アウディA8 L 4.2 FSI クワトロ/3.0 TFSI クワトロ【試乗記】
ドイツのジャガー 2010.12.15 試乗記 アウディA8 L 4.2 FSI クワトロ(4WD/8AT)/3.0 TFSI クワトロ(4WD/8AT)……1533万円/1049万円
第3世代となった新型「アウディA8」が日本上陸。“走るアート”をうたうフラッグシップセダンの走りと乗り心地を確かめた。
期待のフラッグシップ
2010年も日本のアウディ販売は好調だった。1〜11月までの新車登録台数は1万5409台。あと2週間を残す12月分が加算されると、90年に記録した1万6691台の年間レコードを塗りかえるのはほぼ間違いなさそうだ。
そのアウディのなかで、台数的になかなか飛躍できずにいたのがフラッグシップの「A8」である。A8と名乗るようになって、過去2世代を数えるが、国内販売は最多の年でも500台ほど。数売れるクルマではないにせよ、上昇アウディとしてはなんとしてもテコ入れを図りたいモデルだった。そこで今回、年販1000台の「販売台数倍増計画」を掲げるのが、3代目になる新型A8である。
日本導入第1弾は、エンジン種別でいうと、3リッターV6スーパーチャージャーと4.2リッターV8のふたつ。変速機はいずれも新しい8段ATが組み合わされ、V8モデルにはロングホイールベース版も用意される。
驚異の軽快感
箱根の試乗会で最初に乗ったのは、シリーズで唯一、1000万円をきる「3.0 TFSI クワトロ」。走り出すと、現行「A4」に初めて乗ったときのデジャヴ感に襲われた。
言うまでもなく、A8は四駆のフルサイズセダンである。新型はそのサイズを感じさせないぜい肉のとれたデザインが特徴だが、それにしても全長は5mを15cmオーバーし、全幅はあと5cmで2mだ。にもかかわらず、走り出すと、予想外に軽い。ドテッとしたところがない。そのへんがA4を彷彿(ほうふつ)させたのである。この軽さはアルミ・モノコック特有と思われるが、A8の走り味にここまでの軽快感を覚えたのは初めてである。刷新されたASF(アウディ・スペース・フレーム)のなせるわざかもしれない。
ただ、乗り心地にはもう少しフラットな落ち着きがほしい。足まわりはエアサスペンション。オートモードでも赤身の筋肉をイメージさせるしゃきっとした硬さを持つが、荒れた路面へ行くと腰から下がややバタつく。19インチホイールを持て余している感じだ。
エンジンは「A6」にも使われている直噴3リッターV6スーパーチャージャー。290psの最高出力も同じだが、パワーに不満はない。車重1930kgのボディを0-100km/h=6.2秒の俊足で加速させる。旧型より一挙に2段増えた8段ATは、どんな感じだったっけと、試乗後に思い出そうしたくらいスムーズで文句なしだった。セレクターは、高級クルーザーのスロットルレバーを意識したデザインだという。たしかにカッコイイが、ノッチが細かすぎて、使い勝手はいまひとつだった。
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ぜいたくなだけじゃない
うたい文句は「アート・オブ・プログレス」。先進性を芸術の域まで高めたという新型A8は、内装の造り込みのよさも自慢のひとつである。もう1台の試乗車、「A8 L 4.2 TFSI クワトロ」に乗り込むと、それが自慢倒れに終わっていないことがよくわかった。
艶消しのアッシュ材を使ったウッドパネルは、これまでほかでは見たことがない上質な風合いと質感を放つ。レザーも、派手ではないが、いかにも「高そう!」だ。技術の先進性を強調するなら、アウディの高級車は革や木のような自然素材から完全に脱却してもよさそうに思えるが、新型A8のインテリアは新しい高級サルーンの内装として説得力がある。
だが、ホイールベースを13cm延長して後席スペースを拡大したLボディの特等席は、リムジンの居住性を持つリアシートである。電動フットレスト、マッサージャー、10インチのテレビ、テーブル、そのほか、踊り場のように広いレッグルームなどが“エグゼクティブ・シート”には標準で付く。A8 L 4.2 TFSI クワトロのエンジンは、直噴4.2リッターV8。旧型より22psアップの372psを発生する。0-100km/hは5.8秒。全長5.3mに迫るリムジンといっても、「ポルシェ・ケイマン」並みに速い。
さらに好印象だったのは乗り心地だ。2080kgという車重のせいか、3リッターモデルよりフラットで落ち着いている。この日は標準ホイールベースの4,2リッターモデルには乗れなかったが、もっぱら自分でステアリングを握るオーナーには、標準ボディの4.2リッターがベストA8かなと思った。
拡販をもくろむアウディジャパンは、新型A8の販売上の仮想敵をしっかり決めている。3リッターモデルが「レクサスLS460」、標準ボディの4.2リッターが「BMW750i」、そのロングホイールベース版が「メルセデス・ベンツS550L」だという。横並びに比較すると、もれなく四駆がついてくるA8は、どのライバルと比べても価格競争力が高い。
でも、実際のところ、オーナーがいちばんバッティングするのは、「ジャガーXJ」だと思う。図体に似合わぬ軽い身のこなしと、ドイツ車としては耽美(たんび)的な居心地のいい室内が「ドイツのジャガーXJ」的でよかった。
(文=下野康史/写真=河野敦樹)
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下野 康史
自動車ライター。「クルマが自動運転になったらいいなあ」なんて思ったことは一度もないのに、なんでこうなるの!? と思っている自動車ライター。近著に『峠狩り』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリよりロードバイクが好き』(講談社文庫)。
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