ディフェンダー・オクタ(4WD/8AT)【試乗記】
納得のパフォーマンス 2025.06.30 試乗記 ディフェンダーのラインナップにおいて、最もタフで走破性に優れ、最もラグジュアリーとされるモデルが2024年7月に発表された「OCTA(オクタ)」である。“史上最強”をうたう自慢のパフォーマンスを、オンロードとオフロードの両ステージでチェックした。史上最強のディフェンダー
2019年末に日本での先行予約が開始され、翌2020年にデリバリーが開始された2代目ディフェンダー。現在も人々の記憶に残り、強い存在感を示す初代モデルの雰囲気を巧みに取り入れたデザインもあって、この2代目は世界中でたちまち人気モデルとなった。レンジローバー、ディスカバリーと並ぶ“第3の柱”として、ランドローバーを支えているのはご存じのとおりだ。
そんなディフェンダーのサクセスストーリーをさらに強力に後押しすること間違いなしなのが、今回紹介する追加設定モデルのオクタである。オクタとはダイヤモンドの原石に見られる八面体形状を指す“オクタヘドロン”(Octahedron)に由来した造語で、その強靱(きょうじん)さや希少性などを表現しているという。
なるほど、そうしたキャラクターはまずその立ち姿からも明らかだ。2065mmと軽く2mを超す全幅は既存の「ディフェンダー110」のそれよりも70mm広く、ピタリ2000mmをうたう全高も30mmアップ。性能的にも「史上最もタフで、最も走破性が高く、最もラグジュアリーな新たなヒーローモデル」というキャッチフレーズが示すとおり、既存のV8モデル用とは出自の異なるBMWユニット由来のツインターボ付きV8エンジンが、4.4リッターの排気量から635PSを発生する。既存のスーパーチャージャー付き5リッターV8ユニットの525PSを大きくしのぐ最高出力がトピックだ。
フルタイム4WDシステムを介しての0-100km/h加速タイムはわずか4秒フラットで、最高速は装着するタイヤによって250km/hに達する。これらの数値は、シリーズの頂点に立つにふさわしいものといえる。けれども、オクタの見どころはそうしたオンロードでのパフォーマンスにとどまらない部分にもある。
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専用チューンの足まわりが光る
先に紹介した“史上最もタフで……”というフレーズが示すところには、ランドローバーの作品らしくオンロードのみならずオフロードでも圧倒的なパフォーマンスを発揮するという思いも強く込められている。それは、このモデルのハードウエアの詳細を追うことで明らかになる。
最低地上高を筆頭としたボディーの対障害角にさらなる余裕が与えられ、ドライビングモードにはこのモデル独自の「OCTA」モードを新設定。
同モードを選択するとサスペンションやABSの設定が変更され、オフロードでのハードな走行をさらに高い次元でバックアップする。ちなみに最大渡河深度はベースモデル比でプラス100mmの、なんと1000mm(つまり1m!)に達するというから、それだけでもこのモデルが目指したとんでもないオフロード性能が推し量れようというものだ。
オクタが単に既存のディフェンダーにより高出力の心臓を搭載したものではないことは、専用のアイテムがおごられたサスペンションからもわかる。アンチロールバーを廃止する一方で、4輪が互いにリンクし油圧ダンパーを制御する「6Dダイナミクスサスペンション」を「レンジローバー・スポーツSV」に次いで採用。もちろんバルブや油圧系統が強化され、さらにオクタ用に制御プログラムを書き換えたうえで搭載するなど抜かりはない。
これによって、特に前出のOCTAモードではサスペンションストロークをよりソフトに素早く伸縮させることが可能となり、悪路での大幅な路面追従性の向上に貢献するという。
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OCTAモードは飾りではない
そうしたキャラクターを鮮明にする狙いもあってか、今回のメディア向け試乗会にはオフロードコースも用意されていた。
舞台となった群馬・浅間サーキットは、浅間山の噴火に伴う火山灰で覆われたグラベルコースで知られる場所。2WDモデルではたちまちスタックしてしまいそうなフカフカ路面ではあるものの、整備されたコースに激しい段差や凹凸などは見られず、このモデルであれば「COMFORT」モードでも何の苦もなく踏破できそうな状況ではある。
とはいえ、OCTAモードを選択した際にその威力を感じられたのは、ハードブレーキングのシーン。こうした場面ではホイールロックの気配を検知したABSが“効きすぎ”、早めにブレーキの油圧を緩めた結果、制動力自体が低下してしまうことが多い。しかしOCTAモードでは、ギリギリまでホイールロックを許容していることが明確にわかる。ABSの作動による“抜け感”は皆無で、期待以上の制動力を得られるのだ。
加えて、路面の凹凸に応じてサスペンションがスムーズに動いてくれるため、こちらは目で見て予想する以上に体の上下動が少なくて済むことも実感。跳ねることなく車輪が素直に路面を捉えるのでトラクション能力が高く、フルパワーを与えても、むやみにタコメーターの針が跳ね上がったりしない点にも同様に素性の良さを実感できた。
今回用意されたオフロードセクションは、このクルマが秘めたポテンシャルに対しては到底「本格的」とは呼べない序の口であったと思われるものの、それでもそれを難なくこなす実力の高さはやはり感動もの。「1mの渡河能力も試してみたい……」と、そんなよからぬ(?)思いも頭をもたげてしまった。
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巧みなボディーコントロール
見るからにゴツい275/60R20サイズの「グッドイヤー・ラングラー デュラトラックRT」から、275/50R22サイズの「ミシュラン・プライマシー オールシーズン」へとタイヤを履き替えたモデルで今度はオンロードへと乗り出すと、こちらでも想像以上の乗り心地の良さがまずは印象的である。
車両重量は2.6tを超えるが、“軽快”とは言わずとも、それほどの重さだとは感じられない。全幅が2mに達するゆえ、浅間山麓のタイトなワインディングロードでは「自分の車線内にとどまっていること」に気を使う場面はあるものの、例のハイテクを駆使したサスペンションが巧みなボディーコントロールを行ってくれるとみえ、ロールやピッチングはまるで気にならない。
オクタには「アクティブエキゾーストシステム」が標準で装備されていて、アクセルペダルを深く踏み込めば今や希少となりつつあるゴキゲンなV8サウンドを轟(とどろ)かせるのだが、さらなる音響空間に浸りたいという向きには「ボディー&ソウルシート」と呼ばれる振動音響テクノロジーを内蔵したシートも標準で用意されている。耳からのみならず全身で気に入った音楽を味わえるとは、まさに微に入り細をうがったおもてなしである。
「オンでもオフでもハイパフォーマンスで究極のタフさとラグジュアリーを併せ持った特別な存在」と、一瞬、美辞麗句を連ねたかのように聞こえてしまうフレーズも、こんな実車を示されてしまえば納得するしかないディフェンダー・オクタなのである。
(文=河村康彦/写真=花村英典/編集=櫻井健一)
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テスト車のデータ
ディフェンダー・オクタ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4940×2065×2000mm
ホイールベース:3020mm
車重:2610kg
駆動方式:4WD
エンジン:4.4リッターV8 DOHC 32バルブ ツインターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:635PS(467kW)/6000-7000rpm
最大トルク:750N・m(76.5kgf・m)/1800-5855rpm(ダイナミックローンチモード使用時は800N・m)
タイヤ:(前)275/50R22 115W M+S XL/(後)275/50R22 115W M+S XL(ミシュラン・プライマシー オールシーズン)
燃費:--km/リッター
価格:2090万円/テスト車=2237万1684円
オプション装備:ボディーカラー<ペトラカッパー>(0円)/マットプロテクティブフィルム(58万8000円)/22インチ“スタイル7026”<ダイヤモンドターンド、グロスブラックコントラスト>(14万1000円)/Wi-Fi接続<データプラン付き>(3万8000円) ※以下、販売店オプション ドライブレコーダー(6万0280円)/ディプロイアブルサイドステップ一式(55万4404円)
テスト車の年式:2025年型
テスト開始時の走行距離:2564km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
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