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メルセデス・ベンツCLE200クーペ スポーツ(FR/9AT)

これぞ大人のクーペ 2024.04.20 試乗記 生方 聡 メルセデス・ベンツが綿々と歴史を紡いできた2ドアクーペ。その最新モデル「CLEクーペ」に試乗した。同じ「MRA II」プラットフォームを用いる新型「Eクラス」や「Cクラス」との違い、そして伝統的な後輪駆動とクーペのフォルムが織りなす走りを報告する。
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“官能的純粋”の誘惑

クーペやカブリオレを選ぶうえで一番の基準は、そのエクステリアデザインだと思う。出会った瞬間に視線がくぎづけになり、心が躍ったなら、買う理由としてはそれだけで十分だ。

そういう意味では、近年のメルセデスのクーペはデザインで一目ぼれさせる魅力を備えている。メルセデスでは2018年に4ドアクーペの「CLS」を発表したが、このモデルから新しいデザイン思想である「Sensual Purity(官能的純粋)」を採用。ラインやエッジの少ない、ぬめっとしたボディーがクーペのエレガントさを際立たせ、見た瞬間に「カッコいい!」と思ったことを覚えている。

その後、あらゆるモデルにこのデザイン思想を拡大していったが、なかでもクーペはどのクルマもセクシーなデザインに進化し、日本に上陸したばかりのCLEクーペもお世辞抜きに魅力的。とくに斜め後ろからの眺めはほれぼれするほどだ。40年前、クーペでカーライフを始めた者としては、できることならこんなクーペを“終(つい)のクルマ”にしたいと思うのである。

それはさておき、これまでメルセデスには「Cクラス クーペ」と「Eクラス クーペ」があったが、今回はこのふたつを統合するかたちで新たにCLEクーペを登場させている。「CL」といえば、1990年代なかば、W140型の「Sクラス」をベースとしたクーペのC140型がCLの名で独立したのが始まりで、その後、「CLK」や4ドアクーペのCLS、さらに「CLA」に拡大。CLEクーペは、Eクラス相当のボディーサイズや装備を手に入れたことから、“CL”の2文字にポジションを表す“E”を加えた名前が与えられたのだという。

2024年3月に上陸したメルセデス・ベンツの新型車「CLEクーペ」。これまでの「Cクラス クーペ」と「Eクラス クーペ」のふたつを統合するかたちで新たに開発された。
2024年3月に上陸したメルセデス・ベンツの新型車「CLEクーペ」。これまでの「Cクラス クーペ」と「Eクラス クーペ」のふたつを統合するかたちで新たに開発された。拡大
「シャークノーズ」と呼ばれる「CLEクーペ」の逆スラントフロントマスク。数々の「スリーポインテッドスター」があしらわれた、立体的な新デザインのラジエーターグリルが採用されている。
「シャークノーズ」と呼ばれる「CLEクーペ」の逆スラントフロントマスク。数々の「スリーポインテッドスター」があしらわれた、立体的な新デザインのラジエーターグリルが採用されている。拡大
日本に導入されるのは48Vマイルドハイブリッドシステムが採用された「CLE200クーペ スポーツ」の1機種で、車両本体価格は850万円。オープントップの「カブリオレ」も2024年中に投入される予定だ。
日本に導入されるのは48Vマイルドハイブリッドシステムが採用された「CLE200クーペ スポーツ」の1機種で、車両本体価格は850万円。オープントップの「カブリオレ」も2024年中に投入される予定だ。拡大
メルセデス・ベンツの 2 ドアクーペで伝統的に採用されるロングホイールベース、ショートオーバーハング、ロングボンネットのプロポーションを継承している。
メルセデス・ベンツの 2 ドアクーペで伝統的に採用されるロングホイールベース、ショートオーバーハング、ロングボンネットのプロポーションを継承している。拡大
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コックピットはCクラス!?

CLEクーペのボディーサイズは、全長×全幅×全高=4850×1860×1420mm、これに対して、Cクラス クーペは4705×1810×1405mm、Eクラス クーペは4845×1860×1430mmだから、確かにボディーサイズだけ見るとEクラス クーペに近いことがわかる。

ところが、窓枠のない、いわゆるサッシュレスのドアを開けて運転席に座ると、航空機のエンジンをモチーフにしたというエアコンの吹き出し口や11.9インチの縦型メディアディスプレイなど、目の前に広がる眺めはほぼCクラスだ。

とはいえ、CLEクーペが現行のCクラスをベースとしているというわけではなく、あくまでCクラス、Eクラス、Sクラスの基本となる「MRA II」プラットフォームのうえに成り立ったミッドサイズクーペというのが、CLEクーペの立ち位置なのだ。

試乗車にはメーカーオプションの「レザーエクスクルーシブパッケージ」が装着されていて、専用デザインの本革スポーツシートは見た目も美しく、シートベンチレーターが付いて夏場の暑い時期でも快適なドライブが楽しめたり、マッサージ機能でリラックスできたりするのが見逃せないところ。一方、後席は、左右独立タイプのシートに収まってしまえば案外快適で、Eクラス クーペに比べて10mm長い2875mmのホイールベースとあって、大人でも窮屈な思いをしないですむのがうれしい。

ボディーサイズは全長×全幅×全高=4850×1860×1420mmで、ホイールベースは2865mm。ボディーサイドではショルダーラインに沿って伸びる前後2本のプレスラインが目を引く。
ボディーサイズは全長×全幅×全高=4850×1860×1420mmで、ホイールベースは2865mm。ボディーサイドではショルダーラインに沿って伸びる前後2本のプレスラインが目を引く。拡大
インテリアの基本意匠は最新の「Cクラス」に準じたもの。インストゥルメントパネルには12.3インチのドライバーインフォメーションディスプレイと、11.9インチの縦型センターディスプレイを配置。
インテリアの基本意匠は最新の「Cクラス」に準じたもの。インストゥルメントパネルには12.3インチのドライバーインフォメーションディスプレイと、11.9インチの縦型センターディスプレイを配置。拡大
「CLEクーペ」専用にデザインされたスポーツシートを標準で装備。今回試乗した車両では、90万円の有償オプションとなる「レザーエクスクルーシブパッケージ」が選択されていた。
「CLEクーペ」専用にデザインされたスポーツシートを標準で装備。今回試乗した車両では、90万円の有償オプションとなる「レザーエクスクルーシブパッケージ」が選択されていた。拡大
リアシートは2人掛けで、乗車定員は4人。ショルダールームは「Eクラス クーペ」よりも54mm拡大された。左右それぞれに小物入れが、シートセンターに小物入れとカップホルダーが配置されている。
リアシートは2人掛けで、乗車定員は4人。ショルダールームは「Eクラス クーペ」よりも54mm拡大された。左右それぞれに小物入れが、シートセンターに小物入れとカップホルダーが配置されている。拡大

エンジンは2リッター直4ターボのみ

CLEクーペはデビュー時点で「CLE200クーペ スポーツ」の1グレードのみの設定。搭載される2リッター直4ガソリンターボエンジンは、先代にあたる「E200クーペ」に比べて排気量が0.5リッター拡大し、最高出力も20PS増の204PSを発生する。

これに9段ATとマイルドハイブリッドシステムが組み合わされるが、E200クーペがBSG(ベルトドリブン・スターター・ジェネレーター)と呼ばれるベルト駆動のモーターを採用していたのに対して、このCLEクーペでは、エンジンと9段ATの間にモーターを配置するISG(インテグレーテッド・スターター・ジェネレーター)に変更するとともに、モーターの最高出力が17kWに強化された。これらは先に日本に上陸した新型Eクラスと同様である。

せり出したベルトフィーダーからシートベルトを受け取り、運転の準備が整ったところでさっそく試乗へ。CLE200の2リッター直4ガソリンターボは、ごく低い回転域では軽くアクセルペダルを踏み込む場面で一瞬反応が遅れてくるが、少し多めにアクセルペダルを踏めばモーターアシストが効いて素早い加速で応えてくれる。加速時のエンジン音と振動が少し気になるものの、エンジンのトルクは低回転域から十分に余裕があり、回転を上げてやればさらに力強い加速を楽しむことができた。

マイルドハイブリッドシステムを搭載するこのCLE200では、エコモードを選ぶことでアクセルをオフにしたときにエンジンが自動的に停止して燃費向上を図る。アイドリングストップからエンジンがリスタートするときのショックが気にならないところも魅力のひとつだ。

今回試乗した「CLE200クーペ スポーツ」の外板色は、「スペクトラルブルー」と呼ばれる8万円の有償オプション。これを含め同モデルには全9色のボディーカラーが設定されている。
今回試乗した「CLE200クーペ スポーツ」の外板色は、「スペクトラルブルー」と呼ばれる8万円の有償オプション。これを含め同モデルには全9色のボディーカラーが設定されている。拡大
「CLE200クーペ スポーツ」のフロントボンネット内部。最高出力204PS、最大トルク320N・mの2リッター直4ガソリンターボエンジンに、同23PS、同205N・mを発生するISGと呼ばれるマイルドハイブリッド機構を組み合わせている。
「CLE200クーペ スポーツ」のフロントボンネット内部。最高出力204PS、最大トルク320N・mの2リッター直4ガソリンターボエンジンに、同23PS、同205N・mを発生するISGと呼ばれるマイルドハイブリッド機構を組み合わせている。拡大
センターコンソール下部左に走行モード切り替え用の「DYNAMIC SELECT」スイッチを配置。「CLE200クーペ スポーツ」では「ECO」「Comfort」「Sport」「Individual」の4種類から走行モードを任意に選択できる。
センターコンソール下部左に走行モード切り替え用の「DYNAMIC SELECT」スイッチを配置。「CLE200クーペ スポーツ」では「ECO」「Comfort」「Sport」「Individual」の4種類から走行モードを任意に選択できる。拡大
ACCの操作スイッチは、ステアリングホイール右側に位置するツインスポークスポークの下部に集中レイアウトされている。スイッチは静電容量式で、機能的な配置。ハンドルを握りながら親指だけで操作が行えた。
ACCの操作スイッチは、ステアリングホイール右側に位置するツインスポークスポークの下部に集中レイアウトされている。スイッチは静電容量式で、機能的な配置。ハンドルを握りながら親指だけで操作が行えた。拡大

走りはEクラスを超えた!?

CLE200には、前:4リンク式、後ろ:マルチリンク式のスポーツサスペンションが装着されている。タイヤサイズは前:245/40R19、後ろ:275/35R19が標準だが、試乗車にはメーカーオプションの「ドライバーズパッケージ」が装着されており、タイヤは前:245/35R20、後ろ:275/30R20へとインチアップ。さらに、電子制御サスペンションの「ダイナミックボディーコントロール」と4輪操舵の「リアアクスルステアリング」が追加されている。

タイヤのインチアップはスポーティーな見た目をより魅力的に演出するが、乗り心地が悪化するケースもよくあるだけに少し警戒した。しかし、そんな心配は無用だった。

20インチになったことで多少タイヤの重さを意識させられるものの、CLE200の乗り心地は思いのほか快適で、目地段差を越えたときのショックも上手に処理している。高速走行時のフラット感も良好。さらに、後輪駆動らしい素直なハンドリングが楽しめ、コーナリング中の安定感も抜群で、少し前に試乗した新型Eクラスよりもむしろバランスが良く、完成度の高さには驚くばかりである。

試乗するまでは「“E”といっても名ばかりでしょう!?」と高をくくっていたが、実際にはEの名にふさわしいパフォーマンスを見せてくれたCLE200。試乗後、こんなクルマが似合うすてきな大人になりたい……と、そんな思いをかき立てた魅力あふれるクーペである。

(文=生方 聡/写真=花村英典/編集=櫻井健一)

今回の試乗車両には、オプションの電子制御サスペンション「ダイナミックボディーコントロール」と、4輪操舵システム「リアアクスルステアリング」が追加されていた。乗り心地は思いのほか快適で、目地段差を越えたときのショックも上手に処理されている。
今回の試乗車両には、オプションの電子制御サスペンション「ダイナミックボディーコントロール」と、4輪操舵システム「リアアクスルステアリング」が追加されていた。乗り心地は思いのほか快適で、目地段差を越えたときのショックも上手に処理されている。拡大
「20インチAMGアルミホイール(RVM)」は、オプションの「ドライバーズパッケージ」に含まれるアイテム。今回の試乗車は、フロントに245/35R20、リアに275/30R20サイズの「グッドイヤー・イーグルF1アシメトリック5」タイヤが組み合わされていた。
「20インチAMGアルミホイール(RVM)」は、オプションの「ドライバーズパッケージ」に含まれるアイテム。今回の試乗車は、フロントに245/35R20、リアに275/30R20サイズの「グッドイヤー・イーグルF1アシメトリック5」タイヤが組み合わされていた。拡大
トランクの容量は420リッターで、リアシートの背もたれには40:20:40の分割可倒機構も採用。フットトランクオープナーが内蔵された自動開閉トランクリッドを標準で装備している。
トランクの容量は420リッターで、リアシートの背もたれには40:20:40の分割可倒機構も採用。フットトランクオープナーが内蔵された自動開閉トランクリッドを標準で装備している。拡大
凹凸の少ないつるりとしたリアセクションでは、トランクリッド後端にまで続く滑らかなルーフラインと、左右をひとつながりとした新デザインのテールランプが目を引く。
凹凸の少ないつるりとしたリアセクションでは、トランクリッド後端にまで続く滑らかなルーフラインと、左右をひとつながりとした新デザインのテールランプが目を引く。拡大

テスト車のデータ

メルセデス・ベンツCLE200クーペ スポーツ

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4850×1860×1420mm
ホイールベース:2865mm
車重:1800kg
駆動方式:FR
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:9段AT
エンジン最高出力:204PS(150kW)/5800rpm
エンジン最大トルク:320N・m(32.6kgf・m)/1600-4000rpm
モーター最高出力:23PS(17kW)
モーター最大トルク:205N・m(20.9kgf・m)
タイヤ:(前)245/35R20 95Y XL/(後)275/30R20 97Y XL(グッドイヤー・イーグルF1アシメトリック5)
燃費:14.5km/リッター(WLTCモード)
価格:850万円/テスト車=1010万円
オプション装備:メタリックカラー<スペクトラルブルー>(8万円)/ドライバーズパッケージ(40万円)/レザーエクスクルーシブパッケージ(90万円)/パノラミックスライディングルーフ(22万円)

テスト車の年式:2024年型
テスト開始時の走行距離:828km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

メルセデス・ベンツCLE200クーペ スポーツ
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生方 聡

生方 聡

モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。

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