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第283回:ランボルギーニとも戦える

2024.05.06 カーマニア人間国宝への道 清水 草一
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新型「スイフト」は普通のヤツでも高い?

先代「スズキ・スイフトスポーツ」はすばらしかった。あんないいクルマが車両本体200万円くらいで買えたんだから信じられん。

それに比べると普通の「スイフト」(先代)は影が薄かった。なにせ先代スイフトの販売台数の半分近くがスイスポだったくらいだ。カーマニアは新型でもスイスポに期待を集中させており、普通のスイフトはどうでもいいと思っている(たぶん)。あ~、早く新型スイスポが出ないかなぁ。

というような感じで、これまで新型スイフト(普通の)に乗る機会がなかったのですが、今回、FFの最上級グレード「スイフト ハイブリッドMZ」に乗らせていただきました。

運転席に座ってまず、このクルマいくらなんだろうと思い、価格表を見て仰天した。車両本体価格は216万7000円、オプション込みで256万1130円! 先代スイスポより高いっ!

調べたら、先代スイスポも最後は223万円(6AT車)になっていたので、それより高いとはいえないが、まず187万円で登場し、長年200万円くらいで買えたスイスポのスーパーバリューぶりが脳裏に焼きついているので、新型スイフトは普通のスイフトでもそれより高い! という印象になってしまいました。見た目もなんだかいまひとつな気がするし、やっぱりスイスポに期待するしかないだろう。

しかし普通のスイフトがこの値段ってことは、スイスポはオプション込みで300万円になっちゃうのかも。そうなりゃ先代(つまり現行モデル)の中古車が絶対的な狙い目だ。先走ってそこまで考えてから、さてどこに試乗に行こうかと思案し、近所のホームセンター「スーパーバリュー」で、すだれでも買おうと決めて走りだした。

ん? 地味にいいクルマだなこれ。

あれだけさんざん「スイフトスポーツ」を国民車に推しておきながら、これまで新型「スズキ・スイフト」に乗る機会がなかった。ということで今回、満を持してFFの最上級グレード「ハイブリッドMZ」に試乗。街乗りからいつもの首都高まで、普通のスイフトの走りを確かめた。
あれだけさんざん「スイフトスポーツ」を国民車に推しておきながら、これまで新型「スズキ・スイフト」に乗る機会がなかった。ということで今回、満を持してFFの最上級グレード「ハイブリッドMZ」に試乗。街乗りからいつもの首都高まで、普通のスイフトの走りを確かめた。拡大
インテリアは、ドライバーを包み込むようなデザインのダッシュボードとドアトリムが特徴。最上級グレード「ハイブリッドMZ」には9インチのディスプレイオーディオが標準で装備される。
インテリアは、ドライバーを包み込むようなデザインのダッシュボードとドアトリムが特徴。最上級グレード「ハイブリッドMZ」には9インチのディスプレイオーディオが標準で装備される。拡大
近所のホームセンター「スーパーバリュー」の駐車場にて、スーパーバリューだった先代「スイスポ」をしのぶ。私も多くのカーマニアと同じく「あ~、早く新型スイスポが出ないかなぁ」と、思っていたのだが……。
近所のホームセンター「スーパーバリュー」の駐車場にて、スーパーバリューだった先代「スイスポ」をしのぶ。私も多くのカーマニアと同じく「あ~、早く新型スイスポが出ないかなぁ」と、思っていたのだが……。拡大
2005年に登場した「スイフトスポーツ」。「スイフト」はフルモデルチェンジしたが、こちらはまだ現役モデルとして継続販売されている。私はかねて勝手にスイフトスポーツを国民車に提唱していた。
2005年に登場した「スイフトスポーツ」。「スイフト」はフルモデルチェンジしたが、こちらはまだ現役モデルとして継続販売されている。私はかねて勝手にスイフトスポーツを国民車に提唱していた。拡大
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古き良き欧州コンパクトカー的な走り

先代のスイフト(普通の)はこんなにいいクルマじゃなかった。スズキ得意の軽量化がいき過ぎたのか、ボディーにペナペナ感があり、ガッシリ軽快なスイスポとは別モノだった。

ところが新型は、先代スイスポみたいにボディーがしっかりしてる。いやそれ以上かも。1.2リッター直3自然吸気(NA)エンジン+マイルドハイブリッドも、低速トルクが太くてとっても静か。CVTの制御もトヨタ車みたいに最適っぽい。ツウ好みなベーシックカーになっている。

調べると、MT車もラインナップしている。ただし価格は192万円。先代スイスポの登場時より高い。どんだけ地味にいいクルマでも、高くちゃしょうがない。

でも、どんぐらい地味にいいのかを再確認すべきかもと思い、夜、首都高に出撃することにした。

今回は担当サクライ君なし。単独の出撃だ。途中ドンキで買い物をしてから、わがホームグラウンド・首都高へ乗り入れた。

加速車線でフル加速をかます。1.2リッターNA車としてはけっこう速い。

後で調べてようやく知ったのですが、今回の1.2リッターNAエンジンは3気筒。先代の4気筒とは別物だったのですね。最高出力は91PSから82PSにダウンしているのに、逆に加速感は上がっている(ように思える)。

4号線上り新宿の90度右コーナーを抜けた瞬間、このクルマがタダモノではないことがわかった。そして私の脳裏に、あるクルマの残像がよみがえった。P10型「日産プリメーラ」である。

この引き締まった乗り味、接地感の高さ、舵の利きの良さは、古き良き欧州コンパクトカー的。国産車でいえば初代プリメーラだ! 「もうちょっと最近のはないのか」と言われそうだけど、「古き良き」なので。

従来型から大きく変わり、ひと目で新型とわかる特徴的なフロントマスク。L字型のLEDポジションランプやピアノブラック調のグリルなどで上質感が追求されている。
従来型から大きく変わり、ひと目で新型とわかる特徴的なフロントマスク。L字型のLEDポジションランプやピアノブラック調のグリルなどで上質感が追求されている。拡大
ボディーサイズは全長×全幅×全高=3860×1695×1500mm、ホイールベースは2450mm。全長が15mm延びたこと以外、新旧「スイフト」の外寸に変わりはない。モデルチェンジしても無駄に大きくならなかったのは、さすがスズキである。
ボディーサイズは全長×全幅×全高=3860×1695×1500mm、ホイールベースは2450mm。全長が15mm延びたこと以外、新旧「スイフト」の外寸に変わりはない。モデルチェンジしても無駄に大きくならなかったのは、さすがスズキである。拡大
新開発の1.2リッター直3自然吸気エンジン「Z12E」は最高出力82PS、最大トルク108N・mを発生。マイルドハイブリッドのCVT搭載モデルは、FF車で23.4~25.4km/リッター、4WD車で22.0~22.7km/リッターという燃費(WLTCモード)を実現している。
新開発の1.2リッター直3自然吸気エンジン「Z12E」は最高出力82PS、最大トルク108N・mを発生。マイルドハイブリッドのCVT搭載モデルは、FF車で23.4~25.4km/リッター、4WD車で22.0~22.7km/リッターという燃費(WLTCモード)を実現している。拡大
5名乗車時の荷室容量は265リッター。リアシートの背もたれには60:40の分割可倒機構が備わっている。荷室高が875mm確保されているのも、新型「スイフト」の特徴だ。
5名乗車時の荷室容量は265リッター。リアシートの背もたれには60:40の分割可倒機構が備わっている。荷室高が875mm確保されているのも、新型「スイフト」の特徴だ。拡大

新型スイスポを待つ必要なし?

その時、前方に速いクルマが現れた。現行型「トヨタ・アクア」だ。アクアも非常に操縦性がイイ。国産の地味にいいクルマ対決の始まりだ。地味に楽しいぜ。

と、そこに、スーパーカーの雄たけびが合流してきた。フェラーリか、それともランボルギーニか。

「ウラカン」だった。大きなリアウイングがついているので「ペルフォルマンテ」か何かだろう。よし、次のターゲットはオマエだぜ! 

超爆サウンドを轟(とどろ)かせながら疾走するウラカン。それをスイフトがほぼ無音で追走する。静粛性が増しているのである。いったん割り込みが入って引き離されたが、レインボーブリッジへの上り坂で追いすがり、再び追いつくことに成功した。相手は5.2リッターV10。やるじゃないか1.2リッター3気筒!! 首都高では無駄なパワーよりも、自由自在に操れる接地性のいいアシが重要なのだ。

結局スイフトは、テール・トゥ・ノーズ(安全車間距離)のまま辰巳PAまでウラカンの追走を続けた。抜こうと思えば抜けるくらいの勢いだった。さすがに抜いても無意味と思い抜きませんでしたが、まさかウラカンのドライバーも、1.2リッター3気筒82PSのマシンに追いかけられるとは思っていなかっただろう。というより相手にしていなかった気配が濃厚だが、私はスイフトの運転席で「うおおおおおおお!」と勝利の凱歌(がいか)を上げた。すげえぞ新型スイフト!

これはもう新型スイスポはいらないかもしれない。なにしろ普通のスイフトでも、首都高でランボルギーニと戦えるんだから……。

(文と写真=清水草一/編集=櫻井健一)

愛車ちょいワル特急こと「プジョー508 GT BlueHDi」と、新型「スイフト」。今回試乗した車両の「フロンティアブルーパールメタリック」とブラックルーフの2トーン仕様は、9万9000円の有償色となる。
愛車ちょいワル特急こと「プジョー508 GT BlueHDi」と、新型「スイフト」。今回試乗した車両の「フロンティアブルーパールメタリック」とブラックルーフの2トーン仕様は、9万9000円の有償色となる。拡大
首都高でわが「スイフト」とバトルを繰り広げていた「アクア」。その2台をまとめてぶち抜いていったのは「ランボルギーニ・ウラカン ペルフォルマンテ」だった。
首都高でわが「スイフト」とバトルを繰り広げていた「アクア」。その2台をまとめてぶち抜いていったのは「ランボルギーニ・ウラカン ペルフォルマンテ」だった。拡大
「ランボルギーニ・ウラカン ペルフォルマンテ」と戦ってもこの燃費! 燃費でなら、どんなスーパーカーと戦っても新型「スイフト」の圧勝である。
「ランボルギーニ・ウラカン ペルフォルマンテ」と戦ってもこの燃費! 燃費でなら、どんなスーパーカーと戦っても新型「スイフト」の圧勝である。拡大
首都高で試乗し、あたらめて「スイフト」のポテンシャルに感動した。その引き締まった乗り味、接地感の高さ、舵の利きの良さは、古き良き欧州コンパクトカー的。国産車でいえば初代「プリメーラ」である!
首都高で試乗し、あたらめて「スイフト」のポテンシャルに感動した。その引き締まった乗り味、接地感の高さ、舵の利きの良さは、古き良き欧州コンパクトカー的。国産車でいえば初代「プリメーラ」である!拡大
清水 草一

清水 草一

お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。

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