モト・グッツィV85 TTトラベル(6MT)
愛が伝わってくる 2025.05.02 JAIA輸入二輪車試乗会2025 「縦置きのV型2気筒OHVエンジン」というユニークな伝統を今日に受け継ぐ、モト・グッツィのアドベンチャーツアラー「V85 TT」。長い歴史と独創性に裏打ちされた唯一無二のエンジンフィール/ライドフィールをリポートする。一朝一夕でできるものではない
V85 TTに乗ってみて、よくもまあ伝統のOHVをここまで進化させたものだなと思った。昔からの心地よい鼓動感と低回転からの力強さはそのまま変わらず、可変バルブタイミング機構のおかげで高回転まで実に気持ちよく回る。フライホイールマスが大きいから、パワフルでありながらマイルドで粘り強く、その重いクランクマスをものともせずにぶん回すトルクがある。こういうエンジンは、いちから新しくつくろうとしてもなかなかできるものではない。昔からの伝統を大事にしながら進化させてきた、モト・グッツィの努力のたまものだ。
ハンドリングも実に素直。19インチのフロントタイヤはどっしりと落ち着いているので、バンクさせようとするとスーッと気持ちよく車体が傾いていく。バンク角に応じておだやかにステアリングの舵角がついていくから、神経質さはみじんもない。極端なことを言えば、ライダーが行きたいと思った方向に自然と向きを変えてくれるような性格だ。スポーツネイキッドのような機敏さはないけれど、ストリートを走るんだったらこれくらい落ち着きがある特性のほうがよいと思う。
このエンジンとステアリングの性格は、ロングツーリングでライダーの疲労を大きく減らしてくれることだろう。日常的なスピードで楽しめるエンジンとコーナリングの特性によって、景色を眺めながらののんびりしたペースでも、モト・グッツィの世界観に浸りながら気持ちよく走ることができる。ただし、まったりツーリングだけがV85 TTの魅力ではない。いざスポーティーに走りたいときもシッカリと応えてくれるポテンシャルもあるのだ。
うーん、なんだかとても深い。走れば走るほどに、モト・グッツィの縦置きV型2気筒OHVに対する深い愛情が伝わってくる、そんな感じがするマシンであった。
(文=後藤 武/写真=向後一宏/編集=堀田剛資)
【スペック】
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=2240×950×--mm
ホイールベース:1530mm
シート高:830mm
重量:211kg(乾燥重量)/243kg(燃料90%搭載時、パニアケースを含む)
エンジン:853cc 空冷4ストロークV型2気筒OHV 2バルブ(1気筒あたり)
最高出力:80HP(58.8kW)/7750rpm
最大トルク:83N・m(8.5kgf・m)/5100rpm
トランスミッション:6段MT
燃費:--km/リッター
価格:189万7500円
◇◆JAIA輸入二輪車試乗会2025◆◇
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後藤 武
ライター/エディター。航空誌『シュナイダー』や二輪専門誌『CLUBMAN』『2ストマガジン』などの編集長を経てフリーランスに。エアロバティックスパイロットだった経験を生かしてエアレースの解説なども担当。二輪旧車、V8、複葉機をこよなく愛す。
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