
ただでさえハードスイッチが大幅に削られた新型ゴルフのインテリアにあって、Rラインはステアリングスイッチまでタッチ化されており、同車最大の売りであるデジタル感がさらに強調される。その使い勝手に賛否両論あるのはご承知のとおりだが、指先だけで軽く操作できるのに誤操作の危険が少ないシフトセレクターだけは出色のデキと思う。
しかし、新型ゴルフのインテリアでそれ以上に気になるのは、そうしたデジタル化に開発コストを割きすぎたせいなのか、内装調度そのものの素材や質感に先代よりグレードダウンした感があることだ。また、そうしたデジタルインターフェイスによって、空調吹き出し口が下方に追いやられているのも、今回の試乗日が今夏でも指折りの酷暑だったこともあって余計に気になった。空調の吹き出し口は基本的に、高い位置にあるほど効率的なのだ。
ワゴンならではのクセも少々
このようにデザインやデジタル化には賛否あったとしても、先代改良型のシャシーだけは“超熟”とでもいうべき高度な味わいなのは、ヴァリアントでも変わりない。ピッチングもロールも極小のフラットなのに、荷重移動による接地感は濃厚なのがいい。走行中も頻繁にエンジン停止するマイルドハイブリッドは、ストップ&ゴーを繰り返す市街地ではギクシャクする瞬間が皆無ではないが、ワインディングロードでの短時間試乗にかぎられた今回は、そうしたネガがまったく感じられなかった。
いっぽうで、後輪がねばりつくような安定感(あるいは鈍重感)や後ろから聞こえてくる共鳴するようなノイズ……といったヴァリアント特有のクセは、特筆するほどのものではないが、ハッチバックと直接乗り比べなくても気づかされるレベルには感じられた。まあ、これはクルマの構造を考えれば当然予想されることであり、当たり前の現象が予想どおりに発生するのは、逆にいうと、ゴルフの基本能力が高い証左でもある。
(文=佐野弘宗/写真=田村 弥/編集=藤沢 勝)
テスト車のデータ
フォルクスワーゲン・ゴルフヴァリアントeTSI Rライン
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4640×1790×1485mm
ホイールベース:2670mm
車重:1430kg
駆動方式:FF
エンジン:1.5リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:7段AT
エンジン最高出力:150PS(110kW)/5000-6000rpm
エンジン最大トルク:250N・m(25.5kgf・m)/1500-3500rpm
モーター最高出力:13PS(9.4kW)
モーター最大トルク:62N・m(6.3kgf・m)
タイヤ:(前)225/45R17 91W/(後)225/45R17 91W(グッドイヤー・イーグルF1アシメトリック3)
燃費:17.0km/リッター(WLTCモード)
価格:389万5000円/テスト車=434万6000円
オプション装備:ボディーカラー<ライムイエローメタリック>(3万3000円)/ディスカバープロパッケージ(19万8000円)/テクノロジーパッケージ(18万7000円) ※以下、販売店オプション フロアマット<プレミアムクリーン>(3万3000円)
テスト車の年式:2021年型
テスト開始時の走行距離:1562km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

佐野 弘宗
自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。
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