アウディA1 1.4TFSI(FF/7AT)【試乗速報】
アウディでいちばん 2011.01.11 試乗記 アウディA1(FF/7AT)……352万円
アウディの新しいエントリーモデル「A1」が日本に上陸した。キャッチコピーは、「自分の価値を大切にする“アーバンエゴイスト”のためのプレミアムコンパクト」。その乗り味は、どうだったかというと……。
アウディはお洒落だ
メルセデスがお洒落(しゃれ)だ、と言ったら首をかしげる人が多いかもしれないが、「アウディはお洒落だ」といってもいぶかる人はいないと思う。「A1」はいちばん小さな、いちばん安いアウディだが、いちばんお洒落なアウディである。試乗会場に出向き、東京丸の内のブランドショップ街に並んだA1を見たとき、「あれっ、なにかコマーシャル撮影でもしているのか!?」と思った。これから自分が乗る試乗車だったのに、だ。
"お洒落に気を使っているクルマ"に見える最大のポイントは、コントラストルーフである。Aピラーからルーフを経てCピラーまで、上屋のサイドエッジがアーチ状に塗り分けられている。単色のボディカラーも選べるが、A1のイメージカラーはこれだ。こういう凝ったカラーリングデザインをアウディがやるのは初めてである。
フロントマスクはおなじみのシングルフレームグリルを踏襲するから、とくに女性的なクルマには見えないが、男性でも"ピアスをしている"感じだ。A1がこれから挑むライバルのなかには、「MINI」や「フィアット500」がいる。ナツメロをカバーするような安直なデザインをアウディはやらないが、その手で大成功している強敵と戦うのがA1だ。アウディのなかでもとびきりお洒落に気を使ったA1を見ると、いまヨーロッパのコンパクトクラスで何が起きているのかがよくわかる。
ポロとはぜんぜん違う
試乗したのは、スポーツパッケージを備えるモデルだった。セットオプションの内訳は、スポーツサスペンション、スポーツシート、標準の15インチより1サイズ大きい16インチホイールなど。タイヤは215/45R16が組み合わされるはずだが、テストカーにはスペシャルオプションの17インチホイールにヨンマルタイヤが付いていた。価格は総額で352万円になる、ほぼ"全部のせ"のA1と言っていいだろう。
「フォルクスワーゲン・ポロ」と同じプラットフォーム(車台)を使った2ドアハッチバックがA1である。日本でも評価の高いポロとの違いが"走り味"の点でどれくらいあるのか、ないのか。個人的にはそれが興味の的だったが、走り出した途端、ぜんぜん違った。スポーツサスペンションのおかげで足腰はしっかりしている。ドイツ車としてはかなりソフトに感じるポロとは別物だ。かといって、「ポロGTI」ほどヤンチャに硬くはない。じゃあ、15インチのノーマルサスペンションモデルはどうなのかと思ったが、発表に先立つ緊急試乗会的な今回は用意がなかった。
でも、ポロではなく、わざわざA1を指名買いする人に、普段づかいの邪魔にならないこのスポーツパッケージはお薦めだ。マス感のあるデザインコンシャスなボディは、15インチだと明らかに"ホイール負け"すると思うし。
パワーユニットは、1.4リッターターボと7段Sトロニックの組み合わせ。1.2リッターターボのポロより大きなエンジンを選んだところにもアウディの主張がみてとれる。この日は都内のみの試乗だったので、フルスロットルを続けるような乗り方はできなかったが、約1.2tの車重に対して122psのパワーは十分以上だ。掛け値のないドイツ式カタログデータによると、最高速は203km/h、0-100km/h加速は8.9秒でこなす。
クラスレスなクルマ
エコにも気を使うA1の特技は標準装備のアイドリングストップ機構である。日本車ではもう珍しくないが、アウディでは初。フォルクスワーゲンでも、今のところ新型「シャラン」が採用しているだけだ。エンジン停止はひそやかに行われて、気づかない。再始動のレスポンスも問題なかったが、単純にセルモーターで始動させる方式なので、その軽いショックはある。A1のエレガンスを考えると、その点がいま一歩、改善の余地ありかなという気もしたが、アイドリングストップという"善行"をやっているのだから、大目にみたい。
“ポロのアウディ版”でないことは、室内でも一目瞭然(りょうぜん)だ。クーペ的な上屋のデザインからもわかるとおり、キャビンはポロよりタイトである。リアシートや荷室はポロより狭いが、インテリアは歴然とよそゆきでお洒落だ。シートの一部とドア内張りとエアコンの吹き出し口を黄色で統一した試乗車には、フィアット500あたりのラテンテイストも感じられた。ダッシュボード上に立ち上がるカーナビのモニターは遠視点化されてとても見やすい。
いちばん小さく、価格帯ではいちばん安いアウディだが、見て触って乗ってみると、実はいちばんクラスレスなアウディかもしれないと思った。広告代理店的に言うと、「都市で暮らす高感度な30代」あたりがメインターゲットなのだろうが、その一方、「A8」が買えるお金持ちのガレージに入っていてもおかしくなさそうである。
(文=下野康史/写真=荒川正幸)

下野 康史
自動車ライター。「クルマが自動運転になったらいいなあ」なんて思ったことは一度もないのに、なんでこうなるの!? と思っている自動車ライター。近著に『峠狩り』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリよりロードバイクが好き』(講談社文庫)。
-
日産エクストレイルNISMOアドバンストパッケージe-4ORCE(4WD)【試乗記】 2025.12.3 「日産エクストレイル」に追加設定された「NISMO」は、専用のアイテムでコーディネートしたスポーティーな内外装と、レース由来の技術を用いて磨きをかけたホットな走りがセリングポイント。モータースポーツ直系ブランドが手がけた走りの印象を報告する。
-
アウディA6アバントe-tronパフォーマンス(RWD)【試乗記】 2025.12.2 「アウディA6アバントe-tron」は最新の電気自動車専用プラットフォームに大容量の駆動用バッテリーを搭載し、700km超の航続可能距離をうたう新時代のステーションワゴンだ。300km余りをドライブし、最新の充電設備を利用した印象をリポートする。
-
ドゥカティXディアベルV4(6MT)【レビュー】 2025.12.1 ドゥカティから新型クルーザー「XディアベルV4」が登場。スーパースポーツ由来のV4エンジンを得たボローニャの“悪魔(DIAVEL)”は、いかなるマシンに仕上がっているのか? スポーティーで優雅でフレンドリーな、多面的な魅力をリポートする。
-
ランボルギーニ・テメラリオ(4WD/8AT)【試乗記】 2025.11.29 「ランボルギーニ・テメラリオ」に試乗。建て付けとしては「ウラカン」の後継ということになるが、アクセルを踏み込んでみれば、そういう枠組みを大きく超えた存在であることが即座に分かる。ランボルギーニが切り開いた未来は、これまで誰も見たことのない世界だ。
-
アルピーヌA110アニバーサリー/A110 GTS/A110 R70【試乗記】 2025.11.27 ライトウェイトスポーツカーの金字塔である「アルピーヌA110」の生産終了が発表された。残された時間が短ければ、台数(生産枠)も少ない。記事を読み終えた方は、金策に走るなり、奥方を説き伏せるなりと、速やかに行動していただければ幸いである。
-
NEW
レクサスLFAコンセプト
2025.12.5画像・写真トヨタ自動車が、BEVスポーツカーの新たなコンセプトモデル「レクサスLFAコンセプト」を世界初公開。2025年12月5日に開催された発表会での、展示車両の姿を写真で紹介する。 -
NEW
トヨタGR GT/GR GT3
2025.12.5画像・写真2025年12月5日、TOYOTA GAZOO Racingが開発を進める新型スーパースポーツモデル「GR GT」と、同モデルをベースとする競技用マシン「GR GT3」が世界初公開された。発表会場における展示車両の外装・内装を写真で紹介する。 -
NEW
バランスドエンジンってなにがスゴいの? ―誤解されがちな手組み&バランスどりの本当のメリット―
2025.12.5デイリーコラムハイパフォーマンスカーやスポーティーな限定車などの資料で時折目にする、「バランスどりされたエンジン」「手組みのエンジン」という文句。しかしアナタは、その利点を理解していますか? 誤解されがちなバランスドエンジンの、本当のメリットを解説する。 -
「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」の会場から
2025.12.4画像・写真ホンダ車用のカスタムパーツ「Modulo(モデューロ)」を手がけるホンダアクセスと、「無限」を展開するM-TECが、ホンダファン向けのイベント「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」を開催。熱気に包まれた会場の様子を写真で紹介する。 -
「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」の会場より
2025.12.4画像・写真ソフト99コーポレーションが、完全招待制のオーナーミーティング「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」を初開催。会場には新旧50台の名車とクルマ愛にあふれたオーナーが集った。イベントの様子を写真で紹介する。 -
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション/CR-V e:HEV RSブラックエディション ホンダアクセス用品装着車
2025.12.4画像・写真まもなく日本でも発売される新型「ホンダCR-V」を、早くもホンダアクセスがコーディネート。彼らの手になる「Tough Premium(タフプレミアム)」のアクセサリー装着車を、ベースとなった上級グレード「RSブラックエディション」とともに写真で紹介する。






























