ロータス・エミーラ ファーストエディション(MR/8AT)
待つ価値あり 2023.08.08 試乗記 ロータス最後のガソリンエンジン車といわれるミドシップスポーツ「エミーラ」の2リッター直4ターボモデルに英国で試乗。最高出力365PSを発生するメルセデスAMG製「M139」ユニットのパフォーマンスと、先に登場したV6モデルとの違いを確かめた。ロータス+AMGの強心臓という意外性
ロータス最後のガソリンエンジン車という看板を掲げ2021年にデビューしたロータス・エミーラ。当初のラインナップはトヨタ製3.5リッターV6エンジンをスーパーチャージャーで武装した「エミーラV6」のみだったが、2023年7月の自動車イベント「グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード」で直4ターボ版の走りが披露された。時を同じくしてノーウィッチでも3台のプレス関係者向け車両が走りはじめている。
ロータスのファクトリー前に「セネカブルー」のエミーラが止まっていた。しかし、リアウィンドウ越しにエンジンのカバーを確認しなければグレードを特定することはできなかった。エミーラはボディーのどこにもグレードを示すエンブレムがないし、3種類のホイールもV6と直4どちらのモデルにも適用されるようになっているからだ。リアウィンドウ越しに「LOTUS V6」と鋳込まれたアルミ製のカバーが見える派手なV6モデルに対し、新登場の直4モデルは小さく「LOTUS」と入った樹脂製のカバーで覆われているだけで実に素っ気ない。
だがカバーの下の2リッター直4ターボエンジンは、4気筒で世界最高レベルの出力を誇るメルセデスAMG製のM139である。「メルセデスAMG A45 S 4MATIC+」に搭載されているエンジンといったほうがわかりやすいかもしれない。ちなみにA45用の最高出力が421PSであるのに対し、ロータスの専用マッピングを採用したエミーラ用は若干控えめな365PSを発生する。それでもリッターあたり180PS超えとなるこのエンジンは、ロータス史上最強の4気筒なのである。
さらにこのM139ユニットに組み合わされるギアボックスがロータス初の8段DCT(デュアルクラッチトランスミッション)であるという点も、直4エンジンを搭載するエミーラのトピックといえるだろう。
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静かで滑らかなパワーユニット
今回試乗した直4エンジンを搭載する「エミーラ ファーストエディション」の外観は、V6モデルとまったく同じといっていい。インテリアに関しても基本的には同一なのだが、V6モデルがMTとATから選べるのに対し、直4モデルはATのみという設定なので、センターコンソール部のシフトレバーも当然AT用になっている。また今回の試乗車のシャシーセッティングはノーマルの「ツアー」ではなく「スポーツ」の設定になっていた。
スポーツシャシーにはレートアップされたアイバッハ製のコイルスプリングとビルシュタイン製のショックアブソーバーが備わっており、タイヤもミシュランの「パイロット スポーツ カップ2」が装着される。一方、標準セッティングとなるツアーシャシーのタイヤは、本国仕様の場合「グッドイヤー・イーグルF1スーパースポーツ」とパイロットスポーツ カップ2から選ぶかたちになっている。いずれも「LTS」のマークが記されたロータスの承認モデルである。
さっそくコックピットに乗り込み、操作系を軽くチェックしたあと、ヘセルのテストトラックに繰り出してみた。今回はエミーラを試乗する直前にエミーラV6(やはりスポーツシャシー)に試乗したこともあり、直4モデルの意外なほどの静かさにまず驚かされた。ゆったりとしたペースで走るかぎりDCTのシフトアップにすら気づかないときがあるほど、エミーラは滑らかに走る。少し強めにスロットルを踏み込んでキックダウンを促し、6500rpmのリミット(「ツアー」モード選択時)まで回すと排気音はいくぶん野太くなるが、それでも鋭く吹け上がり雄たけびのようなサウンドを響かせるV6とは印象が異なる。
音の次に気がついたのは、V6モデルより直4モデルのほうが身のこなしに一体感があることだった。事前の説明では車重はほぼ一緒(4kg直4の方が軽い)だったが、体感はV6モデルのリアが少し重たく感じられた。
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ダイレクト感みなぎる直4モデル
今回の試乗の勘所は搭載エンジンの違いによるドライブフィールの差異だろう。V6モデルだけに乗っているぶんには、ブレーキングからターンインに向けた一連の動きに違和感はなかった。ところが直4で同じ走りを試してみると、V6のリアの挙動が少し鈍かったことに気づかされるのである。
フルブレーキングでリアが落ち着くまで、そしてターンインでロールが落ち着くまで、V6モデルはいずれもアクションの後でほんの少し待つ必要がある。ところがダイレクト感がみなぎる直4モデルにはそれがなく、実際にコーナーの進入から脱出までの挙動がシームレスにつながる。
ちなみに両者に寸法的な差はない。だがパワートレインとリアサスペンションまわりを支持するサブフレームは、構造と材質が異なっている。V6モデルのリアセクションは歴代「エリーゼ」や「エキシージ」「エヴォーラ」と同じ鋼板溶接のボックス構造だが、直4モデルはアルミ鋳造のものが採用されている。実際にリアのホイールとブレーキの隙間からは仕上げの良い、いかにも剛性が高そうなモダンなサブフレームの存在が確認できた。
ロータスのスタッフいわく、ダブルウイッシュボーン式のリアサスのアーム長が直4モデルのほうが少しだけ長いとのこと。そこでV6モデルと直4モデルのリアサスを車体裏からのぞき込むと、アームスパンの延長はおそらく微々たるものだがアルミ鋳造のロワーアームは確かに別物で、後者は軽め穴が多く開けられ、より軽そうなつくりになっていた。
リアセクションの構造的な違いが走りに影響していないはずはないが、それ以上にV6スーパーチャージドエンジンの重心の高さが、両者のキャラクターの決定的な差をつくり出しているように感じた。
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直4モデルにはエリーゼの面影も
今回のエミーラの試乗は、一周2.2マイルの高速コースと呼べるヘセルのテストトラックと、ロータスのファクトリー近辺の公道で行った。
試乗のはじめから一貫して感じられたのは軽くて一体感のある走り、そしてこれぞロータス! という鋭いハンドリングだった。結論として、エミーラはエリーゼの精神的な後継モデルなのだと強く感じられたのである。もちろんエリーゼとは車格が違うので、エミーラの室内にアルミ材が露出しているようなスパルタンな箇所はなく、車重もエリーゼの最終モデル比で30%ほど(約500kg)エミーラのほうが重い。繰り返しになるがエミーラはロータスとしては久しぶり(2代目「ヨーロッパ」以来)のターボエンジン搭載車であり、トランスミッションはエリーゼにはなかったAT(DCT)となる。それでもステアリングやスロットルを介してすぐにシャシーと仲良くなれ、コーナーが待ち遠しくなるキャラクターからはエリーゼの面影が感じられた。
これに対しV6モデルは直4モデルにはないエンジンの強い刺激があり、またMTを選べば積極的な3ペダルドライブを楽しむことができるという特徴がある。こちらは「エキシージS」やエヴォーラの後継という絶妙なつくり分けがなされているように感じられたのである。
直4エンジンを搭載する初期限定モデル、エミーラ ファーストエディションはまだ生産がはじまったばかりで、新設された工場からラインオフし出荷を待っている個体は、北米や中国にデリバリーされるであろう左ハンドル車が多かった。日本に上陸するのは年を越してからになってしまうといわれているが、内燃機関を搭載する最後のロータスというだけでなく、走りのポテンシャルまで含めて、じっくりと待つ価値のあるリアルロータスであることは強調しておきたい。
(文=吉田拓生/写真=エルシーアイ/編集=櫻井健一)
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テスト車のデータ
ロータス・エミーラ ファーストエディション
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4413×1895×1226mm
ホイールベース:2575mm
車重:1446kg
駆動方式:MR
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:365PS(269kW)/6600rpm
最大トルク:430N・m(43.8kgf・m)/3000-5500rpm
タイヤ:(前)245/35ZR20 95Y XL/(後)295/30ZR20 101Y XL(ミシュラン・パイロットスポーツ カップ2)
燃費:--km/リッター
価格:1661万円/テスト車=--円
オプション装備:--
テスト車の年式:2023年型
テスト車の走行距離:1787km
テスト形態:トラック/ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター
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