トヨタ・ランドクルーザーZX(4WD/10AT)
誰だって欲しくなる 2021.11.27 試乗記 長い長い納期が伝えられる「トヨタ・ランドクルーザー」だが、クルマドロボーからの熱視線も受けているのはご承知の通り。最上級グレード「ZX」(ガソリンエンジン車)の試乗インプレッションとともに、防犯上の最重要ポイントを報告する。4代変わらぬ車軸間距離
webCG編集部に試乗用のトヨタ・ランドクルーザーZXを受け取りに行って、笑ってしまった。駐車場で待っていると、スタッフの人が「トヨタから使うように言われているんです」と、いずれも派手な色調にペイントされた黄色いタイヤロックと真っ赤なハンドルロックを抱えて現れたから。
さすがはクルマドロボーに狙われるクルマ「ナンバーワン!」である。ただでさえ納期の長さが話題になっている300系こと新型ランドクルーザーだから、「何かあったらタマラン」と、トヨタの車両管理チームも真剣なのだろう。
もちろん開発陣とて手をこまねいていたわけではない。ニューモデルには、スターターボタンに指紋認証システムを組み込むという防犯対策が施された。指紋は7人まで登録可能だから通常の使用なら十分なはずだが、不特定多数の人がステアリングホイールを握る試乗用車両ではカバーしきれない。そこで、いかつい物理デバイスの登場となったわけだ。
“すべてを越えてゆく”トヨタ・ランドクルーザーが、14年ぶりのフルモデルチェンジを果たした。新型の車両寸法は、全長×全幅×全高=4985×1980×1925mm。旧型からわずかに拡大したものの、車体の長さは辛うじて5m以内に収まっている。
全体のプロポーションが、昨今のシティー派SUVのように洗練されていない理由は、ボディーが成長しているにもかかわらず、2850mmのホイールベースが、3代前、1980年代末に登場した80系以来変わっていないからだ。ただ、ランクルの場合、それがかえってある種の「すごみ」を感じさせる。不変の車軸間距離は「『オフロードに最適』と経験則から導き出された数値だから」。そんな説明が有無を言わさぬ説得力を持つ。トヨタ・ランドクルーザーは1951年の登場以来、世界170以上の国と地域で累計1060万台を販売した実績を持つのだ。
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あくまでオフローダーとしての進化
今回のモデルチェンジは、伝統のラダーフレームシャシーを守るため……というと語弊があるが、要は「アクティブな生活を示唆するライフスタイル商品」ではなく、不整地でガンガン使われる実力派クロスカントリーとしての本分を守ることを第一としている。頑丈なことはもとより、最新の設備やサービスから離れたエリアでも一定のメンテナンスが可能で、どんなに上屋が傷もうとも4WD車としての使用に耐える生存性の高さが維持されたわけだ。
もちろん、時代の要請に添った安全・環境性能を得る努力も怠らない。キャビン後半が左右から絞り込まれた形状になったのは、エアロダイナミクスを考慮して燃費向上を図ったがゆえで、そのため3列目シートは2人掛けとなった。ちなみに、テールゲートが従来の上下分割式から一体型に変わったのは、左右はね上げ式から床下収納になったサードシートへの、後方からのアクセスを容易にするためだという。
言うまでもなく、ニューモデルは軽量化にも余念がない。重量のかさむラダーフレームそのものを刷新。ボンネットやすべてのドアパネル、そしてルーフまでをアルミ化してシェイプアップに励んでいる。ヘビー級のV8エンジンは捨てられ、ガソリン、ディーゼルとも、新しいV6となった。その結果、新型の車重は2500kgに抑えられた(素のZX)。先代のZX(8人乗り)が2690kgだから、カタログ上でも軽量化の成果が表れているのがスゴい。
エンジンは2種類。新開発の3.3リッターV6ディーゼルターボ(最高出力309PS/最大トルク700N・m)と、旧型に設定された4.6リッターV8(318PS/460N・m)に代わるパワープラントとして、「レクサスLS500」のそれをランクル用に仕立て直した3.4リッターV6ターボ(415PS/650N・m)が用意される。トランスミッションは、いずれもギア数を4枚も(!)増やした10段ATとなる。
野趣こそが味わい
今回の試乗車はガソリンエンジン車。モータースポーツの香りを漂わせる「GRスポーツ」(770万円)を別にして、最上級の「ZX」グレード(730万円)である。堂々たる体で、先代よりもフロアレベルを下げているというが、それでも乗車時にはAピラーの取っ手をつかんで、「ヨイショ」と体を持ち上げる必要がある。
LS500版よりもパワーを絞る代わりにトルクを太らせた3.4リッターV型6気筒は、ツインターボの過給を得て、先代のV8比で約1.2リッターの排気量減少をものともしないアウトプットを発生する。いかにもトヨタのV6らしくシュルシュルと穏やかに回るエンジンで、多段化されたオートマチックと合わせ、日常域ではまるで高級サルーンの動力系だ。
一方、乗り心地は野趣を残していて、例えばリアサスペンションはリジッドらしい鈍い突き上げをみせ、20インチの足元は、重いワークブーツを履いているかのゴツゴツ感がある。荒れた道では上屋が軽く左右に揺すられ、最新のランドクルーザーが、依然としてラダーフレームの上に構築されていることを乗り手に思い出させる。
しかしこうしたドライブフィールは運転者にヘビーデューティーなギアとしての頼りがいを与え、ランクルの個性としてむしろ好ましい感情を抱かせるだろう。ステアリングを切ると広大なボンネットがグワッと向きを変えるさまはなかなかの迫力で、先代よりさらに目立つようになった2本のバルジがワイルドさを加速する。「オシャレ海賊を狩る、飢えたオオカミのようなクルーザー」と、妙に戦闘的な気分になる試乗者である。
高速道路に乗れば、100km/h走行時のエンジン回転数は1400rpm付近。大柄なクロカンは静かに巡航を続ける。各種予防安全や運転支援機能を満載する新型だが、ひとつ気がついたことがある。高機能なクルーズコントロールをオンにすると、できるだけ中央を行こうとするセンタートレース機能が働く。個人的には車線内の少し左寄りを走りたいのだが、厳格なクロカンはそれを許さず、ハンドルを動かして戻そうとする。押し付けがましい。今後、自動運転の技術が進むのに合わせて、運転者の好みを反映する機能も必要になってくるのでは、と愚考した次第です。今回の場合、トレース機能をオフにすればいいだけですが。
おすすめは右の前
さて、新型ランドクルーザーは、腰下をラダーフレームから一新したついで、というわけではあるまいが、エンジンの搭載位置も、後方へ70mm、下方に28mm移動してハンドリングの向上を図っている。実際に細かいカーブが続く道を走ってみると、2t超の重量を感じさせながらも腰砕けにならない走りに感心させられた。コーナリング中のボディーの傾き方がよくチェックされていて、「エキサイティング!」とまではいかないが、少々ペースを上げてもドライバーを不安にさせることがない。ステアリングのパワーアシストも適切だ。
このクルマのレゾンデートルというべきオフロード性能については述べる資格がない。センターコンソールには、路面状況に合わせてエンジンやトランスミッション、サスペンションなどの設定を統合的に変更する「マルチテレインセレクト」のダイヤルや各種ロック機能のスイッチが設けられるが、残念ながらこの度の試乗コースでは操作の必要性が生じなかった。大多数の国内オーナーの方にとっても、それらはスーパースポーツのローンチコントロールのようなもので、付いていることがうれしい本格装備……などと言ったら、不整地愛好家の皆さまに怒られるだろうか。
外観も内装も水平基調で統一され、タフさがこれまで以上に視覚化された新型ランドクルーザー。ベーシックなグレードなら510万円から「世界が認めた」第一級の性能が得られるのだから、これは人気が出るわけですわ。トヨタ自動車の該当ページを開いてみると、「納期は2年以上になる見込みです」と、太字で異例のおわびメッセージが表示される。
そんな入手困難のなか、幸運にも自分のガレージに新型ランドクルーザーを収めることができたオーナーの方! 防犯用のタイヤロックは、目立つように右前に付けるといいらしいですよ!!
(文=青木禎之/写真=郡大二郎/編集=藤沢 勝)
テスト車のデータ
トヨタ・ランドクルーザーZX
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4985×1980×1925mm
ホイールベース:2850mm
車重:2530kg
駆動方式:4WD
エンジン:3.4リッターV6 DOHC 24バルブ ターボ
トランスミッション:10段AT
最高出力:415PS(305kW)/5200rpm
最大トルク:650N・m(66.3kgf・m)/2000-3600rpm
タイヤ:(前)265/55R20 109V M+S/(後)265/55R20 109V M+S(ダンロップ・グラントレックPT5A)
燃費:7.9km/リッター(WLTCモード)
価格:730万円/テスト車=836万3150円
オプション装備:タイヤ空気圧警報システム<TPWS>(2万2000円)/ITSコネクト(2万7500円)/マルチテレインモニター+T-Connectナビゲーションシステム<12.3インチディスプレイ[トヨタマルチオペレーションタッチ]+多重FM VICS[VICS WIDE対応]+オーディオ[Blue-ray、DVD、CD、microSD、AM/FM(ワイドFM対応)、サラウンドライブラリー、USB入力端子、地上波デジタルTV]+スマートフォン連携[SDL(Smart Device Link)、Apple CarPlay、Android Auto対応]+T-Connect[ヘルプネット、eケア、マイカーサーチ]+ETC2.0ユニット[VICS対応]+Bluetooth対応[ハンズフリー・オーディオ]+音声認証、Miracast対応、Wi-Fi対応>+JBLプレミアムサウンドシステム<14スピーカー/JBL専用12chアンプ>(45万7600円)/トノカバー<脱着・巻き取り式>(1万1000円)/ルーフレール<ブラック>(3万3000円)/リアエンターテインメントシステム<後席11.6インチFHDディスプレイ×2+HDMI端子>(17万4900円)/寒冷地仕様<LEDリアフォグランプ+カメラ洗浄機能+ウインドシールドデアイサー+PTC[補助]ヒーター他>(2万5300円)/ヒッチメンバー(7万7000円) ※以下、販売店オプション カメラ一体型ドライブレコーダー(2万1450円)/フロアマット<エクセレントタイプ>(7万1500円)/ラゲッジマット(1万5400円)
テスト車の年式:2021年型
テスト開始時の走行距離:3692km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:246.2km
使用燃料:40.1リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:6.1km/リッター(満タン法)/6.2km/リッター(車載燃費計計測値)

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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