クルマ好きなら毎日みてる webCG 新車情報・新型情報・カーグラフィック

「ホンダN-BOXジョイ」の登場で再注目! SUV風軽ハイトワゴン4車種の魅力を比較する

2024.09.27 デイリーコラム 工藤 貴宏
【webCG】クルマを高く手軽に売りたいですか? 車一括査定サービスのおすすめランキングを紹介!

もはやニッチな存在ではない!

それにしてもこんな状況になるとはね。「スズキ・スペーシア ギア」が登場した6年前のワタクシは、まったく想像もしていませんでしたよ。

なんのことかといえば、昨今のSUV風軽スーパーハイトワゴンのトレンドだ。もちろん背景というか事情はよく分かる。いまや軽乗用車の中心といえば、高い天井にスライドドアを組み合わせた後席が広いスーパーハイトワゴンであり、しかし市場が成熟してきたがゆえに、皆が刺激というかライバルに差をつける突破口として、“次の何か”を探していたのだ。時代は新しい何かを求めていたのである。

そこでSUVブームに目をつけたスズキがスペーシア ギアを生み出した。すると意外や意外(と思うのは外野だけで、スズキは「当然手ごたえはあると思っていた」と考えていることでしょう)にヒット。ライバルも「その手があったか!」と、2匹目のドジョウどころか3匹目や4匹目のドジョウを狙ってきたというのが昨今の流れというわけである。

それにしても、当初は「ニッチなクルマ」という印象だったSUVテイストのスーパーハイトワゴンがここまで市民権を得るなんて、だれが予想しただろうか。もしかして、予想できていなかったのは筆者だけ?

いずれにせよ、スペーシア ギアに続いて「三菱eKクロス スペース(後に『デリカミニ』に進化)」「ダイハツ・タント ファンクロス」、そして「ホンダN-BOXジョイ」と、気がつけば軽スーパーハイトワゴンの世界ではSUV風味のモデルが増殖中、というか席巻中。元祖のスペーシア ギアが初のフルモデルチェンジを迎えたタイミングで、軽スーパーハイトワゴンのマーケットにトレンドが“いきわたった”と言っていいだろう。

ホンダが満を持してリリースした「N-BOXジョイ」。同車の登場により、スズキ、ダイハツ、ホンダ、そして日産・三菱連合と、軽自動車4大勢力のすべてが、SUV風の軽スーパーハイトワゴンをラインナップすることとなった。(写真:向後一宏)
ホンダが満を持してリリースした「N-BOXジョイ」。同車の登場により、スズキ、ダイハツ、ホンダ、そして日産・三菱連合と、軽自動車4大勢力のすべてが、SUV風の軽スーパーハイトワゴンをラインナップすることとなった。(写真:向後一宏)拡大
ブームの始まりとなった、2018年12月登場の初代「スズキ・スペーシア ギア」。こうしたトレンドをいち早く嗅ぎつけるスズキの感度の高さには、本当に恐れ入る。
ブームの始まりとなった、2018年12月登場の初代「スズキ・スペーシア ギア」。こうしたトレンドをいち早く嗅ぎつけるスズキの感度の高さには、本当に恐れ入る。拡大
2022年10月に登場した「ダイハツ・タント ファンクロス」。タントシリーズのマイナーチェンジを機に設定された。
2022年10月に登場した「ダイハツ・タント ファンクロス」。タントシリーズのマイナーチェンジを機に設定された。拡大
2023年1月登場の「三菱デリカミニ」。「eKクロス スペース」のマイナーチェンジを機に、車名とスタイルを変更し、別車種として仕立て直したモデルだ。
2023年1月登場の「三菱デリカミニ」。「eKクロス スペース」のマイナーチェンジを機に、車名とスタイルを変更し、別車種として仕立て直したモデルだ。拡大
ホンダ の中古車webCG中古車検索

似ているようで結構違うコンセプト

それにしても、こうして出そろってみると当然というべきか、各車それぞれちょっとずつ方向性に違いがあるのが面白い。

トップバッターのスペーシア ギアやそれに続くタント ファンクロスは、ベース車の素性を生かした商品企画。はっ水シートなどで汚れ耐性を高めたりはしているが、その他の点ではベース車から機能面で大きな変更はない。タント ファンクロスは荷室の床の高さを上げることで、後席を倒したときのフロアをフラットにする仕掛けを組み込んできたが、これは同時期にマイナーチェンジされた標準車や「カスタム」にも採用されている。サスペンション関係も標準車と変わらず、そこはあくまで「ファッションとしてのSUV風」というスタンスだ。

いっぽうで、きちんと悪路走破性を高めるべく(4WDモデルの)サスペンションにまで手を入れてきたのがデリカミニ。本当は「eKクロス スペース」なのに、大規模マイナーチェンジで車名まで変えてきたのだから恐れ入る。車名変更で「デリカ兄弟」にしちゃうなんて、大層な方向転換だと思ひけりだ。そしてデリカの名に恥じぬようにと、4WD車のみとはいえ、大径タイヤとサスペンションの変更でリフトアップまで施してきたのだ。

正直、実質マイナーチェンジなのに凝りすぎじゃないかと思うくらいで、走行性能まで高めてきた点でいえば、この手の車両のなかでも最もトガっているのはデリカミニと言っていいだろう。見た目がコミカルでカワイイから、個人的にも大ファンなんだけど。

いっぽうで、そんなデリカミニとはある意味真逆の方向性できたのがニューカマーのN-BOXジョイ。人知れぬ河原でガチキャンプをしようなんて思ってなくて、狙っているのはシートをたたんで荷室でくつろくこと。風景のいい場所でクルマをとめて、テールゲートを開けたら即席テラスの出来上がりというわけだ。

だから、「N-BOX」に対しての変更点は「後席をたたんだときに、フラットに近い荷室床面が現れること」であり、さらにシート表面だけにとどまらず、後席のシートバックや荷室床面にいたるまで、チェックの布を張ってしまえ! という大胆コーディネートに出たのである。イメージは「チェック柄のレジャーシートを荷室に敷いた感じ」なのだとか。正直、この発想はなかった。

「スズキ・スペーシア ギア」や「ダイハツ・タント ファンクロス」は、ベース車からの変更は控えめ。しかしそれは、ベース車の段階で十分な飛び道具が備わっていたからともいえる。写真は、今も昔もタントのキラーコンテンツ(?)である大開口の「ミラクルオープンドア」。
「スズキ・スペーシア ギア」や「ダイハツ・タント ファンクロス」は、ベース車からの変更は控えめ。しかしそれは、ベース車の段階で十分な飛び道具が備わっていたからともいえる。写真は、今も昔もタントのキラーコンテンツ(?)である大開口の「ミラクルオープンドア」。拡大
「タント ファンクロス」は、荷室の床面を持ち上げることで、格納時の後席背面と高さをそろえることが可能。ちなみにこの上下2段調節式デッキボードは、取り外してテーブルとしても使える。(写真:向後一宏)
「タント ファンクロス」は、荷室の床面を持ち上げることで、格納時の後席背面と高さをそろえることが可能。ちなみにこの上下2段調節式デッキボードは、取り外してテーブルとしても使える。(写真:向後一宏)拡大
走りの点でこだわりをみせるのは「三菱デリカミニ」。4WD車だけだが、大径タイヤの装着などで最低地上高を上げ、悪路走破性を高めているのだ。
走りの点でこだわりをみせるのは「三菱デリカミニ」。4WD車だけだが、大径タイヤの装着などで最低地上高を上げ、悪路走破性を高めているのだ。拡大
「ホンダN-BOXジョイ」は、後席をたためばチェック柄のフロアが広がるくつろぎの大空間が出現! 座り心地がいいよう、後席背面にプレートを仕込むというこだわりようだ。写真はチェック柄のインテリアを考案した、本田技術研究所の松村美月氏。(写真:向後一宏)
「ホンダN-BOXジョイ」は、後席をたためばチェック柄のフロアが広がるくつろぎの大空間が出現! 座り心地がいいよう、後席背面にプレートを仕込むというこだわりようだ。写真はチェック柄のインテリアを考案した、本田技術研究所の松村美月氏。(写真:向後一宏)拡大

軽スーパートールワゴンの新しい付加価値商品

というわけで、同じようでいて三者三様ならぬ“四車四様”のSUV風軽スーパーハイトワゴン。好みに応じて選べるというのは、消費者にとってうれしいことなのは言うまでもないだろう。

ただ、これら4車種に共通する意外なポイントもある。それは、標準車とかカスタムが存在しないデリカミニを除き、どれも標準車よりもカスタムに近い商品とされていることだ。

例えば、スペーシアやN-BOXの標準車にはターボエンジンは設定がないけど、ギア&ジョイにはしっかりそれが用意されている。室内の革巻きハンドルだって、基本的には標準車には採用されないが、SUV風のほうにはあるし、いくつかのモデルではインシュレーターの入れ方(標準車よりカスタムのほうが念を入れてある)もカスタムと同等にしてあるから、標準車より静粛性が高いのも面白い。単に、標準車の見た目と一部内装の仕掛けを変えただけではないのだ。

開発者にたずねても「上下関係でいうと、SUVテイストの車種は標準車よりカスタムに近いポジション」なのだという。いずれにせよ、しばらくはこのSUV風のモデル群が、軽スーパーハイトワゴンの台風の目となりそうだ。そして、新発想としてスペーシア ギアを生み出したスズキはうまいことやったと、つくづく思うのである。

(文=工藤貴宏/写真=向後一宏、三菱自動車、webCG/編集=堀田剛資)

新型「スズキ・スペーシア ギア」(写真中央)と、標準車の「スペーシア」(写真向かって右)および「スペーシア カスタム」(同左)。SUVテイストの軽スーパーハイトワゴンは、現状ではいずれも「カスタム」に次ぐ付加価値モデルとして位置づけられている。
新型「スズキ・スペーシア ギア」(写真中央)と、標準車の「スペーシア」(写真向かって右)および「スペーシア カスタム」(同左)。SUVテイストの軽スーパーハイトワゴンは、現状ではいずれも「カスタム」に次ぐ付加価値モデルとして位置づけられている。拡大
新型「スペーシア ギア」のインテリア。各所が専用デザインとなっているだけでなく、上級装備の本革巻きステアリングホイールが標準で採用される。
新型「スペーシア ギア」のインテリア。各所が専用デザインとなっているだけでなく、上級装備の本革巻きステアリングホイールが標準で採用される。拡大
ライバルが出そろったタイミングで、SUV風スーパーハイトワゴンの元祖「スズキ・スペーシア ギア」もフルモデルチェンジ。商品力をグッと高めてきた。し烈な競争は、これからも続きそうだ。
ライバルが出そろったタイミングで、SUV風スーパーハイトワゴンの元祖「スズキ・スペーシア ギア」もフルモデルチェンジ。商品力をグッと高めてきた。し烈な競争は、これからも続きそうだ。拡大
工藤 貴宏

工藤 貴宏

物心ついた頃からクルマ好きとなり、小学生の頃には自動車雑誌を読み始め、大学在学中に自動車雑誌編集部でアルバイトを開始。その後、バイト先の編集部に就職したのち編集プロダクションを経て、気が付けばフリーランスの自動車ライターに。別の言い方をすればプロのクルマ好きってとこでしょうか。現在の所有車両は「スズキ・ソリオ」「マツダCX-60」、そして「ホンダS660」。実用車からスポーツカーまで幅広く大好きです。

デイリーコラムの新着記事
デイリーコラムの記事をもっとみる
関連キーワード
関連サービス(価格.com)
新着記事
新着記事をもっとみる
車買取・中古車査定 - 価格.com

メルマガでしか読めないコラムや更新情報、次週の予告などを受け取る。

ご登録いただいた情報は、メールマガジン配信のほか、『webCG』のサービス向上やプロモーション活動などに使い、その他の利用は行いません。

ご登録ありがとうございました。

webCGの最新記事の通知を受け取りませんか?

詳しくはこちら

表示されたお知らせの「許可」または「はい」ボタンを押してください。