ボルボXC60リチャージ アルティメットT6 AWDプラグインハイブリッド(4WD/8AT)/V60アルティメットB4(FF/7AT)
2030年への助走 2023.04.19 試乗記 プラグインハイブリッドの「XC60」とマイルドハイブリッドの「V60」を連ね、福岡空港から山口・萩城までショートトリップ。全車にGoogleが搭載された、最新型ボルボ(MY23)の仕上がりを体感した。2年前とは変わった名称と価格
福岡空港に到着すると、駐車場にボルボの最新モデルが並べられていた。webCGチームに割り振られたのは、XC60とV60。2年ほど前に九州でボルボに乗った時に試乗したのも同じXC60である。いや、同じではない。ボルボのラインナップは2022年7月に大幅な変更を受けており、名称も変わっている。試乗車は恐ろしく長い名前で、簡単には覚えられない。
「リチャージ」というのは、ピュアエレクトリック(電気自動車)とプラグインハイブリッドのモデルであることを示す呼称だ。リチャージだけではどちらなのかわからないので、最後にプラグインハイブリッドと説明が加わる。「アルティメット」は最上級モデルに付けられる称号である。そして、四輪駆動であることを表す4WDも付いているから長くなった。
名称だけでなく、価格にも変動がある。2023年に価格改定があり、「XC60リチャージ アルティメットT6 AWDプラグインハイブリッド」は30万円値上がりして999万円になった。前回試乗した「XC60リチャージ プラグインハイブリッドT8 AWDインスクリプション」はハイパワーエンジンを搭載するT8モデルだったが、価格は949万円だった。原材料の価格上昇を受けたものだから仕方がないが、ボルボに限らずクルマの値段は一本調子で上がり続けている。
もう1台は「V60アルティメットB4」。こちらは名前が短い。リチャージが付いていないから、こちらは48Vマイルドハイブリッドモデルである。AWDの表記もなく、駆動方式がFFであることがわかる。Vはワゴンを意味し、かつてV60はボルボの中心的なモデルだった。ボルボは輸入ステーションワゴンの登録台数で、いつも圧倒的な差をつけて1位の座に君臨していたのだ。スウェディッシュエステートのブランドというイメージが強かったのが、今ではすっかりSUVメーカーになった。
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ガソリンエンジンも着実に進化
まずはV60に乗った。運転席に座ると安心感がある。ずっと前からボルボのさまざまなモデルに乗ったなかで、最も多かった車型はワゴンだった。レジャーカー、ファミリーカーとしてワゴンが人気だった時代に、国内外を問わず自動車メーカーが目標にしていたのがボルボである。トレンドではなくなった今でも、ボルボのワゴンは特別な存在なのだ。
前回の試乗では佐賀県の有田を目指したが、時間切れで唐津までしか行けなかった。同じ失敗を繰り返すわけにはいかないので、Googleマップを使って綿密に計画を練る。東に走って関門海峡を渡り、萩城まで行って戻るルートである。356km、5時間35分という数字が示された。朝10時の出発で午後6時までに福岡のホテルに戻ればいいということなので、十分な余裕がある。
最初の目的地は、川棚温泉。ちょうど昼時に到着するはずで、山口県民のソウルフードとされる食べ物が目当てだ。勇んで出発したが、空港周辺で撮影しようとして時間をロス。土地勘のないところでは、1つ曲がり角を間違えると戻るのに苦労する。さらに、高速道路に乗ってからも、関門橋まで結構な距離があることに驚いた。北九州市がこんなに広いとは思っていなかった。
いろいろと想定外の事態が生じたが、ドライブは順調である。電動化に向けて突き進むボルボにとって、マイルドハイブリッドはいずれ廃止される運命のパワートレインだ。内燃機関は消え去っていくものと目されているが、まだ役割が終わったわけではない。ボルボが「完全な電気自動車メーカーになる」と宣言した2030年は、まだ7年も先である。ガソリンエンジンも着実に進化させている。
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ボルボイズムは健在
197PSの2リッターターボエンジンは、とりたててスポーティーというわけではない。控えめに仕事をこなし、いざという時には頼もしいパワーを提供する。モーターの恩恵は実感できるものではないが、陰でアシストしているのだろう。実用性を重視して派手さを求めないのは、ボルボが持つ昔からのポリシーである。荒っぽい速さよりも、安全性を重視するのがボルボイズムなのだ。もちろん、このクルマにも最高水準のセーフティー機能が搭載されている。
かつては質実剛健というイメージが強かったが、今ではすっかりプレミアム感を漂わせるようになった。四角いフォルムが売りだった時代は遠い昔で、北欧流の洗練を身に着けている。過去を懐かしむ声もあるようだが、内外装デザインが上質になったことはありがたいことに違いない。「都会の絵の具に染まらないで」というセンチメンタルな思いは、進歩を妨げるものだ。
高速巡航での静粛性は高いレベルだ。外に出るとエンジン音はそれなりに聞こえるから、上手に遮音しているのだろう。Bowers & Wilkinsのオーディオシステムで音楽を流しながら里山を抜けていくと、川棚温泉に到着。「元祖瓦そば たかせ」で瓦そばをいただく。熱した瓦の上に茶そばを乗せ、錦糸卵や薄切り牛肉などを載せてある。麺つゆに浸して食べるのが作法だ。西南の役の折に薩摩兵が瓦で野草を焼いて食べていたという言い伝えから、1962年に考案されたそうである。この店でもうひとつの名物料理とされている「うな茶」に使われているうなぎは鹿児島産だったから、今も薩長同盟の絆が残っているのかもしれない。
腹を満たして、XC60に乗り換える。意外なほどに違いを感じない。インテリアデザインはボルボ全車で同じつくりになっているから、どのモデルに乗っても違和感がないのだ。多少は差異を設けてほしいような気もするが、ブランドの統一性が大切なのだろう。見た目はともかく、差がないことが価値を持つのが運転感覚である。車型が違うし座面が高いのだが、さほど気にすることなく同じ感覚で乗れる。乗り換えても、これがボルボだと感じるのだ。
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プラグインハイブリッド比率は21%
プラグインハイブリッドモデルではドライブモードを切り替えることができるが、デフォルトの「Hybrid」で走る。自動的にエンジンとモーターを効率よく使ってくれるモードだ。すでにバッテリー容量はゼロに近づいているから、EVモードの「Pure」を選んでも意味がない。基本的にはエンジンの動力で走っていて、モーターは補助的役割である。この状態では静粛性はマイルドハイブリッドとあまり差がないが、加速の際には明確なアドバンテージがあった。253PSというエンジン出力にモーターが加わり、巨体をものともしない。
いろいろと手間取ったため、計画より遅れている。ナビの表示では、時間に間に合うかギリギリだ。急いで萩城に向かい、撮影したらすぐに戻ることにする。城下町を散策したかったが、諦めるしかない。萩城は、関ヶ原の戦いに敗れて転封された毛利輝元が築いた。明治になって城は取り壊されてしまったが、美しい石垣が残されている。入り口は敵の侵入を防ぐためにクランク状になっていて、運転には気を使う。XC60だからよかったが、視点の低いV60だったら苦労しただろう。一度SUVに乗ると、セダンやワゴンには戻れないというのもわかる。
スペックを見ると、V60の燃費がWLTCモードで15.4km/リッター、XC60が14.3km/リッターとなっている。400kmほど走って、トリップメーターを見る限りではどちらも15km/リッターほど。車両重量の差をパワートレインの違いが埋め合わせたようだ。XC60では、販売台数の21%をプラグインハイブリッドモデルが占めている。「XC90」では32%まで上がる。ボルボは他メーカーに比べてプラグインハイブリッド比率が高いらしい。現状では最適解のひとつと考えられるこのパワートレインが、多くのユーザーに受け入れられるようになってきた。
2030年に自動車の状況がどうなっているのかを予想するのは難しいが、今よりも電動化が進んでいることは確実だ。純粋な電気自動車の普及がすぐには進まない状況のなかでは、マイルドハイブリッドもプラグインハイブリッドも重要な意味を持つ。ワゴンとSUVでその両方を試し、いずれも現時点での誠実な取り組みがなされていることを感じた。新しい時代に向けても、ボルボが原点を見失っていないことをうれしく思う。
(文=鈴木真人/写真=田村 弥/編集=近藤 俊)
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テスト車のデータ
ボルボXC60リチャージ アルティメットT6 AWDプラグインハイブリッド
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4710×1915×1660mm
ホイールベース:2865mm
車重:2180kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
フロントモーター:交流同期電動機
リアモーター:交流同期電動機
トランスミッション:8段AT
エンジン最高出力:253PS(186kW)/5500rpm
エンジン最大トルク:350N・m(35.7kgf・m)/2500-5000rpm
フロントモーター最高出力: 71PS(52kW)/3000-4500rpm
フロントモーター最大トルク:165N・m(16.8kgf・m)/0-3000rpm
リアモーター最高出力:145PS(107kW)/3280-1万5900rpm
リアモーター最大トルク:309N・m(31.5kgf・m)/0-3280rpm
システム総合出力:350PS
タイヤ:(前)255/40R21 102V/(後)255/40R21 102V(ピレリPゼロ)
ハイブリッド燃料消費率:14.3km/リッター(WLTCモード)
充電電力使用時走行距離:81km(WLTCモード)
EV走行換算距離:81km(WLTCモード)
交流電力量消費率:234Wh/km(WLTCモード)
価格:999万円/テスト車:1022万9650円
オプション装備:ボディーカラー<クリスタルホワイトプレミアムメタリック>(15万円) ※以下、販売店オプション ボルボ・ドライブレコーダー フロント&リアセット<スタンダード>(8万9650円、工賃を含む)
テスト車の年式:2022年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3)/高速道路(7)/山岳路(0)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター
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ボルボV60アルティメットB4
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4780×1850×1435mm
ホイールベース:2870mm
車重:1730kg
駆動方式:FF
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:7AT
エンジン最高出力:197PS(145kW)/4750-5250rpm
エンジン最大トルク:300N・m(30.6kgf・m)/1500-4500rpm
モーター最高出力:13.6PS(10kW)/3000rpm
モーター最大トルク:40N・m(4.1kgf・m)/2250rpm
タイヤ:(前)235/45R18 98W/(後)235/45R18 98W(ミシュラン・プライマシー4)
燃費:15.4km/リッター(WLTCモード)
価格:659万円/テスト車:743万1650円
オプション装備:ボディーカラー<ブライトダスクメタリック>(9万2000円)/チルトアップ機構付きパノラマガラスサンルーフ(21万円)/ラミネーテッドサイドウィンドウ(11万円)/Bowers&Wilkinsプレミアムサウンドオーディオシステム<1100W、15スピーカー>サブウーファー付き(34万円) ※以下、販売店オプション ボルボ・ドライブレコーダー フロント&リアセット<スタンダード>(8万9650円、工賃を含む)
テスト車の年式:2022年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3)/高速道路(7)/山岳路(0)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

鈴木 真人
名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。
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