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日産セレナe-POWERルキシオン(FF)

これなら長く付き合える 2023.07.10 試乗記 生方 聡 日産の定番ミニバン「セレナ」のなかでも、最上級モデルとなるのが「e-POWERルキシオン」だ。先進の運転支援システムとハイブリッドシステムを備えたハイテクファミリーカーは、「このクルマなら家族の足として長く使える」と思わせる、納得の仕上がりだった。
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2大キラーコンテンツを搭載

“技術の日産”が誇る先進のテクノロジーのなかで、いまの日産を象徴しているのが電動化技術の「e-POWER」と運転支援システムの「プロパイロット2.0」。この2大キラーコンテンツを手に入れ、満を持して登場したのが、今回試乗したセレナe-POWERルキシオンだ。

e-POWERルキシオンは、2022年11月末のフルモデルチェンジで6代目に進化した現行セレナの最上位グレード。ガソリン車の発売から遅れて登場したe-POWER車だが(参照)、2023年4月半ばの時点で2万台を超える受注を獲得し、セレナを注文したうちの半数を超える人がe-POWERを選んでいることからも、その期待の高さがうかがえる。

さらに、15%以上の顧客はハンズオフ走行が可能なプロパイロット2.0を唯一搭載するセレナe-POWERルキシオンを選んでいるという。ただし、ガソリン車、e-POWER車含めて他のグレードが8人乗りであるのに対して、このセレナe-POWERルキシオンは、プロパイロット2.0を搭載するのと引き換えに、2列目にキャプテンシートを採用する7人乗りになるのが悩ましいところ。家族構成により、どうしても8人乗りが欲しいという人は、プロパイロット2.0を諦めざるをえないのだ。それでも、旧型ではe-POWER車は7人乗りしか選べなかったことを思えば、大きな進歩といえるだろう。

2022年11月に発表された現行型「日産セレナ」。ハイブリッド車の「e-POWER」は純エンジン車よりやや上市が遅れ、2023年2月に受注開始、同年4月に発売となった。
2022年11月に発表された現行型「日産セレナ」。ハイブリッド車の「e-POWER」は純エンジン車よりやや上市が遅れ、2023年2月に受注開始、同年4月に発売となった。拡大
「ルキシオン」はハイブリッド車のみに設定される「セレナ」の最上級グレード。インテリアではインストロアやドアトリムクロスが専用表皮となり、ブラックの木目柄装飾パネルが用いられるほか、シート表皮も合成皮革となる。
「ルキシオン」はハイブリッド車のみに設定される「セレナ」の最上級グレード。インテリアではインストロアやドアトリムクロスが専用表皮となり、ブラックの木目柄装飾パネルが用いられるほか、シート表皮も合成皮革となる。拡大
「セレナ」では、前後にスライドさせることで1列目のセンターアームレストにも2列目のセンターシートにも使える「スマートマルチセンターシート」が目玉装備のひとつとなっているが、現行型の「e-POWERルキシオン」では非採用に。代わりに、浅めの収納スペースが備わるフロントセンターアームレストが設置された。
「セレナ」では、前後にスライドさせることで1列目のセンターアームレストにも2列目のセンターシートにも使える「スマートマルチセンターシート」が目玉装備のひとつとなっているが、現行型の「e-POWERルキシオン」では非採用に。代わりに、浅めの収納スペースが備わるフロントセンターアームレストが設置された。拡大
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広さが自慢の“ほぼ5ナンバー”ボディー

標準的なグレードでは全長を4690mmに、全幅を1695mmに収めることで5ナンバーボディーを実現するセレナだが、「ハイウェイスター」とこのe-POWERルキシオンでは、より精悍(せいかん)なデザインのフロントグリル/フロントエアロバンパー、サイドスカートといった専用のエクステリアを採用。これにともない全幅は1715mm、全長も標準より75m長い4765mmとなった。一方、ホイールベースは旧型に比べて10mm伸び、最小回転半径が5.5mから5.7mに大きくなったのは、ステアリングを握る者には気になるところだ。

“ほぼ5ナンバー”ボディーのe-POWERルキシオンだが、室内の広さは相変わらず。7人乗り、2列目キャプテンシートを採用するこのグレードは、その前後スライド量が他より60mm短い580mmだが、シートをある程度後ろに下げるだけで足もとには広大なスペースが確保されるし、適切に調節すれば、2列目・3列目ともに窮屈な思いをせずにすむ。

うれしいといえば、「デュアルバックドア」の採用も見逃せない。跳ね上げ式のバックドアの上半分だけを開閉可能なハーフドアを、旧型から継続。バックドア全体を開けずに荷室にアクセスできるので、後方が壁だったり、すぐうしろに他のクルマが止まっていたりする状況ではとても重宝する。そもそも、大きく重たいバックドアを開ける回数が減ること自体が助かる。

左右にアームレストが備わる「ルキシオン」の2列目キャプテンシート。他のグレードと同じく前後左右のスライド調整機構が付くが、前後のスライド量は60mm短くなっている。
左右にアームレストが備わる「ルキシオン」の2列目キャプテンシート。他のグレードと同じく前後左右のスライド調整機構が付くが、前後のスライド量は60mm短くなっている。拡大
3列目シートは5:5の左右分割式。2列目シートと同じく、2口のUSB Type-Cポートが備わるほか、助手席側の電動スライドドアを操作するスイッチも設けられている。
3列目シートは5:5の左右分割式。2列目シートと同じく、2口のUSB Type-Cポートが備わるほか、助手席側の電動スライドドアを操作するスイッチも設けられている。拡大
テールゲートの上部のみを開閉できる「デュアルバックドア」。先代モデルから採用される便利機能で、狭い場所での荷物の積み下ろしなどに重宝する。
テールゲートの上部のみを開閉できる「デュアルバックドア」。先代モデルから採用される便利機能で、狭い場所での荷物の積み下ろしなどに重宝する。拡大

走りの端々から感じる長足の進化

運転席につくと、すっきりとしたデザインのコックピットが印象的だ。このe-POWERルキシオンには、「統合型インターフェイスディスプレイ」が標準装着されるのも、その一因だろう。12.3インチのメーターディスプレイとタッチ式のセンターディスプレイを段差をつけて並べたこの方式は、電気自動車の「アリア」にも採用されており、2枚を同一平面上に並べる他車のそれより、センターディスプレイが見やすく、タッチしやすいのがうれしいところだ。エアコンなどの操作はセンターディスプレイ下のパネルでするのだが、物理的なダイヤルで温度調節できるのもいい。

おなじエリアには、日産初のスイッチタイプのシフトセレクターが配置されている。さっそくDを押してブレーキペダルから足を離すと、クルマはゆっくりと動きはじめる。e-POWERルキシオンでは最高出力163PSの電気モーターが前輪を駆動するため、動き出しはスムーズで、エンジンが停止していることからキャビンは静かなままだ。アクセルを軽く踏んで加速すると程なくしてエンジンが始動するが、意外とその音が気にならないのは、エンジンが静かになったことと、ボディーの静粛性が高まったことの相乗効果だろう。

モーターによる加速は、街なかはもちろんのこと高速道路でも十分に余裕がある。モーターのパワーアップに加えて、排気量を増した発電用エンジンがスムーズで余裕ある加速を生み出しているのが容易に想像できる。

e-POWERといえば、いわゆる“ワンペダルドライブ”が可能なことも魅力のひとつだ。セレナでは「e-Pedal Step」のスイッチをオンにすることでワンペダルドライブが楽しめる。ふだんは停車するとき以外はアクセルペダルだけで速度調整ができるので、慣れると運転が実に楽で快適になる。

純エンジン車のドライブモードが「STANDARD」「ECO」のみなのに対し、ハイブリッド車では「SPORT」も加えた3種類のモードが用意される。ただし、操作スイッチはダッシュボード右端の下部という、いささか見つけにくいところに設置されている。
純エンジン車のドライブモードが「STANDARD」「ECO」のみなのに対し、ハイブリッド車では「SPORT」も加えた3種類のモードが用意される。ただし、操作スイッチはダッシュボード右端の下部という、いささか見つけにくいところに設置されている。拡大
2枚の液晶ディスプレイが目を引くインストゥルメントパネルまわり。シフトセレクターは押しボタン式で、センタークラスターに配されている。
2枚の液晶ディスプレイが目を引くインストゥルメントパネルまわり。シフトセレクターは押しボタン式で、センタークラスターに配されている。拡大
パワーユニットは1.4リッターガソリンエンジンを発電に用いるシリーズハイブリッド。WLTCモードで18.4~20.6km/リッターという燃費性能は、「ホンダ・ステップワゴン」のハイブリッド車とほぼ同等、「トヨタ・ノア/ヴォクシー」のそれには一歩譲るといったところだ。
パワーユニットは1.4リッターガソリンエンジンを発電に用いるシリーズハイブリッド。WLTCモードで18.4~20.6km/リッターという燃費性能は、「ホンダ・ステップワゴン」のハイブリッド車とほぼ同等、「トヨタ・ノア/ヴォクシー」のそれには一歩譲るといったところだ。拡大
水色のアイコンが目を引く「e-Pedal Step」のスイッチ。この機能をオンにすると回生ブレーキが強まり、アクセルペダルの踏み加減だけでほとんどの加速・減速操作が可能となる。ただし、かつての「e-Pedal」とは異なり、極低速まで減速すると、そのまま停車するのではなくクリープ走行状態に入る。停⾞時には必ずブレーキを踏む必要があるのだ。
水色のアイコンが目を引く「e-Pedal Step」のスイッチ。この機能をオンにすると回生ブレーキが強まり、アクセルペダルの踏み加減だけでほとんどの加速・減速操作が可能となる。ただし、かつての「e-Pedal」とは異なり、極低速まで減速すると、そのまま停車するのではなくクリープ走行状態に入る。停⾞時には必ずブレーキを踏む必要があるのだ。拡大

大きな進化が実感できる

セレナe-POWERルキシオンの走りは、全高が1885mmと高いわりには落ち着いており、高速走行時でもおおむねフラットな挙動を示す。直進安定性も優れていて、ゆったりと運転できるぶん、ドライバーの負担は少ない。一方、荒れた路面や目地段差を越えたときにはショックを拾いがちだが、十分に許容できるレベルだ。

一定の条件下において、高速道路の同一車線内で“ハンズオフ”(ステアリングホイールから手を放して走行すること)を可能にするプロパイロット2.0が利用できるのも、このクルマの大きな魅力。自動的に車速や車間距離を調整し、ステアリング操作をアシストする「プロパイロット」も十分便利だが、ハンズオフまで可能なプロパイロット2.0なら、さらに快適で楽できるのが助かる。

ところで、わが家で最初に購入したミニバンは、FRからFFに変わった2代目セレナだった。当時はいざというときに6人が乗れるミニバンを探していて、5ナンバーサイズのボディーに比較的広い室内、そして手ごろな価格というのが決め手だった。ただ、走りに関してはまるで面白みがなく、またクルマ酔いしやすい子供たちにも不評で、すぐに手放してしまった。それから4回のフルモデルチェンジを経た現行セレナに乗り、このクルマだったら一緒に長く暮らせたかもしれないなぁと思うと、このクルマが手に入るいまのファミリーがうらやましいばかりだ。

(文=生方 聡/写真=荒川正幸/編集=堀田剛資)

現行型「セレナ」では、タイヤサイズは全車共通で205/65R16。「ルキシオン」には「ハイウェイスター」と同じデザインの16インチアルミホイールが装着される。
現行型「セレナ」では、タイヤサイズは全車共通で205/65R16。「ルキシオン」には「ハイウェイスター」と同じデザインの16インチアルミホイールが装着される。拡大
充実したハイテク装備は「ルキシオン」の大きな魅力。本文で紹介される「プロパイロット2.0」だけでなく、GPSによる位置情報メモリー機能付きの自動パーキングシステム「プロパイロット パーキング」や、車外から入庫・出庫の操作が可能な「プロパイロット リモート パーキング」などの機能も装備される。
充実したハイテク装備は「ルキシオン」の大きな魅力。本文で紹介される「プロパイロット2.0」だけでなく、GPSによる位置情報メモリー機能付きの自動パーキングシステム「プロパイロット パーキング」や、車外から入庫・出庫の操作が可能な「プロパイロット リモート パーキング」などの機能も装備される。拡大
機能の充実ぶりに加え、乗り心地や静粛性、動力性能と、クルマとしての基本性能も確実に進化している現行型「セレナ」。これなら家族の足として、長く使える一台となるだろう。
機能の充実ぶりに加え、乗り心地や静粛性、動力性能と、クルマとしての基本性能も確実に進化している現行型「セレナ」。これなら家族の足として、長く使える一台となるだろう。拡大
日産セレナe-POWERルキシオン
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テスト車のデータ

日産セレナe-POWERルキシオン

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4765×1715×1885mm
ホイールベース:2870mm
車重:1850kg
駆動方式:FF
エンジン:1.4リッター直3 DOHC 12バルブ
モーター:交流同期電動機
エンジン最高出力:98PS(72kW)/5600rpm
エンジン最大トルク:123N・m(12.5kgf・m)/5600rpm
モーター最高出力:163PS(120kW)/--rpm
モーター最大トルク:315N・m(32.1kgf・m)/--rpm
タイヤ:(前)205/65R16 95H/(後)205/65R16 95H(ブリヂストン・トランザER33N)
燃費:18.4km/リッター(WLTCモード)
価格:479万8200円/テスト車=524万8763円
オプション装備:ボディーカラー<カーディナルレッド/スーパーブラック 2トーン>(6万6000円)/ホットプラスパッケージ<ヒーター付きドアミラー、ステアリングヒーター、ヒーター付きシート[前席、セカンド左右]>+クリアビューパッケージ<ワイパーデアイサー、リアLEDフォグランプ>+高濃度不凍液+PTC素子ヒーター(9万9000円)/100V AC電源1500W<室内1個、ラゲッジスペース1個>(5万5000円) ※以下、販売店オプション 後席用モニターHDMI NissanConnectナビ付き車用(12万2760円)/ウィンドウはっ水 12カ月 フロントウィンドウ+フロントドアガラスはっ水処理(1万2903円)/フロアカーペットパッケージ<エクセレント>(9万4900円)

テスト車の年式:2023年型
テスト開始時の走行距離:2216km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(5)/高速道路(5)/山岳路(0)
テスト距離:215.5km
使用燃料:14.16リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:15.2km/リッター(満タン法)/17.5km/リッター(車載燃費計計測値)

 
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生方 聡

生方 聡

モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。

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