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第839回:「最後まで続く性能」は本当か? ミシュランの最新コンフォートタイヤ「プライマシー5」を試す

2025.07.18 エディターから一言 櫻井 健一
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2025年3月に販売が開始された「ミシュラン・プライマシー5」。今回は報道関係者向けにテストコースで行われた試走会の様子を報告する。
2025年3月に販売が開始された「ミシュラン・プライマシー5」。今回は報道関係者向けにテストコースで行われた試走会の様子を報告する。拡大

2025年3月に販売が始まったミシュランの「プライマシー5」。「静粛性に優れ、上質で快適な乗り心地と長く続く安心感を提供する」と紹介される最新プレミアムコンフォートタイヤの実力を、さまざまなシチュエーションが設定されたテストコースで試した。

静粛性に優れ、上質で快適な乗り心地を提供するプレミアムコンフォートタイヤと紹介される「ミシュラン・プライマシー5」。ハッチバックやセダン、ミニバン、SUVなど幅広い車種への対応もセリングポイントとされる。
静粛性に優れ、上質で快適な乗り心地を提供するプレミアムコンフォートタイヤと紹介される「ミシュラン・プライマシー5」。ハッチバックやセダン、ミニバン、SUVなど幅広い車種への対応もセリングポイントとされる。拡大
太い縦溝が4本まっすぐに通ったデザインが目を引く「プライマシー5」のトレッド面。ショルダー部は太い横溝と細い横溝を組み合わせることで、静粛性を損なわずに排水性能とエッジ効果を向上させる。内部構造の最適化によるトレッド面の均一な接地圧分布も実現しており、加速時やブレーキング時、コーナリング時でも接地面が安定するほか、偏摩耗の抑制にも寄与するという。
太い縦溝が4本まっすぐに通ったデザインが目を引く「プライマシー5」のトレッド面。ショルダー部は太い横溝と細い横溝を組み合わせることで、静粛性を損なわずに排水性能とエッジ効果を向上させる。内部構造の最適化によるトレッド面の均一な接地圧分布も実現しており、加速時やブレーキング時、コーナリング時でも接地面が安定するほか、偏摩耗の抑制にも寄与するという。拡大
「フォルクスワーゲン・ゴルフ」で行ったウエットブレーキテストの様子。新品の「プライマシー5」装着車と残溝が2mmとなったプライマシー5装着車の制動距離を比較することができた。
「フォルクスワーゲン・ゴルフ」で行ったウエットブレーキテストの様子。新品の「プライマシー5」装着車と残溝が2mmとなったプライマシー5装着車の制動距離を比較することができた。拡大
16インチから22インチまでの全42サイズをラインナップし、2025年3月1日から順次販売が開始された「プライマシー5」。価格はオープン。
16インチから22インチまでの全42サイズをラインナップし、2025年3月1日から順次販売が開始された「プライマシー5」。価格はオープン。拡大

「プライマシー4+」と「プライマシーSUV+」を統合

日本上陸の第一報(参照)で報告したとおり、ミシュランのプライマシー5は、「滑らかな乗り心地と高速走行時の安定したハンドリング、雨天時のウエットブレーキング性能がタイヤのライフサイクルにおいて持続することで、ドライバーへ長く続く安心感を提供」するオンロードタイヤで、コンパクトカーやセダン、ミニバン、SUVなど幅広い車種への対応がセリングポイントとされる。

どうせタイヤを購入するのなら、愛車のカテゴリーに合った、例えば「ミニバン用」や「SUV用」、「軽自動車用」と分類された製品のなかから求める性能や予算に合わせて選ぶほうが迷わず簡単そうだ。

しかし、今回ミシュランは、従来の「プライマシー4+」と「プライマシーSUV+」をプライマシー5に統合・一本化した。「もちろん、サイズによって装着車両は想定できるので、車種に合わせたプラットフォームやケースの強化は行っています」(日本ミシュランタイヤ研究開発本部PCタイヤ新製品開発部部長・俵 謙一郎氏)とのことだが、それは反対に考えれば、この一本で多くのモデルが要求する性能を広く確実にカバーできる自信の裏返しとも考えられる。

タイヤの顔ともいうべきトレッド面は、太い縦溝が4本まっすぐに通ったデザインが目を引く。ショルダー部は「ロングラスティングスカルプチャー」と呼ばれる独自の形状を採用。太い横溝と細い横溝を組み合わせることで静粛性を損なわずに排水性能とエッジ効果を向上させたという。中央のブロックには振動をコントロールしてノイズの低減と耐摩耗性の向上を実現する「サイレントリブ ジェン3」を配置。ウエット路面でのグリップ性能と転がり抵抗、耐摩耗性を高い次元でバランスさせる新世代の合成ゴム「ファンクショナルエラストマー3.0」が、進化したコンパウンドのキモとされる。

最初の試走プログラムは「フォルクスワーゲン・ゴルフ」でのウエットブレーキテストである。80km/hから、ぬれた路面でフルブレーキング。新品のプライマシー5と残溝が2mmとなったプライマシー5の制動距離を比較する。

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タイヤが減っても制動距離に大きな差はない

過去の経験からすれば、タイヤのウエットブレーキ性能はマイルを重ねるごとに低下する。当然である。タイヤ交換寸前の残溝2mmともなれば制動距離が延びるのはあたり前。80km/hからぬれた路面でフルブレーキングを行えば、新品時の5mオーバーで済めばいいほう。ものによっては10m近く制動距離が延びるものもある。

ところがプライマシー5ではその差がわずか。新品のプライマシー5の制動距離は、平均でゴルフの全長にして7台分まではいかない。いっぽう残溝が2mmのプライマシー5はというと、驚くことにそれと1mも変わらない。いずれも具体的な数字を紹介できないのは残念だが、その差の小ささは衝撃的だ。

ただ、ガツンとブレーキを踏んだ最初の瞬間、制動力の立ち上がりには差を感じる。どちらがより安心感が高いのかは言うまでもないが、フル制動で止まったウィンドウ越しに見た左右の風景がいずれのタイヤでもさほど変わらないのには驚くしかない。「最後まで続く性能」に偽りはないといえそうだ。

「日産セレナ」にプライマシー5を装着した高速走行では、しっかりとした直進安定性と、スラロームを行った際のハンドリングの良さを実感した。背が高く重心も高いミニバンでは、ステアリング操作の際にふらつきと収束の遅れを感じることも多いのだが、プライマシー5ではまるで重心が数十cm下がったかのような錯覚を覚える。

120km/h巡行から60km/h程度にまで一気に速度を落とす急減速シーンでは、ドライバーがステアリングホイールを直進状態に保っていると思っていても、物理法則は傾いた側を見逃さない。わずかに操舵された方向に車両はふらつき、修正舵が必要となる。ここでプライマシー5は、4輪をバランスよく路面に密着させ、意図した速度まで安定した姿勢を保ちつつスピードを落とす。

深夜の通販番組ならば、プライマシー5とライバルブランドのタイヤを比較して、「ほらこんなに違うんですよ」と紹介するところで、仮にそうした比較をしても、数値にも体感レベルにもしっかりとした差が表れると思う。

80km/hからぬれた路面でフルブレーキングを行い、その制動距離を確認する。「ゴルフ」に装着したタイヤサイズは205/55R16。新品の「プライマシー5」装着車での制動距離は、平均でゴルフの全長にして7台分まではいかない。
80km/hからぬれた路面でフルブレーキングを行い、その制動距離を確認する。「ゴルフ」に装着したタイヤサイズは205/55R16。新品の「プライマシー5」装着車での制動距離は、平均でゴルフの全長にして7台分まではいかない。拡大
タイヤ交換寸前の残溝2mmに調整された205/55R16サイズの「プライマシー5」装着車。当然新品タイヤより制動距離は延びたが、その差は予想以上に小さいものだった。「ぬれた路面でのグリップ力が長く最後まで続く」というプライマシー5のセリングポイントに偽りはないといえそうだ。
タイヤ交換寸前の残溝2mmに調整された205/55R16サイズの「プライマシー5」装着車。当然新品タイヤより制動距離は延びたが、その差は予想以上に小さいものだった。「ぬれた路面でのグリップ力が長く最後まで続く」というプライマシー5のセリングポイントに偽りはないといえそうだ。拡大
「日産セレナ」に「プライマシー5」を装着したスラロームテストシーン。装着サイズは205/65R16。ここではステアリング操作に対するリニアな反応と、収束の遅れを意識させない走りが確認できた。ミニバン専用をうたわずとも、良好な装着フィールを有していると実感した。
「日産セレナ」に「プライマシー5」を装着したスラロームテストシーン。装着サイズは205/65R16。ここではステアリング操作に対するリニアな反応と、収束の遅れを意識させない走りが確認できた。ミニバン専用をうたわずとも、良好な装着フィールを有していると実感した。拡大
高速走行で直進安定性をチェック。背が高く重心も高いミニバンでは、ステアリング操作の際にふらつきを感じることもあるが、プライマシー5ではまるで重心が数十cm下がったかのようなハンドリングが味わえた。
高速走行で直進安定性をチェック。背が高く重心も高いミニバンでは、ステアリング操作の際にふらつきを感じることもあるが、プライマシー5ではまるで重心が数十cm下がったかのようなハンドリングが味わえた。拡大

運転して楽しいのもミシュランの持ち味

ワインディングロードを模したウエットハンドリング路でステアリングを握ったのは「メルセデス・ベンツGLA」だった。このステージではプライマシー5と従来型となるプライマシーSUV+の比較試走が行えた。先にプライマシーSUV+を装着した車両で走りだす。ディーゼルエンジンを搭載したGLAの太いトルクを余すことなく受け止めるグリップ力、ステアリングの操作に対するリニアな反応が確認できた。まったくもって悪くない。

しかし、プライマシー5は当然ながらその上をいく。走りだしの瞬間、タイヤのひと転がり目のグリップ感が圧倒的にいい。S字コーナーの切り替えしでは、ヒラリ感が一枚上手。まるで車両がひとまわり小さくなったかのような錯覚を覚える。タイトなコーナーが連続するコースなので、トルクがリッチなディーゼルとの相性の良さを差し引いたとしても、この身のこなしは見事である。同コースは過去に何度も走っているが、こんなにも楽しく速く走れたことはない。

以前webCGのリポートで自動車ジャーナリスト・今井優杏さんはプライマシー5について、「(溝が明らかに減っていても)感覚的には新品とほとんど差がないんです。知らずに乗ったら区別がつかないと思いますよ。運転して楽しいのもミシュランの特徴です」とコメントした。今回実際にプライマシー5の試走を行い、それは決して大げさな評価ではないと感じた。

ただ、いつも同じになってしまうが、テストコースでは(路面コンディションが整っているために)ロードノイズのチェックまで完ぺきにはできない。そちらはいずれチャンスがあるであろう、リアルワールドでの試走で確認したい。もっとも静粛性のレベルも、相当に引き上げてきたという感触はある。

残念なのは、プライマシー5に軽自動車やコンパクトカー向けとなる14~15インチサイズのラインナップがないこと。日本ミシュランタイヤがそれらのカテゴリーを軽視しているわけではない。理由は単純明快。全量を輸入するインポートアイテムだから、現状ではサイズ展開に偏りが生じているのである。その一点を除けば、プライマシー5はコンフォートタイヤカテゴリーのなかで、忖度(そんたく)なしに頭一つ抜けた存在であると紹介できる。

(文=櫻井健一/写真=日本ミシュランタイヤ/編集=櫻井健一)

「メルセデス・ベンツGLA」を用いて、ワインディングロードを模したウエットハンドリング路を走行。このステージでは「プライマシー5」(写真)と、従来型となるSUV向けの「プライマシーSUV+」との比較試走を行った。装着サイズはいずれも235/55R18。
「メルセデス・ベンツGLA」を用いて、ワインディングロードを模したウエットハンドリング路を走行。このステージでは「プライマシー5」(写真)と、従来型となるSUV向けの「プライマシーSUV+」との比較試走を行った。装着サイズはいずれも235/55R18。拡大
従来型となる「プライマシーSUV+」(写真)は確かな直進安定性と、素直なハンドリングが特徴。ウエットグリップも申し分ないが、「プライマシー5」は確実にその上をいく。S字コーナーの切り替えしではプライマシー5のほうがヒラリ感は一枚上手で、よりスポーティーな走りが楽しめた。
従来型となる「プライマシーSUV+」(写真)は確かな直進安定性と、素直なハンドリングが特徴。ウエットグリップも申し分ないが、「プライマシー5」は確実にその上をいく。S字コーナーの切り替えしではプライマシー5のほうがヒラリ感は一枚上手で、よりスポーティーな走りが楽しめた。拡大
走りだしの瞬間、タイヤのひと転がり目のグリップ感が圧倒的にいいのも「プライマシー5」(写真)の持ち味。ディーゼルエンジンを搭載した「GLA」の太いトルクを余すことなく受け止めるグリップ力と、ステアリングの操作に対するリニアな反応も確認できた。
走りだしの瞬間、タイヤのひと転がり目のグリップ感が圧倒的にいいのも「プライマシー5」(写真)の持ち味。ディーゼルエンジンを搭載した「GLA」の太いトルクを余すことなく受け止めるグリップ力と、ステアリングの操作に対するリニアな反応も確認できた。拡大
18インチサイズ以上の「プライマシー5」には、サイドウォールデザインに上質な黒とベルベットを思わせる高級のある「プレミアムタッチ」を採用。0.1mm単位まで調整した表面の造形が光の反射量を少なくし、タイヤをより黒く美しく見せる仕上げをセリングポイントとする。たかがサイドのデザインと軽視しがちだが、その質感の違いは顕著である。
18インチサイズ以上の「プライマシー5」には、サイドウォールデザインに上質な黒とベルベットを思わせる高級のある「プレミアムタッチ」を採用。0.1mm単位まで調整した表面の造形が光の反射量を少なくし、タイヤをより黒く美しく見せる仕上げをセリングポイントとする。たかがサイドのデザインと軽視しがちだが、その質感の違いは顕著である。拡大
櫻井 健一

櫻井 健一

webCG編集。漫画『サーキットの狼』が巻き起こしたスーパーカーブームをリアルタイムで体験。『湾岸ミッドナイト』で愛車のカスタマイズにのめり込み、『頭文字D』で走りに目覚める。当時愛読していたチューニングカー雑誌の編集者を志すが、なぜか輸入車専門誌の編集者を経て、2018年よりwebCG編集部に在籍。

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