アウディSQ5スポーツバック(4WD/7AT)
心が通い合う 2025.11.08 試乗記 新型「アウディSQ5スポーツバック」に試乗。最高出力367PSのアウディの「S」と聞くと思わず身構えてしまうものだが、この新たなSUVクーペにその心配は無用だ。時に速く、時に優しく。ドライバーの意思に忠実に反応するその様子は、まるで長年連れ添ってきた相棒かのように感じられた。親しみやすい雰囲気が漂う
アウディSQ5スポーツバックに試乗していると、不思議な感情が湧いてきた。このクルマに名前をつけたい、という気持ちが芽生えたのだ。いや、名前はアウディSQ5スポーツバックだから、ニックネームか。安易ではあるけれど、SQ5だから「Qちゃん」とか「五郎さん」のように、アダ名で呼びたくなった。
ただし、アダ名をつけたくなるようなクルマが必ずしもいいクルマだというわけではない。特に、4つの銀色の輪っかを輝かせてインゴルシュタットからやってくるクルマたちは、どんなに高性能であってもクールで理知的で、アダ名で呼ぶことがためらわれた。「君」とか「さん」をつけて呼ぶ。
これは決して悪いことではなく、ツンとすましやがって、と思えるくらいスタイリッシュで知的なたたずまいがアウディの魅力であり、ほかのどのブランドともカブらない世界観だった。だから、アウディSQ5スポーツバックを「Qちゃん」とか「五郎さん」と呼びたくなったことに、自分でも少し驚いた。
アダ名で呼びたくなったとはいえ、内外装のデザインにスキがないことに変わりはない。きりりと凛々(りり)しいフロントマスクとエレガントなルーフラインの組み合わせは花形 満のようだし、オーディオの音量調整ツマミ以外の突起物が見当たらないツルンとしたインテリアもモーターショーで見かける“未来のコックピット”のようだ。しかも、タッチスクリーンに格納された空調パネルが使いやすく、「カッコいいけど寒くて住みにくいモデルハウス」のような弊には陥っていない。機能も十分担保されている。
それなのに、なぜアダ名で呼びたくなったのか。その理由をひとことで言えば、ドライブフィールにある。
緩急自在のサラブレッドのようだ
3リッターのV型6気筒ガソリンターボの最高出力は367PSだし、モデル名に「S」が付いているから、乗り心地が引き締まっているであろうことは予想していた。場合によっては、ガツンという路面からの突き上げも覚悟していた。事実、中高速コーナーではグイッと踏ん張り、横傾きを抑えるようなセッティングになっている。
ただし、コーナーでは踏ん張るのに、市街地を粛々と流すような場面では柔軟に足を伸ばしたり縮めたりしながら、路面からの衝撃を上手にかわしている。まるでパドックでは規則正しい常歩(なみあし)の振る舞いを見せながら、最終コーナーをギャロップで駆け抜けるサラブレッドのように、足まわりのキャラクターが変わる。しかも、速度域を問わずに、路面の凸凹を乗り越える瞬間は、膝の関節を折り曲げるかのような動きで、衝撃を緩和してくれる。
穏やかに走りたい時にはしなやかに、踏ん張る時には筋肉に力を入れるような変化は、オプションの「アダプティブエアサスペンション スポーツ」の手柄だとニラんだ。このエアサスの「あり/なし」を直接乗り比べたわけではないので断言はできないけれど、走り方や路面のコンディションを総合的に判断して、瞬時にダンピングをコントロールするこのシステムが効果的に機能しているように感じる。
まるでドライバーの意思や希望を察知しているかのように、足まわりのセッティングを整えてくれるあたり、「よしよし」と首をさすってあげたくなる。
ちなみに「アダプティブエアサスペンション スポーツ」を含む「ラグジュアリーパッケージ ファインナッパレザー」のオプション価格は71万円。71万円を稼ぐのはめっちゃ大変ではあるけれど、せっかく購入するのだったら奮発したい。
パワフルかつジェントルなパワートレイン
現状、アウディの「Q5」および「Q5スポーツバック」のパワートレインは2リッター直4ガソリンターボ(最高出力204PS)と、同じく2リッター直4ディーゼルターボ(最高出力204PS)の2種類。両者の最高出力が同じというところが興味深いけれど、それはさておき、これに比べるとSQ5の最高出力367PSは8割増しだから、かなりの高性能版ということになる。
事実、アクセルペダルを軽く踏み込んだだけで、あっという間に高速道路の制限速度に達する。けれども、ただパワフルなことだけがこのパワートレインの売りではない。
足まわりと同様、市街地ではジェントルに振る舞う。ちなみに、新型Q5とSQ5は、すべてのモデルに「MHEVプラス」と呼ばれるマイルドハイブリッドシステムが備わる。なにが“プラス”されているかというと、スターターと発電機の役割も兼ねるモーターに、「PTG(パワートレインジェネレーター)」と呼ばれる電動駆動システムが加わっている。
資料には「特定の条件下で完全EV走行を可能とし、」とあるけれど、実際にドライブしてみると、発進時にEV走行が発現する。そして速度が上がると、誰にも気づかれないように静かにエンジンが始動している。
7段Sトロニックのセッティングも見事で、トランスミッションが存在することを悟らせないほどシームレスかつ素早くギアを変える。上質な乗り心地や端正なインテリアと合わせて室内には静穏な雰囲気が漂い、取材用に借りているクルマに乗っているだけなのに、自分も上品な人間であるかのように錯覚してしまう。
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体温すら感じられる
「バランスド」「ダイナミック」「コンフォート」「エフィシエンシー」「オフロード」の5つのモードから、最もスポーティーなダイナミックを選ぶと、エンジン回転が高まり、ステアリングホイールの手応えも増し、クルマ全体がヤル気に満ちた雰囲気になる。このセッティングで山道に入ると、このクルマのパフォーマンスが「怒涛(どとう)」と「繊細」を兼ね備えていることを思い知らされる。
加速力が圧巻なのは間違いないとして、アクセルペダルの微妙なコントロールに正確に反応してくれるのがうれしい。パーシャルスロットルの微妙なアクセルワークにも、間髪入れずに追随してくれる。
よどみのないエンジンの回転フィールはスカッと爽やかだし、回転の上昇とともに高まるエキゾーストノートが耳に素晴らしい刺激を与える。
前述したように中高速コーナーでは安定した姿勢を保つ。オンザレールのコーナリングなのに、ドライバーに「自分が操っている」という充足感を抱かせるのは、ステアリングフィールが良好なことやブレーキペダルへの踏力に応じて繊細に速度を殺してくれることなど、ドライバーの入力に対するアウトプットが精緻であることがその理由だ。
ただ単に速くてファントゥドライブがあるというだけでなく、心が通い合うような錯覚を覚える。だからドライブを終えて、「よしよし」とニンジンを食べさせてあげたくなる。「クール」や「テクノロジー」を突き詰めると、体温のある相棒のように感じるのか。
というわけで、「Qちゃん」や「五郎さん」のように安直なネーミングではなく、もっとまともな名前をつけてあげたくなるのだった。
(文=サトータケシ/写真=向後一宏/編集=藤沢 勝/車両協力=アウディ ジャパン)
テスト車のデータ
アウディSQ5スポーツバック
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4715×1900×1630mm
ホイールベース:2825mm
車重:2110kg
駆動方式:4WD
エンジン:3リッターV6 DOHC 24バルブ ターボ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:7段AT
エンジン最高出力:367PS(270kW)/5500-6300rpm
エンジン最大トルク:550N・m(56.1kgf・m)/1700-4000rpm
モーター最高出力:25PS(18kW)
モーター最大トルク:230N・m(23.5kgf・m)
タイヤ:(前)255/40R21 102Y XL/(後)255/40R21 102Y XL(ミシュラン・パイロットスポーツ4 SUV)
燃費:12.7km/リッター(WLTCモード)
価格:1058万円/テスト車=1215万円
オプション装備:ライティングパッケージ<プライバシーガラス、アンビエントライティングプロ&ダイナミックインタラクションライト、ロールアップサンシェード[リアサイド]>(10万円)/パノラマサンルーフ(26万円)/ラグジュアリーパッケージ ファインナッパレザー<MMIエクスペリエンスプロ、シートベンチレーション&マッサージ[フロント]、ファインナッパレザー[ダイヤモンドステッチング]、ラップアラウンドインテリアエレメンツ ダイナミカ[インパネデコラティブトリム、ドアトリム、ドアアームレスト、センターコンソール]、アダプティブエアサスペンション[スポーツ]>(71万円)/カラードブレーキキャリパー<レッド>(7万円)/ダークアウディリングス&ブラックスタイリングパッケージ<ダークアウディリングス、ブラックスタイリングパッケージ、エクステリアミラーハウジング[グロスブラック]、テールパイプ[ダーククローム]>(18万円)/アルミホイール<5ツインスポーク シルクマットグレーポリッシュド[8.5J×21]、255/40R21タイヤ>(25万円)
テスト車の年式:2025年型
テスト開始時の走行距離:5580km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:363.3km
使用燃料:32.9リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:11.0km/リッター(満タン法)/11.3km/リッター(車載燃費計計測値)

サトータケシ
ライター/エディター。2022年12月時点での愛車は2010年型の「シトロエンC6」。最近、ちょいちょいお金がかかるようになったのが悩みのタネ。いまほしいクルマは「スズキ・ジムニー」と「ルノー・トゥインゴS」。でも2台持ちする甲斐性はなし。残念……。
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