アルファ・ロメオ・ステルヴィオ2.0ターボQ4ヴェローチェ(4WD/8AT)
徹頭徹尾スポーティー 2021.08.16 試乗記 アルファ・ロメオのSUV「ステルヴィオ」に設定された、新グレード「ヴェローチェ」。一度ステアリングを握ってみれば、そのカッコよさとスポーティーさへのこだわりが、見た目にかぎったものでないことがわかるだろう。ブランドを救ったSUV
“北米向け”と聞くと「ケッ」と思う……失礼、「体格が立派で足腰柔らかなクルマ」を連想するエンスージアストが多いかもしれない。「それはあまりに古い観念だ」と渋面をつくるジャーナリストもいましょうが、それはともかく、アルファ・ロメオ・ステルヴィオに関しては、「USA市場がターゲット!? 大いにけっこう!」と歓迎せざるを得まい。
同車のデビューは、2016年のロサンゼルスオートショー。1996年以降5年にわたってアルファ・ロメオ車の販売が絶えていたアメリカに、イメージブースターとして送り込まれた「8C」「4C」シリーズに続き、本格的に再上陸するためのキーモデルと期待された。「アルファがSUVなんて!」と嘆くアルフィスタもいたが、背に腹は代えられない。「ミト」と「ジュリエッタ」、それぞれ魅力的とはいえハッチバックモデルだけのラインナップに、“ブランドの危機”が真剣にささやかれていたからだ。
ステルヴィオと同じプラットフォームを用いる「ジュリア」と合わせ、2017年からアルファの北米セールスは2桁アップ! といっても、1万2000~2万3000台程度のスケールだが、プレミアムブランドとしての再登場は一定の成果をおさめたといっていい。翌2018年には、ステルヴィオの日本での販売が開始された。
試乗車の「アルファ・ロメオ・ステルヴィオ2.0ターボQ4ヴェローチェ」は、派手なメタリックブルーにペイントされていた。オプションの「ミザーノ ブルー」だ。
ホイールアーチ、サイドスカート、そしてリアバンパーが同じ色に塗られ、クルマ全体の塊感が強調される。ダークフィニッシュされた左右2本出しのエキゾーストパイプが、リアディフューザー調の大きなブラックパーツと呼応して、ステルヴィオの後ろ姿を引き締める。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
クールでいながら機能的
ヴェローチェは、従来の「スポーツパッケージ」に代わるステルヴィオの中堅グレード。2.2リッター直4ディーゼルターボが687万円、2リッター直4ターボが720万円という車両本体価格は変わらない。ディーゼルターボの「Q4スプリント」(598万円)と、2.9リッターV6ターボの「クアドリフォリオ」(1232万円)に挟まれることになる。
“速さ”を意味するヴェローチェの名がつくが、パワーユニットのアウトプットに変更はない。ディーゼルターボは最高出力が210PS、最大トルクが470N・m。ガソリンターボはそれぞれ280PSと400N・mである。トランスミッションはどちらも8段AT。FR(フロントエンジン・リアドライブ)をベースに、必要に応じてフロントに駆動力を分配するアクティブな4WDシステムを備える。前後225/45R20のタイヤサイズもこれまで通りだ。
少し離れてステルヴィオを眺めると、軽快なサイドウィンドウグラフィックや角度のついたリアガラスがスポーティーなフォルムを形成していることがわかる。後部座席への開口部幅や、運転席からの後方視界の天地がやや狭くなるけれど、だから何だというのでしょう。ステルヴィオは、イタリアの伊達(だて)SUVなのだ。
一方で、車内の居住性は高い。見た目のイメージほど、実際のルーフラインの降下は急ではない。リアシートに座ってみると、座面高は適正で、膝前、頭上ともスペースに余裕がある。センターの肘掛けを出せば、ペットボトルなどを固定するのに便利なゴム製のストッパーが付いたカップホルダーが2つ用意されている。21世紀の現代においてより重要なのは、フロントから伸びるトンネルコンソール後端に、エアコン吹き出し口に加えてUSBソケットが2つ用意されていることだろう。
リアゲートを開けてみれば、スクエアで使いやすそうな荷室が広がる。12Vソケット、小物をつるすフック、リアシートの背もたれを倒すレバーまで備わる親切さ。「アルファなのに!?」と驚くワタシは古いのでしょうか。分割可倒式になったリアシートを倒せば、190cm超の長尺モノも搭載できる。しっかりしたフロアボードをめくってみると、テンパータイヤは備わらない。パンク修理剤がそれに代わる。とがった石や小岩が転がるガレ場には足を踏み入れないほうがよさそうだ。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
スマートフォン時代のアルファ
ステルヴィオのボディーサイズは、全長×全幅×全高=4690×1905×1680mm。「メルセデス・ベンツGLC」や「BMW X3」あたりがライバルとなる。2820mmのホイールベースはジュリアと同寸だが、最低地上高は65mm増やされた。シート座面の位置は190mm高いそうだが、それでもドアを開けてお尻を横に滑らせれば運転席に座れる。いわゆるクロカン車のように、Aピラーから生える取っ手をもって「ヨッコラショ」と体を持ち上げる必要はない。
フロントシートは座面が長く、たっぷり丈夫なサイドサポートが頼もしい。座り心地は硬めで、スポーティーな走りを暗示する。ステアリングホイールは車体寸法のわりに小径で、その奥に生えるシフト用パドルのスタイリッシュなこと! 触った指先がひんやり冷たい金属製で、わざわざプラス、マイナスの記号部分の肉が抜かれる。「何のため?」などとやぼを言うべからず。シフターの横に設けられたキーを挿すホール。ステアリングホイールに付いたスターターボタン。ドアを開け、シートに座り、エンジンをかけて走り始める、運転にまつわる所作のいちいちがカッコよくなるよう演出されているのだ。今回のヴェローチェで採用された、レザーダッシュボードにシルバーのパネルも、“シブ派手”でステキ。
ダッシュボードのセンターには8.8インチのタッチディスプレイ。コンソールには12Vの電源ソケットにUSB端子、そしてワイヤレスチャージングパッドが備わる。ダメ押しに、小物入れにはUSBが2口。なるほど、スマートフォン時代のアルファである。もちろん、Android Auto、Apple CarPlayに対応している。
いわば背の高いスポーツセダン
ステルヴィオ ヴェローチェの2リッター4気筒ターボは、最高出力280PS/5250rpm、最大トルク400N・m/2250rpmを発生。ディーゼルモデルと比較すると、ガソリンエンジンらしく伸びやかに回転を上げ……と言いたいところだが、普通にドライブしているかぎりZFの8段ATがサッサとギアを上げてしまうので、あまり見せ場がない。そもそもフィアットグループ自慢の可変吸気システム「マルチエア」を搭載し、過給機でトルクの平準化を図っているから、いたしかたない。WLTCモードでのカタログ燃費は10.9km/リッターである。
ボンネットを開けると、タワーバーがエンジンルームを横切り、ヤル気をみせる。2リッター直4ターボは、フロントバルクヘッドにめり込まんばかりに搭載されている。フロントミドシップだ。車検証の前後車軸重を確認すると、前:後=910:900kgとバランスがいい。
走り始めてまず気づくのが、ステアリング操作に対するクルマ全体の反応が鋭敏だということ。足まわりは硬めに締まっていて、SUVとはいえカーブでも腰が砕けるのを許さない。ステルヴィオの運転感覚は、その成り立ち通り、少々背の高いスポーツセダンのそれである。
すきあらばスポーツ走行したがる人たちが開発したためか、すぐにドライブモードを切り替えられるようATレバーの横には「ALFA DNAシステム」用に独立したダイヤルが用意される。ナチュラルを示す「n」、効率的な「a」、そしてダイナミックな「d」からセレクトでき、慣れれば目視しないで操作できるのがいい。そそられるカーブの連続が目に入ったなら、サッと手を伸ばせる。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
ダイナミックモードがピッタリ
街乗りでは2000rpmも回さないで走れるステルヴィオだが、dモードにすると、ステアリングが重く、シフトプログラムがアグレッシブになってエンジンを回すようになり、にわかにスポーツSUVの色彩が強くなる。パドルも備わるが、ためしに左手でシフターを繰ると、前に押すとシフトダウン、後ろに引くとアップのBMW方式だ。驚くのは、5500rpmからレッドゾーンが始まるのに、シフトダウン後の着地点が5000rpmでも操作を受け付けること。ステルヴィオ、本当はもっと回せるのだろう!
ステルヴィオのdモードは過剰な演出ではなく、むしろDNAダイヤルをダイナミックに合わせてこそ、本来の鋭いステアリングレスポンスや硬めの乗り心地がピタリとくる感じ。速度を上げてカーブをこなせば、重量配分のよさも生きてくるはずだ。なにはともあれ、全身でスポーティーを主張するSUVである。
北米再上陸をターゲットにしたステルヴィオ。わが国では、決して大きくないアルファ・ロメオのパイをジュリアと食い合っている、というハナシも漏れ聞こえてくる。2019年のジュネーブモーターショーでは、よりコンパクトな「トナーレ」が登場しているから、極東の島国ではコチラのほうがアルファSUVの本命となるかもしれない。相乗効果でアルファ・ロメオの存在感が増すのなら、それに越したことはない。
(文=青木禎之/写真=山本佳吾/編集=関 顕也)
テスト車のデータ
アルファ・ロメオ・ステルヴィオ2.0ターボQ4ヴェローチェ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4690×1905×1680mm
ホイールベース:2820mm
車重:1810kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 SOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:280PS(206kW)/5250rpm
最大トルク:400N・m(40.8kgf・m)/2250rpm
タイヤ:(前)255/45R20 105V/(後)255/45R20 105V(ミシュラン・ラティチュードスポーツ3)
燃費:10.9km/リッター(WLTCモード)
価格:720万円/テスト車=753万5500円
オプション装備:メタリック塗装<ミザーノ ブルー>(8万8000円) ※以下、販売店オプション フロアマット“Alfa Romeo”(4万4000円)/ETC車載器(1万9250円)/アルファ・ロメオ純正Wi-Fi対応ドライブレコーダー(6万0500円)
テスト車の年式:2021年型
テスト開始時の走行距離:224km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1)/高速道路(8)/山岳路(1)
テスト距離:260.2km
使用燃料:26.2リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:9.9km/リッター(満タン法)/8.5km/リッター(車載燃費計計測値)

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
-
BYDシールAWD(4WD)【試乗記】 2026.1.17 BYDのBEVサルーン「シール」の機能アップデートモデルが登場。強化のポイント自体はそれほど多くないが、4WDモデルの「シールAWD」は新たに電子制御式の可変ダンパーを装備したというから見逃せない。さまざまなシーンでの乗り心地をチェックした。
-
マツダCX-60 XDドライブエディション ナッパレザーパッケージ(4WD/8AT)【試乗記】 2026.1.14 「マツダCX-60」に新グレードの「XDドライブエディション ナッパレザーパッケージ」が登場。スポーティーさと力強さ、上質さを追求したというその中身を精査するとともに、国内デビューから3年を経た“ラージ商品群第1弾”の成熟度をチェックした。
-
カワサキKLX230シェルパS(6MT)【レビュー】 2026.1.13 その出来には“セロー乗り”も太鼓判!? カワサキのトレイルバイク「KLX230シェルパ」に、ローダウン仕様の「シェルパS」が登場。安心の足つき性で間口を広げた一台だが、実際に走らせてみると、ストリートでも楽しめるオールラウンダーに仕上がっていた。
-
メルセデス・ベンツC220dラグジュアリー(FR/9AT)【試乗記】 2026.1.12 輸入車における定番の人気モデル「メルセデス・ベンツCクラス」。モデルライフ中にも年次改良で進化し続けるこのクルマの、現在の実力はいかほどか? ディーゼルエンジンと充実装備が魅力のグレード「C220dラグジュアリー」で確かめた。
-
日産ルークス ハイウェイスターGターボ プロパイロットエディション(FF/CVT)【試乗記】 2026.1.10 日産の軽スーパーハイトワゴン「ルークス」がフルモデルチェンジ。「見えない危険が……」のテレビCMでお茶の間をにぎわせているが、走る、曲がる、止まるをはじめとしたクルマ全体としての仕上がりはどうか。最上級グレードをテストした。
-
NEW
ベントレー・コンチネンタルGTアズール(4WD/8AT)【試乗記】
2026.1.19試乗記ベントレーのラグジュアリークーペ「コンチネンタルGT」のなかでも、ウェルビーイングにこだわったという「アズール」に試乗。控えめ(?)な680PSのハイブリッドがかなえる走りは、快適で満ち足りていて、ラグジュアリーカーの本分を感じさせるものだった。 -
NEW
第327回:髪もクルマもナイスファイト!
2026.1.19カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。日産の新型「ルークス」で夜の首都高に出撃した。しっかりしたシャシーとターボエンジンのパワフルな走りに感心していると、前方にスーパーカーの姿を発見。今夜の獲物は「フェラーリ・ローマ」だ! -
NEW
日本で売れるクルマはあるのか!? 最新の“アメリカ産ニホンシャ”を清水草一が検証する!
2026.1.19デイリーコラムアメリカからの外圧による制度変更で、北米生産モデルの国内導入を決めたトヨタ。同様に、今後日本での販売が期待できる「海外生産の日本車」には、どんなものがあるだろうか? 清水草一が検証してみた。 -
フェラーリ12チリンドリ(後編)
2026.1.18思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が「フェラーリ12チリンドリ」に試乗。前編では伝家の宝刀であるV12エンジンを絶賛した山野。後編ではコンビを組むシャシーの印象を余すところなく聞いてみた。 -
BYDシールAWD(4WD)【試乗記】
2026.1.17試乗記BYDのBEVサルーン「シール」の機能アップデートモデルが登場。強化のポイント自体はそれほど多くないが、4WDモデルの「シールAWD」は新たに電子制御式の可変ダンパーを装備したというから見逃せない。さまざまなシーンでの乗り心地をチェックした。 -
新生ノートンがいよいよ始動! 名門の復活を担う次世代モーターサイクルの姿に迫る
2026.1.16デイリーコラム英国のモーターサイクル史にあまたの逸話を残してきた名門、ノートンが、いよいよ再始動! その数奇な歴史を振り返るとともに、ミラノで発表された4台の次世代モデルを通して、彼らが思い描く未来像に迫った。


























































