フォルクスワーゲンID. Buzzプロ ロングホイールベース(RWD)/ID. Buzz GTXロングホイールベース(4WD)
レトロに見えて未来志向 2024.08.30 試乗記 フォルクスワーゲンの電動ミニバン「ID. Buzz」に追加設定されたロングホイールベース車は、250mm延ばされた全長とホイールベース、そして3列シートが備わる広いキャビンがセリングポイント。日本上陸を前に、ドイツ・ヴォルフスブルクでその仕上がりを確かめた。いよいよ2025年に日本上陸
2022年春に発表されたフォルクスワーゲンID. Buzzは、同社の電気自動車専用プラットフォーム「MEB」を用いた電気自動車(BEV)。“ワーゲンバス”の愛称で親しまれた「フォルクスワーゲン・タイプ2」をほうふつさせるスタイルのミニバンだ。
日本への早期導入を望む声もあったけれど、ID. Buzzは同社の商用車部門で開発されたという経緯から、ローカライズに時間がかかったという。欧米ではフォルクスワーゲンの商用車をひんぱんに見かけるけれど、現在の日本には正規輸入されていない。だから日本仕様の開発に時間がかかったのだろう。けれども、2024年後半から2025年前半のタイミングで日本へ正規輸入されることが決まった。
発表以来、ID. Buzzはバリエーションを増やしており、まず2023年にロングホイールベース(LWB)版が加わった。LWB車のホイールベースは標準ホイールベース車より250mm長い3238mmで、標準ボディーが2列シートだったの対して、3列シートを備える。シートのレイアウトは、前から2・2・2の定員6人の仕様と、2・3・2の7人仕様がある。3列シートのLWB車は、主に北米仕様からのリクエストで開発されたとのことだ。
そして2024年には、スポーティー仕様の「GTX」のデリバリーも始まっている。ベーシックなパワートレインが後輪駆動で最高出力が286PSであるのに対して、GTXはフルタイム4輪駆動で最高出力は340PSとなる。
標準ホイールベース車とLWB車それぞれに2種類のパワートレインが設定されることから、ID. Buzzには4つの仕様が存在することになる。現時点ではどの仕様が日本に導入されるかは決まっていないとのことで、4つのバリエーションすべてが入ってくる可能性もあるという。今回は、フォルクスワーゲンの本拠があるドイツ・ヴォルフスブルク近郊で、LWBのベーシックなパワートレインを搭載する後輪駆動の「プロ」と、同じくLWBで4輪駆動のスポーティー仕様GTXに試乗することができたので、報告したい。
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制限速度130km/h区間でも余裕
まず、ボディーがホワイトとネイビーのツートンに塗られた標準パワートレイン仕様のプロから試乗する。フォルクスワーゲンのデザイン責任者であるアンドレアス・ミント氏はID. Buzzのデザインのポイントについて、「VWのエンブレムがなくてもフォルクスワーゲンだとわかる」と語っていたけれど、なるほど、このクルマはひと目見てワーゲンバスの末裔(まつえい)だということがわかる。
ダッシュボード中央のタッチスクリーンにインターフェイスが集約されているために、物理的なスイッチやダイヤルが見当たらず、インテリアはすっきりとした印象だ。オフホワイトをベースにした明るい内装が、クルマのキャラクターに合っている。
タッチスクリーンの最上段にはソフトスイッチが備わり、ここを押すとワンアクションでナビゲーションや車両セッティングなど、行きたいページに飛べる。タッチスクリーンは便利なようでいて、走行中は振動もあるから意外と正しい場所に触れるのが難しい。その点、ID. Buzzのインターフェイスは、「なかなか必要な情報にたどり着けない」というタッチスクリーンにありがちなジレンマを解消している。
いざ走りだすと、BEVらしくスムーズで静か。最高出力が286PSの標準パワートレインでも力不足はまったく感じない。加えて、乗り心地もフラットで快適だ。全高1927mmとなかなかの背の高さであるけれど、ぐらりと傾くような重心の高さは感じられない。どうやら、重たいバッテリーを床下に配置するBEV専用プラットフォームが、好印象につながっているようだ。重心が低いということは足まわりを固めなくてもロールを抑えられるということで、これが乗り心地のよさにつながっているのだろう。
アウトバーンに上がっても、パワー不足に起因するストレスはまったく感じない。制限速度130km/hの区間でも余裕を持って追い越し車線を走行できたから、日本の高速道路でも気持ちよく走ることができるはずだ。
驚いたのは高速巡航時の静粛性の高さで、これだけ背が高く、いかにも風の抵抗を受けそうなスタイルなのに、風切り音が低く抑えられている。勝因のひとつはウィンドウに遮音材がおごられていることで、これがかなりの効果を発揮している。もうひとつ、電費向上のために空気抵抗を下げることにも取り組んだとされ、結果として空気抵抗を示す係数であるCd値も0.29と非常に低い値となっている。これも風切り音の低減に貢献しているはずだ。
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クルマ社会の将来を見据えたモデル
続いて、ハイパワー版のGTXに乗り換える。こちらは明らかにパワフルで、アクセルペダルの踏み方に気をつけないと同乗者からクレームがくるほどの加速を見せる。だからアウトバーンを爽快に走ることができるけれど、足まわりも相応に固められている。
GTXは、ワインディングロードで車体のサイズを忘れるほど軽やかなフットワークを見せるいっぽう、しやなかさでは標準パワートレインに軍配が上がる。また、GTXはステアリングホイールもがっしりとした手応えで、軽快にハンドル操作ができた標準仕様車より明らかに体育会系のセッティングだ。音や振動はないけれど、GTXは“ホットバン”なのだ。単にモーターの出力が高いというだけでなく、標準仕様車とはかなりキャラが違う。
両者に共通していたのは、追従型クルーズコントロールとレーンキープアシスト機能を統合した“Travel Assist”が洗練されていたこと。加えて、標識を読み取る機能が制限速度の表示を認識してくれるから、“Travel Assist”を起動した状態だとドライバーはステアリングホイールに手を添えているだけで、適正な速度で矢のように直進する。
加減速はほどよくスムーズ、車線からはみ出しそうになる時のステアリングホイールから伝わる反力も絶妙だ。特にGTXは、活発に走る姿と、“Travel Assist”でクール&スマートに走る姿のギャップが大きく、そこがおもしろかった。
愛嬌(あいきょう)のあるスタイリングからファニーなクルマだという印象を受けるけれど、電動化や自動運転など、フォルクスワーゲンがクルマ社会の将来を見据えたモデルになっている。見た目はレトロであるけれど、中身は未来志向なのだ。
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ショーファードリブンカーとしてもアリ?
BEVのID. Buzzで走っていて気づくのは、コロナ禍前よりも明らかに充電設備が充実していることだ。アウトバーンのサービスエリアや街のあちこちに、ガソリンスタンドをリノベートした充電設備がある。しかもその多くが150kWや300kWという大出力で、ID. Buzzにケーブルを接続すると気持ちがいいくらいゴンゴン電気が入る。
それでもエンプティーから80%まで回復するには15分くらいはかかるけれど、充電できる場所が豊富にあって“充電渋滞”の心配がないことから、充電にまつわるストレスはあまり感じなかった。これはクルマの出来とは別の話であるけれど、これくらいインフラが整備されていると、BEV購入のハードルが一気に下がると感じた。
LWB車の一充電走行距離(WLTPモード)はプロが487kmで、GTXが475km。バッテリー容量はいずれも86kWhで、標準ホイールベース車の79kWhよりも拡大されている。エアコンを効かせてアウトバーンを走りながら、トリップメーターが積み上げる距離と、次第に減っていくバッテリー残量を目分量で比べると、カタログ値の7掛け、つまり後者の実走行距離は330km程度といったところだろうか。走行距離に関しては、ごく一般的なレベルだといえるだろう。
残念ながら3列目シートを試すことはできなかったけれど、2列目シートはシートの掛け心地もよく、スペース的にも広々としている。静かで乗り心地がいいこともあって、心からくつろげる移動空間だ。
冒頭に記したように、現状では2列シートの標準ホイールベース車と3列シートのLWB車の両方が日本に導入される可能性があるとのこと。新しいスタイルのファミリーカーとして興味を引きそうであるけれど、仮にLWB車が入ってきた場合、ショーファードリブンとして使うのもおもしろいのではないか。このクルマから降り立つ社長も、このクルマを採用する企業も、好感度が上がりそうだ。
(文=サトータケシ/写真=フォルクスワーゲン/編集=櫻井健一)
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テスト車のデータ
フォルクスワーゲンID. Buzzプロ ロングホイールベース
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4962×1985×1927mm
ホイールベース:3239mm
車重:2650kg
駆動方式:RWD
モーター:交流同期電動機
最高出力:286PS(210kW)
最大トルク:550N・m(56.1kgf・m)
タイヤ:(前)235/45R21 104T XL/(後)265/40R21 104T XL(ハンコック・ヴェンタスS1エボ3 ev)
交流電力量消費率:19.5-21.0kWh/100km(WLTPモード)
一充電走行距離:487km(WLTPモード)
価格:--万円/テスト車=--円
オプション装備:--
テスト車の年式:2024年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
消費電力量:--kWh
参考電力消費率:--km/kWh
フォルクスワーゲンID. Buzz GTXロングホイールベース
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4962×1985×1927mm
ホイールベース:3239mm
車重:2650kg
駆動方式:4WD
モーター:交流同期電動機
最高出力:340PS(250kW)
最大トルク:580N・m(59.2kgf・m)
タイヤ:(前)235/45R21 104T XL/(後)265/40R21 104T XL(ハンコック・ヴェンタスS1エボ3 ev)
交流電力量消費率:20.0-21.3kWh/100km(WLTPモード)
一充電走行距離:475km(WLTPモード)
価格:--万円/テスト車=--円
オプション装備:--
テスト車の年式:2024年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
消費電力量:--kWh
参考電力消費率:--km/kWh

サトータケシ
ライター/エディター。2022年12月時点での愛車は2010年型の「シトロエンC6」。最近、ちょいちょいお金がかかるようになったのが悩みのタネ。いまほしいクルマは「スズキ・ジムニー」と「ルノー・トゥインゴS」。でも2台持ちする甲斐性はなし。残念……。
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