ボルボXC60リチャージプラグインハイブリッドT8 AWDインスクリプション(4WD/8AT)
最上級には意味がある 2021.07.31 試乗記 「ボルボXC60」の最上級モデル「リチャージプラグインハイブリッドT8 AWD」に試乗。九州北部のドライブ旅でステアリングを握った筆者は、その上質な走りに大いに感銘を受けたのだった。旬のSUVで焼き物の里へ
毎度おなじみボルボ旅。今回のお題は九州である。福岡をスタートし、夕方4時までに帰ってくることができればどこへ行ってもいい。自由度が高いから選択肢が広く、コース設定にセンスが試される。やまなみハイウェイを目指すのが常道だが、山道を走るだけなら箱根とあまり変わらない。関門海峡で本州に渡り尾道から四国に向かうというアドベンチャールートも考えたが、超ロングドライブなので深夜に出発する必要がある。
西に目を向けると、魅力的な地名が並んでいた。佐賀県の唐津、伊万里、有田である。焼き物に詳しくなくても、誰もが知っている有名なブランドではないか。高速道路と下道がほどよい配分で、ちょうどいい距離感だ。まずは一番近い唐津を目指す。
試乗車は「ボルボXC60リチャージプラグインハイブリッドT8 AWDインスクリプション」。ボルボのミッドサイズSUVである。同じモデルに北海道で試乗したことがあるが、その時は別の名前だった。当時は「Twin Engine」と呼ばれていたのが、2020年から新しい名称ルールが採用されて「リチャージプラグインハイブリッド」に変更されている。2リッター直4ターボ+スーパーチャージャーエンジンに2つのモーターを組み合わせ、外部充電ができるリチウムイオン電池を搭載するのは同じだ。モーター駆動の4WD機構も備えるXC60の最上級グレードである。
取材クルーは前回と同じ。北海道の試乗では吹雪を呼んでしまったが、この日は九州地方が梅雨明けした。もっと前に別のクルマの試乗会で鹿児島に大雪を降らせたこともあるけれど、悪いジンクスは忘れよう。福岡市の湾岸地域には新しいビルが立ち並び、瀟洒(しょうしゃ)な住宅街が隣接する。東京のベイエリアと横浜のみなとみらいを合わせたような雰囲気だ。ひときわ目立っているのがPayPayドーム。今やすっかり福岡のランドマークである。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
他より明確に一段上
福岡都市高速環状線から西九州自動車道に向かう。駐車場から出てしばらくはEV走行だったが、ほんの数km走るとエンジンがかかった。バッテリー容量は34Ah(12.2kWh)で、満充電ならモーターで40.9km走ることができる(WLTCモード)。家に充電設備があれば普段はほとんどガソリンを使わない生活が可能だろう。短い時間だったが、モーター走行は夢のようになめらかで静かだった。いつもながら、EVの上質感には感嘆する。
バッテリー残量が減ると、エンジンとモーターを併用して走行する。ドライブモードを切り替えることができて、「PURE」ではモーターが優先され、「POWER」ではエンジンとモーターが最大限に働いて強い加速をもたらす。通常は「HYBRID」になっており、自動的に効率のいい作動状態を選んでくれる。
モーター走行には多少劣るが、「HYBRID」モードでもスムーズさと静粛性のレベルは高い。振動はよく抑えられていて、高速巡航ではエンジン回転数も低いので室内へのノイズの侵入は最小限だ。ボルボには48Vマイルドハイブリッドシステムを搭載したモデルもラインナップされているが、リチャージプラグインハイブリッドは明確に一段上の上質さが感じられる。より電動化が進んだモデルにプライオリティーを置くのは、ボルボとしては当然の戦略だろう。価格は高くなるが、その価値があるという主張である。
最高出力はエンジンが233kW(318PS)で、フロントモーターが34kW、リアモーターが65kW。強力なパワーユニットだが、馬鹿力で押すマッチョなタイプではない。エクステリアデザインはSUVらしからぬ優雅さがあるし、内装はシンプルで気品を感じさせる。運転感覚とデザインに統一性をもたせているのだ。新世代のボルボらしさにはっきりした形を与えようとする意思が感じ取れる。
山道を上って佐賀県有数の観光地に
高速道路では「全車速追従機能付きACC(アダプティブクルーズコントロール)」と「パイロットアシスト(車線維持支援機能)」を使って安楽に走行。衝突回避被害軽減ブレーキや歩行者・サイクリスト検知機能などの先進安全装備や運転支援機能は、グレードにかかわらず標準装備されている。高速道路を降りて唐津市内に向かうと、にわかに空はかき曇り、夕立が襲ってきた。市内探索を諦めて海辺を目指すと雨は上がって夏の日差しが戻る。
長い松林が続くのは、虹の松原という名勝。約100万本の黒松が群生しているという。両側に青々とした松を見ながらドライブするのは爽快だが、ところどころ木が覆(おお)いかぶさるようになっているのが気になった。全高1660mmのXC60は大丈夫でも、バスはぶつかってしまいそうである。2年ほど前に倒れた松にクルマが衝突する死傷事故があったというから、何らかの対策が必要だろう。
海から目を転じて反対方向を見やると、小高い山を上っていく道を発見。ナビ画面で確かめると、くねくねとした道がある。勇んでクルマを乗り入れたものの、道が狭いうえに路面に暴走防止のうねりが仕込まれていた。スポーツ走行は無理だと観念し、おとなしくゆっくりと走っていくと、山頂の鏡山公園に到着。展望台からは海が一望でき、絶景を堪能できる。後で調べると、虹の松原と鏡山公園は佐賀県有数の観光地だとわかった。こういう思わぬ出会いも、無計画なクルマ旅の醍醐味(だいごみ)である。
唐津を後にして、次に向かったのは伊万里。市内に入ると、街角に伊万里焼の装飾があり、橋の欄干に焼き物があしらわれている。観光資源として押し出しているのがよくわかるが、市街地ではちょっと殺風景だ。少しはずれた場所にある鍋島藩窯公園に向かうことにする。
江戸時代の狭い道もクリア
のどかな田園風景を抜けると、少しずつ上り坂になっていく。石畳の道の両側には窯元や陶磁器販売店が並んでいる。歴史を感じさせる風情があるものの、いかんせん道が狭い。鍋島藩直営の窯があった江戸時代の町並みは、馬や駕籠(かご)ならちょうどよかっただろうが現代のクルマ向きではない。ありがたいことに4台の高解像度カメラを使った真俯瞰(ふかん)画像がモニターに映し出されるので、接近アラートの鳴るなかでなんとか切り抜けることができた。
XC60は全幅1900mmの堂々たるサイズなのに、少し前にボルボのフラッグシップSUVの「XC90」に乗ったからコンパクトに感じてしまった。全幅の差は60mmにすぎないが、全長は260mm、ホイールベースは120mm短い。数字で見ると大した違いではなさそうでも、運転してみると感覚はまるで違った。XC90のことは“現代のグランドツーリングカー”と表現したが、XC60はもっと生活に密着した性格のクルマである。特にリチャージプラグインハイブリッドモデルはEVとして普段使いするのがメインで、時にロングドライブを楽しむというライフスタイルに向いている。
石畳道を抜けると、少し幅は広がったものの荒れ果てた山道だった。路肩には落ち葉や枯れ枝が大量に残されている。そして、またもや豪雨。北海道の吹雪を耐え抜いたXC60が立ち往生するはずはないが、あまり歓迎すべき状況ではない。福岡に戻って聞いてみたら、ずっと快晴だったとのこと。どうやら、われわれの後をピンポイントで線状降水帯が追いかけてきていたらしい。
時間切れで有田には行けずじまい。ただ、もとをたどれば伊万里と有田は兄弟みたいなもの。有田でつくられた焼き物が伊万里港から積み出していたことで伊万里焼と呼ばれることになったそうだ。有田に行けなかったことは残念ではあるが、XC60の前席に備わるマッサージ機能を使い忘れるという致命的なミスに比べれば取るに足らないことである。
(文=鈴木真人/写真=三浦孝明/編集=関 賢也)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
テスト車のデータ
ボルボXC60リチャージプラグインハイブリッドT8 AWDインスクリプション
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4690×1900×1660mm
ホイールベース:2865mm
車重:2180kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ+スーパーチャージャー
フロントモーター:交流同期電動機
リアモーター:交流同期電動機
トランスミッション:8段AT
エンジン最高出力:318PS(233kW)/6000rpm
エンジン最大トルク:400N・m(40.8kgf・m)/2200-5400rpm
フロントモーター最高出力:46PS(34kW)/2500rpm
フロントモーター最大トルク:160N・m(16.3kgf・m)/0-2500rpm
リアモーター最高出力:87PS(65kW)/7000rpm
リアモーター最大トルク:240N・m(24.5kgf・m)/0-3000rpm
タイヤ:(前)255/45R20 105Y/(後)255/45R20 105Y(ミシュラン・プライマシー4)
燃費:12.6km/リッター(WLTCモード)
価格:949万円/テスト車=1003万9650円
オプション装備:有償ボディーカラー<クリスタルホワイトパール>(12万円)/Bowers&Wilkinsプレミアムサウンドオーディオシステム<1100kW、15スピーカー、サブウーハー付き>(34万円) ※以下、販売店オプション ボルボ・ドライブレコーダー フロント&リアセット<工賃2万6400円含む>(8万9650円)
テスト車の年式:2021年型
テスト開始時の走行距離:4803km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3)/高速道路(6)/山岳路(1)
テスト距離:209.5km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:9.7km/リッター(車載燃費計計測値)

鈴木 真人
名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。
-
BSAゴールドスター650(5MT)【レビュー】 2026.6.2 かつて一世を風靡(ふうび)した英国の名門、BSAが復活! 新生第1号モデルである「ゴールドスター650」は、クラシックで優雅なお散歩バイク……と思いきや、ツインカムの大排気量シングルで、ライディングも前のめりに楽しめるマシンに仕上がっていた。
-
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション(4WD)【試乗記】 2026.6.1 「ホンダCR-V」がフルモデルチェンジ。新型は適切なボディーサイズと高品質な内外装を持ち、乗れば最新のホンダ車らしい気持ちよさが味わえる。ただし、その月販目標は400台。ちょっと弱気ではあるものの、周辺事情にも考えを巡らせると極めて妥当な数字にも思えてくる。
-
トヨタRAV4 GRスポーツ(4WD/CVT)【試乗記】 2026.5.30 新型「トヨタRAV4」のプラグインハイブリッド車ではEV走行換算距離が約150kmにまで到達。もちろん電池容量の拡大によるところも大きいが、何よりも最新のハイブリッドシステムによる効率向上が効いている。「GRスポーツ」をドライブした印象をリポートする。
-
キャデラック・リリックV(4WD)【試乗記】 2026.5.29 キャデラック初の電気自動車(BEV)「リリック」に、最高出力646PSのハイパフォーマンスモデル「リリックV」が登場。“ブランド史上最速”をうたう豪速SUVだが、実際に乗ってみると、高い動力性能がもたらすゆとりや心地よさにも魅力を感じる一台となっていた。
-
DS N°8エトワールAWD(4WD)【試乗記】 2026.5.28 前衛を身上とするフランスのラグジュアリーブランド、DSオートモビルから、新たなハイエンドモデル「DS N°8(ナンバーエイト)」が登場。当代屈指の性能を誇る電気自動車であり、かの地では大統領専用車にも選ばれる一台の、独創の魅力に触れた。
-
NEW
第290回:商用バンで砂漠を行く親子が向かうのは天国か地獄か 『シラート』
2026.6.4読んでますカー、観てますカー失踪した娘を探して親子はモロッコの砂漠へ。砂漠で開催されていたレイブパーティーが最高潮に達した頃、軍隊がやってきて中止させられる。親子が乗るFFの商用バンは次のパーティー会場にたどり着けるのか……。 -
NEW
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション(前編)
2026.6.4あの多田哲哉の自動車放談ひさびさに日本市場に戻ってきた、ホンダを代表するSUV「CR-V」。最新世代の仕上がりを、トヨタの車両開発者だった多田哲哉さんはどう評価する? まずは、ワインディングロードを走らせた第一印象から。 -
NEW
第964回:フィアットグッズのコレクターから学ぶ人生訓
2026.6.4マッキナ あらモーダ!イタリア在住の大矢アキオが、トリノで著名なフィアットグッズのコレクターを取材。若き日の苦労を経て大成した人物が語る、人生で大切なものとは? フィアットやイタリアの歴史を物語る、貴重なコレクションの数々とともに紹介する。 -
NEW
気づけばすでに4モデル スバルのBEV戦略と水平対向エンジンの未来を考える
2026.6.4デイリーコラム「ソルテラ」に続き、「トレイルシーカー」「アンチャーテッド」「ゲッタウェイ」と、いつの間にか4モデルが顔をそろえたスバルのBEV。伝統的な水平対向エンジンやシンメトリカルAWDはこの先どうなるのか? スバルの未来戦略を探る。 -
レクサスES350h(FF/CVT)/ES350e(FWD)/ES500e(4WD)【海外試乗記】
2026.6.3試乗記「レクサスES」がフルモデルチェンジ。シャシーがFFベースというのは歴代モデルと同じだが、新型ではボディーサイズがググッと拡大。「LS」の6輪ミニバンコンセプトが登場したこともあり、今後のレクサスセダンの総代を担うことになる。北米で乗った印象をリポートする。 -
ミドシップ化で運動性能はどう変わる? 「GRヤリスMコンセプト」の現時点での完成度を体感
2026.6.3デイリーコラム「GRヤリス」をベースとしたミドシップ4WDとして市販化を目指す「GRヤリスMコンセプト」。現在もスーパー耐久に投入されるなどして鍛えられているが、その開発車両をドライブできた。普通のGRヤリスとの運動性能の違いや、新開発エンジンの印象などをリポートする。





















































