ミツオカ・オロチ・カブト(MR/5AT)【試乗記】
フツウにスーパー 2008.12.05 試乗記 ミツオカ・オロチ・カブト(MR/5AT)……1380.0万円
「オロチ」にウェットカーボン製のエアロパーツなどを追加したスペシャルバージョン「カブト」。その見た目と価格に驚かされるが、乗ってみると意外に……。
年産5台の限定モデル
「大蛇(オロチ)」というおどろおどろしい名前のクルマは、今からおよそ6年前にその存在が明らかにされた。その後、少数台数が手造りされて着実に繁殖の道を辿っているようだ。このたびは、甲冑を身にまとって、いよいよ本格的に路上に出没しようというわけ。いざ出陣! の軍配は振り下ろされた。
「オロチ・カブト」は、標準車のオロチ(1092万円)を、カーボン材のエアロパーツで着飾った仕様。1380万円。鎧兜のような表皮を纏って、年産5台の限定モデルとして販売される。
実体は写真でご覧のように、2座の“スーパー”スポーツカーであるが、何といってもこのボディそのものに大きな特徴があり、クルマの価値もこの部分が大半を占める。
デザインの好き嫌いはあるにせよ、迫力をもってせまる特異な姿カタチは、見る者に存在感の大きさを感じさせる。これがワン・オフではなく、同じものが複数台数つくられる量産車であることがまず評価されるべきだろう。
細部のフィニッシュも上々で、しっかり造られたボディは剛性も確か、ドアなど開口部の立て付けも完璧に近い。その上で軽量化もうまくいっている。「フェラーリ・テスタロッサ」より大きなサイズで1580kgの重量は立派というほかない。
のっけからで恐縮だが、このテストで都内から河口湖周辺までの往復を含めた、走行距離342.5kmの平均燃費が、12.8km/リッターという点は、現代のご時世を考えても、けして反社会的な乗り物ではないことを証明している。
一番気になるのは
もっと小型なスポーツカーでも、乗降性や取りまわしが不便な例もあるが、このオロチの美点はまったくフツウに、このスーパーな世界が楽しめる点にある。
ドアを開けてシートにたどり着くまでには、確かに幅広いサイドシルを越えなければならないが、手をついてそこに腰を落としてから両膝を揃えて脚を入れれば、ご婦人であってもスマートに乗り降りが可能だ。頭をぶつけるほどルーフは低くない。またこの手のミドシップスポーツカーにありがちな視界不良もない。ドアミラーもバックミラーもよく見える。
搭載されるエンジンはトヨタ製3.3リッタ−V6。量産ユニットながら233psと33.4mkgもあれば、力に何の不足もないし、気難しさとは一切無縁だ。軽量ボディは、有用なること100万の味方に等しい。
ギアボックスはアイシン製5ATで、好燃費の秘訣は100km/h時に1900rpmという低回転で転がせることにある。もちろん高性能ぶりを見せつけるには、マニュアルシフトしてもいいし、右足に力を込めるだけでもいい。この辺はフツウの安楽なセダンに乗っている感覚と同じ。
もちろんパワーステアリングの操舵力は軽く、2mを超える車幅は無視しえないけれども、中に乗っている感覚からいえば、室内は広々としていてもシートは適度にタイトで、ウィンドウ幅から見て、無用に広すぎる感覚はない。だからドアミラーにだけ注意していればいい。この場合には全長の短さが救いだ。
遮音も十分で、ロードノイズやエンジン音はおおむね静かといえる。快適なクルーザーとして使える。もっとも気になるのは、他人のこちらを見る視線だろうか。
この内容ならお買得!
結論としては、この内容で1380万は安い買い物だと思う。これだけしっかり造られていれば、耐久性も十分だろう。もしどこか壊れたとしても、量産パーツを利用したメリットは計り知れない。では全方位OKかと言えば、たとえばイタリアの高性能車達と比べてどうか……というような話になると、やや旗色は悪くなる。
乗り味に関する分野では、フツウに乗れる安楽さがそのまま乗り味にもスライドされていて、しっとりとした重厚さや高級な味わいには少し欠ける。サスペンションのアーム長に起因する落ち着きのない挙動や、ノーズダイブやテールクスワット、ブレーキそのものも軽量化の恩恵で効かないことはないものの、踏み始めの信頼感なども国産の量産車感覚でしかない。
細かなことを挙げればきりがないが、まだまだこれから詰めていかなければならない項目はある。けれども、それらを納得するまで追求すると、とんでもない金額を要することも事実。だからほどほどのところでヨシと妥協しつ、一番大事なボディに重点を置いたという意味において、このオロチ・カブトはお買い得なクルマということができる。
(文=笹目二朗/写真=荒川正幸)

笹目 二朗
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