北欧ならではの勘どころ
その昔、わが家にしばしサーブがいたことがある。ゼネラルモーターズと提携後の最初につくられたその「9-3」は、当時の「オペル・ベクトラ」と共通のアーキテクチャーではあったものの、ふんわりしゃなりと路面をなでるように捉える乗り味が、過酷な自然環境での御しやすさにつながっているんだろうなと、かの地への妄想が膨らんだ。そういえば空調の吹き出し口ひとつとっても、凸凹を設けてそこに風を当てることにより、冷暖房が間接照明のようにふんわりと室内を包みこんでくれるのに感心させられたこともある。
言葉にすればコージーとかチルなどという形容になるのか、そういうほっこり感は北欧のクリエーションにおいての核たるところに据えられているのだろう。逆にいえばどんなに優れた技巧であっても、人当たりが悪いものはよしとされない。その昔、欧州の空港に降り立てばノキアの携帯電話の柔らかな着信音に旅情をくすぐられたものだが「ノキアチューン」と呼ばれるそれが実装されたのは、日本の携帯電話が街角でピピピと殺風景な音を鳴らしていた1994年のことだったという。
ボルボもまたプロダクトにご当地ならではのアイデンティティーを明確に織り込んできたメーカーだ。手袋をはめていても使える大ぶりなボタンやノブ……というのは昔からのクルマ好きには有名だろう。昨今はさすがにそうはいかないが、そのぶん内装の色やオーナメントの素材などに、ナチュラルやオーガニックといった今日的なテーマを意識したものを多用している。そうやって、華やぎよりも安らぎを揺るぎない個性としてみせる術(すべ)には感心するばかりだ。それこそ北欧の風土が育んだセンスということなのだろう。
「ボルボEX30クロスカントリー」が国内で発売されたのは2025年8月21日のこと。EX30のマイナーチェンジのタイミングでラインナップに追加された。
拡大 |
フロントマスクの大部分は樹脂パネルでカバーされる。バットマンのようでカッコいい。
拡大 |
ブラックのパネルに近寄ってみる。スウェーデン北部、北極圏にあるケブネカイセ山脈の地形図にインスピレーションを得たというグラフィックが刻まれている。
拡大 |
左右のリアコンビランプ間にもブラックの大型パネルを装備。黒地に銀の「VOLVO」ロゴがクラシカルな雰囲気だ。
拡大 |
この記事は会員限定公開です。webCGプレミアムプラン会員に登録すると<月額550円(税込)>、続きを読むことができます。
| 登録初月無料! |
クレジットカードで会員登録いただくと、ご契約いただいた日からその月の末日までが無料になります。いつでも解約可能です。 |
プレミアムプラン会員になると……
- 毎月20本以上、新型車の試乗記が先取りで読める!
- 人気のさまざまな連載エッセイも、いち早く読める!
- 100車種超! 「谷口信輝の新車試乗」がぜんぶ読める!
- あの漫画家・池沢早人師の特集記事も堪能できる!
- 頭脳派レーシングドライバー山野哲也の車評が分かる!
- 『日刊!名車列伝』で世界の名車に毎日触れられる!
- 自動車メーカー関連グッズのプレゼントに応募できる!
- 話題のニューモデルのアツい走りが動画で見られる!
ほかにもクルマ好き必見のおトクが盛りだくさん! すべて、広告非表示で楽しめます。まずは会員登録を。