乗車頻度の少ないクルマの維持で気をつけることは?

2024.01.23 あの多田哲哉のクルマQ&A 多田 哲哉
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マイカーに乗る機会が減り、劣化が進むのではないかと心配です。1カ月乗らないこともざらなので、努めて週に一度はエンジンをかけたり近所を回ったりしますが、それもクルマにとって「良いこと」なのか……。乗車頻度の少ないクルマとの付き合い方を教えてください。

“バッテリー上がり”の状態にならないようバッテリーをケアをするのは当然として、それ以外では「長期間クルマに乗らないと、燃料タンク内の燃料が劣化する」というのが一番のネックです。燃焼に悪影響が出て、エンジンにダメージを与える要因になります。ガソリン車でいいますと、キャブレター仕様のクルマはもちろん、インジェクション車も例外ではありません。

トヨタでは「プリウス」のプラグインハイブリッドモデルを出した際、このことが問題になりました。近所でたまに買い物をするくらいの使い方だと、(そもそもエンジンがかからず)EV走行による移動ばかりになってしまうため、全く使われないガソリンが変質していくのです。

その対策として、「クルマの中でカウンターを回して『そろそろだな』というタイミングでエンジン保護(というか燃料消費)のために勝手にエンジンがかかるシステム」が採用されています。いまも変わらないのではないでしょうか。

燃料が劣化したからといって即座にクルマが壊れるということはありませんが、始動性は悪くなり、異常燃焼が増えるという害があります。本当に長期間乗らないことが決まっているなら、燃料の入れ替えを考えたほうが、クルマのためにはいいでしょう。

どれくらいでガソリンはダメになるのか? これは気象条件にもよるので明確には言えないのですが、給油の半年後くらいから性質上の心配が出てきます。逆に言うと、半年に一回はタンクの中を総入れ替えできるくらいのペースで乗ったほうがいいといえます。そもそも満タンにしないのも手ですね。

この点はクルマに限らずで、例えばエンジン式の草刈り機は、ガソリンを抜かずにしまい込んで、1~2年後に再び作業しようとしたら、中の燃料がすっかり腐って使えない……なんてことが多いと聞きます。

燃料以外に気をつけることがあるとすれば「湿気」と「温度」の問題が挙げられますが、日本にいる以上は割り切るしかないところがあります。そんな環境でも、お話のように、ときどき近所を回るというのはよろしいかと思います。前述の燃料を使うことにもつながりますし、「せめて月に一度、1時間くらい乗る」のがコンディション維持には効果的かと。愛情をもって、接してあげてください。

多田 哲哉

多田 哲哉

1957年生まれの自動車エンジニア。大学卒業後、コンピューターシステム開発のベンチャー企業を立ち上げた後、トヨタ自動車に入社(1987年)。ABSやWRカーのシャシー制御システム開発を経て、「bB」「パッソ」「ラクティス」の初代モデルなどを開発した。2011年には製品企画本部ZRチーフエンジニアに就任。富士重工業(現スバル)との共同開発でFRスポーツカー「86」を、BMWとの共同開発で「GRスープラ」を世に送り出した。トヨタ社内で最高ランクの運転資格を持つなど、ドライビングの腕前でも知られる。2021年1月に退職。