「スバル・レヴォーグ」の改良型と新モデル「レイバック」が登場 ズバリ! オーナーはここが気になる
2023.09.07 デイリーコラム現オーナーが嫉妬する進化ポイントは?
スバルは2023年9月7日、スポーツワゴン「スバル・レヴォーグ」のマイナーチェンジモデル(社内呼称:アプライドD型)と、ニューモデル「レヴォーグ レイバック」を発表した。ここでは、リリースされた情報に基づく両モデルの特徴と期待度について、最初期型(同A型)「レヴォーグSTI Sport EX」のオーナーである筆者の目線から述べていきたい。
まずは、最初期型のオーナーとして最も気になるD型レヴォーグから。
D型レヴォーグの具体的な変更点(改善点)についてはwebCGの他の記事で詳細に紹介されているが、そのなかでも個人的に「これは特にうらやましい!」と感じたのが以下のアップデートポイントだ。
●「広角単眼カメラ」の追加
A型に搭載されている「アイサイト」でも特に不便や不満を感じることはなかったが、「クロストレック」に試乗した際には、同車に新規採用された「超広角単眼カメラ」をうらやましく思わなかったといえばうそになる。筆者自身が年齢を重ね若い頃と比べれば視野が若干狭くなっていることに加え、昨今の自転車乗りや歩行者の傍若無人化(?)を鑑みると、これまで以上に広い範囲を見渡せる進化したアイサイトの採用は大歓迎である。つい「超広角の単眼カメラ、今からA型に付けられませんか?」と近所のディーラーに電話をしたくなるほど、うらやましい変更点だ。
●「フロントビュー自動表示(AUTOモード)」の採用
一時停止や右左折時の減速する場面で車速が15km/h未満になると、「部分トップビュー+フロントビュー画面」がセンターモニターに自動的に表示される「AUTOモード」が設定された。これも、横町から弾丸のように飛び出してくる凶悪な自転車勢が増えてきた昨今においては、ありがたい装備である。
●「3Dビュー/トップビュー」の追加
運転席側に追加されたカメラを含む4つのカメラ映像を合成し、車両全周を1画面で確認できるという例のアレが「トップビュー」だ。まぁこれはなくても死にはしない機能だが、「あったほうがやっぱ便利ですよね」ということは間違いない。また「今どきのそこそこ高いクルマにこれが付いてないのはどうなんだ?」という根本的な疑問もあった。トップビューの追加と、車両を斜め上から見たような3Dビュー(アニメーションで車両をぐるりと一周して、周囲の現況を確認できる機能)の追加は良きことである。
もちろん、バージョンアップされたのはこうした安全面だけではない。
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
地味ながら実用的なアップデートが多い
続いてD型レヴォーグのインテリアや装備について、気になる変更ポイントを紹介したい。
●ウインカー操作が普通のロック式になったこと
地味ではあるが、けっこう重要と感じたのがこちらだ。アプライドC型までのレヴォーグのウインカーレバーはワンタッチ式というのか、上下に操作しても、すぐさまホームポジションのセンターに戻るタイプであった。これが微妙に使いづらく、局面によっては「右にウインカーを出した後、それを消そうと思ったら左に点灯させてしまい、さらにそれを消そうとしたらまた右に出してしまった」みたいな“ウインカーたこ踊り”をしてしまうことがある。みっともない行為であり、そもそも危険でもあるため、ウインカーがわかりやすく操作しやすい「普通のロック式」になったというのは大変に良きことであると思う。
●ブラック系の内装が選べるようになったこと
これまでの「STI Sport」および「STI Sport R」に採用されていたボルドー系のレザーインテリアがイマイチだったとは思わないが、「それしか選べない」というのは少々悪手であったように思う。例えば白系や黒系のボディー色にボルドー内装を合わせるとなかなかしゃれて見えるのだが、個人的な感覚でいえば外板色「WRブルーパール」+ボルドー内装というのは──それを選んだ人には大変申し訳ないが、カラーコーディネートとして常軌を逸している(本当にすみません……)。
しかしD型ではSTI Sport EX系で「Black Interior Selection」が選べるようになった。こちらはシート地にブラックのパーフォレーションウルトラスエードを採用し、コンソールやドアトリムのアームレスト部分に黒表皮を用いるというもの。これであれば、心置きなくWRブルーパールのSTI Sport EXも選べるというものだ。
●harman/kardonサウンドシステムが採用されたこと
C型までの純正オーディオも、特に音響マニアではない筆者のような人間には「けっこういい音じゃん」と感じられるものだった。だがD型ではSTI Sport EX以上のグレードでharman/kardonサウンドシステムが標準装備となり、「GT-H EX」でもメーカーオプションとして選ぶことができるようになった。harman/kardon様の実力がいかほどのものか、音響マニアではない筆者は実はよく知らないのだが、「ブランド物のオーディオが付いている!」というのはなんとなくうれしいものだ。単純ですみません。
このほかでは「Apple CarPlayがワイヤレス接続に対応した」というのも、A型オーナーとしては地味に「うぎぎぎ……」と歯ぎしりしてしまう部分である。
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
レイバックは都会派のクロスオーバー
D型となっても、エンジンや足まわり、あるいはエクステリアデザインなどの基本部分に変更はない。その点に関しては、A~C型でも十分以上に魅力的なスポーツワゴンである。だが「そのままでも十分以上に魅力的」だからこそ、そのなかにある「ちょっとした不満や不便」が改善されてしまったD型レヴォーグは「もはや最強なのでは?」と、個人的には思うのである(ただし燃費以外)。
最後に、ラインナップに追加されたレヴォーグ レイバックについても触れておこう。
こちらも、ニューモデルとしての詳細情報はwebCGの他の記事で紹介されているので詳しくはそちらをお読みいただきたい。だが初期型レヴォーグオーナーの観点からその印象を述べるのであれば、「なかなか頼もしい友軍が現れたな」ということになる。
事前の真偽不明なスクープ情報などを読んだ限りでは「アウトドアギアっぽい雰囲気になるのかな?」と想像していたのだが、実際のレイバックはけっこうアーバン寄りというか、素のレヴォーグにもどこか近い上質なクロスオーバーモデルとして登場するに至った。とはいえ「素のレヴォーグとかぶってる」という印象はなぜかほとんどなく、明確な「新ジャンル感」がある。
価格は今秋正式発表される予定だが、「インプレッサ」とクロストレックの価格的な関係や手元の情報を総合的に分析すると、従来のレヴォーグとレヴォーグ レイバックは特に自社内で競合することもなく(まぁ一部では少々の共食いも起きるだろうが)、わかる人にはその価値がよくわかるレヴォーグというブランドのバリューを地味に底上げしてくれるのではないかと感じている。そういった現オーナーの希望的観測と利己的な意味でも、筆者はレヴォーグ レイバックの誕生を大いに歓迎したい。ようこそ、地球へ!
(文=玉川ニコ/写真=スバル/編集=櫻井健一)
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |

玉川 ニコ
自動車ライター。外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、自動車出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。愛車は「スバル・レヴォーグSTI Sport R EX Black Interior Selection」。
-
なぜ伝統の名を使うのか? フェラーリの新たな「テスタロッサ」に思うこと 2025.9.29 フェラーリはなぜ、新型のプラグインハイブリッドモデルに、伝説的かつ伝統的な「テスタロッサ」の名前を与えたのか。その背景を、今昔の跳ね馬に詳しいモータージャーナリスト西川 淳が語る。
-
「MSRロードスター12R」が『グランツーリスモ7』に登場! その走りを“リアルドライビングシミュレーター”で体験せよ 2025.9.26 あの「マツダ・ロードスター」のコンプリートカー「MSRロードスター12R」が、リアルドライビングシミュレーター『グランツーリスモ7』に登場! 他業種(?)との積極的な協業により、運転する楽しさとモータースポーツの普及を進める、マツダの最新の取り組みに迫る。
-
狙うは「N-BOX」超え 新型「ルークス」は日産の復活に向けた号砲か? 2025.9.25 フルモデルチェンジで4代目に進化した「日産ルークス」の評判がよさそうだ。2025年8月に車両概要が先行公開され、同年9月には価格も発表。あとは正式発売を待つばかり。ライバルとして立ちはだかる「ホンダN-BOX」を超えられるか。
-
メルセデスとBMWのライバルSUVの新型が同時にデビュー 2025年のIAAを総括する 2025.9.24 2025年のドイツ国際モーターショー(IAA)が無事に閉幕。BMWが新型「iX3」を、メルセデス・ベンツが新型「GLC」(BEV版)を披露するなど、地元勢の展示内容はモーターショー衰退論を吹き飛ばす勢いだった。その内容を総括する。
-
世界中で人気上昇中! 名車を生かしたクルマ趣味「レストモッド」の今を知る 2025.9.22 名車として知られるクラシックカーを、現代的に進化させつつ再生する「レストモッド」。それが今、世界的に流行しているのはなぜか? アメリカの自動車イベントで盛況を目にした西川 淳が、思いを語る。
-
NEW
カタログ燃費と実燃費に差が出てしまうのはなぜか?
2025.9.30あの多田哲哉のクルマQ&Aカタログに記載されているクルマの燃費と、実際に公道を運転した際の燃費とでは、前者のほうが“いい値”になることが多い。このような差は、どうして生じてしまうのか? 元トヨタのエンジニアである多田哲哉さんに聞いた。 -
NEW
MINIカントリーマンD(FF/7AT)【試乗記】
2025.9.30試乗記大きなボディーと伝統の名称復活に違和感を覚えつつも、モダンで機能的なファミリーカーとしてみればその実力は申し分ない「MINIカントリーマン」。ラインナップでひときわ注目されるディーゼルエンジン搭載モデルに試乗し、人気の秘密を探った。 -
なぜ伝統の名を使うのか? フェラーリの新たな「テスタロッサ」に思うこと
2025.9.29デイリーコラムフェラーリはなぜ、新型のプラグインハイブリッドモデルに、伝説的かつ伝統的な「テスタロッサ」の名前を与えたのか。その背景を、今昔の跳ね馬に詳しいモータージャーナリスト西川 淳が語る。 -
BMW 220dグランクーペMスポーツ(FF/7AT)【試乗記】
2025.9.29試乗記「BMW 2シリーズ グランクーペ」がフルモデルチェンジ。新型を端的に表現するならば「正常進化」がふさわしい。絶妙なボディーサイズはそのままに、最新の装備類によって機能面では大幅なステップアップを果たしている。2リッターディーゼルモデルを試す。 -
ランボルギーニ・ウルスSE(後編)
2025.9.28思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が「ランボルギーニ・ウルスSE」に試乗。前編ではエンジンとモーターの絶妙な連携を絶賛した山野。後編では車重2.6tにも達する超ヘビー級SUVのハンドリング性能について話を聞いた。 -
ビモータKB4RC(6MT)【レビュー】
2025.9.27試乗記イタリアに居を構えるハンドメイドのバイクメーカー、ビモータ。彼らの手になるネイキッドスポーツが「KB4RC」だ。ミドル級の軽量コンパクトな車体に、リッタークラスのエンジンを積んだ一台は、刺激的な走りと独創の美を併せ持つマシンに仕上がっていた。