アウディQ5ファーストエディション(4WD/7AT)/SQ5(4WD/8AT)
エリートのためのSUV 2017.10.17 試乗記 アウディのミドルサイズSUV「Q5」がフルモデルチェンジ。新世代プラットフォーム「MLB evo」を採用した新型が、いよいよ日本にも導入された。走りも内外装も大幅にブラッシュアップされた、2代目の出来栄えを報告する。失敗は許されない
2008年に、「Q7」の小型版として登場したアウディQ5は、インゴルシュタットの思惑通りの大ヒットとなった。「A4」のMLBプラットフォームを使った中型SUVとして、北米のみならず、ヨーロッパ、中国でも人気を博し、累計販売台数は160万台を超えるに至った。モデル末期のはずの2016年でさえ、世界市場で28万台弱と、「A3」、A4に次ぐデリバリー台数を記録したという。
そんな大ヒット作の初のモデルチェンジである。手堅くまとめてくるのは当然というべきだろう。しかも、新型Q5はメキシコに新たに建てられた年産15万台のキャパをもつ最新鋭工場でつくられる。トランプ大統領が知ったら怒っちゃうかもしれないけれど、インゴルシュタットはネッカーズルムの工場から移るのだから、ドイツの右派の方々のほうが怒り心頭かもしれない。というようなことはともかく、絶対に失敗は許されない規模の投資をしているわけである、アウディとしては。
歴史的巨眼でもって見れば、いま現在の自動車というのは移行期にある。化石燃料を燃やす内燃機関から完全に卒業するのがいつになるかは別にして、少なくとも電気が相応の地位を占め、運転の喜びはクローズドのサーキットでの楽しみとなる。未来がそうなることは間違いない。
となると2代目Q5は取るに足らぬ、革新とはほど遠い、過渡的なプロダクトであるにすぎぬ。基本のコンセプトは先代と同じで、中身をアップデートしただけなのだから。
MLB evoと呼ばれる新しいプラットフォームは、現行A4やQ7と同様の縦置きエンジン用で、ボディーは若干大きくなった。とはいえ、50mm長く、5mm高くなっただけで、全幅は変わっていない。ホイールベースは15mmだけ延びた。それでも、インテリアの拡大には意が払われていて、特にショルダールームとエルボールームはクラストップの値を誇るという。
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変わっていないようで、ずいぶん違う
最も注目すべきは軽量化だろう。ボディーおよびサスペンションにアルミを多用することで、日本仕様の「2.0 TFSIクワトロ」で先代比60kg、SQ5では同70kgのダイエットに成功している。軽さは、走る・曲がる・止まる、のあらゆる性能に効いてくる。まことに歓迎すべきことである。
エクステリアでは筋肉質が強調されている。Q7同様、フロントのグリルが従来型より幅広く平たい六角形になって、クロームで縁取りされる。そのグリルの上部とヘッドライトの上のラインがつながって水平基調を強調する。自慢のマトリクスLEDヘッドライトはクリスタルのように輝き、そこから抑揚のついたサイドのラインがリアのテールライトまで続く。
細かく見ていくと、2代目はずいぶん変わっている。デザインのポリシーとして、ミニマリズムを脱して、よりエモーションを表現しようとしていることは間違いない。足まわりも、前述したようにアルミを多用し、リアは4リンクから5リンクにサスペンションの形式を変更。オプションでエアサスペンションも選べる(日本導入は12月以降)。
今回、山梨県甲州市勝沼のMGVs(マグヴィス)ワイナリーで開かれた試乗会では、「Q5 1st edition(ファーストエディション)」と呼ばれる限定250台の新型誕生記念モデルと、トップスポーツモデルの「SQ5」のステアリングを握る機会を得た。
スポーティーでスムーズで快適で……
ファーストエディションは2.0 TFSIクワトロをベースに、「Sライン」仕様のエクステリアを採用し、20インチのアルミホイールに255/45R20サイズのタイヤを履かせている。車両価格は「サバーラブルー」の試乗車の場合713万円で、フツウの「2.0 TFSIクワトロ」より46万円高い。でもフツウのは18インチだし、ヘッドライトはバイキセノンだし、リアも流れるライトのダイナミックターンインジケーターがついていない。オプションでは選べるわけだけれど、オプションで選んでいたら、あっという間にこれぐらいの値段になる。
大ざっぱな感想を述べれば、ファーストエディションは乗り心地がかなりスポーティーである。平ったくいえば硬めだ。硬めだけれど、不快ではない。駆動系はスムーズで、現行A4ゆずりのパワートレインが優秀なのだろう。着座位置が高いことによる重心の高さも気にならず、SUVとはいえ乗用車のように静かで快適、ドライブモードをダイナミックにすれば、4気筒の乾いたサウンドが控えめに聞こえてきて、スポーティーな気分を味わえる。7段Sトロニックはもはや低速でもギクシャクしない。
2.0 TFSIは最高出力252psと最大トルク370Nmを発生する。先代Q5用2.0 TFSI 比、28psと20Nm強化されている。車重は軽量化されたといっても1820kgもある。それでも、「メルセデス・ベンツGLC」や「BMW X3」の2リッターターボより30kgほど軽くて、エンジンははるかに強力だ。
ファーストエディションには可変サスペンションはついていない。これでエアサスが装着されたらどうなるのか、当然快適性が増すだろうし、車高も調節できるようになるから利便性も増す。
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黒子に徹するクワトロシステム
クワトロシステムについては、より高効率に、ということで、ふだん必要のないときはプロペラシャフトとリアのディファレンシャルが回らなくてもいいような工夫が凝らしてある。エンジン回転数、アクセル開度、Gセンサー、ステアリング角度、摩擦係数などを0.01秒ごとにモニタリングして、0.5秒先の状況を予測、ふたつのクラッチをつないでクワトロ、すなわち4WDに切り替えるのに0.2秒かかるけれど、十分間に合うというインテリジェントな制御システムである。
正直に申し上げて、今回の試乗ではその効果のほどはわからなかった。当日は快晴で路面が乾いていたから、主に前輪で走っていたと思われる。ドライブモードでダイナミックを選ぶと、クワトロへの切り替えがより早期に行われ、後輪へのトルクの分配の割合も多めになるという。このようなシステムは黒子なのだから、その切り替えはまったくわからなかった、というのはよきことである。
もう1台、スポーツモデルのSQ5は新設計の3.0 TFSIエンジンと8段のティプトロニックを持つ。現行「S4」に搭載されているのと同じ、という言い方をすると、ま、そうですね、ということになるけれど、先代SQ5と比較すれば、機械式スーパーチャージャーに代えてツインスクロールタイプのターボチャージャーを採用、最高出力354psは従来と同じながら、最大トルクは30Nmアップの500Nmという大トルクを得る、という表現になる。
このエンジン、ミラーサイクルを応用した「Bサイクル」ながら、低回転域からトルクを生み出し、乾いたエンジンサウンドに心がおどる。同じBサイクルでも、排気量とプログラムの違いで、こんなにスポーティーになるのだ。そうつぶやきたくなるほど2.0 TFSIのBサイクルとは性格が異なる。
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ターゲットの心にブスリと刺さる
SQ5の公称データによれば、0-100km/h加速は5.4秒とスポーツカー並み。SUVにもリアゲートはついているから、「ホットハッチ」と呼べなくもない。とはいえ、「ホットハッチ」という言葉の持つ軽快さとは違う種類の速さだ。SQ5の場合はCDC(連続ダンピングコントロール)ダンパーが標準で付いており、それゆえ乗り心地に厚みがあって、ファーストエディションと比べると、乗り心地はむしろこちらの方が穏やかでラグジュアリー、ぜいたく感がある。
しかもクワトロシステムは前後トルク配分が40:60と後輪駆動寄りで、全体にタイト感があって、ファーストエディションより山道でファン・トゥ・ドライブである。
ファーストエディションとSQ5、どちらかあなたの好きな方を差し上げましょう。と沼から出てきた妖精にたずねられたなら、私が落としたのは金のおの、じゃなかった、好きなのはSQ5です、と答えたい。887万円という車両本体価格はともかくとして。
もしも筆者が新型Q5のターゲット層である30~40代の男性サラリーマンだったら、それはね、欲しいです、Q5。キャンプに行ってたき火して鉄鍋で鳥の丸焼き作って、ワインを傾け、あるいはスポーツ用の自転車を積んだりして高原に走りに行ったり……。
歴史的大局観はときとして人間的視点を忘れさせる。前言撤回。アプリをスマホにインストールすれば、愛車のドアの施錠/開錠がスマホからできて、燃料の残量もチェックできる。IT系の会社に勤めていたりしたら、超ジマンしちゃうね。最前線でクリエイティビティーを発揮しながらたたかっている男たちのクルマ、それが新型アウディQ5/SQ5なのである。
(文=今尾直樹/写真=荒川正幸/編集=堀田剛資)
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テスト車のデータ
アウディQ5ファーストエディション
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4685×1900×1665mm
ホイールベース:2825mm
車重:1820kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:252ps(185kW)/5000-6000rpm
最大トルク:370Nm(37.7kgm)/1500-4500rpm
タイヤ:(前)255/40R20 101W /(後)255/40R20 101W(ミシュラン・ラティチュードスポーツ3)
燃費:13.9km/リッター(JC08モード)
価格:704万円/テスト車=713万円
オプション装備:ボディーカラー<ナバーラブルーM>(9万円)
テスト車の年式:2017年型
テスト開始時の走行距離:1573km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター
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アウディSQ5
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4685×1900×1635mm
ホイールベース:2825mm
車重:1930kg
駆動方式:4WD
エンジン:3リッターV6 DOHC 24バルブ ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:354ps(260kW)/5400-6400rpm
最大トルク:500Nm(51.0kgm)/1370-4500rpm
タイヤ:(前)255/40R20 101W /(後)255/40R20 101W(コンチネンタル・コンチスポーツコンタクト5)
燃費:11.9km/リッター(JC08モード)
価格:887万円/テスト車=973万円
オプション装備:ボディーカラー<アゾレスグリーンM>(9万円)/アシスタンスパッケージ<リアサイドエアバッグ+バーチャルコックピット>(14万円)/ダイナミックステアリング(16万円)/Bang & Olufsen 3Dアドバンスドサウンドシステム(18万円)/カラードブレーキキャリパー レッド(6万円)/プライバシーガラス(8万円)/Audi exclusive 5アーム タービン マグネシウムルック ポリッシュ 8J×20 225/45R20<Audi sport>(15万円)
テスト車の年式:2017年型
テスト開始時の走行距離:1058km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

今尾 直樹
1960年岐阜県生まれ。1983年秋、就職活動中にCG誌で、「新雑誌創刊につき編集部員募集」を知り、郵送では間に合わなかったため、締め切り日に水道橋にあった二玄社まで履歴書を持参する。筆記試験の会場は忘れたけれど、監督官のひとりが下野康史さんで、もうひとりの見知らぬひとが鈴木正文さんだった。合格通知が届いたのは11月23日勤労感謝の日。あれからはや幾年。少年老い易く学成り難し。つづく。
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