レクサスRX450h+“バージョンL”(4WD/CVT)
ブランドづくりに終わりはない 2025.06.03 試乗記 「レクサスRX450h+“バージョンL”」は先の改良によって全体の洗練度がグッとアップ。プレミアムブランドのSUVとして完成度がさらに高まっている。ただし、そうするとまた次の課題が見えてしまうから、人間というのはまことにぜいたくな生き物である。絶妙な位置づけのRX
都心に事務所を構えているせいもあるが、日常のなかで2022年に登場した現行モデルのレクサスRXを見かける頻度が、本当に高いなと感じている。実際にセールス状況を見ると、ラージクラスのプレミアムSUV市場におけるシェアはダントツのトップである。周囲が輸入車ばかりだということを差し引いても、人気の高さはずぬけている。
確かにRXは、それなりに裕福な人の選ぶ一台として実にちょうどいい存在だ。為替の影響もあり、輸入車の価格がとんでもなく高くなっている今、RXはまだ何とかなりそうな価格帯に居てくれており、しかもリセールバリューはすこぶる高い。デザインはひと目でレクサスと分かるもので、これぞといういいモノ感も濃厚。サイズも、都内で何とか普段使いできるギリギリのところに収まっている。
クルマに、特にその走りに、思い切りコダワリのある人には違った選択肢もあるかもしれない。けれども、高いライフスタイルの伴侶として誰もが認めるいいクルマが欲しいという、より幅広い層にとって、RXの位置づけは絶妙なのだ。
そのRXが2025年春に一部改良を受けた。今回の試乗車であるRX450h+“バージョンL”は、ラインナップ唯一のプラグインハイブリッド車(PHEV)である。
今回の改良で、外観にはまったく変更はない。このRX450h+を含む“バージョンL”には、メーカーオプションとしてダークグレーメタリック塗装+切削光輝の21インチホイールが設定されたが、試乗車のそれは以前からあるダークプレミアムメタリック。つまり最新型と認識するのは不可能といっていい。
徹底的な騒音対策
しかしながら、そのルックスは台数が増えた今なお鮮度十分。この日は気持ちのいい晴天で、ボディーの美しい陰影が試乗車のボディーカラー「ソニックカッパー」によってさらに強調されて、存在感が一層際立って見えた。これなら無理に変更する必要などないだろう。
インテリアにも大きな違いはない。ダッシュボード奥側からドアパネルまで貫くようにトリムが張り巡らされたデザインは、開放感と囲まれ感をいいあんばいで両立しているし、シートは前後席とも豊かなサイズで、掛け心地は上々。“バージョンL”のセミアニリン本革表皮も、見て触れて実に上質だ。
メーターパネルが12.3インチフル液晶となり、センターコンソール前部にイルミネーションが追加されたのが、数少ない変更点。あるいは初期型を知っている人ならば、センタースクリーン内の画像がアップデートされていることにも気づくかもしれない。従来はエネルギーフローの画面など、まるでポンチ絵のようだったが、今やしっかり描き込まれたものになっている。
そんな風に内外装をチェックしている際に気になったのが、ドアの閉まりの悪さである。割と強めに閉めたつもりでも半ドアになってしまうことが幾度もあった。
実は今回の改良の目玉のひとつが静粛性の向上である。エンジンノイズ低減を図るためダッシュインナーサイレンサーの目付量アップやインストゥルメントパネルへの吸音材追加などが行われ、さらには後席まわりの騒音低減のためリアドアガラスへのアコースティックガラスの採用、リアボディーまわりへの制振材・吸音材の追加などが行われている。
ドアの閉まりの悪さは、どうやらそのせいらしい。室内の密閉度が高まって、空気が逃げにくくなってしまったというわけだ。
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電池の大きいハイブリッド車にはあらず
走る前から効果が体感できていいじゃん、というわけにはいかない。特にRXの場合、電子スイッチのeラッチの採用で、室内からドアを開けるのは力を入れることなく軽やかな所作で行えるだけに、閉めるときにバァーンと勢いをつけなければならないというのはスマートではない。
ドアに電動で引き込むイージークローザーが付いていれば問題ないのだが、RXには未設定である。同じプラットフォームを用いるトヨタの「クラウン クロスオーバー」や「クラウン エステート」のリアには備わるだけに、できない話ではないはずなのだが。
一方、走らせればその効果はてきめん。静粛性は格段に高まっている。従来も決して騒々しいクルマだったわけではないが、どこかを抑えるとかえって別の箇所が目立つという感じで、雑味が感じられないではなかった。今回はそのアラが徹底的につぶされて、いついかなるときも静かなクルマになっている。
従来、一番耳障りに感じたのはエンジン音だった。高速燃焼を採用した直列4気筒2.5リッターエンジンは、回すとガーガーとノイジー。これはRXの他のエンジンもすべて一緒だが、最新型はその音が大幅に遮断されている。
PHEVであることも、静けさのポイントといっていいだろう。RX450h+をはじめレクサスのPHEVは、単にハイブリッド車のEV走行距離を延ばしたのではなく、駆動用バッテリー容量の余裕を生かしてハイブリッド走行時にも電気モーターをより積極的に活用するようになっている。おかげで発進時にエンジンはなかなかかからず、電気モーターだけで加速していくなど、そもそもエンジン音が高まる要素が大幅に減じられているのだ。
今回、アクセル開度に対する駆動力の出し方にも手を入れているということで、走りもより滑らかで力強く感じられた。燃費だっていい。筆者の場合、自宅での充電はできず、車両も急速充電には非対応だから、もし所有していても外部で充電する機会は多くはないと思うが、それでも乗るならば、この走りでRX450h+を選ぶと思う。本当なら急速充電に対応してくれればベターである。
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まずはカッコよく乗れるクルマであれ
今回の改良では、特に高速巡航時のフラット感を高めるべくシャシーにも変更が加えられている。また、従来備わらなかった「DRS」、要するに後輪操舵機構も追加された。
そのフットワークには適度な重厚感があり、乗り味はしっとり。操舵に対するレスポンスは、対話感こそ濃くはないものの動き自体はすっきりしていて、2200kgという車重を意識させられることはない。もう少しだけタイヤの踏面がしなやかだと持ち味がさらに引き出せそうだが、現時点でも十分合格といえる。
ただし、このテイストは必ずしもRXすべてに共通ではなく、例えば「RX350」や「RX350h」は全体にもっと軽快感が強調されている。個人的には、それは「NX」の受け持つ領域であって、RXとして目指すべきはこのRX450h+“バージョンL”の方向性だと感じた。今回の進化は大きい。
本当はこれで話をまとめようと考えていたのだが………実はどうにもドアの閉まりの話が、心に引っかかっている。小さいことだとは思わない。レクサスがライフスタイルブランド的な部分を強く打ち出すのであれば、それは雰囲気やマーケティングの成果より、まず何よりカッコよく乗れるクルマそれ自体が重要なはず。であれば、乗り降りともに美しい所作でこなせるクルマであってほしいのだ。
その意味で改良とは単に弱点をつぶすというだけでなく、そのクルマがどうあるべきかを俯瞰(ふかん)で見て、そこに近づけていく作業であるべきだろう。とはいえ、“Always On”という言葉を掲げるこのブランドは、そんなことは百も承知のはず。きっと何か手を打ってくる。まさにブランドづくりに終わりはないのである。
(文=島下泰久/写真=向後一宏/編集=藤沢 勝/車両協力=トヨタ自動車)
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テスト車のデータ
レクサスRX450h+“バージョンL”
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4890×1920×1700mm
ホイールベース:2850mm
車重:2200kg
駆動方式:4WD
エンジン:2.5リッター直4 DOHC 16バルブ
フロントモーター:交流同期電動機
リアモーター:交流同期電動機
トランスミッション:CVT
エンジン最高出力:185PS(136kW)/6000rpm
エンジン最大トルク:228N・m(23.2kgf・m)/3600-3700rpm
フロントモーター最高出力:182PS(134kW)
フロントモーター最大トルク:270N・m(27.5kgf・m)
リアモーター最高出力:54PS(40kW)
リアモーター最大トルク:121N・m(12.3kgf・m)
システム最高出力:309PS(227kW)
タイヤ:(前)235/50R21 101W/(後)235/50R21 101W(ブリヂストン・アレンザ001)
ハイブリッド燃料消費率:18.7km/リッター(WLTCモード)
EV走行換算距離:83km(WLTCモード)
充電電力使用時走行距離:86km(WLTCモード)
交流電力量消費率:177Wh/km(WLTCモード)
価格:887万円/テスト車=959万9300円
オプション装備:ボディーカラー<ソニックカッパー>(16万5000円)/デジタルキー(3万3000円)/ルーフレール+パノラマルーフ<チルト&アウタースライド式>(20万9000円)/ふく射ヒーター(2万2000円)/“マークレビンソン”プレミアムサラウンドサウンドシステム(27万9400円)/寒冷地仕様(2万0900円)
テスト車の年式:2025年型
テスト開始時の走行距離:2699km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:297.0km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:17.0km/リッター(車載燃費計計測値)

島下 泰久
モータージャーナリスト。乗って、書いて、最近ではしゃべる機会も激増中。『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)、『クルマの未来で日本はどう戦うのか?』(星海社)など著書多数。YouTubeチャンネル『RIDE NOW』主宰。所有(する不動)車は「ホンダ・ビート」「スバル・サンバー」など。
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