ベントレー・コンチネンタルGTコンバーチブル スピード(4WD/8AT)
匂い立つ色気 2022.08.26 試乗記 「ベントレー・コンチネンタルGTコンバーチブル」に伝統の「スピード」が設定された。W12ユニットの最高出力は635PSから659PSへとわずか3.7%アップしたにすぎないが、ベースモデルとは一線を画す味わいがある。やはりベントレーにとって「Speed」の5文字は特別だ。まぶしいほどにきらびやか
新型ベントレー・コンチネンタルGTコンバーチブル スピード、略称GTCスピードは、webCG編集部のあるビルの裏手の丘の上の青空駐車場に止めてあった。あいにくの小雨のなか、ボディーも幌(ほろ)も濃紺でまとめられた大型4座コンバーチブルは、50台ほどのキャパがある駐車場のなかで光り輝いていた。竹取の翁(おきな)が竹林で光る竹を見つけたときの心情もかくやであったかもしれない。関係ないけど。
それはそうなのである。GTCスピードの話ですけれど、車両価格3835万円。試乗車はオプションが480万1800円分ものっかっていて、総額4315万1800円。「ロールス・ロイス・ドーン」の4261万円よりも高い超高級車が露天の駐車場に止まっているのだ。
しっぽりぬれた濃紺のボディーの両サイド下部に太いクロームメッキの装飾があって、鏡のように光を反射している。22インチの巨大なアルミホイールはダーク仕上げで、う~む。カッコイイ。
ドアを開けて乗り込むと、まぶしいほどのきらびやかさ。シートとドアトリムは紺色のレザーとアルカンターラに覆われていて、一見地味ながら、紺色のレザーには白いステッチが格子状に入っている。ダッシュボードには異なる2種のウッドが上下分割して貼られ、センターコンソールのアルミのパネルにはエンジンターンドと呼ばれる加工が施されている。キラキラ、ピカピカ。なんと手の込んだ仕事であることか。人が精魂込めてつくりあげたモノには、文字どおり魂が宿る。霊感ゼロの筆者にも、GTCスピードが輝いて見えたのはそれゆえだったに違いない。
センターコンソールの中央にあるエンジンのスタート&ストップのボタンを押すと、6リッターW12がバフォンッと爆裂音を控えめにあげ、ウィーンッとシートが自動的に前方に移動する。ダッシュボードのウッドの中央部分がクルリンと回ってインフォテインメントのスクリーンが現れる。ステアリングホイールの外側にはアルカンターラが使われていて、手触りがスポーティーだ。
大柄だけど小回りが利く
いざ駐車場を出発。この駐車場は入り組んだ住宅地のてっぺんにあって、狭い路地を直角に曲がる箇所がある。コンチネンタルGT系はミラーを入れると全幅2mを超えるボディーの持ち主である。筆者的には避けたい道路だけれど、避けていては駒沢通りに出られない。もちろん、超高級車ゆえ、障害物に接近するとセンサーが感知して警告音を鳴らしてくれる。とはいえ、やっぱりひとの目のほうが安心で、幸い編集部のHさんが「オーライ、オーライ」と声を出してくれている。そのおかげで、筆者は無事、直角ターンを曲がって丘をくだることができた。
丘を降りたあと、ふと思ったより簡単だったことに気づいた。「コンチネンタルGTスピード」同様、標準装備の4輪操舵の恩恵で、低速での小回りが利く。加えて、2017年に登場した第3世代のコンチネンタルGTで採用されたポルシェゆかりのプラットフォームがより後輪駆動寄りに設計されていて、ボディーの四隅がつかみやすくなっている。
本日は雨模様でもあるし、箱根はやめて房総方面に行くとするか……と思ったけれど、そういえば編集部のFさんからターンパイクの回数券をもらっていた。これを使わないのもモッタイナイ。と考え直し、旧山手通り経由で246号に出て、首都高速3号線に池尻から上がった。
コンチネンタルGTCスピードのリッチでぜいたくな気分は走るほどに積み重なっていく。悠然と、時に走行車線をゆったり走ってみちゃったりする。5950cc W12ツインターボは、先に登場したクーペの「コンチネンタルGTスピード」と同様、最高出力659PS/5000-6000rpmと最大トルク900N・m/1500-5000rpmを発生する。1500rpmで900N・mもの最大トルクを生み出す。これなら車重2470kgもあるボディーを悠然と加速させられるわけである。
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お金持ちの気分になれる
東名高速を過ぎ、厚木のあたりで雨がやみ、なんと日差しが出てきた。筆者は小田原厚木道路の小田原PAに入って幌を開けた。もちろん全自動、スイッチひとつ、19秒で幌はZ型に折り畳まれてリアに収納される。そうすると、乗り心地はいっそう快適になり、いわゆるバネ下の22インチのホイールと、前275/35、後ろ315/30というスーパーカーサイズでZR規格の「ピレリPゼロ」の存在が気にならなくなる。走り始めて1時間ほどが経過し、4315万1800円のクルマにカラダがだんだんなじんできて、本当に自分がお金持ちになった心もちになってくる。う~ん。私もけっこうがんばったよなぁ。と、がんばったことなんかないのに、自分を褒めたいと思ったりするのだ。自動車が人格におよぼす影響というのはスゴイです。
風の巻き込みはウインドディフレクターなしでも、さほどでもない。かといって、まったくないわけでもない。適度に風が入る。そういえば、ひところ、ドイツのメーカーをはじめ、ウインドディフレクターなるものに熱心だったけれど、風の巻き込みがまったくないのもつまらない、と考えはじめたのかもしれない。
ラッキーなことに箱根も雨が降っていなかった。私は回数券を料金所で手渡し、オープンのまま、適度な風を感じながら山道を走り続けた。すると意外なことが分かった。ひとつはサウンドである。筆者の記憶のなかの、例えば「ベンテイガ スピード」のW12よりも静かなのだ。ベンテイガのW12は635PS/5000rpmと900N・m/1750-4500rpm。同じスピードでも、ベンテイガ スピードはスタンダードのコンチネンタルGTのW12と同じチューンにとどめられている。ベンテイガは重心が高いSUVだから、ということが根本にあるのかもしれない。
コンチネンタルGT系は、24PS強力で、900N・mを250rpm低い回転数で生み出す。より性能アップが図られている。なのに、GTCスピードのW12はレッドゾーンの始まる6500rpmあたりまで回してみても、しゅううううんっ! と押し殺した排気音を発するのみで、グオオオオッとほえたりしない。
本来ならコンチネンタルGT同士の比較で申し上げたいところだけれど、あいにく筆者はスタンダードなコンチネンタルGTの12気筒に乗っていないので、ベンテイガ スピードを持ち出しているわけです。で、筆者の印象では、ベンテイガ スピードのW12のほうが迫力のあるサウンドを発し、あるところから強烈なターボキックでもって猛然と加速する。怪物度ということでは、ベンテイガ スピードが上だと筆者は思う。
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よりスポーティーかつエレガントに
GTCスピードはあくまでエレガントなのだ。アクセル全開を試みても、布団の端を噛(か)んで堪えるような貞淑さでもって、ドライバーを感動させる。加速も自然吸気っぽい。筆者は主にデフォルトの「B」モード、BはベントレーのBでもっぱら走っており、これを「スポーツ」モードに切り替えてみると、3000rpm付近で野性的な咆哮(ほうこう)を若干あげるものの、上まで回しても慎み深い姿勢を崩さない。それでいて、0-100km/h加速は3.7秒と、「ポルシェ911」で言うと「カレラS」、もしくは「カレラ4S」の両「カブリオレ」の3.8秒を上回る速さが主張されている。
フル加速の際の姿勢変化も小さい。筆者の記憶では、少なくとも第1世代のコンチネンタルGTは、全開にするとブワッと空に浮かび上がるような、いかにも4WDっぽい加速っぷりだったというのに……。これも、第3世代のプラットフォームで、エンジンの搭載位置を後ろに移動して前後重量配分を50:50に近づけ、合わせて前後トルク配分を後輪駆動寄りに変更したことの効果だろう。もちろん、3チャンバーのエアサスペンションだとか48Vのアクティブアンチロール制御だとか、電子制御系の働きもあるでしょう。でも、前後重量配分が適切であれば、そもそもの荷重変化を小さくできるわけで、そうすると電子制御による修正も少々で済ませることができる。
ちなみに、車検証に見る前後重量配分は、1290kgと1180kgで、52:48。フロントへのトルク配分は、Bおよび「コンフォート」モードがフロントに最大38%、スポーツモードでは最大17%となる。
第3世代のGTCスピードはいわば体幹が鍛えられてステアリングの正確さが増し、人馬一体感が強くなっている。そういう意味ではスポーティヴネスが向上している。一方、サウンドの演出としてはエレガンス重視で静粛性が増しており、富裕層の道具立てとして、よりジェントルマンっぽくなっている。大きな声を出さない。というのは紳士のたしなみのひとつである。新型GTCスピードは、さる2022年5月に発売70周年を迎えた「Rタイプ コンチネンタル」のスピリットをより色濃く継承し、よりセクシィになっているのだ。
(文=今尾直樹/写真=郡大二郎/編集=藤沢 勝)
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テスト車のデータ
ベントレー・コンチネンタルGTコンバーチブル スピード
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4880×1965×1400mm
ホイールベース:2850mm
車重:2470kg
駆動方式:4WD
エンジン:6リッターW12 DOHC 48バルブ ツインターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:659PS(485kW)/6000rpm
最大トルク:900N・m(91.8kgf・m)/1500-5000rpm
タイヤ:(前)275/35ZR22 104Y/(後)315/30ZR22 107Y(ピレリPゼロ)
燃費:14.1リッター/100km(約7.1km/リッター、WLTPモード)
価格:3835万円/テスト車=4315万1800円
オプション装備:ツーリングスペック(116万9900円)/ムードライティングスペック(27万8590円)/22インチスピードホイール<ダークティント>(24万7410円)/LEDウエルカムランプbyマリナー(7万5540円)/コンソールのデコレーティブインサート<エンジンターンドアルミダークティント>(33万7680円)/デュアルフィニッシュダークスティンバーウオールナット<オーバーグランドブラック>(68万5310円)/フロントシートコンフォートスペック(57万9630円)/コントラストステッチ(49万6610円)/ワイヤレスフォンチャージャー(5万2350円)/ベントレーローテーションディスプレイ(87万8780円)
テスト車の年式:2022年型
テスト開始時の走行距離:5318km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1)/高速道路(7)/山岳路(2)
テスト距離:520.0km
使用燃料:79.7リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:6.5km/リッター(満タン法)/6.9km/リッター(車載燃費計計測値)

今尾 直樹
1960年岐阜県生まれ。1983年秋、就職活動中にCG誌で、「新雑誌創刊につき編集部員募集」を知り、郵送では間に合わなかったため、締め切り日に水道橋にあった二玄社まで履歴書を持参する。筆記試験の会場は忘れたけれど、監督官のひとりが下野康史さんで、もうひとりの見知らぬひとが鈴木正文さんだった。合格通知が届いたのは11月23日勤労感謝の日。あれからはや幾年。少年老い易く学成り難し。つづく。
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